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噺の話

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「落語でブッダ」の良き参考書、関山和夫著『落語風俗帳』

NHKのEテレ(旧、教育テレビ)の「趣味Do楽」月曜日の「落語でブッダ」が結構おもしろい、ということは以前に書いた。
2013年12月12日のブログ

 毎週月曜は、昼に前回の再放送があり、夜は新たな回があるので、前回見逃した時は両方録画することもある。

 13日の夜放送があった第六回の録画は昨夜観た。見逃した方は20日に再放送されますよ。
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第6回
なにわ商人文化と浄土真宗
桂 塩鯛 古典落語『お文さん』(西)
Eテレ 1月13日(月)
Eテレ再放送 1月20日(月)
総合再放送 3月11日(火)
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 この『お文さん』という噺は初めて聴いた。塩鯛を見るのも久し振りだが、元気そうで何より。

 NHKサイトの番組表には、この回のことについて、次のように書かれている。
NHKサイトの同番組該当回の番組紹介

第6回は桂塩鯛の上方落語「お文さん」。お文さんとは浄土真宗「本願寺中興の祖」蓮如上人が門徒衆のために分かりやすく書いた手紙のこと。御文章ともいう。江戸時代、大阪船場の商家の旦那衆はみな浄土真宗の信仰あつく、毎日「お文さん」を読誦するのが日課であった。近松の文楽など数々の大阪文化の舞台となった船場と、浄土真宗の関係を宗教学者・釈徹宗が分かりやすく解説する。



 番組で、釈徹宗が解説し、如来寺住職が実際に読上げてくれたが、『お文』(おふみ)とはいったい何か。

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関山和夫著『落語風俗帳』(白水Uブックス)

 この番組の良き参考書とでも言うべき本が、関山和夫著『落語風俗帳』である。この本の内容のほとんどが落語と仏教のことである。

 本書では“お文さま”というタイトルで、次のように紹介されている。

 上方落語で『お文さん』という。『万両』という別名もある。本願寺八世蓮如上人は、本願寺中興の祖と仰がれる業績を残したが、遺業の中で最も有名なものの一つに文書伝道がある。蓮如の真宗興隆への方法はいろいろあったが、文書による教化法は最大の効果を発揮した。蓮如が道俗のために認めた法義上の消息を孫の円如はよく集めた。これを浄土真宗本願寺派(西本願寺派)では『御文章』と呼び、真宗大谷派(東本願寺派)では『御文』(おふみ)という。そのほかに『宝章』とか『勧章』とか『五帖消息』とかいう異称もある。一応まとめられたものには五帖を通じて八十通あるが、実際にはまだまだ多くの文を蓮如は書いた。真宗の門徒(本願寺派)の間では、これを朝夕の勤行に一通づつ読誦する習慣がある。



 蓮如から伝わる文書による教化法が、庶民の生活に根付いたものが、『御文』なのである。

 東京では「お文さま」、上方で「お文さん」と呼ぶようだ。どちらにしても真宗門徒における敬称。

 放送で壽光寺の住職が実際に「白骨の御文章」を読誦してくれたが、その読み方について、『落語風俗帳』では次のように書かれている。

 『御文』(『御文章』)の読み方には、独特のイントネーションが必要である。静かな中にも感銘度の深い音声の荘厳を要する。説教教化は、単なることばの伝達だけであっては力が弱い。聴き手の耳にしっかりとついて離れず、拝聴者の心の底に永遠に残らねばならない。蓮如は、みずから作った『御文』(『御文章』)を慈愛をこめて読み、聴聞者たちの心の底までくいこむような教化を実践したのである。後世、末永く蓮如製作の消息文が聖教(しょうぎょう)と仰がれ、「お文さま」として敬慕されたゆえんである。


 これだけありがたい『御文』なのだが、塩鯛が演じた落語の粗筋は、男女の仲を題材にした、船場ならではの筋書きになっている。

 大阪船場の「万両」と称する大きな酒屋へあらわれた男が赤ん坊を小僧(丁稚)に預けて立ち去る。(中略)息子夫婦に子供がないので、喜んで育てることにする。さっそく手伝いの人の又兵衛に乳母をさがさせる。又兵衛は喜んで、お文さんという女を乳母として連れてくる。実はこの赤ん坊は若旦那とお文との間にできた子であった。


 こういう設定は、若旦那と又兵衛の関係が、『山崎屋』の若旦那と番頭との関係にかぶって思える。若旦那の色恋のしくじりを又兵衛の悪知恵でなんとか解決しよう、という筋書なのだ。あまり、褒められた行動とは言えまい。

 この乳母、お文さんが堂々と万両に住み込むのだが、計略を知っている丁稚が、つい「お文さま」と呼ぶので、バレてはかなわんと若旦那が「決してお文に“さま”をつけてはならん」言う。下女のお松(これがなかなか結構な助演女優(?)で塩鯛も好きだと言っていた^^)が気づいて若旦那の女房に告げ口をする。その後、サゲまでを本書から引用。

 問いつめられた小僧は、お文さんのことを告白する。
 「して、今、若旦那は・・・・・・」
 「奥の間でお文を読んでいらっしゃいます」
 「同じ屋根の下で住みながら、文をとりかわすとは・・・・・・」
 女房が奥の間へ入ると、若旦那は、お仏壇にお灯明をあげて蓮如上人の『御文』(『御文章』)を拝読していた。
 「これ、あれは御文章、お文さまというものですよ。お文さまなら、なぜ『さま』をつけないのですか」
 「お文に『さま』をつけたら、私が怒られます」


 ちなみに東京版は若旦那ではなく、大旦那の浮気相手に子供ができるという筋書になっているようだ。

 蓮如が遺した、ありがたい「お文さま」が、こういった内容で登場するあたり、落語が庶民のものであり、きれいごとばかり扱うものではない、そんな力強さを感じるなぁ。

 それにしても、落語で蓮如のことを学ぼうとは思わなかった。落語は奥が深い。そして、かつての庶民生活に仏教文化が深く根付いていたことにも思いが至る。『小言念仏』は、ああいうお年寄りが実際にいたからこそ笑えるのだ。

果たして、この後に若旦那とお文はどうなったのか、などということを心配しないのが、落語の楽しみ方である。

 本書の「お文さま」の次の章が「宗論」。ありゃ、放送も来週は「宗論」である。この番組のスタッフも、この本を読んでいるのかもしれない・・・・・・。

NHKサイトの該当ページ
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第7回
宗教を笑い飛ばす!?
五明樓玉の輔 古典落語『宗論』(東)
Eテレ 1月20日(月)
Eテレ再放送 1月27日(月)
総合再放送 3月18日(火)
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Commented by かおる at 2014-01-20 16:20 x
釈さんは「おてらくご」という本も出されてますね。
節談説教と、さん喬師匠の「寿限無」、松喬師匠の「お文さん」のCD付き。
http://hongwanji-shuppan.com/item/detail.html?icd=978-4-89416-795-7

Commented by 小言幸兵衛 at 2014-01-20 16:48 x
ほう、そうなんですか。
松喬師匠の「お文さん」か、聴いてみたいなぁ。
この本を読んだら記事にしたいと思います。
情報ありがとうございます。

釈さん、なかなかやりますね!

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by kogotokoubei | 2014-01-15 00:36 | 落語の本 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛