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月例 三三独演 イイノホール 12月11日

新装されたイイノホールに初参上。その豪華さに驚いた。改装前は、ブログを書く前、2007年3月12日の「白鳥・喬太郎ふたり会」で来たのが最後。「月例三三」は、なんと2010年7月の会以来になる。国立演芸場での会は、チケットが、あっという間、に完売になり、都合が良くてもなかなか縁がなかった。

 ホールの座席表を数えたら501席。ゆるやかなスロープが程よい勾配で、加えて座席位置を前後でずらしているので、ステージが良く見える。結構後ろの方だったが問題なかった。有楽町朝日ホールと同様に、大ホールにしては贅沢感と見やすさの両立したホールだと思う。かつて300席の国立演芸場での木戸銭3,000円から、一割アップしての3,300円となったが、今回は完売満席である。

「こんな環境で落語会やっていいんですか?」と聞きたくなるような会場での会、構成は次の通りだった。
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春風亭正太郎『反対俥』
柳家三三  『転宅』
柳家三三  『錦の袈裟』
(仲入り)
柳家三三  『にらみ返し』
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春風亭正太郎『反対俥』 (19:00-19:18)
 袴姿で登場。「えっ、またあのネタか?」と思った通り、10月の末広亭でも聴いたこの噺。マクラは、たい平と一緒に兵庫県但馬での落語会に行った際の、プロペラ機内でのハプニングのことなど。まぁ、乗り物ということでは本編と関連性のあるマクラということで妥当性はある。小朝が飛行機嫌いであったことは知らなかった。そうなんだ。
 さて、本編は、末広亭でも結構感心して聴いたが、ほぼ同じ出来栄え。やはり気になったのが、飛ばし屋の俥に乗って土手にぶつかった後の、「どうでもいいけど、この噺は疲れるねぇ」の一言。余裕がある、とも言えるが、私はこういう一言が好きではない。せっかく、スピード感もリズムもあって、噺本来の可笑しさで沸かせるところまで技量も上がっているのだから、無理に笑わせようとしないことを、今後の高座で期待したい。

柳家三三『転宅』 (19:19-19:53)
 マクラは、北海道の浜頓別まで落語会で行った話から。一緒だったのは、これまた、林家たい平。テレビの人気者は東に西に大忙しのようだ。日本最北端の食堂でも、お店の女将さんが「あれ、たい平ちゃん!」とサインや写真をせがむ。雪道で車がスリップしガードレールに衝突する事故があったらしい。除雪車がやってきて、仕事をする前に、「たい平さん、サインを!」となったようで、北の果てでも有名人。
 これらのマクラが約18分。「昔は、説教泥棒や講談泥棒なんてのがありまして・・・」「しかし、落語ドロはなかった・・・」という本編に関連するマクラがほぼ2分なので、ネタ自体は15分位だった。悪くはないのだが、喬太郎や白酒と比べると、妾のお菊の存在感が少し薄いような印象。もう少し太ると(?)いい感じになるのかもしれない^^

柳家三三『錦の袈裟』 (19:54-20:24)
 いったん下がって再登場。最近の独演会は喜多八、白酒も同じスタイルで示し合わせているかのようだ。たしかに三席かけるとなると、こうなるのかもしれない。
 マクラの十代目文治のエピソードは楽しかった。「仲入りじゃねぇ、お仲入りだ!」と前座にネタ帳の付け方で小言を言っている時など、小言になるしくじりを見つけた時に一瞬うれしそうな表情が可愛かった、とのこと。また、小言を言った後はけろっと忘れる“江戸っ子”を自称していらしたが、雑司ヶ谷に住んでいて“江戸っ子”を気取るのには、やや引け目を感じていたようだ、と三三の観察。そんな短いながらも結構な“江戸っ子”ネタのマクラの後で本編。
 サゲを含め現在の型にしたのが初代柳家小せん(めくらの小せん)と言われており、志ん生も円生も小せんに稽古をつけてんもらっている。だから、柳家の滑稽噺の範疇に入れてもよいのだろうと思う。
 なかなか結構な高座だった。なんとも程よくとぼけた与太郎がいい。与太郎に女房がいる設定の噺は、このネタだけだと思う。気丈で頭の切れる女房が、なぜ与太郎と一緒になったかという謎は置いておいて、この夫婦の会話が楽しい。また、袈裟を借りに行った時の和尚と与太郎の会話で、和尚の科白も効いている。与太郎の「早く袈裟を貸せ」というぞんざいな口ぶりに、「いつもあなたと話す時、にこにこしながら人を斬る言葉の数々には、これも万事修業と精進しております」と対応するが、この「万事修業」がアクセントとなっていた。
 昨年、平治(当時)との二人会で聴いた喬太郎、以前に横浜にぎわい座で聴いた白酒と比べると、会場の笑いは少なかったように思うが、必ずしも“大袈裟”な所作で笑わせるだけの噺でもない。無理なクスグリではなく、さりげないながらセンスの良さを感じる会話を挟んだ三三なりの本寸法の高座、今年のマイベスト十席候補としたい。

柳家三三『にらみ返し』 (20:41-21:09)
 「大晦日 箱提灯は怖くなし」など、大つごもりの庶民感覚などについてのマクラの後、ネタ出しされていた、大師匠から伝わる旬の噺へつないだ。
 大晦日にあちこちのツケを払おうにも金がなくて困っている八五郎夫婦の噺。このネタは、前半が『掛取り』と似ており、サゲは『言訳座頭』と同じ。三つの噺とも、大晦日に回収に来るたまったツケをいかに払わずに春まで待たせるか、というネタ。『掛取り』は、狂歌や歌舞伎、喧嘩など相手の趣味や好みに合わせた芸で応対し、「そこまでしてくれたのなら、しょうがない、春まで待ちましょう」と気持ちよく(?)撤退させる。噺家の持ち芸を披露できるネタで、市馬は歌いまくる^^
 『掛取り』で喧嘩好きの相手とのやりとりが、この噺における八五郎が薪屋を撤退させる内容と共通する。
 『言訳座頭』は、口の上手い座頭の富市に頼んで、店まで一緒に出向き、口八丁でなんとか支払を待ってもらう。他の二つの噺が、家で待って対応するのに比べて、出向く分だけ積極的(?)。
 そして、この噺は、借金取りの来襲(?)を前に困っているところで、通りで「借金の言訳しましょう~」と言いながら歩いている男がいて、その男に対応を頼むという設定。
 この男、米屋、魚屋、そして金貸しの代わりに借金取りに来た男が来ても、ただ煙草をふかして、一言もしゃべらず、じろっと相手を睨みつけるだけ。相手が気味悪がって退散する、という筋。約束の時間がきて男が帰ろうとすると、「まだ残っているんだよ、金を払うから頼む」と八五郎が言うが、「これから自宅で睨みます」でサゲ。
 四代目の桂文吾から習って三代目の小さんが東京に移した、柳家伝統のネタ。なかなか結構だったが、男の睨む顔が、今一つの迫力だったかもしれない。また、米屋の場面で、米屋と男の所作が混在したような印象。カミシモをつける際に一瞬逆になったような気がするのは、私だけかなぁ。


 三席あるなら、一席は人情噺も欲しいと思わないでもない。しかし、以前人情噺中心の三三の落語会の感想で、柳家の滑稽噺をもっとかけて欲しいと書いてきた者としては、ネタ選びに文句は言えないかもしれないなぁ。

 立派な会場の長いエスカレーターを降り、満足家な表情を浮かべた多くのお客様に交じって霞ヶ関の駅に向かった。帰宅は日付変更線を越えることはなかったが、呑みながら他の方のブログを見てコメントなどを書き入れているうちに日付が変わった。今年行ける落語会、寄席も数えるほどになってきたなぁ。
Commented by 佐平次 at 2012-12-13 10:07
このところいい落語会の結果報告に接するばかり、家で沈潜してます。
今日は久しぶりに小三治、うきうき^^。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-12-13 12:25
あら、今日は小三治、明日は春団治、ですね^^

師走選挙、さてどうなることやら・・・・・・。

Commented by YOO at 2012-12-17 00:10
ラジオで言ってましたが、落語は300席がいいところだと思います。
後ろから2列目ではやはりにらみ返しの面白さはいまいちでしたね。
しかし衆院選はなんなのですか。日本はこんなものなのですね。がっくりです。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-12-17 10:13
私も300席位、国立演芸場クラスが居心地がいいですね。
しかし、喬太郎だって、大ホールの会でも依頼があると断らないでしょう^^
この会、YOOさんは私よりも後ろの席だったようですね。500席とはいえイイノホールは座席間隔を広めにとってあるから、後方の席では高座と距離ができますね。
また、落語会をするのは、立派すぎて落ち着かないような気もします。
とは言いながら1月の一之輔がゲストの会のチケットを取りました。
結構後ろの席です。オペラグラスを持って行こうかと思っています^^

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by kogotokoubei | 2012-12-12 00:30 | 寄席・落語会 | Trackback | Comments(4)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


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