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“賭場荒らし”政権後の大根役者の群れ—「内田樹の研究室」の記事より。

11月19日付けの「内田樹の研究室」は、ドジョウ野田による解散後の、いわゆる“第三極”をめぐる醜い離合集散について。冒頭部分を、まずご紹介。
「内田樹の研究室」2012年11月19日

幼児化する政治とフェアプレイ精神

できたばかりの石原慎太郎の太陽の党が解党して、橋下徹の日本維新の会と合流。太陽の党との合流話を一夜で反古にされた河村たかしの減税日本は「減税の看板をはずしたら仲間にいれてやる」と恫喝されて落ち込んでいる。渡辺喜美のみんなの党は維新への離党者が続出しているが生き延びるために維新との選挙協力の方向を探っている。
いわゆる第三極政局は「あの業界」の離合集散劇とよく似ている。
党名を「なんとか組」に替えて、笠原和夫にシナリオを書いてもらったらずいぶん面白い映画ができそうである。
残念なのは、登場人物の中に感情移入できる人物がひとりもいないことである。
状況的には河村たかしと渡辺喜美が『総長賭博』の中井信次(鶴田浩二)や『昭和残侠伝・人斬り唐獅子』における風間重吉(池部良)の役柄に近い「引き裂かれ」状態にある。甘言を弄しあるいは恫喝を加えて縄張りを奪おうとする新興勢力に抗して、なんとか平和裏に組を守ろうとするのだが、うち続くあまりの理不尽な仕打ちにぶち切れて、全員斬り殺して自分も死ぬ・・・という悲劇的役どころは彼らにこそふさわしいのだが、ふたりともそこまでの侠気はなさそうである。


 内田樹が東映任侠映画に詳しいとは思わなかった。きっと好きなのだろう。私も嫌いではない。

 『網走番外地』『昭和残侠伝』そして『日本任侠伝』のシリーズ、結構見たなぁ。小学校の頃、小さな田舎の映画館では、東映の怪獣映画との任侠映画の二本立てや三本立てのことがあったように記憶する。学生時代は、深夜映画で番外地三本立てなどを見た。映画館を出る客は皆、肩をいからせ、健さんになり切っていたものだ^^

 まさに、“感情移入”によって、高倉健や鶴田浩二になり切っていたあの頃に比べ、内田の指摘の通り、今回の衆院選を巡るつまらないドラマの役者は、感情移入などできない幼稚な大根役者ばかりである。

 二年前の旧暦での命日に、幡髄院長兵衛のことを書いた。少しその内容を引用する。2010年8月27日のブログ
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 侠客という言葉からは、侠気とか任侠という言葉をイメージする。この「任侠」「侠気」という言葉、私が持っている『新明解国語辞典』-第四版-(三省堂)によると、こうある。
にんきょう【任侠】「おとこぎ」の意の漢語的表現。じんきょう。「--の徒」「仁侠」とも書く。
きょうき【侠気】おとこぎ。「--の有る人」
 それでは、「おとこぎ」って何?、ということで調べると、「男」の熟語として、こうある。
男気 弱い者が苦しんでいることを知って、黙って見のがせない気性。侠気。

 ここで素朴な疑問。
 幡随院長兵衛→侠客の元祖。侠気、任侠の人。→弱い者の味方。
 やくざ、あるいは暴力団→???
 
 日本の広域暴力団も、港湾労働者などの口入れ稼業を一つの生業としているので長兵衛と同業者と言える。その仕事そのものは、もちろん「反社会的」ではない。もし、そんなことを言うと、テンプXXXX、リクルーXXXX、とか言う会社が属する現在の派遣業界を敵に回すことになる(笑)

 “任侠”を扱った『中国任侠伝』のあとがきで、著者の陳舜臣さんがこう書いている。
 

 タイトルの『任侠』は、思い切ってひろい意味に解していただきたい。常軌に従わず、はみ出してしまった人たちの物語を集めたものである。その行為は肯定すべきものもあれば、否定するしかないものもある。


 任侠の者≒常軌を逸した者、という解釈は分かりやすい。しかし、陳さんの本に登場する任侠の者とは、たとえば秦の始皇帝を暗殺しようとした荊軻など、“中国四千年”の歴史から選ばれた人物なので、ちょっと”日本の任侠“とは、趣もスケールも異なる。

 さて、話が発散してきたがあらためて、今日は“侠客”の元祖、弱い者の味方で男の中の男、と言われた幡随院長兵衛の命日。なかなか、こんな人はいない。あの時代の空気と江戸という場だったからこそ、長兵衛という本物の“侠客”が生まれたのだろう。
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 本来の“任侠”が、弱い者の味方であって、今回の衆院選を巡る永田町の大根役者は、権力の座、いわば強い者になろうとあがいているのだから、そもそも“役者が違う”

 任侠映画で思いついたのだが、野田ドジョウ政権は、“賭場荒らし”政権と言ってよいかもしれない。国民の血税という賭け金を、いかに大震災やフクシマの復興のために使うか、という大事な政治の舞台に土足で上がりこんで、復興予算を不適切な用途に使ったり、日々の暮らしもままならない被災者への緊急かつ適切な税金の投入などをせずに、まるで自分達の懐に賭け金を掠め取ったと同然の政権だと私は思っているので、“賭場荒らし”政権。

 その“賭場荒らし”の後の混乱の中で、果たして全うな仁義を貫き通す侠客としての政治家は、残念ながら見当たらない。

 内田は、任侠でマクラをとった後、“いじめっ子”橋下のことから、テニスでの英国紳士のネタにつないだ。

橋下徹という人はほんとうに「いじめ」の達人だと思う。
どうすれば、人が傷つき、自尊感情を奪われ、生きる意欲を損なわれるか、その方法を熟知している。
ある種の才能というほかない。
減税日本とみんなの党の「いじめ」方をみていると、それがよくわかる。
人をいじめるチャンスがあると、どうしてもそれを見逃すことができないのだ。
たぶんこれがこの人に取り憑いた病なのだろう。
テニスで、相手がすべって転んだときにスマッシュを控えるのは英国紳士的な「フェアプレイ」であり、これができるかどうかで人間の質が判断される。
テニスの場合、強打するか、相手の立ち上がりを待つかの判断はコンマ何秒のうちに下される。政治的思量の暇はない。
フェアプレイ精神が身体化されていない人間にはそういうプレイはしたくてもできない。
だから、英国人は「そこ」を見るのである。
テニス技術の巧拙や勝敗の帰趨よりも、そのふるまいができるかどうかが、そのプレイヤーがリーダーとしてふさわしいかどうかのチェックポイントになるからである。


 この後、テニスつながりで、ジョン・ル・カレの新作『われらが背きしもの』を引用している。

 この記事は、次のようにサゲられている。

繰り返し書いていることだが、また繰り返す。
今の日本の政治システムが劣化しているのは、システムのせいではない。
人間の質が劣化しているのである。
だから、制度の改変や政策の適否について、百万語を費やしても無駄である。
政治的公約や連帯の約束を一夜にして反古にすること、「勝ち馬に乗る」ことを政治家として生き残るために
「当たり前」のことだと思っているような人間たちばかりが政治家になりたがっている。
統治者になるための訓練を受けたことがない人間たちが統治システムに群がっている。
中学生的な「いじめの政治学」には長けているが、「フェアプレイ精神」については聴いたこともないという「こども」たちが政治の世界に跳梁している。
日本の政治は12月の総選挙で少しは変わるのだろうか?
私にはわからない。
これ以上政治が幼児化することがないように祈るだけである。



 たしかに、“賭場荒らし”の後の“第三極”をめぐる永田町には、幼稚さと役者としての大根ぶりばかり目立つのだが、現状の議席数で“第三”勢力となる可能性が高いのは、小沢一郎の“国民の生活が第一”党のはず。陸山会問題(あれは“事件”とは言えないのではなかろうか)も無罪確定になったのに、マスコミは今度はまったく小沢一郎を無視している。もちろん、メディアの暴力が小沢一郎裁判に一肌も二肌も加勢していたのに、無罪になって彼らが謝罪するわけもない。

 もしかすると、“幼稚性”の残る永田町よりもタチが悪いのは、“仁義なき”マスコミなのではないか、とも思う。橋下や石原のことなどの記事の頻度に比べ、小沢一郎や「生活」党の記事のなんとも少ないことか。
 その背後には、いまだに小沢一郎という人物を抹殺しようとするマスコミの連携と、マスコミを動かす黒幕が見え隠れしている。
Commented by 佐平次 at 2012-11-21 09:30 x
東京から維新で立候補する男たちの記者会見を大きく報道したり、ひどすぎますね。
もう新聞をとるのをやめようかと、、何度目だろう^^。

Commented by YOO at 2012-11-21 10:54 x
まったくおっしゃる通りだと思います。今のマスコミは報道機関などではなく、情報による大衆操作機関以外の何ものでもありません。「今の」ではなく戦前から一貫してそうだったというのは、恥ずかしながらネットを見るようになってから気付きました。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-11-21 12:04 x
政治も三流、メディアも三流ばかり、ということでしょうか。
まっとうなことを記事で書こうとしても、それを許さない新聞社やテレビ局の上からの力が働いているように思います。
困ったものですね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-11-21 12:09 x
相当覚悟して、あるいは自分なりの眼鏡でメディアと相対しなければならないようです。

“老害”石原に、“いじめの達人”橋下で、この国が良くなるはずがありません。
維新になびく日和見議員のことは、当選落選に限らず、しっかりと覚えておこうと思います。

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by kogotokoubei | 2012-11-20 00:34 | 責任者出て来い! | Trackback | Comments(4)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛