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噺の話

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第30回 白酒ひとり 国立演芸場 11月12日

木戸銭2,500円ということもあり、都合が良くてもこの会のチケットを取るのは運任せなのだが、今回は何とか入手できて、先週の今松に続き隼町へ。この会は三月の第26回以来。今回も会場前には「満員御礼」の立札。

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 開演前の会場のBGMはブルース。なかなか渋いぜ、白酒。次のような構成だった。
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(開口一番 柳家さん坊 『金明竹』)
桃月庵白酒 『代脈』
桃月庵白酒 アンケートへの回答
         『心眼』
(仲入り)
桃月庵白酒 『居残り佐平次』
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柳家さん坊『金明竹』 (18:50-18:59)
 三月の、この会以来二度目。見た目は白酒に似ていないこともない。持ち時間に合わせて上方者の言い立てが二回というショートバージョンの中に、自分自身が兄の結婚式に出た際のエピソードをはさんだ。良く言えば“余裕のある高座”とも言えるが、悪く言えば“遊びすぎ”と言える。どちらかと言うと、私は後者の感じで聴いていた。まだ、今後聴いてみなければ何とも言えない前座さん。

桃月庵白酒『代脈』 (19:00-19:32)
 テレビ(「知りたがり」)に出たこと、そして映画(『ももいろそらを』)にも出て、第二弾出演も予定されており来年二月は落語会を休止して撮影の予定らしい。テレビのことで白鳥のことをイジッて会場を沸かす。また、昨日は新潟で三三との二人会が大入りだったらしい。
 新潟の落語会のことから、地域落語会の後援者とし楽屋に(大入りの場合だけ^^)挨拶に来るのが、代議士、新聞社、そして医者とふって本編へ。この人が銀南なら、はずすわけがない。しきりに汗を拭うのは、会場も結構蒸し暑かったからやむを得ないだろう。

桃月庵白酒 アンケートへの回答 (19:33-19:48)
桃月庵白酒 『心眼』 (19:48-20:11)
 いったん下がって、すぐに再登場。まず、恒例のアンケートへの回答から。配布されたプログラムにも、前回のアンケートによる質問への回答が一部記載されていたが、その他のいくつかの質問に答える。学生時代の思い出は、といった質問に落研時代のネタ選びのことを語っていたのが印象的だった。とにかく短いネタを探して、『水道のゴム屋』や『探偵うどん』などをかけていたらしい。どちらもレアなネタである^^
 入門してからの稽古で、小さん(もちろん五代目)の上・下(カミ・シモ)のつけ方を真似て、ほとんど顔を動かさないで演っていたら、師匠に「それじゃぁ、わからねぇだろう。ここを見て!」と師匠が空中に掲げた拳を見て、はっきりと上・下をつけるよう指導されたとのこと。稽古ネタつながりで、うどんと蕎麦の食べ方、目の不自由(本当は、いわゆる差別用語で言っていたが)な方も、生まれつきか後天的かで、杖の突き方が違う・・・と、本編へ。
 圓朝の末弟に目の不自由な圓丸という音曲師がいて、明治初頭にこの人が横浜で働いていた時の回顧談を聴いて圓朝が創作したと言われる噺。八代目文楽の十八番として有名。白酒も語っていたが、寄席などで会場に目の不自由な方がいるとかけられないネタなので、今日では、なかなか聴く機会がない。私は一昨年五月のらくだ亭でのさん喬以来。2010年5月17日のブログ
 短い噺ではあったが、非常に結構な高座だった。まず、梅喜の盲人としての所作の演出が過剰になり過ぎずに、違和感がなかったことが、全体を通して噺をしっかりさせていた。ネタとして重要な、前半における女房のお竹と梅喜夫婦の情愛の深さも、見事に演じられていたように思う。開眼してから上総屋の旦那と浅草を歩く場面、杖を小脇に抱えて歩く梅喜の所作など細かな演技もしっかり。芸者小春と梅喜との、待合での艶っぽいやりとりの場面を少し端折ったようにも思うが、少しテレもあったか時間の関係かは不明。しかし、この場面で白酒が演じる小春が色っぽい年増に見えるから、不思議だ。
 後で気が付いたが、この会に初参上の昨年12月第24回で、同じような構成の同じ二席目で『景清』を聴いている。2011年12月12日のブログ
 短いながらも、印象的な芸の見せ場のある噺ということで、このネタは白酒にニンなのかもしれない。冒頭から夢が覚めてのサゲまで、短編小説の佳作に出会ったような心地よい高座。今年のマイベスト十席の候補としたい。

桃月庵白酒『居残り佐平次』 (20:26-21:09)
 マクラもほどほどに本編へ。この人の佐平次だから、やはり聴かせどころは居残った後の幇間的な佐平次の姿になる。特に“霞(かすみ)さんのいい人”である勝っあんが霞さんを待つ部屋に、下地(の代わりに蕎麦つゆ)を持って上り込んでからの場面が頗る可笑しい。佐平次にヨイショしまくられて気持ちが良くなった勝っあんが、「煙草でも買え!」と祝儀を出すあたりの呼吸は、実に結構。この店をほとんど佐平次が取り仕切ってる、としていたが、それなら雇われちまうんじゃないの・・・と思わないでもなかった^^
 店の若い衆の反感を買って主に言いつけられ、主から家に帰るよう諭された際の、言わば定番とも言える初代柳家小せんの名演出である白浪五人男忠信利平の科白は言わず、この人らしく今日風に言い替えていたが、それもなかなか可笑しかった。今後聴く人のために、内容は明かさないことにしよう。
 悪くはない。大いに笑いもした。しかし、まだ十分にこなれていない印象も受けた。志ん朝や談志を引き合いにしては可哀そうだが、たとえば権太楼版の佐平次などは、佐平次の奮闘ぶりで映像が目に浮かぶ演出があったことを思い出す。白酒ならまだ磨ける、そんな印象。あくまで想像だが、あと五分でも時間があれば加えたい演出もあったのではなかろうか。そういう意味では、アンケートの時間をもう少し削ってでも、こういう大ネタに時間をふって欲しかったような気がしないでもない。


 終演後のお客さんの顔は、皆さん満足気であったし、私も三席とも楽しめた。特に『心眼』には、白酒の底力を見た気がする。盲人が主役の噺は、扇辰の『麻のれん』が印象的なのだが、白酒もあなどれない。そんなことを、久し振りに居残り会がなくまっすぐ帰る電車の中で思っていた。帰宅後、高座を思い出しながらの一杯が、旨かった。
Commented by 佐平次 at 2012-11-14 09:48 x
最後の方は私のことを書かれているようなくすぐったい気持ちで読ませていただきました^^。
このところすっかり登板回数負けてるなあ。

Commented by ほめ・く at 2012-11-14 10:25 x
子どもの頃、隣家に盲人夫婦が住んでいたのですが、盲人の方は役者みたいな良い男で奥さんは対照的な容貌でしたので、「心眼」はリアルなんです。
このネタ、現役では喬太郎だと思います。「按摩の炬燵」もこの人。
「景清」は若手で三之助がなかなか結構でした。
「居残り」は白酒にはちと荷が重かったでしょうか。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-11-14 12:03 x
阿波の旅、民宿は大正解だったようですね。
次回「居残り会・月例会」でいろいろと聞かせていただきます^^

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-11-14 12:27 x
お越しかと思い、それらしい人がいないか、会場を見回していました^^

まるで梅喜・お竹のようなご夫婦がお隣にいらっしゃったんですね!

喬太郎のこの噺は未見です。
三之助、最近聴いてないなぁ。好きなんですけどね。
白酒の「居残り」、荷が重いというより、彼のネタにまだ熟されていない、そんな印象です。
「心眼」が良すぎたから、そう思うのかもしれません。

Commented by 彗風月 at 2012-11-14 14:52 x
白酒師は、ブルースやロックに造詣が深いのだそうです。今は分かりませんが、学生時代の着メロがキング・クリムゾンだったと聞いたことがあります。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-11-14 15:53 x
三月の会では、BGMがジャズでした。
あえて演奏者や曲名は私のブログでは明かしませんでした。
以前にどなたかがブログでBGMの詳細を書いたところ、JASRACから問い合わせがあったとのこと^^
今回のブルースも何曲かは分かりましたがね^^

学生時代の着メロがクリムゾン!?
白酒は年齢を誤魔化してるんじゃないでしょうか^^

Commented by ほめ・く at 2012-11-15 07:26 x
先日のコメントを書いていて当時の事を思い出し、拙ブログに「実録・心眼」という記事をアップしましたのでお報せします。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-11-15 09:04 x
ご連絡ありがとうございます。
楽しく拝見しました。
事実は小説、いや落語より奇なり、ってえやつですね。

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by kogotokoubei | 2012-11-12 23:17 | 寄席・落語会 | Comments(8)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛