「今どき落語 特別編」を見た感想。
2013年 01月 03日
四名の噺家による「夢の競演」という謳い文句であった。
2012年12月25日のブログ
BSジャパンのサイトから、下記のタイトル画像と概要を紹介した。
番組概要
落語協会、落語芸術協会、落語立川流、圓楽一門会、と。落語4団体から人気、実力を兼ね備えた4人が集合。番組タイトル通り、豪華出演者による、テレビでしか見られない、いや、テレビでも見られなかった夢の競演、
大晦日の落語ライブが実現しました。
雪の越後から帰宅し、先ほど録画していた四席を見たところ。
出演順の噺家とネタは次の通り。
春風亭一之輔 『鈴ヶ森』
春風亭昇太 『長命』
三遊亭円楽 『そば清』
立川志の輔 『買い物ブギ』
それぞれ、感想を短く書くことにする。
一之輔
余裕のマクラから、十八番へ。本人のブログでは、謙虚なことを書いていたが、いやいや、一之輔がもっとも良かったと思う。
昇太
ロンドンオリンピックでの柔道選手と、(いわゆる)国技のお相撲さんの対比を中心とするマクラは、まぁまぁ。本編は、白酒や喜多八などでこの噺を聴いている私としては、落語家としての昇太の経歴を考えると、あまりいただけない。
円楽
蕎麦にまつわるマクラから、なぜこんなに“偉そう”なのだろう、という印象。別に木久蔵ラーメンのまずい食べ方をすることもないと思うが、これもあの番組頼みのタレントの“性”か。とにかく、全体的に「聴かせてやる」的な雰囲気が強すぎる。本編も、落語としての“遊び”の少ない内容で、このネタで聴く側をこんなに緊張させてどうするのか・・・・・・。語り終えてからのインタビューで、「誰かが談志、志ん朝を継いでもらい、三人会をしたい」などと言う発言を聞いても、この人がとんでもない勘違いをしていることが分かる。噺家として肝腎な時期に寄席に出ることが出来なかったという外的要因もあるが、それ以上に、自分が上手いと思っている驕りが見える。
志の輔
十八番の新作。悪かろうはずはないのだが、内容が替わらないのが、少し疑問。すでに“古典化”したものとして、いじらないのだろうか・・・・・・。たしかに、志の輔の新作の中では『みどりの窓口』の次に続く傑作ネタの一つと思うが、たとえば、ドラッグストアでの買い物の内容に、口紅などのコスメティック系を入れるとか、従来の製品と違った物に替えるなどの改訂があっても良いように思いながら聴いていた。
『買い物ブギ』を聴きながら思ったのが、『ぜんざい公社』を、たとえばラーメンに置き換えて演じるなどは十分可能な気がするが、そういった試みをしている噺家さんはいるのだろうか?
上方の三代目桂文三が明治時代につくった『改良善哉』が元で、噺家さんが時代を反映したクスグリを入れるのはお約束だが、素材を“ぜんざい”から他の食べ物に替えた高座を聴いたことはない。昭和、平成版として、たとえばラーメンなら、スープや具などの素材も豊富で、きっと面白いネタとして成立するように思うが、誰か演ってくれないかなぁ。
『ラーメン公社』は、さておいて、この番組では、残念ながらレギュラー番組再開の案内はなかった。あくまで、年末用の特番だったようだ。
まぁ、この噺家さん達を知らない人が、この番組で初めて知るきっかけになったのなら、それも良し、としよう。それは、「一之輔って、いいね!」とか、「円楽や昇太って落語もできるんだ」、「志の輔って、ガッテンだけじゃないんだ!」という感想かもしれないが、この番組がきっかけで落語会、寄席に人が増えればそれも結構なことだろう。