人気ブログランキング |

噺の話

kogotokoub.exblog.jp
ブログトップ

柳好十八番~四代目春風亭柳好トリビュート~ 国立演芸場 7月4日

昨年のこの会が良かったと落語ブログ仲間である佐平次さんのお奨めだったので、二週連続で隼町へ。

 子どもの頃にテレビで馴染みのあった四代目柳好、住んでいる場所から、通称「川崎の師匠」。芸術協会が、長期政権であった柳橋の元で元気な頃のスター(?)の一人で、映画『与太郎戦記』にも出ていたなぁ。慕う噺家は多かったようで、この会も協会の枠を超えた豪華な顔ぶれ。開演時には、ほぼ満席に近かったのではないだろうか。
 次のような構成だった。
-----------------------------
開口一番 春風亭吉好 『秘伝書』
春風亭柳好 『牛ほめ』
柳亭市馬  『味噌蔵』
柳家喜多八 『付き馬』
(仲入り)
座談会
瀧川鯉昇  『うなぎや』
春風亭小柳枝『粗忽長屋』
-----------------------------

春風亭吉好『秘伝書』 (18:20-18:31)
 先月池袋での芸協真打昇進披露の会以来。あの高座については、某国立大学の名を明かして、そこに八年いた、というマクラに小言を書いた。その時との違いは少しだけあった。大学名は明かさなかったということ。これを成長と言うのか、たまたまなのかは分からない。師匠の柳好も出身大学のことをマクラでふるので、一門伝統(?)かもしれないが、あまり褒められたことではない。
 会場のお客さんのおかげ(?)で笑いもそれなりにとっていたが、落研とプロの中間のレベル、という印象。今後も精進してもらいましょう。

春風亭柳好『牛ほめ』 (18:32-18:47)
 会場に行くまでの間の電車の中で、四代目柳好のこのネタを含む音源を携帯音楽プレーヤーで聴いており、マクラの「穴子でからぬけ」から本編まで、ほぼ川崎の師匠をなぞっていたのが分かった。違いは、“からぬけ”のサゲの部分を「ズイキの腐ったやつ」というオリジナルを、「ネギの腐ったやつ」と替えた位か。もちろん、口調、語り口は真似をするのは難しかろう、この人ならでは若々しい元気な高座。佐平おじさんが、ちょっと怒鳴り過ぎではあったが、トリビュートとしては、ふさわしかったと思う。しかし、座談会でもいじられていたが、髭が濃い^^

柳亭市馬『味噌蔵』 (18:48-19:14)
 座談会でも話題になったが、川崎の師匠を真似た抑えた口調での市馬の高座。とはいえ、ケチな主人が出かけた後のドンチャン騒ぎでは、この人ならではの陽気さと気の利いたクスグリで会場を沸かせた。
 若い者が、豆腐屋にはオカラしか買いに行ったことがなく「カラ屋」だと思っていたと聞いた番頭が涙ぐみ、「芝浜より、泣けるね」は可笑しかった。
 終演後の久し振りの「居残り会」(それも拡大版)で、リーダーSさんが、「小さんの高座を思い出した」との言葉、後から思えば、「なるほど」である。抑えた市馬もなかなか結構だったが、部分的な言い間違いなどもあり、普段かけないネタで苦労はしたのだろう。この高座もトリビュートとしての余興としては良かった。

柳家喜多八『付き馬』 (19:15-19:47)
 やや恥ずかしがりながら、「落語をやらせていただきます。」で始めた。楽屋に川崎の師匠のお嬢さんが来られていて、了解をいただいたらしい。「虚弱体質を装ったのは、実は川崎の師匠を真似した」とのこと。これ初めて聞いた。座談会でも裏付けられたが、喜多八は、よほど好きだったのだなぁ、先代柳好が。
 9分のマクラから、これまた、ちょうど会場に来る間に聴いていたネタ。しかし、構成や語り口、スピード感など、すべからく喜多八の噺であり、それがまた頗る結構だった。本編は二十分程度だったが、牛太郎相手に一方的にしゃべくりまくり、「若さがないねぇ」などと小言を言い続ける男が、吉原から仲見世~田原町まで、「湯屋」-「食堂」-「早桶屋」への場面展開が見事だった。早桶屋の主に、独特の大声で「おじさ~ん」と叫ぶ場面も楽しいし、牛太郎が「図抜け大一番小判型」を背負う姿でも笑わせる。短いネタに川崎の師匠への思いを込め凝縮された高座、今年のマイベスト十席候補としたい。これだけ明るいこの噺を初めて聞いた。喜多八の真骨頂である。

座談会 (20:01-20:21)
 仲入り後に緞帳が上がり、二人掛けの縁台のような椅子三台に、左から司会者(名乗らなかった、名前は不明)と市馬、中央に鯉昇と小柳枝、右に柳好と喜多八が並ぶ。
 司会者から、この会に合わせて制作した出来たばかりの二枚組CDの紹介があり、その中からマクラ部分の四代目柳好の音声が流れる。
 今日なら「ゆるキャラ」などという言葉でくくられてしまうかもしれないが、なんとも懐かしい声だ。ただし、私は会場に着く直前まで聴いていた^^
 司会者の仕切りで、それぞれの噺家さんにとって好きな川崎の師匠のネタを語っていく。喜多八は、「犬の目。とにかく、あぁいう滑稽噺が大好き。」など。鯉昇は、ネタではない、あの「馬鹿だねぇ~」の一言が何とも言えず好きとのこと。これもよく分かる。
 愛弟子だった小柳枝の話が貴重で、かつ楽しく、“深い”ものがあった。稽古不足などで叱る前に、「母さん、お茶!」というお決まりの一拍があって、「覚えちゃいねぇじゃないか!」と雷が落ちたと回想していたが、声色もそっくり^^
 他の逸話は詳しくは明かさないが、酒にまつわること、稽古のきびしさ、小言でさえ洒落っ気があるなどの多くの回想談義に、あっと言う間に予定時間と思しき二十分が経過した。司会者の方が、「来年三回目はもうできませんかねぇ?」とふると、小柳枝から「師匠のこと(逸話)なら十回分でも二十回分でもネタはある」と力強い言葉。司会者の「来年もやりましょうか」に会場からは大拍手。
 高座の六人と観客の一体感のある時間と空間だった。落語会での座談会は、スベルことも多いのだが、和気藹々のこういう座談会は、非常に結構だ。

瀧川鯉昇『うなぎや』 (20:23-20:43)
 思い出話のマクラが楽しかった。『新聞記事』の稽古でうかがった時は、ネタの稽古よりも川崎の師匠は将棋相手として鯉昇を待ちかねていたようだ。勝っても負けても怒られた、というところが何ともあの師匠らしくていい。「噺家の将棋はテンポがいいもので、芸とはちがってまして」が、妙に可笑しかった。
 6分のマクラから本編へ。途中のクスグリも良かったが、何と言っても、鰻を両手で捕まえようとする様子を両方の親指を使って表現し、腰曲げ前のめりになって歩きながら下手に退場する「荒業」が出色。トリの小柳枝によると、川崎のが師匠も、たまにこの技を使っていたとらしい。これぞ、“トリビュート”なのだろう。
 この芸は志ん生の『疝気の虫』とともに、特異な終わり方の噺として位置づけることができそうだ。しかし、下手な噺家が真似しても、まず間違いなくしくじる技である。短いながら、流石の鯉昇だった。

春風亭小柳枝『粗忽長屋』 (20:44-20:58)
 マクラでの師匠のことに加えて、鯉昇の最初の師匠であった先代小柳枝の破天荒ぶりを物語るエピソードもあった。交通事故で頭を二十四針縫って入院しているベッドの下にいったい何があったのか、は会場にいた方だけの秘密。
 マクラ6分のあとの本編は、後で振り返って、あれがたった8分のネタだったとは到底思えない素晴らしい高座。これぞ、寄席で磨いた至芸、というものだろう。


 終演後は、久し振りにレギュラーメンバーが揃った「居残り会」。それも、紅一点が加わった拡大版。リーダーSさん、昇進したばかりで忙しいYさん、そして、大須の志ん朝が届いてうれしそうなI姉さん(?)との、落語を肴のお酒はなんとも美味しく、徳利がどんどん空いていく。小柳枝が頑張ってトリネタを縮めてくれたおかげで開始時間が想定より早まったため、なんとか日付変更線を超える前には帰宅できたものの、すぐにはブログを書く余力はなかったなぁ。暑かったしね。
 しかし、何とも結構な大人の落語会と「居残り会」、それぞれ十分に満足。風呂上がりには外に出て、雲間に時折顔を出す満月を眺めての一服が、これまた旨かった。
Commented by hajime at 2012-07-05 16:03 x
四代目柳好師は最初TVで見ていました。
そのうち寄席に通う様になると、かなり目当てで通いましたね。

「落語をやります」と言ってから始めるのがなんか可笑しかったです。
この日の演目の他にも「南瓜屋」「蒟蒻問答」なんか好きでした。
入門の経緯も可笑しくて、まるで落語そのものですね。

晩年は芸協も辞められて噺家を廃業なさったらしいのですが、何があったのでしょうね?
もっと聴いていたい師匠でした(^^)

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-07-05 17:41 x
私はテレビと映画、音源でしか知りませんが、何とも言えない味があっていいですね。
なるほど喜多八はあの線を狙っていたのか、と今になって思います^^

晩年のことは詳しくは分からないですし、昨夜も噺家さんのマクラや座談会では、ふれられませんでした。

特定の過去の噺家さんをテーマにした落語会、その思い出を語れる方がお元気なうちに他にもあって良いかもしれませんね。

Commented by 佐平次 at 2012-07-05 19:49 x
去年、鯉昇が「犬の目」をやったように思います。
あの後、また一人で余韻をさましました^^。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-07-05 20:56 x
「犬の目」も落語らしい噺ですよね。
しかし、まだ飲み足らなかったんですか^^
お体、ご自愛のほどを!

Commented by ほめ・く at 2012-07-05 21:12 x
今回もニアミス。
「ほんにお前は屁のような」というケチな野郎でござんす。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-07-05 21:42 x
とんでもない。
会場で、どことなく、ほめ・くさんのオーラを感じていましたよ!
それにしても、結構な会でしたね。

Commented by 創塁パパ at 2012-07-06 08:47 x
幸兵衛さん。ありがとうございます。
よき先輩との「出会い」に本当に感謝です(笑)

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-07-06 08:51 x
そんなに「良き」先輩ではないですよ^^
ただ、落語が好きで、噺を肴に酒を飲むのが好きな五十路男です。
次回も楽しみですね!

名前
URL
画像認証
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by kogotokoubei | 2012-07-05 05:58 | 寄席・落語会 | Comments(8)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛