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噺の話

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江戸時代の元旦風景—2月9日が旧暦の大晦日、10日が元旦。

旧暦で今日は大晦日、明日が元旦である。中国では昨日から春節の休暇による民族大移動が始まった。

 何度か書いてきたが、日本は旧暦の正月を祝わないアジアの希少な国になってしまった。今日の寄席や落語会で『掛取り』や『睨みがえし』『言訳座頭』、『芝浜』、少し先取りで『御慶』をかける噺家さんがいたら、そのネタは、まさに“旬”である。

 樋口清之著『巷談 江戸と東京』(全五巻、芳賀書店)の第三巻から、江戸時代の正月の様子を紹介したい。

 泰平の天下を楽しんだ江戸の市民生活に忘れられないのは、その年中行事であります。
 封建制の圧制の中にしばられた彼等の生活に、一つのはけ口として、又、娯楽の機会としてその生活を楽しむ風は、年中行事を次第に大層に、そして華美に整え、その量を次第に増して、一方には又形式的にもなって参りました。


 「圧制の中にしばられた」ことも事実だろうが、そういった環境においても、たくましく楽しく暮らしていた江戸長屋の住民たちのことは、落語が伝えてくれている。
 
「元日」について、次のように書かれている。

元日

 江戸町人はまず前夜の疲労も忘れて初日の出を拝するため、深川洲先(須州)、芝高輪、築地等の海岸や、駿河台、お茶の水、日本橋辺に群集します。多くは家の主人が長男を連れて参りますが、婦人は家で祝儀の用意をいたします。拍手の音ひきも切らず、さわやかな大江戸の正月にふさわしい状景であります。


歌川広重が、洲崎の初日の出を描いているのでご紹介。
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私も明日の初日の出を拝もうか、と今のところは思っている。
さて、元日恒例の江戸の光景は続く。

 やがて初日の出を拝んだ人達が家路につく頃、江戸の町は、今日の門出と威儀を正した大名行列で埋められます。「下にー下にー」の掛声ものものしく、今日は六時半に御家内、親藩譜代の大名をはじめ、旗本は三千石以上、五位の官人、神官高僧等が登城し、太刀目録を献上、将軍家からは兎の吸物で祝酒、時服二領ずつを賜るわけであります。


 この楊洲周延の「諸侯初登城の図」のような賑わいだったのだろう。

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 昨今の「節分」での「恵方巻き」ブームには疑問を呈した。それは、さておき、「恵方参り」は、あくまで元日の行事である。

この日は町人達には昼頃から所謂恵方詣が盛んに行われます。中には前夜から早朝にかけてまわる者もあり、恵方に当った社寺は大いににぎわいます。浅草観音の修正会はこの日宝前で大般若経の転読があり、亀戸天神はこの日から七日までを大礼とし、本所の押上妙見の開帳、深川浄心寺の開帳、今日より七日までの上野山内中堂での追儺(ついな)、本所受地村秋葉社の火難除の大護摩、法華経読誦、赤坂溜池の松平大和守邸内箭弓稲荷の開放、谷中本光寺の人頭明神縁日、王子権現の大般若、下谷松平下総守邸内一目蓮社の縁日、牛込横寺町円福寺の祖師開帳と仲々参詣ところも多く、それに神田明神、芝明神、深川市谷八幡等の初詣、各氏神の初詣と、神仏の信仰が元旦行事の中心をなします。



 「恵方」を意識すべきなのは、「節分」ではなく、「元旦」である。
 あらためて今年の「恵方」を確認。

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 これが、江戸時代の方位盤。

「恵方」とは、その年の「歳徳神」がいる方角のことで、これは「十干」によって決まる。今回は、歳徳神の説明を割愛。

年の十干     恵方
甲・己        甲  (東微北やや左 東北東やや右)
乙・庚        庚  (西微南やや左 西南西やや右)
丙・辛・戊・癸   丙  (南微東やや左 南南東やや右)
丁・壬        壬  (北微西やや左 北北西やや右)

上の方位盤と少し表記形式が違うが、「十干」による「恵方」の四方向は下図の通り。
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 今年の干支は癸巳(みずのと・み)、だから恵方は「丙」である。
*干支や十干についても、今回は説明しない。

「恵方巻き」キャンペーンでは「南南東」と盛んに宣伝されておりましたなぁ。単に「縁起のよい方角」として説明されていた。しかし、方位盤を示したり、「歳徳神」との関係を含めて「恵方は丙の方角」と説明していたコンビニはあったのだろうか・・・・・・。皆無だったろう。

 「恵方巻き」が新たな節分行事として定着していくのなら、ぜひ、「恵方ってなに?」「歳徳神ってなに?」、「恵方詣ってなに?」ということに関する話題が広まり、旧暦や江戸といったことに、現代人がより一層関心を深める契機になって欲しいと思う。

   
 さぁ、もうじき「除夜の鐘」の音が・・・・・・残念ながら聞こえないが、明日は元旦。

 江戸時代との光景にギャップはあるが、私は「恵方詣」をするつもりだ。
 皆さんにとっても、よい年でありますように。
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by kogotokoubei | 2013-02-09 09:33 | 江戸関連 | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


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