雲助蔵出し ふたたび 浅草見番 3月30日
2013年 03月 31日
すでに結構な埋まり具合で、列で言えば7列目位の空いたスペースに自分で座布団を敷いて場所を確保。固定ファンが多い、よく拝見する顔ぶれが、あちらこちらに。
次のような構成だった。
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開口一番 林家つる子『手紙無筆』
柳亭市楽 『真田小僧』
五街道雲助 『品川心中』
(仲入り)
五街道雲助 『よかちょろ~山崎屋』
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林家つる子『手紙無筆』 (13:50-14:02)
冒頭、携帯電話の注意をするのはいいのだが、鈴本の前座の携帯注意のパフォーマンスをマクラのネタとして語るのは、彼女のキャリアやこの会のベテラン落語愛好家の多い客層などから考え適切とは言えないだろう。まだ、思いつきの逸話などでマクラをふる時期ではない。大学落研→策伝大賞出場→正蔵入門・・・・・・本当に噺家として修業をする覚悟があるのか、それとも根岸を芸能事務所と見立てて芸能人としての将来も選択肢として残しているのか、疑問だ。女流落語家で可愛いい、というだけで生き残れる世界ではない。少しきつい小言になるが、高座は落研の域を出ていない。
柳亭市楽『真田小僧』 (14:03-14:17)
市朗の前座時代の好印象があるので、どうしても期待が高すぎるのか、市楽になってからの高座に不満を感じる。三三の会で手伝いに来た落研の女子学生の市楽と三三への態度の違い、という逸話をマクラでふったが、ネタに無関係な、それほど面白くもない内容だった。本編も、この噺で按摩の服装のことを抜かしてはいけない。「白い服に黒メガネ、ステッキをついた男」が、父親の留守に来て、母親が喜んで家に上げたからこそ、父の疑惑と焦燥が募るのである。精進してもらおう。
五街道雲助『品川心中』 (14:18-14:55)
江戸は男が圧倒的に多い土地であり、そのために流行った廓のことや夜鷹のことなどを説明。本所の吉田町は夜鷹がたくさん居た場所のようで、川柳「吉田町 二つやらせて 三つ喰い」を紹介。夜鷹の一回が二十四文、蕎麦が十六文ということである。私は、同じような内容で「客二つ つぶして 夜鷹三つ食い」というのを知っているが、さて、どっちが下品かなぁ^^
本編は私の勝手な予想に反して通しではなかった。お染が金づるができたので、結局一人先に品川の海に飛び込んでひどい目に遭った貸本屋の金蔵(『幕末太陽傳』の小沢昭一さんをイメージして聴いていた)が、博打をしていた親分の家に幽霊のような姿でやってきた後の、サゲ前の騒動に、雲助ならではの工夫があって楽しかった。
金蔵が来て、明かりをつけようとした親分に火打石の代わりに渡されたのが鰹節、というのも結構受けていた。
慌ててサイコロを二つとも飲んでしまった若い衆が、悶絶しながらサイコロを吐き出した後で、「やっぱり、半だよ!」も可笑しい。
はばかりから出てきた与太郎の場面でサゲ。通しと思って聴いていた身には唐突に思えたが、なかなか楽しい高座だった。
五街道雲助『よかちょろ~山崎屋』 15:07-16:09)
二席ともネタ出しされていたが、『品川心中』が通しではなかったので、どんな構成になるか楽しみだった。この噺は、数年前の菊之丞、そして今年池袋演芸場で三遊亭萬窓で聴いており、三度目。
廓噺が続くが、マクラのネタの引き出しも豊富。吉原のガイドブック「吉原細見」で「入り山形に二つ星」のついた花魁が最高級との説明。花魁の遊び代が、昼夜で三分に新造がつく。その新造にも番頭新造、留袖新造、そして振袖新造といたことなど、学校では教えない吉原のお勉強をあっさりとふって、本編へ。
もともとの長い噺の前半部分を初代三遊亭遊三が『よかちょろ』として独立(?)させて、このネタと二つの噺になったと聞く。『よかちょろ』は、もちろん八代目桂文楽の十八番。雲助は、この『よかちょろ』も披露して、一時間を越える長講を、まったく飽きさせなかった。
登場人物も多く、サゲも今日では分かりにくい。だからマクラで江戸時代の廓のことを説明する必要もある、という難しいネタだが、流石の雲助。このネタの鍵を握る番頭久兵衛、山崎屋の主人、若旦那、花魁を預かってもらう棟梁(かしら)、そして、花魁などをしっかり演じ分ける。
まず、前半の『よかちょろ』部分が楽しかった。
若旦那が回収に行った二十両の使い道は、まず床屋代で五両。花魁の部屋に床屋を招いて、新造もはべらして髭を当って、皆に小遣いを払えば、床屋も高くつくわなぁ。そして、残り十五両が「よかちょろ」代。もちろん、“物”ではない。これから流行るだろう“唄”というか“芸”だね。父親に言われて披露する若旦那。
「女ながらも、まさかのときは、ハアよかちょろ、主に代わりて玉ァ襷(たすき)ィ、よかちょろ、すいのすいの、して見てしっちょろ、味見ちゃよかちょろ、しげちょろ、パッパ・・・・・・」。
雲助の唄と手振りに会場は大爆笑。
後半で聴かせたのは、若旦那と久兵衛の会話。久兵衛が花魁と若旦那を夫婦にするための狂言をひねり出す前の、若旦那が久兵衛が妾をかこっていることを暴露する場面も楽しいし、久兵衛が秘策を語るくだりも結構。久兵衛の秘策に喜ぶ若旦那が、「番頭、耳をお貸し」「へぇ」と久兵衛が差し出した耳に、大きな声で、「エライ!」で会場は大爆笑。私も可笑しくて涙が出そうだった。
マクラでの「廓の勉強」は、最後のこの会話に生きてくる。山崎屋の旦那、元は花魁とは知らず持参金(それも元は自分のお金^^)の三百両に目がくらんで道楽息子の嫁にしたお花との会話だ。
「お前のお勤めしていた大名様はどちらだね」
「北国ざます」
「加賀様かい。道中もするのかい」
「するんざます。暮れ方に出て、武蔵屋ィ行って、伊勢屋ィ行って、大和の、長門の、長崎の・・・・・・」
「おいおい男の足だってそんなに歩けない。諸国を歩く六部、足の達者が飛脚と天狗・・・・・・。お前には六部に天狗が憑いたんだな」
「いいえ、三分で新造がつきんした」でサゲ。
前半に『よかちょろ』も楽しませてくれたので、一席で二席聴けて得した高座、文句なく今年のマイベスト十席の候補とする。
終演後は、我らが「居残り会」のリーダーSさんと、紅一点Mさんと三人での「居残り会 分科会」。落語の話など酒の肴は、このお二人だから尽きることはない。木馬亭の浪曲を聴きに行かれるMさんと別れた二人は、Sさんが昔行ったことのあるお店で二次会。無口な職人気質親子の営むお店の絶品おでんで話は弾む。
土曜の昼席とはいえ、その後が“夜席”にかかった。帰宅後はブログどころではない。翌日夕方になって、ようやく思い出しながら書いているのであった。しかし、雲助、良かったなぁ。
直前になって心が折れました。
「山崎屋」は粋の塊みたいな噺だと思います。
雲助師匠の中では一番好きな噺です。
やはり行けばよかったと激しく後悔しております。
詳細有難うございました。
