新宿末広亭 四月下席 昼の部 4月27日
2013年 04月 28日
末広亭の近くで昼食をとってから11:30頃から行列に少しだけ並んで中へ。好きな下手の桟敷を確保。開演時点で七割位の入りだったが、途中からお客様も増えて終演時には二階も開ける大入りになった。開口一番から、よく笑ってくれるお客さんが多かった。
出演者とネタ、所要時間と感想を書く。
ある一定の期間、落語会や寄席の開口一番で特定の前座に出会うことはよくあるが、今年のさん坊の確率は、少し高すぎる。ただ、この高座はそう悪くなかった。持ち時間の短いことから、子ほめの部分のみを演じたが、子供の父親の竹がお祝いでもらった短歌の上の句に八五郎が下の句をつける、というサゲ。「竹の子は 生まれながらに重ね着て ああ育つにつれて 裸にぞなる」。このサゲ、初めて聴いた。柳家の型なのかなぁ。いずれにしても、持ち時間の中で演じきる、という意気込みは感じた、こうやって寄席で鍛えられることが大事だ。
本人がマクラで名前を覚えてもらうために言っていたクスグリだが、私も聴くのが初めてで、“しょっぱな”である。十人近くいる花緑の弟子の総領。2000年入門だから、再来年の真打昇進候補、ということか。
このネタはやはり三代目の三遊亭金馬の音源を思い出す。最近の若手では、古今亭文菊がNHK新人演芸大賞で選んだこともある。この人の高座、なかなか頑張った、という印象。ヤマ場の川中島の戦いを一所懸命に演じていたのは、好感が持てた。あと二年の間に、息切れせずに語りきれるかどうか、そういったことが小三治会長を認めさせる重要なポイントだろう。頑張ってもらおう。
定番のネタだが、やはり可笑しい。ペアの衣装で揃えているのを見たのは、久し振りのような気がする。
小せんの代演。途中で笑って誤魔化せる言い間違いはあったが、短い時間でこの人らしい高座。文化庁芸術祭 大衆芸能部門新人賞を受賞した若手(中堅?)がこういう噺を寄席でかけることで、また一層成長する。この経験は立川流や旧円楽一門では難しい。それを補う努力を個々の噺家ができるかどうかが分かれ目になるだろう。
初である。第一印象、顔色が悪い。見た目と妙に甲高い声が合わない。今元気のある二ツ目、小辰、一蔵、協会は違うが宮治のほうが上か。
いつもの名人芸。
歌舞伎と寄席の違い、浅草演芸ホールのネタなど定番的なマクラの後で、これまたこの人の寄席の十八番の一つとも思えるこの噺。会場は笑ってくれるお客さんが多かったが、その高座は中堅真打の内容とは思えない。
私が好きな海外ミステリーやジャズについて書いたり語っている内容は結構真っ当なので、落語さえやならければ、なかなかの趣味人だとは思うのだが・・・・・・。
前半の漫談に近い酔っ払いのマクラは可笑しかった。いい大人は居酒屋のチェーン店などに行かず、小料理屋に行かなきゃないらない。名前は三文字が結構、「あけみ」「かずこ」そして「しのぶ」なんてのがいい。女将は、五十代の美人の未亡人、そういう店に来る客は・・・・・・という終始頷けるマクラから現代風『替り目』へつないだ。正蔵には、到底真似のできない寄席らしい高座、結構でした。
最後のスローライフのネタ、ややブラックでシュールな内容を含んでいて、知的センスの高さを感じる内容。ほう、こういうネタもあったんだ、と感心。
初である。22才で入門して40年、とのこと。今風のクスグリを入れて、自分で笑ってしまう素人臭さは、高座年齢と不相応だが、その愛嬌ある笑顔で和ますのも技なのかもしれない。
初である。都内の定席寄席の中で末広亭が一番、池袋は噺家の家に行って目隠しして拉致されて連れて行かれる、などのマクラの中で「月の家三か条」を披露。その中の第二条は「弱きをくじき 強きにヨイショ」。
本編は、ほぼ柳家権太楼と同じ型と言って良いだろう、客の名前の湯川秀樹である。会場は大いに沸いていた。寄席のツボをよく分かっている噺家さんだ。
二人とも出身は東京ではない「産地偽装」の三味線コンビ。なかなかこういうタイプの色物さんはいないので、貴重である。
仲トリはこの人。古今亭志ん生や五代目小さんの逸話を中心の漫談。後の時間を考えて短く切り上げた。
この日の収穫の一つは、クイツキのこの人の高座。四年前の同じ末広亭で同じネタを聴いているようだ(後で自分のブログで分かった)が、今回の印象はその時よりも確実に強い。清兵衛さんの蕎麦を食べながら話すリズムもよく、あの「どぉ~もぉ~」がしばらく耳に残った。
相合傘、野次喜多、そば清、鯉のばり、の四作。流石だ。
久し振りだ。あの事件以来、出演する寄席を無意識に避けてきたような気がする。しかし、この日はあえて聴くつもりだった。やはり、こういう噺をさせると上手い。オリジナルと思われるクスグリを含め、次のようなネタで会場も爆笑。
・(兄貴の女房と比べて自分の女房のことを)「ありゃあ、流氷に乗ったトドだね」
・(鼻の穴からタバコの煙を上に吐く女房のことを)「インディアンの狼煙か」
・(その女房が、首を振って話を聞いている旦那のことを)「蓄音機の犬じゃあるまいし」
・(ゴキブリなどの虫が這い回る家のことを)「まるで、ファーブル昆虫記だね」
やはり、この人にはこういう噺はニンだ。そろそろ、あのことも時効と考え、意識して聴こうかと思わせた高座だった。
寄席にしっかりと江戸の香りを伝えてくれるのがこういう噺家さん。重厚さがありながら、噺家としての愛嬌もある、しかし上品さはこの人ならでは。なかなか他には見出せない人。もっと聴かなきゃ、と思った。
最近は小花の芸の危うさを見るのがスリリングな楽しみになってきた。剣の芸などを見ると、正直なところ一列目に座るお客さんの勇気に感心する^^
小満んでこのネタは初だ。らくだの兄貴分の怖さが秀逸。しかし、長屋の大家との差別化がちょっと苦しいような印象もあった。主任で休みなしの七日目、そろそろ疲れも出る日だったような、そんな気もする。
帰宅して、犬を医者に連れて行くなどの用もあり当日には書き始められなかった。今日日曜日は先週雨で休みだったテニスの後、クラブハウス、そば屋、昼カラオケのスナックと梯子して、ようやくブログ開始。なんとか書き終えた次第。
あらためて振り返ってみて、昨日の末広亭は、さん生に一九、そして何と言っても正朝だったかなぁ。
この顔付けで一杯の入りとは、分かる寄席ファンが増えた証拠で喜ばしいことです。
正朝、そろそろ「正調」で本格復帰してもらいましょう。あの切れ味の良さは得がたいものです。
三文字居酒屋、ね、ちょっと異論があるのは例示の三つはやや場末の赤ちょうちんの匂いがあるのですよ。
小料理屋とくれば「なかむら」「やまざき」「佐平次」なんてのが好みですなあ。