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通ごのみ 扇辰・白酒二人会 日本橋社会教育会館 4月30日

先週に続いての日本橋、そして扇辰。昨年10月以来のこの二人会。今ではチケットが取りにくくなったなぁ、前売り売切れで満員の盛況だった。天気予報では雷を伴う豪雨もあるように言われていたが、開演時間には雨も小降りになり、助かった。

 次のような構成。
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(開口一番 林家つる子『堀の内』)
入船亭扇辰 『明烏』
桃月庵白酒 『笠碁』
(仲入り)
桃月庵白酒 『浮世床』
入船亭扇辰 『竹の水仙』
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林家つる子『堀の内』 (15分 *19:02~)
 4月5日の雲助の浅草見番と同じネタ。ネタは、少しこなれてきた。しかし、なのだ。あまり小言を書くと“いじめ”かと思われそうだが、書かないわけにいかないなぁ。プログラムの出演順の訂正として、順番が扇辰→白酒→白酒→扇辰に変わったと説明。「白酒師匠はこの後に仕事があり、扇辰師匠はおヒマだそうです」と、余計なことを言う。 私が受け取った実際のプログラムには、きっと上から紙を貼ってコピーを取り直したのだろう、出演順の記載なし。言わなくてもいいことだ。マクラでの首振り人形のような仕草や、めくりのぞんざいな扱いなど含め、まだまだ修行してもらう必要がある。

入船亭扇辰『明烏』 (39分)
 「ヒマな扇辰です」と始まった。ギャグにしているが、意外に結構本気でカチンときているのではないかなぁ。楽屋の“食べる”白酒の説明は、毎度のお約束になってきた^^
 春めいてきて女性の服装が明るくなると、綺麗に見える、などの短い5分ほどのマクラから本編へ。
 この噺は2011年2月の銀座ブロッサムでの喬太郎、文左衛門の三人会以来。2011年2月16日のブログ
 源兵衛と太助を生き生きと描くところは変わらず結構。二宮金次郎、甘納豆などの伝統的な小道具での演出も悪くないが、時次郎の泣き方が、以前より大袈裟になったようだ。笑いは取っていたが、少しやり過ぎの印象もある。人によって評価は分かれるだろうが、私は、もう少し時次郎の駄々っ子ぶりを抑えたほうが好きだ。また、冒頭で時次郎が源兵衛と太助にお稲荷様に誘われたと父半兵衛に伝えた後、半兵衛が吉原と気づくのに時間がかかりすぎる印象。あのへんは、もう少し短めで先に進めてもらいたい。
 しかし、サゲ近く、浦里と同衾したままで時次郎が源兵衛と太助に向かって言う「しろうと!」の科白は、間も良く可笑しかった。
 彼の持ち味の良さとややくど過ぎる面が相半ばしているような印象だが、扇辰ならではのネタになる可能性は十分秘めていると思う。しばらく後に、どのように変わっているか、また聴いてみたいと思わせた。

桃月庵白酒『笠碁』 (32分)
 野球少年だった小学校六年の時が、体力のピークだったと振り返る。学生時代の異国情緒あふれるアパートでのカレーライスやマーボ豆腐に凝った自炊のこと、雲助にのめり込んでいた頃の落語研究会では、志ん朝の高座ですら「長過ぎるぞ!」と思っていたという話から、あまり一つのことに懲りすぎるといけない、と本編へ。この人らしい現代的な面も織り交ぜていても、本筋をはずさない。達者だ。
 10分ほどのマクラがあったことを考えると、あの内容で20分余りというのは、結構濃縮された高座だったと思う。この噺は定評のある五代目小さんも結構だが、私は大師匠馬生の音源を好む。師匠雲助がこの噺を持っていたかどうかは不勉強で分からない。なさそうな気がするがなぁ。今松からでも稽古してもらったのだろうか。
 いずれにしても、白酒は、大師匠から継承された形のままには演じないのである。碁仲間の二人の隠居、名前がないので、「待った」の旦那、「待ったなし」の旦那とする。自ら待ったなしでしよう、と提唱していながら待ったをしようとする「待った」の旦那が、「待ったなし」に向かって、“おととしの暮れの二十八日”に金を貸して、約束の期限より遅れても待っただろう、と言うのは、大師匠や他の噺家さんと時期などの違いなどはあっても基本は同じ。ところが、白酒は、「待ったなし」旦那が、「待った」に対抗すべく、“11年前の9月”、を持ち出す。内容は秘密にするが、こういう“玉”を持っていて撃ち合ったなら、二人の喧嘩は大きくなるなぁ。私はこの演出悪くないと思う。
 大師匠のような枯れた味を出すには年季が必要だ。あくまでも自分なりの噺として演じる中で、自らの体型をも利用したクスグリが出る。「待ったなし」が、雨のふる中、我慢たまらず笠を被って「待った」の家に行く場面、笠の下に体を入れようと両腕を引き合わせて出かける姿に女房から一言、「はみ出てますよ」が可笑しい。
 仲直りして、さあ碁を打つ際の「待った」の旦那、「もう碁さえできればいいんだから、いくらでも待ったしましょう」とか「店なんか潰れたっていいんだ」なども、この人らしくて楽しい。
 気になるのは、喧嘩別れから数日後、二人とも相手のことを思いながら「怒っちゃいないんだから・・・」と語るのだが、これは蛇足ではなかろうか。川柳の「碁敵は憎さも憎し懐かしし」が背景にある噺、それは語らなくても伝わるはずだ。

桃月庵白酒『浮世床』(将棋、本) (21分)
 白酒では初めて聴く。寄席でも巡り合ったことがないのは、意外でもあったが、『ざるや』は何度も聴いている^^
 途中で名が出たように、古今亭志ん五リスペクト、とでも言うべき高座。将棋で笑いの渦が起こり、本で爆笑につながった。源公が「太閤記」をたどたどしく読む場面の可笑しさは、仕草も含めて秀逸。
 今の東京落語界、そして落語協会に志ん五がいないことが何かと惜しまれる。そういう意味で、古今亭でしっかり伝承すべき噺であることを、白酒は十分に分かっているのだろう。この男、頭も切れるし、了見も良い。

入船亭扇辰『竹の水仙』 (45分 *~21:49)
 すでに九時を回っての登場だが、気合は入っていたのだろう、「たっぷりやります。朝までにはかかりません」とふって、本当にたっぷりだった。
 この人のこのネタ、昨年10月の深川での兼好との二人会以来。2013年10月24日のブログ
 昨年もそうだったかはよく覚えていないのだが、宿屋大杉屋の主がたまった勘定をもらいに部屋に上がってきた時、甚五郎も、「ちょうど良かった。一人で飲んでいてもつまらん。酒の相手が欲しかった」という設定は、珍しいと思う。師匠からの伝承なのだろうか。不勉強で分からない。甚五郎の人物像として必要という判断だろうが、効果的だったのかどうか、少し疑問だ。
 とにかく甚五郎が落ち着き払っている印象。宿代などは何か彫ってしまえばお釣りがくる、という泰然とした心境なのだろう。二両二分の勘定を倍にして五両にして払おう、というほどの余裕。だから大杉屋の主のドタバタぶりと好対照と言えなくもないが、少し主人が饒舌すぎる印象。婿で八年目、とはいえ、もう少し落ち着いて欲しい。
 昨年聴いた時は、細川候の家来は小泉進次郎だったが、今回は郡山剛蔵、もちろん小三治の本名。
 昨年も思ったことだが、サゲ前の演出が疑問だ。宿屋の女房が主人に、「お前さんは甚五郎名人にずいぶん失礼なことをしたよ。“ボロ”だとか言ったよ。だから、きっと、ニコっと笑った顔から目がつり上がって、持っているノミで刺されるよ。だから、こうやって紐を腰に結んでおくから、あぶなくなったら手を打つんだよ、私が引っ張るから」と言って、逃亡(?)の細工をさせるのだが、あの演出は必要かなぁ。終演時間を気にしていたからでもあるのだが、筋にはあまり関係がないし、サゲの伏線でもない。師匠から継承する大事な部分なのだろうか。そのへんは、もっと勉強しなけりゃ。
 同じ甚五郎ものなら、『三井の大黒』の風格ある高座を思い出す。政五郎がなんともかっこいいのだ。それにしても、長過ぎた。この高座は、気合が空回りしていたような、そんな印象を受けた。


 トリの高座は、居残り会を予定している身としては、時計を何度も見ながら聴くことになってしまった。たぶん、大半のお客様が、長くても9時半、という思いで聴いていたのではなかろうか。二人会と言うより扇辰の独演会、ゲストが白酒、という感じ。
 ちなみに、昨年10月は、白酒『首ったけ』扇辰『三方一両損』『悋気の独楽』白酒『甲府い』で、お開きが9時26分だった。2013年10月19日のブログ

 当初は、落語研究会に行かれている、我らがリーダーSさんの待つ半蔵門の居酒屋で合流の予定だったが、携帯メールを見ると、研究会は9時頃に終演し、昨年のこの会の後で初めて行った人形町のすぐ近くの居酒屋で、すでにお待ちとのこと。
 Yさん、Oさん、そして落語研究会をふって(?)こちらに来られたM女史と私のよったりは、小雨降る中を我々の近くまで移動していただいたSリーダーとすぐに合流。Oさんと私は先週に引き続き、である。

 生ビールの後は熱燗二合徳利が何本空いたのだろう。丸干し、〆鯖、ホタルイカなどを味わいながら、話はあちこちを巡った。白酒の『浮世床』のことからYさんの大好きな志ん五師匠を偲ぶ話やら、扇辰の二席の振り返り、今後の落語会の予定、市馬新体制のことなどなど。
 先週同様、ラストオーダーの声を聞くまで粘っていたのだから、もちろん帰宅は日付変更線越え。やや不機嫌な連れ合いとは目を合わせないようにし、愛犬二匹に頬ずりして風呂へ入って爆睡であった。
Commented by 佐平次 at 2014-05-01 22:06 x
がっちり書きましたね。
扇辰、本格で白酒、一之輔などのように爆笑路線でもなく、なかなか大きな壁なのかもしれないです。
でも爆笑路線よりは解決可能な壁でしょうね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-05-01 22:20 x
たしかにそうかもしれません。
目指す先達には、文楽、円生そして志ん朝もいるんです。
師匠は真似できない^^
また爆笑派の白酒、一之輔だって、枝雀を意識してきた(だろう)権太楼、鯉昇が今の自分なりの芸をつくりあげたと思うので、大丈夫でしょう。きっと。

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by kogotokoubei | 2014-05-01 06:10 | 落語会 | Trackback | Comments(2)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛