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噺の話

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<銀座の噺小屋>  喜多八膝栗毛 秋之瞬 博品館劇場 11月20日

五月、八月に続いて銀座に参上。会場はほぼ満席。固定ファンにご新規が毎度加わっている印象。人気は本物である。次のような構成だった。

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(開口一番 春風亭朝也 『芋俵』)
柳家喜多八 『黄金の大黒』
柳家喜多八 『一つ穴』
(仲入り)
ストレート松浦 ジャグリング
柳家喜多八 『火事息子』
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春風亭朝也『芋俵』 (19:00-19:31)
 どう考えても、喜多八の会場入りが遅れたための“つなぎ”があったように思う。そうでなければ朝也がネタと無関係なマクラを十分もダラダラと続けるわけがない。ネタのマクラ三分、本編十八分合わせて約三十分の開口一番は、いくら高座で頑張ろうと、眠気とストレスをさそった。朝也の高座は、今後寄席ででも聴き直したい。

柳家喜多八『黄金の大黒』 (19:32-19:57)
 このネタでこれだけ笑ったのは初めてである。金ちゃんが光る。大家が呼んでいるということで長屋一同が「店賃の催促か」と顔を合わせて、「おまえ、どの位たまってる?」と聞く“家賃問答”が発端。そして、実は大家の家で、子供が庭から黄金(きん)の大黒を掘り出したのでお祝いをするということが分かり、正装するのに羽織がいるだろう、ということになったが長屋一同で羽織を持っている者が一人。その一枚の羽織を順番に来て、交替で大家に祝いの口上をする“羽織リレー”のドタバタ、そして“酒盛り”まで、金ちゃんが光った爆笑の高座。
 長屋の連中の問答の途中途中で、「ちょいとぅ、うかがいやす」と口を挟むことで、可笑しさが増す。与太郎とはちょっと味わいの違う、とぼけた口上(「うけたまがたがた・・・・・・・」)で大家を煙に巻き、長屋仲間を呆れさせる場面など、金ちゃんの姿に会場から笑いが途切れない。
 初代春団治の十八番を、柳家金語楼が東京に移したと言われるネタだが、春団治の高座も、さぞこのように爆笑の渦を巻き起こしたであろうと思わせた。残念ながらマクラの途中、それも文楽の形見の着物の説明の最中、で鳴った携帯などには負けない熱演。もちろん、今年のマイベスト十席候補である。

柳家喜多八『一つ穴』 (19:58-20:21)
 一度下がって、すぐに登場。「正直あまり好きな噺じゃない」「それでも、たまには虫干ししないと」と、この噺。ブログを書き始める前に聴いたことがあるが、それ以来。他の人で聴いたことはない。
 とにかく珍しい噺。それはデータでも実証(?)されていて、長井好弘著『新宿末広亭のネタ帳』に、2001年から七年間に渡る末広亭のネタ帳の分析の結果、該当する七年間で一度もかからなかったネタの一つとして紹介されている。ちなみに、その七年間で一度も末広亭でかからなかったネタは次のようなもの。 石返し、近江八景、菊枝の仏壇、鍬潟、ざこ八、紫檀楼古木、大仏餅、搗屋幸兵衛、そして、一つ穴。
 古い噺らしい。いわゆる“悋気ネタ”で、本妻が、旦那がいる妾宅に権助を供に乗り込んでのドタバタ。マクラで「怒ればふてくされる、怒鳴れば泣く、殺せば夜中に化けて出る」は、この手の噺での喜多八の定番かと思うが、いつ聴いてもクスッと笑える。 筋書きは詳しく書かないが、本妻と妾の演じ分けも結構だし、権助もバイプレーヤーとして光る。
 喜多八は、侍モノもはまれば、一席目のような長屋ネタも結構、そして、女性を描くのも上手い。この人の引き出しの多さには、聴くたびに感心させられる。

ストレート松浦 ジャグリング (20:36-20:53)
 初めてである。名前は聴いたことがあって、一度見てみたいと思っていた。流石の芸に感服である。なかでも、傘やパイロンまでも二本の棒で叩きながら空中に持ち上げていく“デビルスティック”が凄かった。もし、糸がついている手品だとしても、それはそれで見事。洋風のジャグリングと太神楽の良さをミックスしたような、若手の有望株といえるだろう。

柳家喜多八『火事息子』 (20:54-21:21)
 唯一ネタ出しされていた噺。 開口一番の三十分から始まったために時間に押され、相当端折ったように思う。志ん生版に近い五分ほどの短いマクラから本編になったが、時間の余裕があれば、江戸の火消しの仕組みや臥煙のことなどを、もう少し説明するのではなかろうか。
 肝となる、親子の情愛を描く場面では、母親を中心にある程度の時間を割いたものの、全体として急ぎ足の印象は免れない。悪くはないが、たぶんこの人のこの噺のベストとは言えないはず。多くの昭和の名人たちが手がける噺を、どう喜多八が魅せてくれるか期待していたのだが、少し残念。
 また、一席目に続き、会場からの妨害。父親が勘当した息子を前にして、昔を回想してしみじみ語る場面での携帯の音には、まったく興醒めだった。この会には、そういうお客さんがいないと思っていたのが・・・・・・。
 なお、このネタの生の高座は、ほぼ一年前の雲助以来。その時のブログには江國滋著『落語手帖』の引用を含めてこの噺について少し詳しく書いたので、ご興味のある方はご覧のほどを。
2011年11月22日のブログ

 携帯の音に加えて、会場の設備も年季が入っているため、体を揺すって笑っている人の椅子からは、結構“キー、キー”と音が出る。一席目などは会場全体の笑い声にかき消され気味だったが、二席目、三席目では、少なからず気になる音だった。博品館さんには、ぜひメンテナンスを期待したい。

 さて、終演後は、この会の後で恒例となりつつある、東銀座のお店での、久し振りにレギュラー(?)三名が揃った居残り会。私の知り合いのMご夫妻も加わり五人で、絶品の刺身、馬刺し、薩摩揚げなどと、落語の話を肴に話題は尽きない。その話題の一つは、会場で配布されたプログラムにあった次のクイズ。
 喜多八の火事が登場するネタの中で、『火事息子』はKM、『鼠穴』はNA、『二番煎じ』NS、『富久』をTQとすると、KCは何か?
 私が火事のことがネタの中にあったと勘違いして『駒長』ではないかと言ったのだが、Mさんの奥さんに、きっぱりと「駒長には火事は出ない!」と指摘され、皆でさて何だろう、となったのだが、他の話題に花が咲き、空の徳利は増え続け、そのままお開き。もちろん日付変更線は越えて帰宅。
 連日の遅い帰宅で機嫌の悪そうな連れ合いとは、なるべく目を合わせず(「怒ればふてくされる・・・・・・」の文句を思い出した)、二匹のシーズーに「ただいま」を言い、矢野誠一著『落語手帖』をめくった。すぐにKCは『首提灯』であろうと、当たりがついた。しかし、読み方は「くびぢょうちん」だから、KCではないだろう。「首」と「提灯」を分けて読めば、KCではあるけどね。Yさんなど、答えが思いつかず、結構悶々としていたのだ。やや人騒がせなクイズであった。そもそも、KMだとか、NAなどと暗号めいた遊び、私は女子高生の新語のような印象で、あまり良い趣味とは思えない。少しだけパソコンを開いたが、両の瞼が仲良くなって、風呂に入って熟睡。年齢のせいか、最近は呑んでも翌朝は早く目が覚める。

 会場では次回のチケットを売っていたが、二月二十八日の開催だった。時期的には何とも言えない期末近くなので、購入は見合わせた。もし都合がつけば行こうとも思うが、今回の携帯や椅子の鳴る音、プログラムの妙なクイズなどの諸々から、ちょっと気持ちが萎えてもいる。まぁ、時間がたって、その気になって、都合がつくかどうかで考えよう。
 この会、必ずしもネタ出しされた高座よりも、一席目の方が良い印象のことが多い。『短命』や『長屋の算術』などは、ネタ出しされていない一席目の高座だった。また、それが落語というものなのかもしれない。そんなことも帰りの電車で思い浮かべていたことを、朝になって思い出した。『黄金の大黒』の金ちゃんの科白も、未だに耳に残っている。日々猛スピードで減少する脳細胞だが、まだ、かろうじて在庫がありそうだ。
Commented by 佐平次 at 2012-11-22 12:08 x
期待していくと裏切られ、なにげなく聴いた噺が良くて、、やる方も張り切ったらダメでつなぎでやったらよくて、、だから落語は面白い^^。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-11-22 12:54 x
まったく、その通りですね。

誘惑に負けず(?)佐平次さんのブログを読まずに書いて、公開してから拝見したら、示し合わせたような評価で、ちょっとびっくりでした^^
居残り会で、ある程度は話した内容でしたが、『火事息子』は、もう少し評価されるのかと思っていました。

時間に追われる、ということもトリネタの場合は影響を受けるでしょうね。
ネタ出しした噺を一席目にかける、という手もあるか・・・・・・。
同じかなぁ、結果は。
落語、あるいは芸の奥深さなのでしょう。

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by kogotokoubei | 2012-11-21 06:56 | 寄席・落語会 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛