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噺の話

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小沢一郎は再生するか?—『人物破壊 誰が小沢一郎を殺すのか?』より

小沢一郎が無罪になった。

 『日本/権力構造の謎』や『人間を幸福にしない日本というシステム』などの著書があるカレル・ヴァン・ウォルフレンの昨年単行本として発行された『誰が小沢一郎を殺すのか?』が、新たに小沢一郎との公開対談を含んで文庫化されている。
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カレル・ヴァン・ウォルフレン『人物破壊 誰が小沢一郎を殺すのか?』

 本書に収録された対談は、昨年7月28日、自由報道協会会見場で行われたもので、内容は再構成されている。実際の対談内容全文は、マガジンハウスのサイトの中の「ウェブ ダカーポ」に掲載されている。「ウェブ ダカーポ」の該当ページ

冒頭部分を引用したい。

「政治家がすべきことがわかっていない」

司会(上杉隆氏) ウォルフレンさん、まずは対談に向けて一言お願いいたします。 

ウォルフレン ここ数年、日本に住む友人からは「本当にイライラしてどうしようもない」と聞いてばかりです。「政権が交代したのに、政治の構造が変わらない。より良い制度が生まれると期待していたのに」というのが理由でした。こういう大災害に接した時こそ、何か壮大なことができる、一つの大きな窓が開かれたと思うのです。それを可能にする資源、素質というのは日本の中にある。そんな壮大な何かをしないといけない時期が今なんだと、今日はそんな話ができればと参りました。

個人的な話になりますが、家内と私は、通常だったら地震の発生した日も日本にいる時期だったのですが、ちょうどその時期、家族のお祝い事がありたまたま帰国していて日本にいませんでした。私と家内は、「日本にいるべきだった」ととても悔やみました。日本国民ではありませんが、それくらい日本に親しみがあるのです。そんな気持ちから、今日はお話をさせていただきます。

司会 3・11以降、既存メディアでは「小沢さんの影が見えない」「何もしていないのではないか」という報道がなされました。地震発生以降、どのような活動をされてきたのでしょうか。

小沢 私も被災県の岩手出身ですが、未だかつて経験したことないような大災害に日本は見舞われました。特に原発の損壊と、放射能汚染の問題。それが非常に深刻な事態だと当初から訴えてまいりました。このような時にあたって、世界でも評価されるような日本人の長所が発揮されるのと同時に、日本人の欠点も露呈されました。長所というのは、こんな大災害にも関わらず、みんな一生懸命力を合わせて復興のために頑張っている、その忍耐と努力、そして能力。これは日本人として誇っていいことだと思います。

ただ、放射能汚染という、より大きな危険性を秘めているこの原発事故のような深刻な事態になりますと、本来もっと国家が前面に立って、英知を結集して思い切った対策を講じる仕組みと姿勢が必要だと思いますが、それができていない。政治だけではなく、一般の国民の間からも強い要求が中々出てこない。まさにこの欠点が、日本的な現象だと思っています。他の国であれば、黙って現状を見過ごしている国民はいないと思います。そこが日本の国民性の不思議なところでして、物を言わずに個々人が頑張っているというところです。



そして、対談の締めの部分。

「政治家は国民の中に、大衆の中に」

ウォルフレン 最後に小沢さんに質問です。1993年、羽田務さんとともに自民党を後にされました。そこで日本の政治に変化が生じた。今振り返ってみて、'93年以降成功してきたと思いますか。また、民主党が真の政治改革をできずに終わった時には、小沢さんはどのようなアクションをとりますか。

小沢 その当時の予定よりも時間がかかりましたけど、17、18年かけて政権交代ということを成し遂げたということは、大きな満足です。同時に、今日の状況は、民主党に対する国民の期待は地に落ちている。もはやこのままでは総選挙の惨敗は火を見るより明らか。何故かと言うと、我々が訴えてきた国民主導、政治家主導というものが未だ確立できていないからだろう。目先を色々心配するあまり、国民との約束に対して、「無理だった」とか「間違いだった」という誤った行動に繋がっているからだと思います。約束したことを100%完璧に達成することは現実にはありえないのですが、約束した以上はその約束を守るために最大限の努力をする。その姿が尊いのだと思う。こんな約束はいい、と斬り捨ててしまっていては、信頼関係は成り立たない。それが今日の民主党の現実です。

私は、選挙を実際に指揮してきた立場。そこで若手たちにいつも言うのは「政治家は国民の中に、大衆の中に」ということです。これは政治の基礎であり、原点。民主主義の原点でもある。私は選挙においても、自ら率先して「大衆の中」に入ってきたつもりでいますので、民主党はこの初心を思い起こし、それを政治の上で実践してゆく。少なくとも、民主党がその努力を全力でやるということになれば、国民の信頼をもう一度取り戻せると確信しております。



 本書において、著者ウォルフレンは、今回の“小沢一郎つぶし”の背景にあるものを「画策者なき陰謀」と名付けている。(第二章「霞が関というシステムの起源」より)

 この画策者なき陰謀は、どんなときに生み出されるのか?人間の管理下にあるべき行動や人間関係などが、そのような管理下をかいくぐる際、それは発生する。そしてそれは管理下を離れ、「独り歩きをはじめる」。たとえばアメリカの軍需産業に軍隊、また政府が加わって形成される軍産複合体は、画策者なき陰謀が巨大化した一例である。この軍産複合体が独り歩きをし、自己増殖しているために、アメリカの権力者たちは、自衛を目的としない戦争まで推進しなければならないのである。そして、避けようと思えばたやすく回避できるはずの、政治的な紛争をあおり立てているのである。アメリカ大統領、あるいはペンタゴン(国防総省)の最高司令官の力をもってしても、もはや軍産複合体を抑えることはできない。
 そして体制の現状維持を危うくする存在であると睨んだ人物に対して、その政治生命を抹殺しようと、日本の検察と大新聞が徒党を組んで展開するキャンペーンもまた、画策者なき陰謀にほかならない。検察や編集者たちがそれにかかわるのは、日本の秩序を維持することこそがみずからの使命だと固く信じているからである。そして政治秩序の維持とは旧来の方式を守ることにほかならない。そんな彼らにとって、従来のやり方、慣習を変えようとすることはなんであれ許しがたい行為なのである。



 この「画策者なき陰謀」という言葉は、2010年に発行されたウォルフレンの著『アメリカとともに沈みゆく自由世界』で初めて使われた概念だが、本書では、体制の現状維持を危うくする小沢一郎という存在を亡き者にしようとする「人物破壊」(character assassination)という「画策者なき陰謀」の実態を、官僚組織の歴史的起源などを含め解き明かそうとしている。
 政治家に権力を握らせない、そして政治家は国のためではなく自分の利益を優先する汚い存在であり、反面、官僚は健気に国家に尽くす清い存在である、という虚像がマスコミを含む「画策者なき陰謀」で浸透していく。

 そして「人物破壊」の先頭に立つ検察と法律について、次のように説明されている。

 日本の法律には、検察がみずから達成しようとする目標に合わせてできるだけ自由に解釈できるような、意図的に曖昧な表現が使われている。この事実がとりわけ重みを増すのは、政治資金規正法に違反したとして、政治家が検察によって捜査された場合だ。法律の条文が意図的に曖昧に記されているからこそ、野心的な政治家のふるまいをそれに結びつけ、なんらかの違反行為があったと検察は主張することができるからだ。


 小沢一郎が有罪ならば、国会議員の半分は黒、という指摘もあるように、税金をかけてだらだら続けられた裁判は、まったくの茶番である。しかし、民主党の現在のリーダーは、小沢を救おうとはしなかった。彼ら自身が、小沢の次に「陰謀」の標的になることを嫌い、クリーンなイメージを保ちたいからだ。

 民主党が、なぜ今のような情けない状況になったのか。“クリーン”なイメージを保とうとする愚かな他のリーダー達の行為が、次のように断罪されている。(第四章「“政治的現実”と日本のメディア」より)

 民主党は政権党としてのキャリアを歩みはじめた時点で、すぐれた辣腕をなによりも必要としていた。なぜなら日本の政治システムを憲法に沿う形で変革するという、民主党がみずから任じた課題は、それほどまでに重いものであったからだ。日本の憲法には、主権は日本国民にあり、選挙によって選ばれた国会議員が国民を代表すると記されている。しかし本書でも述べたように、この国で実際に影響力を持つのは憲法規定ではなく、古い慣習である。
 これほど重大な任務をまっとうするには、民主党政府は党内のあらゆる政治的見識を結集させる必要がある。ただしそれができるのは小沢氏である。彼が鳩山氏や菅氏に打つべき手を指示するよう期待するしかなかったのだ。
 ところがメディアは鳩山政権が小沢氏を頼りにしすぎ、小沢氏の舞台裏での影響力が大きすぎると騒いで、この試みを邪魔立てした。ではそれ以外にだれに頼れと言うのか?小沢氏ではなく官僚たちを当てにすべきだったとでも言うのか?菅首相は小沢氏の影響を退けようとしたことで称賛された。だがなぜそのようなことで称賛されるのか?日本の新聞は聞こえのいい陳腐な決まり文句を繰り返しながら、日本に大変な悪影響を与えてきたが、こうした事例などその最たるものだ。菅氏の姿勢は、彼がメディアを恐れていたことのあらわれにすぎない。



 昨年の大震災、そしてフクシマの際、「小沢一郎だったら・・・・・・」と思った人は私だけではないだろう。
 
 既得権にすがり現状を維持したい政治家、官僚、マスコミは、現状維持を破ろうとする政治家を「画策者なき陰謀」の標的とする。

 マスコミが一致団結して「ダーティ小沢」キャンペーンを展開した。無罪になった今なお、「限りなく黒に近い灰色」などというコメントがテレビや新聞に登場している。あれだけ陰謀に加担してきた以上、マスコミが「我々が間違っていました」と言うわけもない。
 
 1993年に小沢と羽田が自民党を飛び出してから、来年で20年になる。あれはいったい何だったのか。

 なぜ、「社会保障と税の一体改革」が「待ったなし」で、大震災とフクシマからの復興、フクシマを踏まえた長期的エネルギー政策には「待った」ばかりしているのか。

 相変わらず、今や世界のリーダーとしての力も品格もないアメリカの言いなりになろうとしている野田ドジョウやカメレオン枝野では、とても日本の将来は楽観できない。

 永田町を見渡して、小沢一郎以外に、今の日本の舵取りを任すことができる政治家は、いるのだろうか?

 私は、陰謀によってゆがめられた小沢一郎のイメージを払拭するキャンペーンを張るくらいの真っ当なメディアの存在をこそ期待する。そして、あらためてこの男に日本の舵取りを任せるしかないように思う。陰謀の主役である霞が関や、大衆に迎合する空虚な言葉しか発することができない政治家達に、何が期待できるだろうか。今こそ、国を導く強いリーダーが必要なのが、日本の現状ではなかろうか。

 これからの日本がどうなるのか、それは消されかけていた小沢一郎が政治の舞台で再生できるかどうかにかかっていると思う。大震災の被災地出身の小沢なら、今の日本における課題の優先順位を間違えることはないように思うが、まだまだ「画策者なき陰謀」は続くのだろうか。特に“ベテラン”と言われるマスコミ人に小沢は評判が悪い。それは、彼らが小沢一郎のダーティイメージをこれまで目一杯発信し続け、たとえば小泉を持ち上げてきたのだから当然とも言える。

 国民の“支持”と“人気”の、ビミョウな違いを峻別し、あくまで誰に任せたら日本が世界の中で馬鹿にされず、尊敬される国になるのかを、今こそ自分自身で考える、それが一人一人に求められているのではなかろうか。いざとなれば、自分の生命を国のために預ける、そんな了見を持った政治家が必要なのだ。
Commented by hajime at 2012-04-28 21:29 x
こんばんは、落語以外ではもしかしたら、初めてかも知れません。

マスコミは自分達が如何にいい加減な報道をしてきたか、反省もなしに相変わらずの小沢悪人キャンペーンを張っていますが、個人的にはもうマスコミの報道は信用しない事にしています。
私は小沢さんの熱烈な支持者ではありませんが、先の総選挙では少しでも明るい日本になるならと、民主党に一票をいれました。
それは、多少暗い部分があっても、この日本を変える事が出来るのは、全政党を見ても小沢さんしか居ないと思ったからです。
私はクリーンでも無能な政治家は必要無いと思っています。政治家は国民の幸福の為に何をしたかが重要だと思うからです。
幸兵衛さんの意見に全く同意します。「画策者なき陰謀」はやめて欲しいですね。

余談ですが、私の家は、あることで、度々新聞の取材を受けるのですが(主に文化部)彼らでさえ、すでに自分で書いたシナリオに沿った取材しかせず、それ以外の事はどんな事を言っても載せてもらえないですね。そして、強引なインタビュー等ですね。
「・・・・と言う事ですね!」と言う言い方で全てのインタビューをしてくるのです。どの新聞社も同じでした。

きっとこれからも取材を受けるでしょうが、同じでしょうね(^^)

Commented by 佐平次 at 2012-04-28 21:48 x
でも残念ながら小沢はすでに殺されてしまったようにおもえます。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-04-28 22:02 x
落語以外でhajimeさんから熱いコメントをいただき、うれしい限りです。
以前広告業界で働いていたことがあるのですが、あの業界を離れた理由の一つは、あまりにも視聴率という指標にのみ頼る世界への抵抗感でした。
視聴“質”を計る指標はないので、その評価は、まさに人に委ねられます。

今日のテレビは「きっと、こういう報道が喜ばれる」「視聴率が取れる」という大衆迎合主義が優先しています。
「画策者なき陰謀」の流れに乗ることは、ある意味で大衆の支持を得られる流れを先取りすることでもあります。
大宅壮一が言った「一億総白痴化」は、ますます進んでいると思います。

私も小沢一郎の熱烈支持者ではありません。
しかし、他の政治家を見渡せば、彼以外に今日の日本の舵取りを任せられる人がいるとは思えません。
大衆の圧倒的な支持を得た小泉純一郎の郵政民営化は、今どうなったのか・・・・・・。

「和を持って尊しとする」という日本の伝統、文化は大事だと思います。
しかし、「画策者なき陰謀」の和を、我々は必要としていません。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-04-28 22:13 x
イメージ優先の国民や、これまでの流れから路線を変えようとしないマスコミの動きからは、確かに悲観的ですね。
しかし、今、小沢支持の流れもないわけではない。
私は、その動きを、あえて支持したいと思います。
野田も菅も鳩山も、もちろん今の自民党よりも、まだ将来に夢を持てるからです。

Commented by 創塁パパ at 2012-05-04 09:12 x
無罪判決後の「マスコミ」は最低でした。
そうなるとは予感していましたが。もはや「エセマスコミ」でしかないですがね!!

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-05-04 10:22 x
「画策者なき陰謀」ではありますが、マスコミの役割は大きい。
その立ち位置がどこにあるかというと、決して市民サイドにあるとは思えないですね。

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by kogotokoubei | 2012-04-27 14:34 | 今週の一冊、あるいは二冊。 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


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