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噺の話

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第397回 花形演芸会 国立演芸場 6月30日

この会には三度目。しかし、最初が2010年5月22日の第372回、二回目が2010年10月30日の第378回なので、去年は行っていない。それは、私の“うっかり”もあるが、多分に一之輔人気によってチケットが取りにくかったことが影響していたと思う。

 今月は平日は計算できなかったため、土曜三連続の落語会。一之輔が卒業(?)しても、なかなかの顔ぶれで木戸銭(1,800円)も手頃、「満員御礼」である。
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構成は次の通り。
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開口一番 古今亭きょう介 『子ほめ』
川柳つくし 『健康診断に行こう』
古今亭志ん丸『野ざらし』
カンカラ  時代劇コント
古今亭菊志ん『九州吹き戻し』
(仲入り)
柳家さん喬 『抜け雀』
鏡味正二郎  曲芸
春風亭百栄 『マザコン調べ』
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古今亭きょう介『子ほめ』 (13:00-13:15)
 今年2月、座間の落語会以来。あの日は何と言っても今松の『子別れ』(通し)が良かった。
 さて、この人は志ん橋門下の四年目の前座さん。正直なところ前回からの差が分からなかった。顔色がいいように思えないし、中途半端に髪がボサボサ。床屋に行く金もないのかなぁ。噺よりもそんなことが気になった。

川柳つくし『健康診断に行こう』 (13:16-13:31)
 袴姿で登場。マクラで右足を少し痛めていると弁解があったが、高座では気にならなかった。末広亭で聴いたこともあるし、かつて“ぽっどきゃすてぃんぐ落語”(ニフティ)でも聴いていて、悪い印象はない。1997年3月の入門、16年目だ。一之輔に抜かれた二ツ目の仲では香盤の上でもっとも上。小三治改革の前の年功エスカレーター方式なら、昨年真打になっていたはずの人だ。
 新作。病院嫌いの母親をなんとか健康診断に生かせようとする娘と父とのドタバタなのだが、どうしても感想は小言になる。あえて言うならトリの百栄の新作と比較して、そのネタ本来の作り込みの浅さもあるし、同じような高い声の調子で父母娘と描き分けきれていない技量の問題もある。
 師匠川柳を支える弟子としては、なかなかの人なのだろうと思うのだが、もう少し新作を練って欲しい。あるいは、いっそ古典でも十八番をつくるべきなのではないだろうか。古典ができてこそ、新作に味が出るだろうし、師匠も初めから「ガーコン」ではなかった。もし、すでに古典も手がけているのなら、ごめんなさい、とあやまります。

古今亭志ん丸『野ざらし』 (13:32-13:51)
 この人の見た目と声は、特長がある。尖った感じの顔の表情、そして同じく尖った声。
 志ん太時代から気にはしていたが、今日もなかなかの高座だった。長屋の八っぁんの隣りにいる尾形清十郎が釣りに行き、ハゼを頼みに大根の煮付けを用意して八が待っていた、という前提で始まるが、ハゼと大根の煮付け、旨そうだ。鐘の音の声色の描き別け、そして難関(?)のサイサイ節も順調にこなして、八が川に落ちる場面でサゲたが、この噺は志ん丸にはニンだと思う。

カンカラ 時代劇コント (13:52-14:06)
 初である。プログラムによると「欽ちゃん劇団」の劇団員だった三人による「チャンバラとアクロバットを取り入れた時代劇コント」とのこと。
 こういうトリオは好きだ。しかし、「チャンバラ」は分かるが、用意したBGMを使ったスローモーションでの殺陣は、「アクロバット」と言うよりも、「チャンバラトリオ」の現代版という感じ。体を鍛えているのだろう、ボディビル風の胸を動かすギャグもあったが、あれが“アクション”ではなかろう^^
 なかなか、楽しいトリオが出てきたのは、うれしい。

古今亭菊志ん『九州吹き戻し』 (14:07-14:37)
 マクラで言っていたが、カンカラが舞台狭しと暴れまくった後の落語は、たしかにやりにくかろう。
 円朝も慕ったとされる初代古今亭志ん生が十八番にしていた噺。円朝は、志ん生が元気な間は弟子にこの噺をかけるのを禁じていたらしい。雲助も演じるらしいが、最近の噺家さんでは、CDも発売されている談春のほうが有名か。珍しい噺なので、少し粗筋を説明。
 主人公は遊びが過ぎて勘当された、きたり喜之助。だから発端は他の若旦那モノに近いのだが、その後の活動範囲が広い。喜之助は幇間になったが借金まみれになって、江戸を逃げるように流れ流れて肥後の熊本城下へ。「お泊りではございませんか」「わしか」「いえ、そちらのお武家様で」、といった会話の中で一文なしの喜之助が熊本の宿場街を歩く様子は、ほとんど『抜け雀』の小田原宿。「江戸屋」という名に懐かしさを感じて立ち寄った。もちろん無銭飲食のつもり。しかし、その宿は江戸で「大和屋」として喜之助に馴染みのあった主が熊本に流れてきた宿であることがわかる。江戸屋の主の情けと助言で江戸屋で料理人兼幇間として仕事に励み、三年間に貯めた金はほぼ百両。このへんは、『紺屋高尾』的だ。里心がついた喜之助が江戸に帰りたいと言うと、江戸屋の主が近所に奉加帳を廻して餞別を集めてくれた。
 噺のヤマの一つは、喜之助が江戸に帰る前夜の妄想場面。喜之助が二階に寝ており、預けた金は階下。この位置関係は、『水屋の富』を思わないでもない。いろんなことを考える。江戸屋の主から、「五十両貸してくれ」と言われるのじゃないだろうか、とか、大金を持って江戸に帰って昔の仲間と吉原にでも行って大盤振る舞いしたら、すぐに金がなくなるだろう、などなど。結局一睡もできず朝も明ける前に主を起こし、貯めた金をもらい江戸屋に別れを告げる。船に乗ろうと浜辺に出て、たまたま江戸行きの船の船乗りに出会った。そして、江戸への貨物船に便乗して嵐に出会い遭難するシーンが、二つ目のヤマだろう。船に乗る場面から三味線が入る。嵐、そして大波に船が翻弄される様は、三三の『嶋鵆沖白浪』の「島抜け」にも似た場面だが、菊志んの演出はそれほど大袈裟ではない。船は転覆、三日目に流れ着いたのが薩摩の桜島。江戸への帰りを急ぐあまり、百二十里も吹き戻された、でサゲ。
 非常に良かったと思うが、マクラで言っていたように、出だしのリズムが少し悪く盛り上がるまでに時間がかかった。また、本来は一時間近いネタかと思うので短縮版で少し無理があった。しかし、この人にはニンなネタだと思うし、今後に大きな期待をさせる高座。あらためて聴いたみたい。

柳家さん喬『抜け雀』 (14:53-15:22)
 今回のゲスト。短縮版で、たとえば、宿(相模屋)の主が絵師親子からそれぞれに、「おまえのマミエの下にあるのは何だ」と、物を見ても分からぬ目には銀紙でも貼っておけ、というクスグリがなかった。しかし、この人の本来の持ち味の“くどさ”を抑えたスピーディな展開が、ある意味新鮮で良かった。
 しかし、古今亭志ん輔なら、宿場で往来を歩く人に呼び込みをかける場面があるので、“ツク”と考えてネタを替えるのではなかろうか。そんなことを思いながら聴いていた。

鏡味正二郎 曲芸 (15:24-15:38)
 この人は芸の技量もユーモアも交えた語りも結構。プログラムを見るまでボンボンブラザーズの鏡味繁二郎門下とは知らなかった。将来は、洋服を着てボンボンを継いでくれるとうれしい。
 
春風亭百栄『マザコン調べ』 (15:39-16:04)
 とにかく会場は爆笑の連続だった。代表作であることは知っていたが、初めて聴いた私も大笑い。
 ボケの症状についてのマクラから、落語の名作のこと、そして志ん朝を代表とする『大工調べ』のことになり、オリジナルの筋書きを解説する。政五郎の啖呵も伏線として聞かせる。
 「大家のほうが被害者でしょう!」と言う見方を展開した上で本編へ。ある会社の社長夫人が息子をふって他の男と一緒になった女性の家に乗り込む。とりあえず息子(マサヒコ)の“おもちゃ”になってちょうだい、すぐに飽きるんだから、などと女性(カズエ)にお願いするが、その言葉のはしばしに「尻軽女」「ワケアリ物件」などのカズエを中傷するどぎつい言葉が挟まれる。
 どうしても、マサヒコとは一緒になれないとカズエが言うと、「政五郎ママ」(?)が切れて啖呵の始まり。カズエのことは調べていて、どれほど性悪女なのかを畳み掛けていく。『大工調べ』のパロディなので、聴きながら百栄が置き換えている素材とオリジナルとのギャップなども楽しく、終始笑っていた。
 詳しい“啖呵”の内容は、今後この噺を楽しみにされる方へのネタバレになるので書かないが、相当レベルの高い新作だ。落語愛好家としての百栄が、志ん朝や柳朝が代表するこの噺へのオマージュとして作ったのだろう。談志は『現代落語論』の中で、志ん生との会話として、このネタにおける政五郎は、とにかく啖呵を切りたいんだ、と指摘する。その啖呵を切っている社長夫人とマザコン息子、そしてカズエとどっちが悪いと思いますか、という百栄の客への問いかけが背景に残っている。やはり、この人は目が離せない。今年のマイベスト十席候補としたい。

 
 なかなか結構な会だった。菊志ん、百栄、そして志ん丸、それぞれに持ち味があって今年のこのレースを盛り上げてくれるだろう。昨年よりはチケットも取りやすそうなので、今後も彼らの奮闘を見にこようと思いながら隼町を後にした。
Commented by 佐平次 at 2012-07-01 09:39 x
「九州吹き流し」は雲助と小満んのを聴いたような記憶があります。
百栄はこのところ急に伸びてきたような気がするなあ。

Commented by ほめ・く at 2012-07-01 10:09 x
又かち合いましたか。
この日は百栄が全てでした。
志ん丸は声が悪いけどリズムが良かったと思います。

Commented by hajime at 2012-07-01 14:26 x
志んさんと志ん丸さんは三三さんも含めて二つ目時代から注目していました。
これからも期待出来る逸材ですね。
志んさんは兄弟子に云わせると「受けるなら何でもやる」性格なのだそうです。
いい方に育って来ていると思います。

つくしさんが入門して一年位の頃、地元の落語会で前座さんとして「たらちね」を30分聞かされました。(辛かったですw)

さん喬師は寄席の様な短縮バージョンのほうが、あっさりしていて好きですね。

百栄さんは、昨年、浅草で自分の出番が終った後、二階席で私の隣で先輩の高座を真剣に見ていました。
高座の上とは違いとても繊細な感じがしましたね。
取り留めの無い事を書いて仕舞いました。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-07-01 15:55 x
菊志んは、直前のカンカラの影響もあったでしょうが、まだこのネタは稽古の途上という印象です。
百栄は、ネタも高座も良かった。この人の技量とセンスは馬鹿にできません。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-07-01 16:02 x
やはり、いらっしゃったんですね^^
「マザコン調べ」は、ここ十年位に限れば、新作の中で相当レベルの高い噺のように思います。そして、百栄の高座もなかなかのものでした。
落語愛好家が聴きながら「くすっ」とできる古典をベースにした新作、百栄にとってはニンなのかもしれません。
とにかく、久しぶりに笑わせてもらいました。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-07-01 16:07 x
菊志んは、実力は十分にあると思います。志ん丸は、あの個性をどう生かすかですね。
百栄は、栄助の頃から期待していましたが、今後ますます楽しみです。
古典と新作の両刀使い、喬太郎とはキャラは違いますが、この人は化けるかもしれません。

Commented by at 2012-07-01 22:11 x
いつも楽しく 拝見させていただいております。

本物の 噺家さんは ほとんど見たこと がないのですが、
菊志ん は 見たことがあります。子供を可愛く演じてました。五年ほど前です。彼の落研の先輩は お医者さんで 社会人落語日本一になりましたよ。
我々の雲の上の人です。

菊志んも 精進して 日本一になる積もりで!!

9月に初めて「生小三治」を拝見させていただきます。楽しみです。

また、「噺の話」 聞かせて下さい。

乱筆 ご容赦くださいませ。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-07-02 08:50 x
菊志んは広島出身で、大学は愛媛でしたよね。と言うことは、社会人落語二代目チャンピオンがいらっしゃる県に凡さんもお住まいなのかな・・・・・・。
プライバシーの詮索はここまでとして、菊志んは教員資格もあるようですが、彼のような先生なら授業も楽しいでしょう^^
もちろん、将来を期待できる噺家だと思います。菊朗時代から注目していました。

「生小三治」、楽しみですね。
この会と同じ日は末広亭で小三治のトリが千秋楽。しかし土曜の夜席なので、土曜の夜と日曜は落語会に行かないことにしている私は、新宿方面を横目に見ながらの隼町でした。
しかし、なかなか結構な会だったと思います。
コンペティションですから、力量やネタの差はあっても、皆、それぞれに真剣な高座だったと思います。
若手、中堅、そしてベテランの誰でも、一所懸命な高座は、聴く者の心に伝わるものですね。

Commented by at 2012-07-03 19:26 x
恐れ入ります。

江戸、上方 だけでなく、四国方面までご存知とは。
その愛媛で7月 14日 15日 四国落語大祭があります。全国の社会人落語名人が集合しますよ~。
以前、1日に21席見ましたが、疲れませんでした。皆さん凄いんです。了見も技術も。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-07-03 19:38 x
一応、私も時折下手な落語を仲間に披露するもので、社会人落語の大会があるのは知っていました。
もちろん、私なんぞは出場できるようなレベルではありません^^

いわゆる「天狗連」の皆さん、下手な東京の前座、二ツ目よりも上手な方が大勢いらっしゃるのだろうと察します。

四国での大イベント、楽しみですね!

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by kogotokoubei | 2012-06-30 18:11 | 寄席・落語会 | Comments(10)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛