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スノーデン事件で考える、ネット社会の光と影・・・・・・。

安倍右傾化内閣は、内閣官房に日本版のNSCと言える国家安全保障会議をつくろうとしている。自民党の公約には、「外交再生」の部分に次のようにある。自民党サイトの公約のページ

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 本家アメリカのNSCの傘下にCIA(中央情報局)が置かれている。そして、国家安全保障会議にとっては、CIAのみならず国家安全保障局(NSA)という諜報機関も重要な情報収集組織である。

 だから、日本版国家安全保障会議設立の背後には、日本版CIA、日本版NSA設立の目論みが対になっている。
 安倍内閣には、国家の司令塔機能を強化するために、スパイ機関をおおっぴらに作ろうという意図が見える。

 さて、スパイ国家の本家では、CIAやNSAに勤務していた一人の若者が、ネット時代の諜報活動の実態を暴露して話題になっている。後年「スノーデン事件」と名がつくであろう、この若者は、20万ドルの年収も恋人も家族も捨てて勤務先のハワイから香港に逃れて潜伏中だ。

AFPの日本語ニュースサイトから引用。AFP BBNewsサイトの該当ページ

米政府の市民監視プログラム暴露した元CIA職員、「怖くない」
2013年06月10日 16:48 発信地:ワシントンD.C./米国

【6月10日 AFP】米当局が個人のインターネット利用や通話記録を収集していた問題で、政府による大規模な監視プログラムの存在をメディアに暴露したのは自分だと9日に名乗り出た政府機関の契約職員、エドワード・スノーデン(Edward Snowden)氏(29)は、当局が情報漏えい容疑で捜査する構えを見せる中、「怖くはない」と発言した。

■快適な生活、良心と引き換えに

 米国家安全保障局(National Security Agency、NSA)で外部請負業者からの出向職員として4年間働いてきたスノーデン氏は、英紙ガーディアン(Guardian)のインタビューに対し、年俸20万ドル(約2000万円)とガールフレンド、順調なキャリア、家族に囲まれた「快適な生活」に3週間前、別れを告げてハワイを後にし、香港(Hong Kong)へ向かったと説明した。「喜んで全てを犠牲にする。米政府が世界中の人々のプライバシーやインターネットの自由、基本的自由権などを破壊するのを認めることは、良心が許さないからだ」と述べた。

 ベトナム戦争に関する米国防総省の報告書、通称「ペンタゴン・ペーパーズ(Pentagon Papers)」を漏えいしたダニエル・エルズバーグ(Daniel Ellsberg)氏や、米政府の外交公電や軍事機密を内部告発サイトのウィキリークス(WikiLeaks)に提供した米陸軍情報分析官ブラッドリー・マニング(Bradley Manning)上等兵と並び、米国史上に残る機密保護違反の1例となったスノーデン氏。勇気付けられた存在としてこの2人の名を挙げ、こう述べている。

「市民の名の下で何が行われ、また市民に対して何が行われているのかを公に知らせたいというのが、私の唯一の動機だ」

■「間違ったことはしていない」

 米ノースカロライナ(North Carolina)州エリザベスシティー(Elizabeth City)で育ったスノーデン氏は、後にNSA本部のあるメリーランド(Maryland)州へ引っ越し、地元のコミュニティーカレッジでコンピューターを専攻した。成績は平凡で、高校の卒業資格に相当する単位は取得したものの卒業はしなかった。2003年に米軍に入隊し、特殊部隊で訓練を受けたが、訓練中の事故で両足を骨折し除隊した。

 NSAに関連する最初の仕事は、メリーランド大学(University of Maryland)構内にあるNSAの秘密施設の警備員で、その後、CIAで情報セキュリティー関連業務に従事。情報要員となる正式資格は欠いていたが、優れたIT技術によって昇格し、07年からはスイス・ジュネーブ(Geneva)にCIA要員として外交官資格で駐在する地位を与えられた。09年に民間で働くためCIAを離職。民間請負業者を通じ、在日米軍基地にあるNSAの施設で任務に就いた。

 ガーディアンのインタビュー映像の中で、スノーデン氏は落ち着いた様子で「母国を再び目にすることができるとは考えていない」とコメント。さらに「間違ったことは何もしていないので、自分が何者かを隠すつもりはない。自分で選んだことだから、怖くもない」と語った。

 しかし、米情報機関を統括するジェームズ・クラッパー(James Clapper)米国家情報長官が8日、米情報活動に「多大かつ重大な損害」を与えたとして情報漏えい容疑で捜査を行う方針を示している点については、米当局による報復の可能性に不安を抱いていることを認めた。

■家族への影響を懸念

 ガーディアンによれば、5月20日にハワイを航空機で離れたスノーデン氏は、香港のホテルにチェックインして以来ほぼずっと客室内で過ごし、これまで3回ほどしか外出していない。監視や盗聴を懸念し、客室のドア沿いには枕を並べ、ノートパソコン使用時には監視カメラがあっても映らないよう、頭から大きな赤いフードをかぶって手元を隠してパスワードを打ち込んでいるという。



 Wiredの記事もご紹介。Wiredサイトの該当ページ

現在29歳のスノーデン氏は、防衛システムなどで知られるコンサルティング企業ブーズ・アレン・ハミルトンの社員で、NSAの外注契約職員として同組織のハワイオフィスにいたという。同氏は、英ガーディアン紙やワシントン・ポスト紙が先ごろ報じたヴェライゾンによるNSAへの通話情報の受け渡し(日本語版記事)や、米国外のターゲットを対象にしたウェブ情報の監視プログラム「PRISM」について、自らが情報源であったと名乗り出た。

英国時間9日付のガーディアンの記事と映像(6日に同氏の滞在先の香港で撮影されたもの)のなかでは、彼が自らの素性や暴露の背景について語っている。

「素性を隠すつもりはない。自分のしたことは正しいと思っている」と話すスノーデン氏は、暴露記事が発表された際には香港に身を隠していたという。「恐れはない。これは自分の決断だからだ」。

スノーデン氏は、自分がNSAのハワイオフィスでインフラアナリストをしていたことや、それが年俸20万ドルの仕事であったこと、さらに複数の外注企業の社員としてNSAで4年間働いてきたことなどを明かした。

また、同氏はシステムエンジニアやシステム管理者、シニアアドバイザーとしてCIAや情報通信システム関連企業で働いていたこともあり、政府の監視活動が活発になるのを目の当たりにしながら、大きなフラストレーションを感じるようになっていったと語っている。

スノーデン氏は提供資料に付属するメモのなかで、「自分の行動が自らを苦しめる結果になる可能性があることもわかっている」としながらも、「秘密裏に法律が適用され、その執行権が問答無用で行使され、世界が支配されている現状について、その一端でも明かすことができれば本望」としている。また、身元を明かすことでメディアの注目を引きたいわけではないとした上で、米国政府の大規模な監視プログラムにスポットライトを当ててもらいたいとガーディアンへのインタヴューで語った。

「報道機関が、政治的議論を個人の問題として捉えたがるものだということはわかっている。また、米国政府がわたしについて、あることないこと含めて悪評を流すであろうことも承知している」と彼は話す。「わたしが望むのは、公開した機密文書や人々の反応に対して報道機関が脚光をあてることだ。世界中の人々の間で、今後どんな世界に住みたいか、そんな議論が巻き起こることをわたしは期待している。暴露を決意したのは、国家の名のもとで人々に行なわれた行為を知らせたかったからだ」。



 NSAが諜報機関である以上、世界中のインターネットから情報を収集しようとするのは、彼らの使命に照らせば当然かもしれない。ウィル・スミス主演の『エネミー・オブ・アメリカ』は、まさにNSAの諜報活動の怖さを端的に表現する映画だったが、アメリカの良いところは、こういう映画も作られ上映される、という自由があるところだ。中国やロシアで、自国の諜報機関による犯罪をテーマにした映画など製作されそうにない。

 国家として、最高レベルの技術でネット上の情報収集をしたり、相手からのハッキングを防御しているであろうことは、今の時代では容易に想定できることだろう。
 しかし、その内部にいた者がその暗黙の事実を告発によって顕在化したことが、新たな状況をつくっていると思う。
 まず、彼の存在は一つの政治的状況を作り出す。スノーデンが指摘するまで「えっ、ちっとも知らなかった!?」とは、中国もロシアも本音では思いもしない。しかし、「知らなかったフリ」をするだろうし、内部告発者としてのスノーデンの中国やロシアにとっての価値は、まさに政治の材料としてのそれになった。
 今後、彼の人生が外交カードの一枚として破滅的な状況にならないことを祈りたい。
 
 そして、スノーデンは、ネット社会に生きる我々市民にも大きなテーマを命がけで提供した。
“世界中の人々の間で、今後どんな世界に住みたいか、そんな議論が巻き起こることをわたしは期待している”というメッセージを、どう考えたらいいだろうか。

「喜んで全てを犠牲にする。米政府が世界中の人々のプライバシーやインターネットの自由、基本的自由権などを破壊するのを認めることは、良心が許さないからだ」という訴えには共感できるが、果たして、ネット社会の便宜を享受しながら、そこに存在するプライバシーを守ることは可能なのだろうか。

 ちなみに私は、ネットバンキングを使わない。ネットで何かを買う場合は電子マネーを使っている。フェイスブックもツィッターもしない。ちょっとばかりの自己防衛のためである。しかし、このブログを書いている以上、ハッキングによって小言幸兵衛の個人情報を盗み出すことは、そう難しいことではないだろう。電子マネーだって、その管理サイトには個人情報が入っている。NSAが所有しているであろう最高レベルの技術なら、匿名ブログから個人情報に辿り着くことなど朝飯前のことだと思う。

 ネットによる便宜(光)を利用しながら、ネットによるサイバー攻撃、ハッキングの政府によるプライバシー侵害といった被害(影)をどう防ぐかは、非常に難しい問題だ。

 ネットが地球規模で張り巡らされている以上、一つの国で法規制しても根本的には解決できない問題である。しかし、政府が自らやっていることを、サミットや国連などの場で、それを規制するための議論などしそうには思えない。
 たとえば「サイバーテロ防止」というテーマで国際会議などで共同で議論したりルールを決めるというのは、想定できそうにない。
 こっちからは相手を覗きたいが、相手にはこっちを覗かせたくない、というのが本音であろう。隣りの家との間に壁や塀、垣根は作れるが、果たしてネットに強固な壁は作れるだろうか。セキュリティを確保する技術の進歩は、その防御をかいくぐる技術との追いかけっこである状況では、ハードウェア的にもソフトウェアの面でも、ネットに万全な壁を作るのは非常に難しいと思う。

 しかし、ネット時代にも「倫理」「モラル」は求められてしかるべきだろう。やはり「ネット・モラル」の壁で防ぐ道を考えるしかないような気がする。

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マイクル・コナリー著『スケアクロウ』

 ネットの影の部分は、政府によるサイバー攻撃のみならず、個人的な犯罪も含まれる。たまたま、最近読んだマイクル・コナリーの日本での最新作『スケアクロウ』(講談社文庫)は、天才的なハッカーであるシリアル・キラー(連続殺人者)と、ロサンゼルス・タイムス記者のジャック・マカボォイとの戦いが中心のサスペンスだが、このハッカーが、ジャックの後任となる予定だった女性記者アンジェラ・クックのプライバシーをネットから暴こうとする場面を引用したい。(同書上巻の190~191ページ)

 カーヴァーは検索をつづけ、アンジェラ・クックが数年まえにマイスペースのページを止めてしまったが、削除せずにいることを突き止めた。また、リンクトインにプロフェッショナル・プロフィールを公開しているのも見つけ、そ こから情報の源泉にたどりついた—「シティ・オブ・アンジェラ・ドットコム」www.CityofAngela.comというタイトルのブログで、そこにクックはロサンジェルスでの生活と仕事を扱った現在進行形の日記を載せていた。
 ブログの最新のエントリーは、警察と犯罪担当に配属され、ベテラン記者のジャック・マカヴォイの指導を受けていることに対する昂奮にあふれたいた。
 若い連中がおそろしいほど他人を信用したり、無防備だったりするのはカーヴァーにとっていつも驚きだった。連中はだれでも点と点をつなぐことができるのだとわかっていない。インターネットに赤裸々な心情を明かし、気楽に写真や情報を載せることができ、その結果がわが身にふりかかるとは思っていないのだ。クックのブログから、アンジェラ・クックについて必要な情報はすべて拾い集めることができた。生まれ故郷、女子学生クラブ、ペットの犬の名前すらわかった。
 (中 略)
 カーヴァーはクックのまわりを周回していたが、相手はそれに気づきもしないでいる。だが、周回が終わるたびにますます近づいていった。


 アンジェラがその後どうなったのか・・・は本書を読んでいただきたい。ハリー・ボッシュや最近人気のリンカーン弁護士のシリーズではないが、あの傑作『ザ・ポェット』のマカヴォイとレイチェル・ウォリングのシリーズも、なかなか結構だった。

 さて、“相手はそれに気づきもしないでいる”のに、“近づいて”くる、ネット上の脅威・・・・・・。 

 そのリスクを避けたいのなら、ブログもSNSも、もちろんネットバンキングもしない、ということか。
 それとも、ある程度の被害は承知でネットを活用するのか。

 スノーデン事件の記事の中に、“ワシントン・ポスト紙が先ごろ報じたヴェライゾンによるNSAへの通話情報の受け渡し(日本語版記事)や、米国外のターゲットを対象にしたウェブ情報の監視プログラム「PRISM」について、自らが情報源であったと名乗り出た”とあったが、そのワシントンポストの記事の中にある図をご紹介。
ワシントンポストの該当記事

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 この記事について、techcrunch.comの日本語サイトでも紹介されているので、引用したい。
techcrunchサイトの該当ページ

 Washington Postの報道によると、NSA(国家安全保障局)による最高機密データマイニング計画は、Google、Facebook、Microsoft、Appleをはじめとする各社サーバーを直接アクセスしている。「国家安全保障局およびFBIは、米国大手インターネット企業9社の主要サーバーに直接アクセスし、音声、ビデオ、写真、メール、文書、接続ログ等、個人の行動と接触相手の分析を可能にするデータを取得している」と同紙は報じている。

 この高度な機密計画、プロジェクトPRISMの詳細は今ひとつ曖昧だが、NSAは、司法長官および国家情報長官に対して「NSAと米国企業との連絡役であるFBIのデータ傍受技術ユニットにサーバーを開示する」ことを許可したとみられる。

「数回のクリックと、対象がテロリズム、スパイ行為あるいは核拡散に関わっていると信じられることが確認できれば、アナリストはFacebookの持つさまざまなサービスに対する大規模な検索および監視能力を全面的に利用できる」と同紙は説明する。

 そこからNSAは、被疑者のデータを発掘しその連絡先を次々と「ホップ」していくことによって、NSAが監視できるアメリカ人の数を指数的に増やしていく(外国人に関しては、NSAは通常業務として監視している)。

 本誌がFacebookにコメントを求めたところ、次の回答を得た。「われわれは、いかなる政府組織に対してもFacebookサーバーへの直接アクセスを提供しない。特定個人のデータあるいは情報を要求された場合、あらゆる適用法に照らしそれらの要求を精査した上で、法が認める情報のみを提供する」

 Googleは声明文でこう言っている。「Googleは当社ユーザーのデータ保全を第一に考えている。われわれは法に基づいて政府にデータを開示するが、それらの要求は慎重に検討している。時としてわれわれが政府に対してシステムの「裏口」を作っていると主張する人たちがいるが、Googleは政府がユーザーの個人データをアクセスするための裏口を持っていない」


 FacebookやGoogleがNSAに本当に協力していないのか否かは、分からない。しかし、それらが個人情報の宝庫であり、NSAなど諜報機関が調査の対象とするのは当然とも言える。


 友人達とのネットでの会話を楽しむことや、ブログなどの記録をクラウドを利用して管理・保管してもらう便宜、ネットの仕組みを利用して買い物や支払の手間を省くメリットを放棄しないのなら、その危険性についても覚悟しなければならない時代かもしれない。

 しかし、覚悟はするにしても、それを許してはならないと思う。

 怖いのは、政府のネットにおける監視の兆候を許す空気があることだ。ネット時代にいち早く突入し、SNSにおいても世界に先駆けて数多くのIT企業を輩出しているアメリカ国民の心理について、「ニューズウィーク」の日本版に次のような記事があった。
「ニューズウィーク日本版」サイトの該当記事

米政府の監視よりフェイスブックのほうが怖い?
2013年6月12日(水)16時35分
ウィル・オリマス(スレート誌記者)

 米政府によるネットと携帯電話への大規模な監視活動が判明したばかりだが、アメリカ国民はあまり憤りを見せていない。その大きな理由は、ネット上の情報のやりとりは既にグーグルやフェイスブックに監視されているのに何を今さら、と諦めているからだ。

 10日に公表されたワシントン・ポスト紙と調査会社ピュー・リサーチセンターの調査では、56%のアメリカ人が、米国家安全保障局(NSA)の監視は「許容できる」と答えている。また、昨年AP通信と米テレビ局CNBCが合同で行った調査によれば、フェイスブックが投稿された情報を第三者に渡さないと信じる人はわずか13%で、少しだけ信じる人は28%。つまり大多数は、同社が個人情報を守るとはまったく信じていないか、ほとんど信じていなかった。

 矛盾した結果のようだが、一般的なアメリカ人は、フェイスブックによる個人情報の支配よりも、政府によるスパイ活動のほうがましだと考えている。

 自己中心的に考えるなら、こうした考え方は理解できる。ほとんどのアメリカ人は、自分がテロ調査の対象になるとは思わないので、政府が自分の情報などに関心を示すはずがないと考えている。

 一方でフェイスブックは、すべてが利用者の個人情報によって成り立っている。実際には、個人情報を利用するといってもターゲット広告に使うぐらいだし、テロ容疑で起訴する意図などさらさらない。それでも多くの人にとって、浮気の証拠やきわどい写真、秘密のやり取りが意図せずにばれてしまう恐怖のほうが恐ろしいし現実的だ。

政府のネット監視からは「脱会」できない

 ある意味では、長年続いてきたフェイスブックなどのネット企業によるプライバシー侵害騒動が、アメリカ人がNSAによるネット監視を許容する地ならしをする結果になったのではないか。プライバシーなんてとうに過去のものなのに、米政府がグーグルやマイクロソフトが同じことをしたからといって何が悪いのか、というわけだ

 だが、この考え方は甘い。1つには、NSAの監視対象からは脱会ができない。アメリカを去れば怪しまれて監視はさらに強化される。一方、フェイスブックはプライバシー侵害の批判を受けるなかで徐々にプライバシー設定を充実させてきている。利用者は自分のデータを共有する範囲をかなり細かく設定できる。

 NSAはそんなことは決してさせないし、その監視を逃れようとすればするほどますます疑われる。この問題を無関心にやり過ごせば、いつかしっぺ返しを食うかもしれない。



“矛盾した結果のようだが、一般的なアメリカ人は、フェイスブックによる個人情報の支配よりも、政府によるスパイ活動のほうがましだと考えている”とは、驚きだ。

 しかし、日本においても、同じような質問をしたら、若者を中心に同様の反応があるような、そんな気がするなぁ。ネットに個人情報が溢れていて、その情報を元に、いろいろ便利なこともある。そのネットの“光”による恩恵から抜けられないために、ネットの“影”には目をつぶろう、という時代の空気があるのかもしれない。

 そういう空気があることも分かった上で、あえてその空気や慣れに流されるのは危険だと思う。

 「倫理」「モラル」「民主主義」といったキーワードによる壁をネットにおいても築かなければ、ジョージ・オーウェルが『1984』に描いた全体主義化、監視社会化を助長することは間違いないだろう。ビッグ・ブラザーのような政府は必要ない。
 為政者がネットでの監視や検閲を強化することで、過去の歴史さえ塗り替えることもあり得る。まさに安倍右傾化政府が進めようとしている“国家の司令塔機能強化”は、そういった全体主義化、監視社会化の匂いがプンプンする。
 「フェィスブックと同じで、別にいいじゃん」とか、「しょうがないじゃん」と言う若者が増えることを、実は政府は望んでいるのだろう。

 技術的に“できる”ことと、それを実際に“する”ことの差は、実はとても大きいはずだ。包丁は殺人の武器にもなりえる。そして、原子力は地球を何回でも崩壊させるだけの危険性を持つ。その“できる”悪事を“させない”ためには、文明における技術的なアプローチでは限界があるだろう。あくまで、文化的なアプローチで、「ならぬことは、ならぬ」という倫理観しか、壁にはなり得ないのではないか。

 まだ二十代の若者のエドワード・スノーデンは、敢然と倫理の旗を掲げたのだ。その勇気ある行動をどう生かすかが、ネット市民に求められているような気がする。
Commented by ほめ・く at 2013-06-20 10:24 x
自民党の憲法草案を見ても、安倍政権が狙っているのは言論や表現の自由を制限し、国民監視を強化する点にあります。
既にネットなどを通して個人情報の入手は行われていますが、これからはマイナンバー制度の導入によってより一元化され、しかも政府が自由に利用や加工もできます。
「スケアクロウ」の世界は決して遠い未来ではありません。

Commented by 小言幸兵衛 at 2013-06-20 10:40 x
「スケアクロウ」でマイクル・コナリーが提起したかったことの一つは、インターネット上の個人情報をどんな強固なシステムで防御したところで、その内部にいる人間がモラルがなかったり、邪悪な心を持っていたら意味がない、ということかと思います。
著者が巻末のインタビューで指摘している「ダークサイド」ですね。
私はマイナンバーのシステムを導入する場合、ます重要なのはそれを管理する側のモラルだと思うのですが、安倍自身がフェイスブックで行っていることは、果たしてモラルに則っているのでしょうか。それが疑問です。

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by kogotokoubei | 2013-06-18 00:15 | 幸兵衛の独り言 | Trackback | Comments(2)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛