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噺の話

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志ん生の命日に、貴重な映像を!

9月21日は、古今亭志ん生(五代目)の命日。明治23(1890)年6月28日生まれで、昭和48(1973)年9月21日に、眠るように亡くなった、と長女の美津子さんが本などに書かれている。実は、宮澤賢治の命日でもあるが、賢治のことは、後日何か書くつもり。笑組がネタにしている『銀河鉄道の夜』のことなどは、そのうち書きたいと思っている。

さて、志ん生が出演した映画の話をしたい。

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Amazon『銀座カンカン娘』(DVD)

 昭和24年8月16日公開の映画『銀座カンカン娘』は、この年の4月に発売されて大ヒットした曲にちなんだ作品だが、落語愛好家にとっては、志ん生の落語を“見る”ことのできる、貴重な映像記録でもある。

キネマ旬報の映画データベースから、筋書きをご紹介。
「キネマ旬報映画データベース」の『銀座カンカン娘』のページ

ストーリー
落語家の新笑は、いまは引退して妻のおだいと、子供とささやかな生活を営んでいたそこへ居候として入ってきたのが、新笑が昔世話になったという恩人の娘お秋と、お秋の友人のお春だった。二人の明朗な娘達は朝から歌をうたって、おだいをイライラさせる。新笑の甥の武助は、会社の合唱隊を組織して歌に精進しているし、お春は声楽家、お秋は画家と、いずれも芸術家としての意欲にもえていた。しかし一文なしの娘達には、絵の具もピアノも買うことは出来ず、そうかといってブラブラといつまでも遊んでいる訳にも行かなかった。お秋が職さがしに出かけようとすると、おだいにポチを捨ててきてくれと頼まれてしまった。ポチをつれたお秋が捨場に迷っているとある映画会社のロケ隊に出会った。しかもその撮影に是非ポチと一しょに出てくれという話になり、一日だけエキストラとしてキャメラの前に立つことになった。撮影は進行して、女優の山田美恵が池の中に放り込まれることになって、ハタと困ってしまった。というのは山田嬢が、ガンとして承知しないのである。そこで代役を使うことになったので、お秋は早速お春をよんできて、代行させた。おかげで二人は千円という大金を手にすることが出来たのだった。そのエキストラで知り合った白井哲夫の世話で二人はバーで歌をうたうことになった。バーからバーへ毎夜銀座の裏から裏へ、白井の伴奏で三人は働いた。おかげでお秋もお春も、小ざっぱりした洋服と、いくらかの貯金も出来た。新笑の家では、生活も苦しく、しかも月一杯に十万円払い込まないと家を追いたてられると聞いて、恩返しはこの時とばかり、三人で十万円を送って新笑の苦境を救ったのだった。そのころから武助も会社をクビになったので三人の中に加って、武助とお秋、白井とお春の青春コンビは、カンカンブギウギのリズムと共に、親密さを増していった。新笑も引退しているような時代ではないと、再び落語家として第一線で活躍することになったその高座復帰のおひろめの夜は、急テンポで結ばれた、武助とお秋の婚礼ひ露の晩でもあったのだ。


 甥の武助(灰田勝彦)とお秋(高峰秀子)の婚礼披露の席で、志ん生が『替り目』を皆に聴かせるのである。

 終戦(敗戦)から四年後の8月16日を公開日に選んだのは、単にお盆休みでの観客動員を狙っただけではないように思う。敗戦直後の荒廃から復興しつるある日本を象徴する映画でもあったのだろう。8月15日ではなく、16日、というところに、意味が込められているのではなかろうか。


命日の今日、この貴重な映像をYouTubeでお届けしたい。途中で映像が暗くなりますが、ご容赦を。



 昭和24年、志ん生は59歳。二年前昭和22年の一月に、満州から引き揚げてきたばかりだ。晩年に比べて痩せている。こんな時期もあったのだ。

監督の島耕二、脚本の中田晴康、山本嘉次郎というスタッフも、灰田勝彦(武助)、古今亭志ん生(新笑)、 浦辺粂子(おだい)、笠置シヅ子(お春)、高峰秀子(お秋)といったキャストの顔ぶれも、豪華。

 お春役の笠置シヅ子のヒット曲『東京ブギウギ』は、この映画の2年前昭和22年、『買い物ブギー』はこの映画の翌年昭和25年の発売。作詞家はそれぞれ違えども、作曲は三曲とも服部良一。


 さて、昭和ならぬ平成24年の今、10月20日から、園子温監督の『希望の国』が上映される。映画『希望の国』公式サイト何とか見たいと思っている。この映画は、3.11とフクシマそのものをモチーフにしている。
 『銀座カンカン娘』は、敗戦の廃墟から復興に向かう日本人の“元気”で“明るい”“平和”な家族の日常を描いたものだ。

 3.11とフクシマからまだ一年半を過ぎたばかりの今、『銀座カンカン娘』のように、復興を象徴するような、“元気な日常”を描く映画は登場しそうにない。
 
 敗戦後、日本人は総じて貧しかった。しかし、そこには国を挙げて復興しようという意思と、「頑張れば何とかなる」という希望があったはずだ。では、今はいったいどうなのか。「頑張れば」という国民の精神論だけでは到底解決できない「ポスト3.11」と「ポスト・フクシマ」の問題を抱えたままではないか。そして、必ずしも日本人が総じて貧しいわけでもない。政府と国民との間に復興に向けたコンセンサスがあるわけでもない。そして、今日の状況における政治の不在が、国民に心の底から明るく笑える日常をもたらしはしない。

 では、3.11とフクシマから四年後の平成27年に、いったい日本はどんな明るい社会になっているのだろう。そして、『銀座カンカン娘』に匹敵する“元気”で“明るい”“平和”な日常を描いた映画が存在しえるのだろうか。そんなことも思わせる映画であり、志ん生の映像でもある。

 志ん生が手掛けたネタは多い。その数多い噺の中から、あえて“マイベスト3”を選ぶ時、私は『替り目』を入れることをためらわない。なんと言っても、この噺で志ん生は、噺の中の夫婦を自分達夫婦に見立てて、苦労をかけたりん夫人に、実際の生活の中では言えない感謝の気持ちを、落語の中で語っていると思うからである。
 別名を『元帳』と言うが、実生活で夫人には元帳を見せることができない明治男の照れが、高座への感情移入につながっている名品だと思う。だから、志ん生のこの噺は、サゲまで必要ないのだ。女房がおでん屋に行ったと思って、つい元帳を見られてしまう部分が、志ん生にとって最も重要なのである。
Commented by hajime at 2012-09-22 08:09 x
ご無沙汰しています。
この映画は実は良く知っています。DVDも出ていますね。
実は私の知人がyoutubeにこれ以外の志ん生師の出演部分をUPしています。
http://www.youtube.com/watch?v=p3W8yV2ZuNY&feature=g-user-u
この映画の他にも美空ひばりさんと共演したりしていますね。
正直、志ん生師の演技は結構上手い、と思います。
噺家は下半身の演技が下手だと言われますが、中々どうして他の俳優さんに混じって堂々としたものだと思います。

この頃の映画ってなんかいいですね。
歌があり、恋愛模様が描かれていたりして、夢のあるのが良いですね。

私のその知人も「替り目」という噺は志ん生そのものだと語っていました。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-09-22 09:29 x
たしかに、志ん生の演技、なかなかのものですね。
短いながらも『疝気の虫』の稽古場面も楽しい^^
知人の方、なかなか洒落た演出(編集)をされていますね!

『替り目』は、私も友人との旅行での宴会でかけたことがあるのですが、あの場面、やはり普段は面と向かって言えない連れ合いへの感謝の気持になるんです。不思議です。
落語は、必ずしも世上のアラばかりで成り立っているわけではない、ということですね。

Commented by 佐平次 at 2012-09-22 10:11 x
かつて部下の結婚披露宴などで「替り目」を題材に祝辞をいおうと思ったことがあります。
実行したかどうかは忘れてしまいましたが。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-09-22 10:33 x
そうですか、きっと楽しいスピーチになったのでしょうね。

「毎日“I Love You”と言わなきゃならねぃアメリカ野郎と、こちとら日本男児は違うんでェ!」
と言いたいところですが、
「亭主元気で留守がいい」、と言うしたたかな女房には、かないません^^

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by kogotokoubei | 2012-09-21 21:20 | 今日は何の日 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛