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新宿末広亭 三月中席 昼の部 3月15日

 寄席の空気に、どうしても触れたくなって土曜の末広亭へ。

 11時40分に入場したが、椅子席は結構な埋まり具合。二階には小学生たちの団体さんで一杯のようだ。好みの下手の桟敷を確保。一服して席に戻ったが、椅子席は九分がた埋まったようだ。

 出演順に書いていくことにする。良かったと思う高座にをつけた。

開口一番 春風亭一力『平林』 (11分 *11:52~)
 六月中席に二ツ目に上がる。なかなか良い面構えをしているように思う。あえて言えば、昔風の顔つき。基本は結構出来ているように思うし、二ツ目からの飛躍を期待しよう。

春風亭ぴっかり『味噌豆』 (10分)
 小学生を意識したような小咄をいくつか披露してネタへ。この人の明るさは得がたい。今日初めて寄席に来た小学生にとっても、良い縁であったように思う。十年後、女性で入門してくる人が、あの二階にいてもおかしくはない^^

三遊亭小円歌 俗曲 (10分)
 いつもの「かちかち山の狸」から始まり、字余り都々逸などで会場を沸かす。「三味線漫談は世界で二人」と言っているが、玉川スミ師匠亡き今は一人ではなかろうか。二階にいた小学生の女の子が、十年後に入門・・・しないわなぁ。

柳家三三『無学者』 (7分)
 二階の団体さんに合わせたのか、『やかん』の序の内容で短くまとめたが、なかなか結構。この人、こういう噺の方が似合うように思う時もある。以前、人情噺の長講ばかり聴いていた時に、柳家伝統の滑稽噺を演って欲しいと思ったことがあったが、先日紹介した雑誌「Switch」で語っていたように、師匠の助言で一肌むけつつあるのかもしれない。今年は一之輔とこの人、そして談春が全国を駆け回っているようだが、そういう経験も今後必ず生きるだろう。

古今亭志ん橋『穴子でからぬけ』 (12分)
 本来は夜の部だが昼の木久蔵が休演で昼の部への出演。私は、うれしかった。
 与太郎、馬鹿な兄弟、馬鹿な親子などの小咄の後、古今亭では柳家の『道灌』に相当するこのネタ。久し振りだが、元気そうで何より。前半の小咄も二階の団体さんに受けていた。今や古今亭一門の重鎮とも言える存在になったなぁ。

マギー隆司 奇術 (13分)
 トランプ→千円札→紐、と定番の芸だが、初めて見る人も多いようだし、二階の小学生のおかげで盛り上がった。

桂扇生『長短』 (15分)
 初である。芸術協会で三笑亭夢楽に入門し、昭和59年の騒動で文生について落語協会に来たようだ。
 大師匠の小さんから習ったのだろうか、非常に結構な高座。この日の最大の収穫である。長さんが与太郎にはならず、短七さんとの会話も楽しい。こんな人がいたんだ、という思いで聴いていた。二階の小学生も笑っていた。別に媚びた芸などせず、しっかり落語を演じたら伝わる、という見本のような芸である。この人、もっと聴きたくなった。

林家うん平『家見舞』 (20分)
 初である。こん平門下。扇生と同期で平成7(1995)年の真打昇進。扇生と比べては可哀想だろうが、木目の細かい高座の後で、こういう粗雑な芸は、その差が目立ってしょうがない。

にゃんこ・金魚 漫才 (9分)
 金魚の頭は桜が咲き、ゴミ箱まである^^
 二階の女子小学生の中から、十年後に漫才の道に入る子が・・・いないだろうなぁ。

春風亭正朝『普段の袴』 (15分)
 去年の八月の鈴本以来。この噺は二年前の末広亭でも聴いている。相変わらず達者な高座なのだが、このネタは扇生の『長短』とツクと思う。噺の肝腎な部分が煙草の火による災難であることを考えると、正朝は、この噺を避けるべきだっただろう。そういった気配りが大事ではなかろうか。

五街道雲助『粗忽の釘』 (14分)
 雲助でこのネタは初めて聴く。八五郎が隣で女房との馴れ初めを語る中で、八つ口から手を入れて脇の下をくすぐる場面、最後に女房が「『そこは脇の下じゃないわよ』ってな具合で、一緒になりました」という科白の、なんとも言えない艶っぽさ加減が結構だった。

林家正楽 紙切り (14分)
(1)相合傘 (2)馬 まではご挨拶代わり。お客さんのリクエストで、(3)藤娘 
(4)カーリング (5)舞妓さん (6)ふなっしー
 ふなっしーは、二階の小学生のリクエスト。
 十年後、今日の感動を胸に秘め、正楽師匠の元に入門する子が・・・いたら嬉しいね。

川柳川柳『ガーコン』 (22分)
 仲入りは、この人。83歳、お元気でなにより。二階席の小学生も、意外にうけていたが、唄の内容は知らずとも、唄は嬉しいのかもしれない。

古今亭志ん陽『たらちね』 (10分)
 仲入りで二階の団体さんの大半が退場。くいつきは本来の一之輔の代演でこの人。「父は元京都の・・・・・・清女と申しはべるなり」と読経風に仕立てたところでサゲた。こういう器用さも寄席では大切だ。次第に貫禄のようなものも(腹回りの肉のみならず)ついてきたように思う。頑張れ古今亭の若者!

遊平・かほり 漫才 (10分)
 最近は「スローフード」ネタが多いようだ。後半のコンビニになるとシュールさもあって可笑しいのだが、前半がどうしても、もたつく感じ。女房が本当に怖い人に見えるのが、このコンビの辛いところ^^

柳家一九『桃太郎』 (15分)
 マクラで「五歳の子に教わった」という、キャベツと青虫の歌が、楽しい。主客が逆亭して子供が、「このお話は乾坤坊良斎の作で・・・」と父親に説明し始めるのだが、「桃太郎」という元ネタの昔話の作者のはずはなく、この“落語”の作者として、『今戸の狐』で紹介した良斎ではないかという説がある。よって、敬意を表して名前を挟むということなのだろう。

柳家さん八『小言念仏』 (13分)
 この人とは、どうもこのネタとの縁が深いようだ。あるいは、他の日もかけているかな。会場は沸くが、他のネタも聴きたいものである。

仙三郎社中 太神楽 (7分)
 あら、二人!?
 初めてのお客さんを土瓶の芸で唸らせて、短めにトリに引き渡す。

柳家小満ん『盃の殿様』 (29分 *~16:35)
 米朝が東京落語の中では珍しい「スケールの大きな噺」と表現する噺。少し風邪気味なのか、声がいつも以上にかすれ気味だったように思う。途中、少し言葉に詰まりそうな場面もいくつかあり、この人にしては良い出来とは言えない高座だったが、最後まで丁寧に聴かせてくれたのが、嬉しい。


 やはり寄席はいい。当たりはずれがあるが、それも寄席である。扇生を聴けたのが収穫。
 帰宅し一杯やりながら、途中で外に出ると旧暦二月十五日である、満月近くの月が奇麗だった。ブログを書き始めたが、月見酒がきいてきて、書き終える前に風呂に入って爆睡であった。
Commented by 佐平次 at 2014-03-16 11:09 x
漫才界に入る子、いると思いますよ。
いちばん可能性が高いんじゃないかな^^。

Commented by ほめ・く at 2014-03-16 17:13 x
志ん橋と雲助はこのあと湯島天神での「古金亭」に出演。もっとも途中で志ん橋が行方不明ということで騒ぎになりましたが、ご当人は境内の梅に見とれて遅れてしまったとか。この人らしいですね。
雲助の受賞は嬉しい限りです。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-03-16 18:33 x
なるほど、漫才のほうが「あれならやれる!」と思わせるでしょうね。
だから、テレビで雛段に並ぶ“十羽一からげ”のタレントが吉本から粗製濫造されるのでしょうね。
そんなに甘い世界ではないのに。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-03-16 18:38 x
そうか、古今亭ですか。
土曜の夜、ということで未体験なのです^^
雲助、良かったですね。
それだけ充実した高座をここ数年つとめていると思います。
新人賞と大臣賞の両方をとったのが、志ん朝と小三治の二人だけ、というのは納得!

Commented by 笑組・ゆたか at 2014-03-16 22:40 x
う~ん残念!
昨日は黒門亭、池袋さんと
昼夜で『坊っちゃん』を
やってたんですよ~!
またいずれご覧頂ける折も
あるとは思いますが…

具体的なお名前は伏せますが
本日の記載の中で触れられた
ある色物のネタに関して、
『シュールな』とお書きに
なっていらっしゃいましたが
唐揚げのネタですよね?
でも…あのネタって
25年も前にダウンタウンさんが
やってらっしゃったんですよ。
ご本人達はご存知ないし、
作家さんもご存知じゃないから
なさってるんでしょうけど…
比べてしまうとやはり…

あ!
ちなみに文学シリーズ五作目は
泉鏡花にロック・オンしました!
ロック・オンしただけで
まだ書いてないんですけどね。

長々とお邪魔しました!

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-03-17 08:52 x
あらら、そうでしたか。
顔付を見て、つい、友の会の入場券を使って新宿でした。

『坊っちゃん』、以前から相当進化している、ということなのでしょうね。
ぜひ、近いうちにお聴きしたいものです。
『杜子春』も未見なのですよ。

あの鶏の唐揚げネタ、そうだったんですか。
私は吉本の芸人が大勢出る番組を見ないので、知りませんでした。

もしかすると、確信犯でやっているのかもしれませんけどね^^

次は泉鏡花ですか。
どう料理されるのか、大いに期待しています。

Commented by 笑組・ゆたか at 2014-03-17 10:56 x
進化してませんっ!!
停滞してますっ!!
全く同じにやっておりますっ!!
妙にご期待を煽るような
書き方を致しまして
申し訳ありません…

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-03-17 11:33 x
こちらこそ、きっと何か新たな工夫があったのだろうと早とちりしまして、失礼しました。

泉鏡花は、やはり「婦系図」かなぁ。まさか「高野聖」じゃないでしょうね^^
それもあり、か!

Commented by 彗風月 at 2014-03-17 12:28 x
横レスを失礼します。
「外科室」あたりではないかと…。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-03-17 13:01 x
あの、「綿医者」のリアリズム版のような不思議な小説ですか?!
麻酔なしの手術、というのはネタになりそうですが、どうかなぁ。

私は、「別れろ切れろは芸者の時~」の方ではないかと思いますけど。

これ、生ビール一杯、賭けましょう!

ゆたかさん、早くつくって^^

Commented by 笑組・ゆたか at 2014-03-17 14:59 x
色々探っちゃいや~ん!

そもそもこういうネタを始めたのは
好江から「滝の白糸をやれ」
(義血侠血ですね)と言われたのが
きっかけだったんですが…
あれ、暗過ぎますでしょ?
そんなわけで他の泉鏡花にしました。

ボク、怪異なことが好きなんです。
これがヒントです。

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-03-17 15:16 x
すいませんね、つい探ってしまう癖があって^^

なんとなく分かったつもりですが、書きません。

夏頃には拝見できるのかな!

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by kogotokoubei | 2014-03-15 19:16 | 寄席・落語会 | Trackback | Comments(12)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛