今年上半期を振り返る—マイベスト十席候補を中心に。
2012年 07月 02日
先週土曜6月30日の花形演芸会まで、今年前半は測ったように毎月四回、計二十四回の落語会・寄席の数となった。
年間のマイベスト十席を決めるために、年末になって一年をまとめて振り返ろうとしても、脳細胞が日々大量に消滅している昨今、前半の記憶が相当怪しくなりそうなので、ここで一度上半期を振り返っておこうと思った次第。
まず、マイベスト十席の候補にした高座を並べてみる。
---------------------------------------------------------------------
今年のマイベスト十席候補・上半期選出一覧
(1)桂米二『けんげしゃ茶屋』
京の噺家 桂米二でございます 内幸町ホール 1月10日
(2)むかし家今松『子別れ~通し~』
ざま昼席落語会 むかし家今松・柳亭燕路 ハーモニーホール座間 2月11日
(3)入船亭扇辰『夢の酒』
(4)柳家喬太郎『死神』
如月の三枚看板 喬太郎・文左衛門・扇辰 銀座ブロッサム 2月17日
(5)柳家喜多八『もぐら泥』
(6)春風亭一朝『三枚起請』
第40回 人形町らくだ亭 日本橋劇場 2月21日
(7)柳家小満ん『雪とん』
(8)柳家喬太郎『竹の水仙』
噺小屋スペシャル 小満ん・喬太郎の会 銀座ブロッサム 2月29日
(9)春風亭一之輔『不動坊』
第34回特撰落語会 一之輔・菊六 日本橋社会教育会館 3月2日
(10)柳家小満ん『しじみ売り』
雪月花五たび 柳家小満ん 国立演芸場 3月27日
(11)桂歌丸『双蝶々 雪の子別れ』
国立演芸場 四月中席 4月14日
(12)古今亭菊之丞『棒だら』
第32回 新文芸坐落語会 2000年代真打昇進者競演 4月18日
(13)五街道雲助『景清』
雲助蔵出し ふたたび 浅草見番 4月21日
(14)柳家喜多八『短命』
喜多い八膝栗毛 春之瞬 博品館劇場 5月16日
(15)春風亭一之輔『五人廻し』
真打昇進披露公演 国立演芸場 5月19日
(16)春風亭一朝『天災』
北沢落語名人会 春風亭一朝・一之輔親子会 北沢タウンホール 6月1日
(17)柳家権太楼『らくだ~通し~』
第十三回 大手町落語会 昼席「ザ・柳家!」 日経ホール 6月23日
(18)春風亭百栄『マザコン調べ』
第397回 花形演芸会 国立演芸場 6月30日
*特別賞候補
五街道雲助『人情噺 火焔太鼓』
雲助蔵出し ふたたび 浅草見番 4月21日
三笑亭笑三『悋気の火の玉』
池袋演芸場5月上席 5月3日
---------------------------------------------------------------------
半年で十八席。カブで縁起がいい^^
十八席を、「そうそう、これ良かったよね」などと思い出しながら、自然と笑みが浮かぶ。
<睦月~如月>
今年は三三の地元小田原から始まった。
一月の米二、そして二月の座間の今松、この二人には似通った部分があるなぁ。本寸法で、それほど派手な高座とは言えないが、何とも言えない味がある。威圧感のない語り口なのだが、次第に客を引き込んでいく魅力と技がある。印象深いのは、今松の『子別れ』通し。途中から「えっ、もしかして通し?」というちょっとした驚きの中で、魅了してくれた。昨年末の末広亭から、それほど間を空けずに聞いたこともあり、今松の魅力を再確認できた高座だった。
喜多八『もぐら泥』、小満ん『雪とん』そして同じ会における喬太郎『竹の水仙』の三席は、「この人にこの噺」とでも言うような、それぞれの名人芸を見た印象がある。どちらの会も、終演後の楽しかった「居残り会」および「居残り分科会」のことと一緒に思い出す^^
<弥生~卯月>
一之輔の末広亭の披露興行に六日目に駆けつけることができた。小三治会長のうれしそうな顔を思い出す。
三月と四月のマイベスト十席候補は五席、どれも持ち味の違う結構な高座だった。
真打昇進披露興行が始まる前の一之輔『不動坊』は、気力も充実して元気一杯。彼ならではのギャグも違和感なくはまっていた。小満んの『しじみ売り』は、志ん生版が下敷きになっていると思うが、衣装のきめ細かな形容などを含め江戸の風たっぷりの高座。桂歌丸『双蝶々 雪の子別れ』は、会長として芸協の会員たちに自らの高座で叱咤激励するような、そんな思いを感じたりもした。そして、久し振りだった菊之丞。同世代の噺家を前に、その格の違いを見せつけた『棒鱈』。たい平の「笑点」ネタの高座に失望しただけに、菊之丞の高座が、より光っていた。そして、雲助。初めての浅草見番、かぶりつき(?)の席で『景清』を堪能した。そして、同じ日の余興(?)『人情噺 火焔太鼓』で大笑いしたのも印象深い。先週の百栄『マザコン調べ』と同じような味わいのある良質な古典パロディとして、何か賞をあげたい気がする。
<皐月>
さて次は五月。また喜多八の鉄板(?)ネタに出会った。『短命』は、彼の無言の芸に好みは分かれるだろう。実際に終演後の「居残り分科会」でも、人それぞれの感想を聞いた。私は、あの芸が好きだ。現役噺家によるこのネタは、隠居が八五郎に説明する場面を語りの妙で描く“しゃべくり派”の白酒と、あえて言えば“サイレント派”の喜多八がツートップ(?)だと思っている。五月のもう一席は国立演芸場での披露興行における一之輔の『五人廻し』。以前に横浜にぎわい座の地下、のげシャーレで聴いて感心したネタだが、今回の定席の披露興行ではそれまでかからなかった大ネタに出会う僥倖だった。少し鼻声で体調は万全ではなかったろう。加えて、会場に子どもを見つけ、「えっ、子ども!?」と、一瞬このネタをかけることに逡巡したものの、その気持ちを振り切っての高座は印象深い。そうそう、五月の池袋、大正十四年生まれ、今年八十七歳の笑三の『悋気の火の玉』は見事だった。何か、特別賞をあげたいと思っている。
<水無月>*どこが「水なし月」なのか・・・・・・。ちなみに旧暦で今日は皐月の十三日。明後日が満月。
六月。披露興行の後の一之輔。師匠との親子会では、師匠が貫録を見せた。大師匠彦六の正蔵、そして師匠柳朝から継承される一門の十八番『天災』は、まことに結構だった。多くの名作落語が上方にルーツを持つ中で、生粋(?)の東京落語。紅羅坊名丸と八五郎の会話はリズムも良く、八五郎の啖呵もくどすぎず好感が持てた。そして、大手町で身震いした権太楼『らくだ』(通し)。凄かったなぁ、あの高座。師匠小さん版を土台にしながらも志ん生、そして可楽のエキスも加わったような「権太楼らくだ」の凄さを感じた。そして、記憶も新しい先週末の百栄『マザコン調べ』である。名作落語へのオマージュでもあり、良質なパロディとして完成度の高さがあった。ともかく今年前半でもっとも笑ったのがこの高座だった。
あれ、振り返りながら、どれも良かった、ということばかり。それはそうだ。マイベスト十席候補に選んだ高座なのだから。この十八席でさえ十席に絞り込むのは大変。年末には、もっと悩むのだろう。
今年前半の落語界の大きな出来事は、なんと言っても一之輔の一人真打昇進披露興行。何とか末広亭と国立演芸場で一日づつ行くことができた。『雛鍔』と『五人廻し』、結果として五十日で一回しかかけなかったネタに出会えた。僥倖だ。
落語愛好家の方のブログを拝見すると、最近の彼の高座にはやや乱れがあるように見受けられる。五十日間、たった一人での披露の後で、疲労もあるだろう^^
いずれにしても、この人は将来の大看板候補。今後も精進して欲しい。
さぁ、年後半は、九月から朝太(志ん陽)と菊六(文菊)二人の古今亭の真打昇進披露興行。時期的には野暮用が多くて計算できにくいのだが、最低一日は行きたいと思っている。
後は、前半であまり聴けなかった人たちをできるだけ優先したいと思っているが、都合との相談になるし、結構同じ顔ぶれが並ぶかもしれないなぁ。まぁ、無理せず落語を楽しみたいと思う。月に数回とは言え、落語を生で味わえるだけでも幸せなのだろう。そう思う。
権太楼の「らくだ」で身震いしたとありますが、私は「百年目」で身震いしました。
やっぱり権ちゃんは凄い。
しかし、先日の百栄の『マザコン調べ』は、ほめ・くさんは除外でしたね。新作はなかなか難しい。
権太楼の高座、ほぼ完全復復活とみるか、あるいは何か期するものがあの芸になっているのか、などと考えすぎている自分がいます。
「権ちゃん、復活!」なのでしょう、きっと。
今年も半分過ぎたんですね、早いものです。
