噺の話

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新宿末広亭 九月下席 十一代目桂文治襲名披露興行 9月26日

九月下席は、鈴本が落語協会の二人の真打昇進披露興行、末広亭は十一代目桂文治襲名披露興行と、いずれもお目出度い席が並んでいる。志ん陽、文菊は、後日どこかに行くつもり。末広での文治にはどうしても行きたいと思っていて、何とか六日目の昨夜もぐり込むことができた。
 都内での仕事を終えコンビニで助六とお茶を買って、六時少し前に会場入り。見た目は満席。空席は一階桟敷か二階席とのこと。一階の桟敷も相当後ろの方しか空きがなく、二階に上がる。結構、末広の二階は好きなのだ。
 芸協でもこれだけ客が入るのである。席亭も喜んでいるだろう。高座では、ぴろきが会場を沸かせていた。色物は芸協もまったく落語協会に負けていないと思う。
 二階の最前列は、ほとんど埋まっていた。二列目と三列目が空いていて、紐で囲われ「予約席」の札がしてある。後援会の方かなぁ、などと思いながら、そのすぐ後ろの空いた席に落ち着いた。聞けた高座の所要時間と感想を記したい。

桂伸治『お菊の皿』 (15分)
 十一代目の入門より十二年前に先代文治門下になった兄弟子。相変わらずの明るい高座。途中ややリズムを乱したが、ぴろきが温めた会場の温度をしっかりキープした。ちなみに、NHK新人演芸大賞決勝進出を決めた宮治の師匠である。

桂伸乃介『高砂や』 (14分)
 昭和四十五年に先代に入門した、十代目文治一門の総領弟子にあたるが、あえて小言を。なかなか結婚できなかった伊勢屋の若旦那のことを「昇太のように結婚できなかった」とか、ご祝儀のネタで「根岸の方で地下室に隠していたやつだよ」といったクスグリを入れるのだが、ベテランがこういうネタで笑いをとろうとすることは、感心しない。噺本来の可笑しさだけで挑んで欲しい。それができるだけの経験も技量もあるはずだ。

*この伸乃介の高座の途中で、予約席に学生(高校生)が二十人ばかりドヤドヤと入場(?)。果たしてどういう関係か、あるいは修学旅行か。その疑問は十一代目のトリの高座でようやく判明するのだった。

北見伸・スティファニー 奇術 (14分)
 北見伸は、相変わらずスマートな技を披露。しかし、スティファニーの、一つづつの芸の後に「ハイ!」と言って拍手を強要する姿には、やや興ざめ。手袋をして指を切るネタも、あまり好きではない。

桂米助『新聞記事』 (15分)
 今春、池袋での芸協の真打昇進披露興行で聴いた『看板のピン』もそうだったが、米助が古典をかける姿が、なぜか新鮮だ。正直なところ、“上手い”とは言えない。彼らしいクスグリで笑いは取るが、ところどころ科白まわしに苦労している部分などもあり、漫談なら野球のことなど含めいくらでも会場を沸かすネタを持ちながら、古典に挑戦(?)する了見を、私は好ましく思う。

三遊亭小遊三『引っ越しの夢』 (18分)
 仲入り前は、この人。「私の好きな言葉に、夜這いというのがありまして」というマクラが、まさにニンである。本編は、短く刈り込んではいたが、夜這いに失敗する三人-ドガチャカの番頭、二番番頭の徳蔵、そして井戸に堕ちる久七-を中心に、楽しい高座。騒ぎを聴きつけてやってくるのがお内儀ではなく旦那であったり、通常の設定との違いなどもあるが、まったく影響はない。芸協の副会長、単にトイレで尻を拭くばかりではない実力を示していた。

口上 (13分)
 仲入り後、幕が上がって舞台に六人が並ぶ。下手から司会の伸乃介、米助、鶴瓶、文治、小遊三、歌丸。芸協らしい、くだけた口上が続いたが、その中で印象的だったのは鶴瓶。小学生の時に先代が伸治時代の『堀の内』を(ラジオ?)で聴いて笑い転げ、それから『いらちの愛宕詣り』を友達の前で披露するようになったらしい。だから、このネタだけは歴史(?)があるわけだ。さて、松鶴に入門して半年、師匠から一切ネタを稽古してもらっていないのに、師匠が審査員をしている落語大会に出るように言われて、オートバイに乗ったアンチャンの登場する『いらち~』で臨んだが、香川登志緒から酷評され落選。しかし、帰り際に師匠から「お前が一番おもしろかったでぇ」と褒めてもらえた、と思い出を語る。
 私も六月の池袋で昇進披露興行に出向いたが、鶴光の弟子里光の披露目で東京に来た際に、平治から襲名披露への出演を依頼されたらしいが、その時は、伸治が文治を襲名すると勘違いしていたらしい。先代との不思議な縁を含む鶴瓶の話、笑いもとりながら結構なはなむけになったのではなかろうか。
 他には米助や小遊三が、文治画がまだ独身であることへのクスグリで笑いはとっていたが、ある意味、お約束のネタで今後も繰り返されるのだろう。鶴瓶の話は、彼が出演している日の口上でしか聴けない希少性があるこれも縁である。

江戸家まねき猫 物まね (10分)
 初である。芸は結構しっかりしているし、しゃべりもそう悪くない。馬と鹿の掛け合い、結構可笑しかった。こういう色物さんて、寄席では大事なのだよね。しかし、当代猫八の妹のようだが、別な協会に所属している。まぁ、それはそれで結構だとも思う。

笑福亭鶴瓶『青木先生』 (10分)
 本人いわく、「私-わたくし-落語」と言う、実際の話を元にした創作落語である。鶴瓶にこういうネタがあることは他の方のブログなどで知っていたが、生で聴くのは初。なるほど、これは笑えるなぁ。「青木のピー」という言葉が、しばらく耳から離れないかもしれない。たった10分で、会場を爆笑させる話芸の力は、やはり並大抵ではない。もっと、手頃な木戸銭で独演会をしてくれるなら、この人の話芸を聴きに行ってもいいのだが・・・・・・。特にこの人の出演日を選んだわけではなく、都合がたまたま合っただけなのだが、得難い高座に出会えた気がする。

桂歌丸『鍋草履』 (15分)
 談志と同じ昭和11年生まれ、今年76歳になる芸協会長が健在で良かった。トリへの配慮がうかがえる軽い噺ではあるが、こういうネタをしっかり出来ることが、落語家にとって重要なのだと思う。口跡もはっきりしていて、聴いていて疲れない高座。ある意味で、落語の教科書とも言える内容に感じた。
 昨年末、この寄席の席亭が発した苦言を契機に、このところ芸協は頑張っているように思う。全員の実力が一気に上がることはありえないが、米助の古典への挑戦なども含め、背後に歌丸会長の思いが、良い方向に向かわせているような気がする。この席でも千秋楽に当代円楽が出演するようだが、それは披露目での特別なもの。定席では、他の一門の助けなど借りずに、客を呼べるだけの勢いがつきつつあるのではないだろうか。だから、会長にはまだまだ元気でいて欲しい、と思う。

ボンボンブラザース 曲芸 (8分)
私が大好きな、紙の芸を演じてくれた。それだけでうれしい。芸協色物の重鎮であり、日本のボードビリアンとしての代表的な存在だと思う。こういう芸の素晴らしさ、寄席に来ないと分からないんだよねぇ。

桂文治『源平盛衰記-木曾義仲-』 (35分) *終演21:09
 先代の晩年に「師匠、最近『反対俥』や『源平』をおかけになりませんね」と聞いたところ、「やらない。骨が折れるから」と、あっさり答えられた、と思い出を語る。ということは、どちらかの噺かと思っていたら、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり・・・・・・」と始まった。とは言え、とにかくクスグリの満載した内容なので、筋書はなかなか進むはずもなく、那須与一までは進まない。彦六や柳昇の声色は入るは、池袋の怖いXXさんは登場するわ、盛りだくさん。「我が協会は鈴本には出れないので、通りを挟んだ上野広小路亭というxxな席に出る。できるだけ鈴本の席亭には会わないように、広小路亭に行く時は、けもの道を通る」とか、「池袋はシリアより治安が悪い」とか、この人独特のややブラックなネタに会場は沸きっぱなし。「学校寄席とかにもよく行くんです。今日も新潟の高校生さんの団体がお越しですが」と、ようやく団体の正体(?)が判明。「学校寄席では、あまり賢い学校より中の下位が笑ってくれる」「千人聴いているうち一人でも寄席に行こうかと思ってくれたら、それでいいんです」などなど。柳昇がテレビで生放送で語ってしまった爆弾発言のネタも、なかなか可笑しかったなぁ。
 ところどころ、初代三平や歌之介を思わせる感じもあるが、全体としては先代譲りの噺を軸にして、オリジナルのクスグリで濃い味付けをして十一代文治ならではの源平、と言ってよいのだろう。
 「後編の那須の与一は、明日やるか明後日やるか、毎日来ていただければそのうちに」とふって締めたが、「序」であろうが「通し」であろうが、新たな文治の十八番の一つであることは確かである。とにかく久し振りに笑い疲れた。


 後ろ幕は、仲入り前が「栄町カトレ落語会」、仲入り後に「浅草後援会」、口上の後は出身地「大分県宇佐市後援会」の三種類が掲げられた。幅広い支持者のいる人なのだろう。

 “十一代目文治の源平”で大いに楽しんだのだが、今後のこともあるので、少しだけ苦言を呈しておきたい。
 平治として権太楼、市馬と共演した三月の「新宿亭砥寄席」では、あまり褒められない高座を聴いた。2012年3月17日のブログ
 あの会は、運営する側にも問題があったと思うし、権太楼と市馬の落語協会メンバーにも責任があると思うが、この人の狭量をを物語っていたことも事実だ。先代は、言葉づかいやマナーなどには、非常に厳しい人だったと言われているが、決して人間の器が小さな人ではなかったはず。何せ、“ラッキーおじさん”である^^
 文治の名を継いだのだから、ぜひ、大きな器になって欲しい。持って生まれた噺家としての見た目の良さ(?)もあるし、本寸法な落語も、爆笑ネタも自在な力がある。将来は芸協を背負って立つ立場にもなるだろう。ぜひ、協会の垣根などは乗り越えるだけの噺家になって欲しいと切に願うし、それが出来る人だと思っている。

 さて、笑い疲れた後は、ようやく秋らしさを感じながら家路を急いだ。しかし、帰宅後の一杯がきいて、とてもブログを書き終えることなどできなかった。先代の十八番を自分なりに継承していくだろう文治、今後も期待したい。
Commented by hajime at 2012-09-28 00:42 x
昨日は満員札止めだったそうですね。
寄席で札止めとは珍しいと思いますね。
浅草なんか、絶対にしません!(^^)

新文治師の「源平」は得意ネタで、普段からも掛かります。
池袋の支配人のネタですねw
初日は「らくだ」だったとか・・・
聴いてみたいですね。
最近ネタの幅を広げているのか、
「代書屋」等も演じますね。
これからが本当の意味で文治の名を問われるでしょうね。(^^)

Commented by ほめ・く at 2012-09-28 08:53 x
私も末広亭に行きたかったんですが無理そうです。今のところ浅草や池袋にも行けそうにないので幸兵衛さんの記事で、行ったつもり。
文治襲名を機に化けるといいんですが。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-09-28 11:55 x
七日目は札止めだったんですか!?
二階席に団体さんが入ったかな。

十一代目文治、その芸の明るさや高座での存在感は非常に結構なのですが、私が出会った特定の高座や、行けなかった会について他の方のブログでお見かけしたですが、たまに、品性に疑問を感じることが、ないとは言えません。
あえて、そのへんのことを最後に書かせてもらいました。
もちろん、その実力を認め、将来を期待しているからです。
先代譲りのネタに新たな十八番を加えて、芸協を支える一人として頑張って欲しいですね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-09-28 12:13 x
そうですか、残念ですね。
私も、浅草は難しそうなので、池袋か国立でもう一回行きたいと思っています。

「化ける」という表現からして、ほめ・くさんの現状の文治への評価、結構厳しいと察しました。
なんとなく、それは分かります。

芸とは別に、どこか大人気ないところがありますよね。
それは、最近の権太楼にも言えるのかもしれませんが・・・・・・。

「化け」てもらいましょう!

Commented by 佐平次 at 2012-09-28 18:48 x
ちょっと状況が明るくなってきたので又落語を聴けそうです^^。
昨日の鈴本は無駄にしてしまいましたが。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-09-28 18:58 x
それは良かった!
次の「居残り会」の相談をしなけりゃいけませんね^^
とは言いながら、無理はなさらないでください。

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by kogotokoubei | 2012-09-27 07:01 | 寄席・落語会 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛