柳家三三独演会 三三 二夜 x 三ヶ月 横浜にぎわい座 2月4日
2014年 02月 05日
最初の今月は、若手をゲストに招いての会。ちなみに来月は根多おろしの二日間らしい。
前日、節分の一之輔のゲストの会には行けなかったが、立春の宮治を招いた会に行くことができた。夕方の雪が止んでくれて、良かった。
当日券もあったようだが、見た目はほぼ満席。初日は早くに売り切れていたのは、やはり一之輔の人気だろう。
こんな構成だった。
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(開口一番 柳家小かじ『道具屋』)
柳家三三 『転宅』
桂宮治 『宿屋の仇討ち』
(仲入り)
柳家三三 『富久』
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柳家小かじ『道具屋』 (15分 *19:00~)
三三の初の弟子の高座にようやく出会えた。落語協会のサイトによると昨年二月五日から前座らしいので、ほぼ一周年記念、ということか。そう考えるとこの高座は非常に結構。まず、見た目が良い。古典的な顔、と表現したくなる武士のような面構えが良い。後で登場する宮治とは好対照^^
実に丁寧にこのネタを演じた。鼠をおろし金で捕まえる件や、与太郎の道具屋の向かいの天麩羅屋の情景なども含む構成。扱う道具は、鋸→短刀→雛人形→鉄砲まで。無理に笑わそうとする気も余裕もないだろうが、ご通家の多いと見受けた会場から自然な笑いをとっていた。この人は楽しみだ。なるほど、三三の最初の弟子だけはある。
柳家三三『転宅』 (30分)
1月15日に札幌に仕事で出かける前、時計替わりにテレビをつけていたら宮中「歌会始」の放送があり、つい見入ってしまった、とのこと。一般の方の入選作が詠まれた後に解説が入るらしいのだが、三三が「これは、きっと淡い恋の歌だなぁ」と思っていたのが、まったく別なシチュエーションでの歌だったということが続いたらしい。来年も見る、と随分気に入ったのは、歌とその解説のギャップが楽しいからだろう。今年の題は「静」であったらしい。
その中の一つは、16歳の男子高校生の次の作品
「続かない話題と話題のすきまには君との距離が静かにあつた」
これは、きっと高校生同士の恋の歌、と思わないこともない。ところが、話題が続かない同士で、それぞれがスマホに集中する余りにできた「距離」が静かにあった、ということだったようだ。なるほど、そう言われれば、である。電車の車内など、この静かな距離ばかりである。
さて、こういったマクラが約10分の後に、本編につながる泥棒のマクラが約3分で入った『転宅』だが、なかなか結構だった。この人の演じる女性、数年前に比べると、年増の描き方が堂に入ってきたようだ。目の演技が特有のものである。もう少しだけ体重がつくと、高座に安定感が出るのだがなぁ。白酒や喬太郎から分けてもらうわけには、いかないよなぁ^^
桂宮治『宿屋の仇討』 (35分)
マクラでは、これまで長く出ている会場とは思えない“アウェー感”と言っていたが、たしかにこの人は、にぎわい座歴が長い。私が知っている範囲でも、四年ほど前から一之輔の地下秘密倶楽部“のげシャーレ”の会や、兼好・かい枝の会などでの開口一番を、よく聴いたものだ。聴く度に上手くなるのを、結構程よいタイミングで辿ることのできた若手の一人だと思う。初めて聴いたのが2009年5月のらくだ亭20回記念の落語会だから、かれこれ五年近い前だ。
2009年5月16日のブログ
彼が言う“アウェー感”は大袈裟な表現であろうが、若干の気の高ぶりがあったのかもしれない。なぜなら、この会への出演の背景には、涙ぐましい(?)ドラマがあったのである。
三十超えて妻も子もいる身で落語界に入り、年収が四十分の一になってもついてきてくれた家族への感謝のしるし、ということなのだろう、仕事の谷間の2月のこの時期、グァム旅行を予定していたらしい。少ない給料の中から少しづつ貯金をしてくれていた奥さんと子供たちも楽しみにしていたようだ。ところが、知り合いに頼んで航空券やらホテルなどの手配も済んでいたある日、三三からこの会の共演依頼があったとのこと。「三三兄さんなら、断れない」と旅行をキャンセル。奥さんの反応は「しょうがないわね。ところで、三三って誰?」というのはネタか事実かは不明^^
芸術協会の大先輩、昇太との静岡での落語会の帰りの新幹線ネタは、ちょっと明かせないなぁ。それにしても、落語協会の三三にヨイショではなかろうが、あれだけのことを言って笑いをとる宮治、白酒、兼好とともに“ブラック団”の一員として認めよう^^
そんな爆笑のマクラから本編へ。結論から言うと、こんな弾けながらもよく工夫された『宿屋の仇討』は初めてである。スケールも大きいし、動きもあって、なおかつ頗る可笑しい。 時間の関係でやや駆け足だったが、それが結果として私には心地よいスピード感だった。
まず、万事世話九郎が良い。伊八を呼ぶ時の声が大きく、よく通る。その声だけで、一時の間と笑いを引きだす。「昨夜は相州小田原の宿~」の繰り返される科白も立て板に水。隣りの三人組が相撲をとり始め二度目に伊八を呼んでからの「今、捨衣(すてごろも)が八連勝中じゃ」には笑った。
その、源兵衛たち三人。最初の宴会では、最後に裸踊りまで登場するはしゃぎ振りなのだが、相撲で叱られた後、巴寝になってからの場面も良い。源兵衛が川越での一件は、やや怪談話風に声を潜めて語り出し、次第に物語が陰惨となって聴いている二人も固唾をのむのだが、少しの間の後で、「源兵衛は、色事師!」の合唱になり、本人まで、「俺は、色事師!」と歌い出す。緩急のある演出が、ややもするとダレる場面を盛り上げた。
翌朝の万事世話九郎のとぼけた味、伊八の困惑した表情なども含め、とても二ツ目どころか、真打の中堅どころと言って良い出来栄えの高座、文句なく今年のマイベスト十席候補として推す。
先代柳朝が師匠彦六からの伝統を引き継ぐ内容など、これまでに幾多の名演のある噺だが、魅せて聴かせる宮治のこの高座は、しばらくこの噺ならこの人、と言わせるだけの内容と言っても過言ではないだろう。恐るべき宮治。私にとっても、彼がグァムに行かなくて良かった。
柳家三三『富久』 (43分 *~21:15)
ネタ出しされていた噺。マクラの語り出しは少しリズムが悪かったが、次第に乗ってきた。
久蔵の住まいが浅草三軒町、旦那のお店が芝の久保町、富興行湯島天神、富の番号は鶴の千八百八十八番、という設定はすべて柳家の型。噺家による設定の違いなどにご興味のある方は、かつてこのネタについて書いた記事をご覧のほどを。2008年12月25日のブログ
もっとも印象的だったのは、久蔵の目の演技。それは、旦那の近所での火事が風向きが変っておさまってから、旦那に御飯を食べるよう勧められ、番頭に「おにぎり」「油揚げ」を食べるように言われる場面。久蔵は、目で番頭の背後を何度か見る。そこに酒があるだろうことは、ほんとんどのお客さんも察することができる。ただ、単に近くにあった酒を持ち出すのではなく、番頭の背後にあることを目で訴えることで、空間の広がりが出た。
湯島天神で千両富が当ってからの腰の抜けた久蔵の「たった、たった、たった・・・・・」の演技や、鳶の頭の家に大神宮様があることを知った後の表情と目の演技も秀逸。ただし、サゲを替えたのは、私には成功とは思えなかった。やはり、「お祓い」で締めて欲しいネタである。仲入り後にも宮治の圧倒的パワーの余韻が残っていた私には、少し物足りなかった。加えて、柳のこの噺の型が、どうも苦手だということもある。久蔵を酒乱にしてはいけないとアンツルさんも書いていたが、私も同感である。酒癖が悪いとはいえ幇間なのである。文楽版とまではいかなくとも、志ん生版くらいの稚気に富む可愛げのある久蔵が好きなのだ。しかし、これは三三のせいではないなぁ。悩ましいところだ。
雪は止んだとはいえ、外は寒い。三三の目の演技には感心したものの、やはり宮治である。大胆にして緩急が見事な高座を振り返り、あの個性派が、今後いったいどんな噺家になるのだろうなどと思いつつ、小三治の『富久』を携帯音楽プレーヤで聴きながら帰宅した。あらっ、旦那の家で火事騒ぎの後、久蔵に出されたのは、おにぎり、油揚げに加えて、がんもどきもある。三三は、がんもが嫌いなのだろうか^^
自宅近所には、雪がしっかり残っていた。録画していた「ごちそうさん」を観ながらの一杯。やはり、ビールでは体は冷えるばかり。日本酒に替えて、「落語でブッダ」で気になる部分をあらてめて観ながら、一杯、二杯、これ以上飲むと酒乱の久蔵になると思いながらパソコンでブログを書き始めたのは、すでに日付変更線を越えていた。もちろん、寝る前に書き終わることができようもない。
宮治、一之輔よりも早く真打昇進があっておかしくないなぁ。芸協は、非常に良い若者を得たと思う。ぜひ抜擢昇進で、他の若手や、やや停滞気味の中堅の刺激となって欲しいものである。
三三は今一つ物足りなさを感じてしまいます。期待が大き過ぎるからでしょうか。
ますますスケールが大きくなってきました。
円満は未見です。そのうちぜひ聴きたいと思います。
三三は、今は“踊り場”にいる、そんな感じです。
それと、幇間ものは、菊之丞などに比べると、ちょっと似合わないですかねぇ。
もちろん実力者であることは間違いがないので、少し時間が必要でしょうが、もう一段上に上がるのを期待しています。
『嶋千鳥~』のようなネタには本領発揮しますからね。
現在開催中の「さがみはら若手落語家選手権」では、2日の第二回予選会において雷太さんが一位で本戦出場を決め、次回(15日)の第三回予選会に小痴楽さんが出場しますが、出場者の中では(自分が観る限り)頭一つ抜けている印象です。
あと、昨年から「成金」(メンバー:小痴楽・昔昔亭A太郎・雷太・瀧川鯉八・春風亭昇々・笑福亭羽光・三遊亭小笑・宮治・神田松之丞・春風亭昇也・春風亭柳若)という芸協二ツ目の会を毎週金曜日に西新宿のミュージック・テイトで開催していて、数年の内に大きなムーブメントに発展するかもしれません。
ここ1・2年で芸術協会の二ツ目は質量共に大幅にレベルアップしている印象です。
雷太は、昨年末、にぎわい座の志ん輔の会で久し振りに聴きましたが、成長していますね。『古着買い(古手買い)』が結構でした。
「成金」という会の題なんですか^^
西新宿に移ってからテイトさんに行ってないなぁ。
そういう会も開催されているんですね。
ぜひ、そのうち行きたいと思います。
前座、二ツ目の層の厚さ、もしかすると落語協会より芸協が上かもしれませんね。
