新宿末広亭 二月中席 昼の部 2月11日
2013年 02月 11日
本席は芸術協会、九代目三笑亭可楽の主任だが、顔ぶれ全体が良さそうなのと、初めて聴ける噺家さんも何人かいて、それも楽しみに新宿へ。
開演からは少し遅れて十二時十分過ぎに会場入りした時は、ちょうど鏡味初音の太神楽が始まったところだった。すでに椅子席は八割ほど、桟敷も半分位埋まっている。初音の芸の後、下手の桟敷中央当りに居場所を確保。出番が繰り上がった鯉昇の高座に何とか間に合った。
出演者とネタ、所要時間に感想を記録しておきたい。
瀧川鯉昇『粗忽の釘』 (11分)*12:19~
席を求めるお客さんのざわめきの中で高座に上がった後、お決まりの沈黙の芸(?)に続き、今日が誕生日であり還暦と語る。その後は、これまた定番の「昔から老けて見られていた」、というネタ。そうなんだ、建国記念日が誕生日とは、ある意味非常にお目出度い!
短縮版だったが、いつものようにロザリオを掛ける瓦っ釘が、隣家の仏壇の中、阿弥陀様の大事な部分から飛び出して、会場は大爆笑。この中席は池袋と末広亭が芸協で、多くの噺家が両方に出演している。鯉昇もそうなのだが、出番の変更が、夜の誕生日祝いに関係しているのかどうかは、不明。しかし、貧乏ネタのマクラが定番の鯉昇は、結構資産家であると同業者が暴露している。今夜、意外と豪勢な誕生会があるのかもしれない^^
三遊亭遊吉『道灌』 (15分)
一昨年の、同じ末広亭以来。その時の『芋俵』は結構良かったが、この高座は少し疑問。八五郎が繰り出すクスグリの姿勢がほぼ同じパターン。中堅としては、もう少し芸の細やかさが欲しい。
D51 コント (13分)
「まむしの権三」のコント、名人芸と言ってよいのではないか。お婆ちゃんは健在!
桂竹丸 漫談 (13分)
ネタを出来る時間はあっただろうが漫談で会場は爆笑。まぁ、これも寄席である。
桂伸治『長屋の花見』 (15分)
やや“旬”を先取りのネタだが、結構だった。見た目が少し“ふけた”ように思ったが、弟子の、宮治をしっかし鍛えて欲しい。
山上兄弟 奇術 (13分)
途中喫煙タイムだったので全部は見なかったが、若いのになかなかの芸だった。
三遊亭小円右 漫談&『元犬』 (12分)
初である。帰宅してから芸術協会のサイトでプロフィールを見たが、この写真はなかろう^^
落語芸術協会サイトの該当ページ
この平坦な語り口をどう評価するか分かれると思うが、その昔はこういう噺家さんが多かったのかなぁ、と思わせる、そんな高座。
三遊亭栄馬『かつぎ屋』 (11分)
初である。テレビの「お笑いタッグマッチ」で馴染みのあった四代目小円馬の弟子らしい。結構好きだったなぁ小円馬。弟子も、なかなかの味のある高座。旧暦の一月二日にふさわしい“旬”なネタだった。もちろん短縮版だが、(呉服屋の)主人が権助に元日の「若水」を汲ませるための、お決まりの文句、「あらたまの年たちかえる朝より若柳水を汲みそめにけり」と橙を井戸に落して「これはわざとお年玉です」と言うのを、「目の玉のでんぐり返る朝には末期の水を汲みにそめにけり・・・・・・。」橙を井戸のなかに落して、「これはわざとお人魂です。」とやってしまう。短縮版ではあったが、このネタをかけてくれた栄馬という渋い噺家を、私は忘れない。
帰宅後調べたら、小朝の二年前にNHK新人落語コンクールで最優秀賞を受賞している。まだ知らない実力者がいることを痛感。だから寄席には、もっと来なけりゃいけないなぁ。
林家今丸 紙切り (13分)
お客さんの「雀・・・・・・二羽」で結構苦労していたが、流石の芸だった。
春風亭小柳枝『時そば』 (17分)
仲入りは、この人。結論から、結構な高座だった。同じ芸協でこのネタとなると鯉昇の“ベートーベン”が有名だが、本寸法な芸を堪能した。真似をしてしくじる男の様子が、可笑しい。うどんのような蕎麦を食べる場面、「ネトネトして、蕎麦のおじやだね」「これなら歯はいらねぇな。爺さん婆さん 喜ぶね」あたりの所作や科白が、頗る結構だった。
この高座は、忘れないように赤い色にしておく。「寄席大賞」候補としてである。
気がつかないうちに二階も開けられていた。祝日とは言え、芸協の定席は大盛況で結構。
三笑亭可龍『両泥』 (20分)
仲入り後のクイツキは、この人。開口一番、「今日のトリは、あの三笑亭可楽です」とふって、会場の反応のなさに、「やはり、予想通りの反応でした!」と言ったが、このマクラを可龍も師匠もどう思っているのだろうか・・・・・・。
初めて聴く噺で、ネタの題は帰宅してから調べて分かった。こんな噺があったのか、という印象。
新米の空き巣が先輩の同業者とバッタリ出会って、盗品処分の方法や空き巣の心得(?)などを教わり、お礼として家に呼んで一杯御馳走しようとする。しかし、帰ったら空き巣が入った後で、家の家財道具は空っぽ。実は先輩が入ったのだった。先輩が、俺の家の物を持って行けと連れて行くと、そこも空き巣が入った後。実は、新米空き巣が入ったのが先輩空き巣の家だった、というサゲ。
芸術協会でのみ伝わる噺らしいが、なかなか結構だった。この人は数年前に相模原の若手落語家選手権の予選の日に一之輔も出ていたが、投票結果で可龍が勝ったのを、今でも覚えている。実力はあるし、頭の回転も速そうだ。芸協の将来を担う一人であるのは間違いがない。 可楽に入門した、という点も私は好ましく思える。
新山ひでや・やすこ 漫才 (10分)
初である。「最高、最高!」の芸を中心に、夫婦漫才の楽しさで会場を沸かせた。
神田陽子 講談 (18分)
本来は鯉昇の出番での登場。久しぶりだが、達者な芸を堪能した。それぞれ短縮版の講談『徂徠豆腐』『楊貴妃伝』『お富与三郎』を披露。本寸法の講談愛好家の方の評価とは違うのだろうが、私はこの人の芸が好きだ。こういう人を中心に、講談という芸がまだまだ長続きして欲しいと思う。
古今亭寿輔 漫談 (16分)
演目を書くと「漫談」となるのだが、これも立派な芸である。最初は不気味な雰囲気を醸し出し、次第に自分の世界に引き込んでいく。
まず、前の方の席のお客さんをいじりながら、老人や老齢化をネタとする内容だったが、数多くの川柳も披露される。
「年重ね 話も入れ歯も かみ合わず」
「あれどこだ あれはあれする あれあれだ」
などなど。芸協で、不可欠な存在だ。
ボンボンブラザース 曲芸 (8分)
芸協の色物を支える芸。後から、あれがたった八分か、と思っていた。流石。
三笑亭可楽『親子酒』 (25分) *~16:30
実は生の高座は初である。談志と同じ昭和11年生まれだから今年77歳。昭和30年に先代に入門。一度聴きたかったのだが、ようやく縁があった。淡々とした語り口からのマクラは、今では古典落語の言葉がお客さんには分からなくなったということから、オスプレイなども含めた時事ネタまで幅ひろい。
海外公演の経験から、アルジェリアやモロッコの“マラケシ”の話題に至り、カルーセル麻紀の手術の場所が“マラカシ”で、オスプレイが彼の地でトラブルが多く“メスプレイ”になるなど。北アフリカ諸国から中東までの国の“言い立て”を披露するなど、意外な内容で驚かせてくれた。
12分ほどマクラがあったので、本編は10分余りなのだが、先代を彷彿とさせる酔っ払いの姿が、何とも結構だった。無理も無駄ない、これが落語という印象。サゲの後の笑顔が何ともやさしくて、それまでの表情との落差もあり見る方を“ホッ”とさせてくれた。こういう高座に出会えるから、やはり、寄席はいい。
帰宅して、旧暦正月二日の酒を楽しみながら、思い出しながらブログを書いている。
祭日ということもあろうが、末広亭の芸術協会の定席、大盛況だったし、内容も結構だった。ハズレはほとんどなかった。仲入り前には二階席にも結構お客さんがいらっしゃった。席亭も喜んでいるだろう。平日の入りが気になるが、他の一門の手助けなど必要はないだろう。
初めて知る噺家さんや、珍しいネタへの出会い、やっと聴くことのできた当代の可楽など、祭日に新宿に出向いただけのことはあった。
私もホール落語に目覚めるまでは行き当たりばったりで寄席に行くから芸協が多かったです。
可楽はいつも談志の悪口を言ってたのを覚えています。
ジュスケにいじられたりしたのも末広亭でした。
あるいは若い時に、何か喧嘩ネタがあったのでしょうか。同年齢ですからね。
昨日の高座では、談志のだの字も出ませんでした。喧嘩友達が先に逝ってさびしいのではないでしょうか。
九代目を継ぐまで浮世亭写楽を名乗っていましたが、襲名に関する諍いでもあったのかなぁ。これ以上は下衆の勘繰りの粋を出ません。
アンツルさんは、七代目贔屓で、八代目をこき下ろしていたようです。
まぁ、好みの問題もあるけど、「セコ」と言われても、可楽、文楽や小さんといった名前が継承されることは、良いことだと思います。
志ん輔が六代目志ん生を継ぐ気になるのは、果たしていつのことやら・・・・・・。
