新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月27日
2012年 12月 27日
昨年も七日目だった。その時は、この会に誘っていただいた落語仲間のYさんと一緒だったが、今年はお互いの都合が合わず単独での参上。
五時過ぎに着いた時は、伊藤夢葉の奇術の最中。会場の入りは、この時で六分位だったろうか。仲入り後には七分から八分近くまでになっていた。夢葉の後に桟敷へ。
演者とネタと所要時間、そして感想を短めに記していく。
ご本人が、「まだ五時二十一分です。まだまだお目当てが続きますから、どうぞお気楽に」と私にとっての開演時刻を教えてくれた。昨年のこの日も左龍から聴いたことを思い出した。こういう本寸法の滑稽噺はニンだ。すでに、中堅の雰囲気が出てきたように思う。持ち味の“目ぢから”が結構だった。
この人は久し振りなのだが、以前に比べると丸くなった、そんな印象だ。艶笑ネタを楽しく聴かせてくれた。
初である。私には懐かしい“オールナイトニッポン”ネタから始まり、「ビタースィートサンバ」のBGMに続き糸居五郎さんの真似だったが、あまり似ていない。他のあの時代の声帯模写も、客を置いてく芸に、ちょっとついていくのが難しい。
柳家が続いた後は古今亭のこの人。今年は聴く機会が少なかったので、暮れに出会えてうれしかった。高座に上がるだけで、その場がパッと明るくなる人は、そうはいないが、この人はその一人。そして、寄席に似合う噺家さんでもある。お内儀さん、旦那、そして権助、何気ない素振りや語り口でしっかり描き分ける、結構な高座だった。
半分位が、あまり笑えない地口の連続。やはり、私には、この落語協会常任理事さんの高座、馴染めない。
聴きたいネタだった。ゆたかが「坊ちゃん」のあらすじを十秒で説明するあたりでは、この素材を、「ただの我がまま男の物語」的に扱うのか、と思ったが、そこは笑組である。ゆたかが、物語のラストで坊ちゃんが世話になった下女の清をしっかり看取ったことに焦点をあてて“含蓄”をふって、かずおが、坊ちゃんの暴力騒ぎから“青春ドラマ”の教師と悪がき生徒の物語に引き込む。ところどころで「八つ墓村」や「吾輩は猫である」を効果的にクスグリとサゲで使って、なかなか味のあるネタになっていたと思う。このネタでは、かずおの動きと喋りが、なかなか効いていた。「青春って、そんなにうすらトンカチなもんなの」の科白が、なぜか気に入った。
喜多八の代演。主任の今松とこの人ということになると、今年二月の座間の二人会を思い出す。きっちりした江戸前の本寸法の高座は、寄席を引き締める。マクラのドーベルマンのネタも好きだ。
仲入り前は、この人。同じネタでも何度でも笑わせる巧みの芸。松本君には、たまにご馳走してあげているだろうなぁ、きっと。
初である。歌奴や百栄、志ん丸などと同じ平成20(2008)年9月の真打昇進。マクラで照れを見せてはいけない。なかなかの二枚目だが、他の同期に比べると、線が細いと言わざるを得ないか。ところどころ、センスの良いクスグリがあったりするので、化ける可能性はあるかもしれない。また時間を置いて聴いてみよう。
たった10分で、ハーモニカまで含む十八番を披露。この人、だんだん良くなっていくような気がする。
初である。小咄を半分して、短縮版の本編へ。師匠譲りかと思われる明るい高座は結構なのだが、季節感のない噺の選択と、ところどころ噛んでいたのが残念。
初であり、ぜひ聴きたかった人。結論から言うと、結構な高座だったし、私はこの人は好きだなぁ。すずめを焼酎に漬け込んだ米で酔わせて獲る話から、一瞬、「おやっ、鷺とりか?」と思ったが、カッパのネタに進み伊勢屋の蔵に釣竿に一円札を餌として投げ入れて、もっと大金を釣ろうという話でサゲた。
今振り返ってたった11分とは到底思えない高座。埋もれた噺を上方も含め掘り出して演じるらしいが、来年もぜひ聴いてみたい人を発見でき、うれしい限り。
今松への配慮だろう、短い時間で十八番をしっかり。しかし、傘と鞠の芸で、会場から鞠を投げたい人が一人もいなかったのは、なぜだろう。もしかすると、お客さんも、今松の時間づくりに協力するつもりで、見えない意思統一が出来ていたのかもしれない。
品川宿のことをマクラでふり始めて、ネタは「心中、それとも居残りか?」などと思っていたが、前者。それも「通し」である。結論から言うと、約40分でまとめた編集の妙には驚いたが、その結果として、個々の見せ場の時間配分が少なくなった印象で、そちらは残念。しかし、このへんは、むかし家今松という噺家について、ある程度の割り切りを持って楽しむことが大事なのだろう。
『大坂屋花鳥』の時にも感じたのだが、この人は、長講と言えども、不可欠な要素のみを組み合わせて、淡々としたリズムで、客が飽きない範囲で全編をかける、ということに重きを置いているのだろう。言ってみれば、足し算よりは引き算が基本なのかなぁ。
しかし、そういった今松流が功を奏して、二月の座間での『子別れ~通し~』のような傑作を生む、ということなのでろう。
『品川心中』の「通し」を生で聴くのは二度目。最初の、四年前の九月、神奈川県民ホールでさん喬の所要時間は、1時間15分だった。
2008年9月18日のブログ
そのほぼ半分で演じる今松の技量は、たしかに凄い。しかし、ある程度覚悟をしてやって来たお客さんがほとんどだったであろうから、あと10分位の足し算があっても良かったように思う。あるいは、過度な引き算部分の復活、ということなのかもしれない。
さて、今年も末広亭で、今松でお開き。初めて聴けた噺家さんも多く、なかでも桂藤兵衛に縁があったのが、うれしかった。帰宅し、旧暦11月15日の満月を見ながら、仕事納め、落語納めの酒を飲みながらのブログは、すぐには書き終わらず、翌日まで時間が必要だった。
さぁ、次はマイベスト十席選びである。これまた、楽しくも苦しくもある年の瀬の行事になったなぁ。もちろん、好きだからやるんだけどね^^
こちらがラッキーでございましたっ!!
昨日が新宿さんでは『初・坊っちゃん』でして。
仰る通り、帰京後のキヨとの話しを入れませんと
ただ作品の悪口になってしまいます。
重要な部分ではありますが、
あの『シーン…』とした間が怖くて怖くて…
ああいう所で修行の足りなさを痛感します。
でも及第点を頂けて…
(と、思ってていいですか?)
一安心ですっ!
現在、文学シリーズ四作目を執筆中ですが、
まだ内緒です。
ではどうぞ、良い年をお迎えくださいませ!
それは、ご縁があったんですね。
偉そうに言えば、十分に及第点だと思います^^
ただし、サゲを含め、まだまだ良くなりそうな予感がしました。
次の文学シリーズ執筆中ですか・・・楽しみです。
笑組さんのお二人も、ぜひ笑いとエスプリで、来年の日本を明るくしてください。
良いお年を!
悔しがっておられました(笑)今松師匠でも普段お演りになるときは50分を越えます。
私もまさかこのネタが来るとは思ってもみなかったので、マクラで品川心中だと判ったときには
時間内に出来るのかと終わるまでずっと緊張していました。
サゲもちょっと変えてらっしゃいましたね。魚籠(比丘尼)では判りにくいだろうとのことで。
何はともあれ、類稀なる時間を共有できましたこと、嬉しく思います。
また来年も宜しくお願い致します。良いお年をお迎えくださいませ。
ちなみに、私は下手の桟敷で、前の方から四人目位の場所でした。グレーの背広を着ておりました。もし、kisegawaさんも同じ側の桟敷でしたら、ごく近くにいらっしゃったのかもしれませんね^^
違っていたらごめんなさい。
こちらこそ、来年もよろしくお願いします。
