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ざま昼席落語会 五街道雲助・隅田川馬石 ハーモニーホール座間 4月12日

 当初は野暮用で行けそうになかったのだが、なんとか都合がついて、地元とも言える座間での親子会へ。一月の鯉昇・喜多八の会以来だ。通算百七十九回目。伝統ある地域落語会である。

 I女史も遠路はるばるいらっしゃるとのことで、当日券(800円)を私が買ってお待ちする約束をした。会場近くで昼食をとって当日券発売時間の一時少し前に会場へ。売り場の前に数名の方が並んだこともあったからだろう、少し早めに発売が始まった。当日券二枚、とお願いすると、係の方が回数券5枚で三千円ですがどうですか、とのこと。そうか、これまでは年間五回行けるか分からなかったので回数券は買ったことがないのだが、今月から来年三月までの九回の開催で使える回数券、今日の会でI女史と私で二枚、残る三枚は十分に使えそうなので、回数券を買った。なんと、一回当たり600円!

 憲法九条がノーベル平和賞候補になれたきっかけとなる活動も座間市にお住まいの主婦の方。
 そして、私が、顔ぶれの良い近所の地域落語会に、とんでもない安い木戸銭で来れるのも、座間市民の方の税金のおかげ。座間さまさまである!

 午後一時半時点では電車で町田近辺だったI女史とも、無事、開演前に合流できた。

 構成は次の通り。
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(開口一番 柳亭市助『狸の札』)
隅田川馬石  『崇徳院』
五街道雲助  『代書屋』
(仲入り)
隅田側馬石  『反対俥』
五街道雲助  『夜鷹そば屋』
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柳亭市助『狸の札』 (15分 *14:00~)
 兄弟子の市弥が二ツ目になって以来開口一番はこの人が中心だが、聴く度に上手くなっている。また、この噺は見た目の丸みが狸に似ていなくもなく、ニンである^^

隅田川馬石『崇徳院』 (24分)
 マクラの医者のネタ、初めて聴いたが笑える。なぜ、女房が急病で奥で寝ている時に駆けつけた医者が、主人にノミ、金づち、ヤットコを要求したのか・・・・・・。
 そんな4分ほどのマクラから入った本編は、なかなか楽しい高座だった。若旦那の恋煩いの相手を探しに行く熊さんに、お店の女中から腰にたくさんの草鞋を巻かれるのだが、家に帰って女房にもさらに草鞋を追加されて、「まるで荒物屋の店先だね」の科白で『ぞろぞろ』を思い浮かべて笑った。混んでいる床屋や湯屋で崇徳院の上の句を大きな声で言ってごらん、と女房に知恵をつけられ、混んでいるいる床屋に行くと、「今、詰まっているから、急ぐなら他所へ行きな」と言われるが「いえ、詰まっているとこを探してるんです」に、床屋の主に「まるでどぶ掃除だね」にも、ニヤっとした。どぶ掃除は死語ではないが、荒物屋なんて言葉、落語でしか残っていないのではなかろうか。
 湯屋に十八軒、床屋に三十六軒(覚えやすい数!)回ってサゲへ。登場人物もしっかり演じわけされており、役者を経験して噺家になったことが生かされた高座だった。途中で高座がギシギシを鳴るので「たてつけが悪いかな」と言っていたのは、二席目を心配していたことが、後で判明^^

五街道雲助『代書屋』 (23分)
 お月さんとお日様と雷さまとの三人が旅に行った、というマクラなどの後、初めて聴く雲助のこの噺。
 権太楼版が枝雀を意識した爆笑ネタだとすると、春団治版のような、淡々とした味わいと言えるかもしれない。代書屋にやって来る男の本名は、なんと、阪東妻三郎。
 飛行船のツェッペリンを“ツベルクリン”を言うクスグリ、この日の会場のお客さん、八割は分かっただろう^^
 初めて吉原に行ったのは昭和8年8月8日。春団治は、たしか昭和10年10月10日。淘げ屋(よなげや)という、ほとんど死語が登場。ガタロのことだ。ガタロも通用しないか・・・・・・。
 構成やクスグリなどを考えると、やはり春団治を下敷きにしているのだろうなぁ。二席目を期待させる楽しい高座。
 
隅田川馬石『反対俥』 (13分)
 仲入り後、先に弟子。一席目で、少し動くと高座がギシギシ鳴るのは、このネタを用意していたからだったのが分かった。つい先週、『干物箱』の先導役で師匠のこのネタを聴いたので、続けて親子で同じ噺を聴くことができた。
 最初の昨日まで入院していたという俥屋。客が俥に上がろうとして、「生臭いねぇ」に「昨日まで魚のアラを載せてましたもんで」は師匠と同じなのだが、流石に赤い毛布(けっと)までは生臭いという設定にはしなかった。それはそうだろうなぁ。陸軍の払い下げというクスグリは、馬石には使いづらかろう^^

五街道雲助『夜鷹そば屋』 (25分 *~15:54)
 トリを引き受けたのは、一門会でも早く帰りたいのでトリをとらない人にしては珍しい。会場前に「芸術選奨文部科学大臣賞受賞」の看板があったのが、効いたか^^
 このネタを演じるのは知っていたが、初めて聴くことができた。
 柳家金語楼(ペンネーム有崎勉)が、五代目古今亭今輔のためにつくった『ラーメン屋』を、蕎麦屋に替え、時代設定も江戸に置き換えた作品。
 去年3月、池袋で聴いた古今亭寿輔の『ラーメン屋』を思い出す。
2013年3月3日のブログ
 寿輔の高座について書いたブログのあらすじを元に、雲助版のあらすじをご紹介。

 (1)老夫婦の蕎麦屋の屋台に一人の若者がやって来た。
 (2)朝から何も食べていないらしく、勧められるままに三杯の蕎麦をたいらげる。
 (3)食べ終わった若者(後で“惣吉(そうきち)”と名が判明)が老夫婦に、
   「実は一文なしです。 自信番(原作では交番)に突き出してください。そうすれば、
    まずくても三度のメシにありつけます。」と告白。五歳で両親と死に別れ、その後
    いろいろあって今は一文なし、と告白。
 (4)蕎麦屋の主人、「分かった。その前に屋台を家に持って帰る」ということで、
    主人が屋台を担ぐのだが「重い、重い」と言う姿に、「若者は私が持ちましょう」
    と、主人に代わって屋台を老夫婦の家まで担ぐ。その道中の会話で蕎麦屋夫婦に
    子がいないことが明かされる。
 (5)「せっかくだから、お茶でも」と誘われた、惣吉。「私は自信番に」と言うのを、
    「自信番は一晩中開いている」と引き止め、一杯飲ませる。
 (6)女房が「どんなこともタダではお願いできませんね。屋台を担いでいただいた
    代金で蕎麦の代金はさっぴきでしょう」と言う。
 (7)主人は若者と酒を飲み始める。少しづつ話が進む。大阪などでも働いたが、
    その後はなかなか真っ当な仕事につけなかった、惣吉。
    子宝に恵まれない老夫婦。少しづつ、老夫婦にとって、惣吉が自分の子供だったら、
    という思いが募る。
 (7)主人が「今日は遅いから、泊まっていきなさい」と言うが、「見ず知らずのこんな
    私を泊めたら、強盗するかもしれませんよ」と答える。しかし、「おい、今日の
    売上げを箪笥の上に置いておきなさい」と返す蕎麦屋の主人。
 (8)酒のせいもあり、主人が「子供に恵まれず、一度も『ちゃん』と言われたことが
    ない。どうか、『ちゃん』と言ってもらえないか」と言うと、女房が、「それ
    だって、タダではダメですよ」と言い、一朱、二朱、一分と老夫婦が順に、
    惣吉との “親子ごっこ”の掛け合いが続く。
 (9)三人の“親子ごっこ”の末に、惣吉が意を決して「蕎麦屋を継がせてください」
    との言葉で感極まる蕎麦屋夫婦。最後には本物の親子のような情愛が通う。

 ここまで、25分。寿輔が池袋のトリで演じた本編は約30分あったように思う。これは、『ラーメン屋』では夫婦の家で明かされる身の上話の一部を、屋台を家まで担ぐ間の会話でこなすなどの雲助の工夫の成果である。
 寿輔もそうだったか、無理にお涙頂戴にはしないで、あえて淡々とした展開が結構だった。後半の良さはもちろんだが、惣吉が蕎麦を三杯食べる間の夫婦の内緒話なども、なかなか楽しい。地域落語会で初めて聴けたこの噺、今年のマイベスト十席候補とする。


 駅への道を歩きながらの会話で、Iさんはずいぶん久し振りのようで、以前来た時は、もっと小さな会議室のような会場だった、とのこと。そういう時期もあったことを誰かに聞いたような気がする。
 Iさん、お客さんの反応なども含め、この会の良さを再認識されたようで、近いうちに私の回数券を有効に使っていただく機会もあるかもしれない。

 帰ってネットで確認した。ハーモニーホール座間のサイトに、過去の会の出演者一覧があった。
 平成8年から始まったようで、下記が最初の年の出演者である。
「ざま昼席落語会」出演者

第1回 平成8年 6月 12日 立川 談幸 入船亭 扇好
第2回 7月 10日 桂文我 笑福亭銀瓶
第3回 8月 14日 春風亭勢朝 春風亭志ん上
第4回 9月 11日 春風亭あさり むかし家今松
第5回 11月 6日 古今亭志ん橋 柳家喜多八
第6回 12月 11日 初音家左橋 古今亭 朝



 右朝をはじめ、十八年前の顔ぶれも、なかなかに凄い。

 一杯やりながら、落語会を振り返っていると、いろんな思いが沸いてくる。間違いなさそうなのは、今年は、私にとっては雲助の年になりそうだ、ということ。

 マイベスト十席を選ぶ際、一人一席と自分で決めたルール、今年は変えることも考えようか。そんなことを思いながら酒を注いでいると、連れ合いから、「まだ、飲むの!」の声が飛んできた。そろそろお開きである。 先週は浅草で飲みすぎ、テニスに遅刻したのだった^^

 あらためて、座間市民の皆さんに感謝をして、風呂に入って寝ることにしよう。
Commented by 佐平次 at 2014-04-13 10:26 x
雲助追っかけ、はやりそうです。
Iさんも元気だなあ。

Commented by 創塁パパ at 2014-04-13 12:33 x
このネタでしたか。貴重ですね。しかし、座間も行ってないなあ。雲助もね(苦笑)

Commented by ほめ・く at 2014-04-13 16:13 x
この会、知ってたんですがチョイと我が家から遠くて断念しました。
憲法九条がノーベル平和賞候補のことも座間市民からですか。アベよ、座間を見ろ!

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-04-13 20:37 x
今、一番聴きたい噺家ですね。
Iさんも元気、元気!

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-04-13 20:45 x
今松の『子別れ-通し-』が懐かしいですね!
雲助の引き出しの多さには驚きます。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-04-13 20:51 x
会場は我が家の最寄り駅から一駅なんです。
遠くの方には申し訳ないくらい、良い地域落語会です。
座間の皆さんに、感謝です。

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by kogotokoubei | 2014-04-12 16:30 | 寄席・落語会 | Trackback | Comments(6)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛