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噺の話

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月例 三三独演 イイノホール 11月15日

この会も会場も一月以来。あの時は、ゲストの一之輔が『明烏』で主役を喰った印象だった。

 今回は、ネタ出しが私の名(?)。運良くチケットが手に入ったが、その後にすぐ完売になっていた。会場もほぼ満席。

次のような構成だった。
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(開口一番 桂 三木男『だくだく』)
柳家三三 『皿屋敷』
柳家三三 『蒟蒻問答』
(仲入り)
柳家三三 『小言幸兵衛』
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桂三木男『だくだく』 (25分 *19:01~)
 マクラで祖父三代目三木助や叔父四代目三木助の話、談志が亡くなった時のテレビのインタビューのことなどを並べていたが、閉口した。あえて“七光り”をネタにしているのだろうが、聴く者にとっては嫌味になり、野暮である。
 本編はそんなに悪くはなかった。ある意味、落語らしい噺と言ってよいだろう。演者の芸で、どれだけ何もなかった長屋の一室に書割の光景がイメージできるかが鍵となる。
 引っ越してきた男が知り合いの絵師に家財道具やら金庫、猫などを部屋の壁に書いてもらい、目の悪い泥棒がやってきて本物と間違う。その後、男と泥棒が「つもり」になって立ち回りをするわけだが、男と泥棒の会話のテンポも悪くないし、二人の「つもり」のからみも楽しめた。だから、なおさらネタと無関係なマクラがもったいなかった。

柳家三三『皿屋敷』 (23分)
 白鳥が弟子をとったとのこと。三三も去年だけ三人も弟子志願者があり一人を採用。落語協会あてでメールの志願者もいたらしい。楽屋で二ツ目にそのことを言ったら大いにうけたが、その理由が「(三三)師匠にですか?!」が、可笑しかった。
 本編は、ちょっと季節感に無理がある夏のネタ。ソツのない高座だったが、どうしても“旬”にはこだわってしまうので、十分には楽しめなかった。
 配布されたチラシによると16日土曜日も同じ会場で独演会があるようで、『二番煎じ』と『ねずみ穴』がネタ出しされている。まさに、この時期に相応しいネタなので、“温度差”を感じた。

柳家三三『蒟蒻問答』 (36分)
 いったん下がってから再登場。旭川に昇太で仕事に行ったことから、笑点(三波伸介や歌丸のこと)→大喜利→問答、とつないで本編へ。こういうマクラからの無理ない流れは聴いていて心地よい。
 権助が楽しかった。江戸を追われて上州安中でにわか坊主になった男との酒盛りで、「どりゃ、おらが踊りでもするか」「おう踊ってくれ」「ゆかんば踊り」「縁起でもねぇ」「そんじゃぁ、穴掘り音頭がええか、それとも骸骨(げいこつ)節?」、が可笑しい。
 『首提灯』と並んで“見る落語”の代表格。『野ざらし』の作者としても有名な二代目(三代目と数える場合もある)林屋正蔵作。この噺、越前永平寺の僧沙弥托善が寺に問答を挑みに来るのだが、そのきっかけが門前の石に「葷酒(くんしゅ)山門に入るを許さず」と刻んであるからなのだが、その意味は意外に知らない人が多いと思うので、お仕着せがましく補足。
 仏教では「葷」(くん)と呼ばれる臭いの強い野菜類を避け、「葷」を避けた菜食が「禁葷食」と呼ばれる。Wikipediaqの「禁葷食」から引用。
Wikipedia「禁葷食」

禅宗などの寺院に行くと、「不許葷酒入山門」あるいは「不許葷肉入山門」などと刻んだ石碑が建っていることが多い。これは「葷酒(葷肉)の山門に入るを許さず」と読み、肉や生臭い野菜を食べたり酒を飲んだものは、修行の場に相応しくないので立ち入りを禁ずるという意味である。


 だから、「葷酒(くんしゅ)山門に入るを許さず」と石碑にあるので禅寺と思い問答を挑んだ、というわけ。ニンニクのきいたニラレバ食べながら酒を呑んだ後は、とても禅寺に入れてもらえないのだ^^

柳家三三『小言幸兵衛』 (37分 *~21:15)
 楽しみにしていたトリネタ。マクラは“小言”ということで、先代文治の逸話が中心。“ラッキーおじさん”である。晩年は大泉学園に住んでおり、新宿末広亭に通うには池袋から山手線、高田馬場をアナウンスで「たかだのばば」と言うのを聞くたびに、毎日弟子に向かって「たか“た”のばばだ!」と怒っていた、というのが何度聴いても可笑しい。
 プログラムには、次のようにあった。

ネタおろし以来ちょっとほっといたつもりがなんと十年ぶり。もうね、新鮮で新鮮で楽しいですわ。


 この“新鮮さ”が結構な高座につながったと思う。主人公の幸兵衛さん絶好調。近所で小言を撒き散らして帰ってきてから、猫をつかまえて「しっぽ長ぇなぁ。もっと江戸前に短くしろ」には笑った。
 貸し間を借りに来た豆腐屋の物言いへの小言もリズミカルで勢いがあり聴いてきて心地よい。ネタばらしになるが、傑作なクスグリをご紹介。豆腐屋が、子供のできない恋女房の悪口を言った幸兵衛に向かって「どてっ腹に穴開けて機関車を走らせるぞ」と捨て台詞を吐いて泣きながら帰った後、婆さんが笑っているので幸兵衛が訳を聞く。「だって、お腹が線路ならお爺さんの股ぐらあたりが踏み切りで・・・遮断機は下りたまま」。オリジナルだろうか。会場は沸いたなぁ、大人のお客さんが多かったということだ。
 貸し間を借りに来た二人目のは仕立て屋。その家族構成を聞いてからの幸兵衛の仕方話、そして芝居仕立てのサゲまで、非常に楽しい期待通りの内容。この噺としてはブログを書く前、2007年6月に前進座で行なわれた、さん喬・喬太郎親子会における喬太郎の高座の次に印象に残るものだった。サゲは『宗論』のような感じになったが、元気な幸兵衛が活躍する高座、今年のマイベスト十席候補とする。
 ちなみに、密教の真言の呪文は、こうである。Wikipedia「真言」

オン・アボキャ・ベイロシャノウ・マカボダラ・マニ・ハンドマ・ジンバラ・ハラバリタヤ・ウン


「オーン。不空遍照尊よ、大印を有する尊よ、摩尼と蓮華の光明をさし伸べたまえ、フーン。」という意味らしい。難しい・・・・・・。
 
 
 会場では16日のチケットを売っていた。“月例”は三三のほか遊雀、歌奴の会も開催するショーキャンプの主催。今日16日に同じ会場での独演会は談春の会などを主催するサンライズプロモーション。メールでこの会の連絡をもらったのは、結構最近のことだ。どういういきさつでの開催かは分からないが、事前に両方の会のことを知っていたら、さてどちらを選んでいたかは微妙。しかし、間際で知らされても、すでに今日は予定があって行こうにも行けない。残念ではあるが、連日で同じ噺家を聴くというのもなぁ・・・・・・。などと思いながら霞が関駅で千代田線に乗り、表参道でちょうど半蔵門線の急行が来るところで「ラッキー!」と思っていたら、神保町駅で線路に人が落ちて安全確認をしていたとかで、遅れてやって来た車両はすし詰め状態。二子玉川までは朝のラッシュと同様で、座ることができたのも長津田から。とても“ラッキーおじさん”ではなかった。

 満員電車のために疲労困憊で帰り、一杯やりながら録画していた『ごちそうさん』を見たら、とてもブログを書く気力は残っていなかった。さぁ、次の落語会は、あの人のあのネタだ、楽しみだ。
Commented by 佐平次 at 2013-11-17 10:12 x
私も三三「粗忽の釘」を聴いてきました。
この人の笑いは独特なものがありますね。
噺全体がひとつの音楽のような緩急があるし。

Commented by ほめ・く at 2013-11-17 18:29 x
アタシの遮断機も久しく上がっていないなぁ。警報機さえ鳴らなくなってきました。
三木男のマクラは嫌味を通り越してイライラさせられますね。誰か注意しないのでしょうか。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-11-18 08:36 x
“花形”のゲストでしたね。
三三は、やはり上手いですし、工夫もしています。将来の落語界を背負って立つ一人であることは間違いないでしょう。
嶋千鳥の再演を期待しているのですが、そんな気配はないですね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-11-18 08:42 x
ほめ・くさんも、かつてはきっと新幹線並みだったのでしょうね^^

三木男の周囲の人間が、もっと厳しく接すべきだと思います。母親を筆頭に、甘やかしているとしか思えない。
先代の馬生や志ん朝でさえ、相当に苦労し、精進をしたからこそあの域に達したわけで、競馬じゃないから“血統”だけで落語は上手くなりゃぁしない。
彼の成長は、マクラから自分の血統のことを封じることから始まると思います。

Commented by 彗風月 at 2013-11-18 11:15 x
こんにちは。幸兵衛さんの締めのコメント「さぁ、次の落語会は、あの人のあのネタだ、楽しみだ」は、今日の雲師のことでしょうか。だとすると、私も同じ会場にいることになります。先日の今松師との対応もあるので、当方もとても楽しみなのです。そのうちご挨拶が出来ると嬉しく思います。

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by kogotokoubei | 2013-11-16 07:53 | 寄席・落語会 | Comments(5)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛