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第15回 新宿亭砥寄席 新宿文化センター(小ホール) 3月16日

 顔ぶれがいいので落語ブログ仲間のSさんYさんにもお声をかけて、終演後の「居残り会」開催を楽しみに、週末の新宿に駆けつけた。この会は2009年7月の第6回以来になってしまった。
 今回は、瀧口雅仁の「落語の達人」出版記念の会。良くも悪くも、背景にあるこの企画が、会のあり様を左右したと言える。次のような構成だった。
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対談 瀧口雅仁(司会)柳家権太楼・桂平治・柳亭市馬
開口一番 柳亭市也 『一目上り』
古今亭駒次 『電車戦国絵巻』
柳亭市馬  『花見の仇討ち』
(仲入り)
桂平治   『平林』
柳家権太楼 『一人酒盛り』
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対談 (18:59-19:22)
 幕が開き、パイプ椅子が並んでいたのを見て対談と分かったが、市馬が出てこない。司会役の瀧口氏の話では、まだ会場に着いていない、とのこと。理由はともかく、このへんから、この会は少しギクシャクし始めていた。
話題は、やはり権太楼の芸術選奨文部科学大臣賞受賞から。しかし、この賞は芸術祭賞と紛らわしくて、過去の落語家の受賞者という質問では、芸術祭賞の文楽、志ん生の名が混在してしまう。芸術選奨は、その人の一連の活動や作品が対象だが、芸術祭は、賞の評価対象として参加することを意思表示した特定の公演や作品の評価で決まる。
 あらためて、落語協会で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した噺家を確認するが、協会HPの本件のニュースにあるように、六代目三遊亭圓生、八代目林家正蔵、古今亭志ん朝、柳家小三治。権太楼で五人目。二つの賞の違いや受賞者のことを、落語評論家の瀧口氏が説明できないのが、やや不思議であり不満であった。
 対談開始10分後に市馬が登場。権太楼のリクエストで「達者でな」を唄う。このあたりから、私はこのプロローグを早く切り上げてもらい、肝腎な落語に時間を割いて欲しくなっていた。
 それでも対談で印象に残ったことはある。権太楼が最初の師匠つばめ門下の“ほたる”時代、元旦は、まずつばめ師匠の家に行き、一緒に目白の小さんの家に行って、その後に全員で黒門町の文楽の家に挨拶に行った、という思い出話。
 企画の背景にある瀧口氏の本(『落語の達人』)は、この五代目柳家つばめのことを権太楼に、三代目三遊亭右女助について桂平治に、そして橘家文蔵のことを柳亭市馬に取材し、この“馴染みのない”三人の「落語の達人」のことを本に書いたため、取材したこの“馴染みのある”三人の会を亭砥寄席と合同で企画した、ということらしい。しかし、著作を紹介したこともあるが、つばめに関して言えば“馴染みのない”噺家でもないし、“忘れさられようと”しているわけでもないと思うけどね。
*『創作落語論』を紹介した2009年6月14日のブログ
*『落語の世界』を紹介した2009年12月29日のブログ

 取材した三人を集めてみた、というところに、やや無理がある。個々に取材した三人を集めれば落語会が成り立つというわけでもなかろう。別の噺家について別々に取材したのだから。また、もし対談でそれぞれの“馴染みのない”達人のことを題材にするなら、開口一番も駒次の出演も割愛し、もっとしっかり事前準備をした対談を組むべきだろう。今回の中途半端な構成を考えると、出版記念という企画の味付けなしに、普通にこの三人の落語会にしたほうが、もっと良かったように思う。
 対談で平治にマイクが渡ると、どうしても昨年末の末広亭席亭の芸術協会批判のことになる。平治からは、今検討中の他派との合同企画について少し話があったが、まだ決定ではないようなので明かさないことにする。ともかく、芸協から平治が一人。権太楼も市馬も芸協をなじるので、やや平治は四面楚歌状態。このあたりの成り行きが、その後の後味の悪い高座につながったように思う。
 残り三分位から権太楼の顔は「早く終わらないかなぁ」といった表情に見えた。受賞祝いの花束をもらって笑って下がったが、いずれにしても長すぎた。落語家の対談は、ほぼ“スベる”のだが、今回もその例外ではなかった。長すぎた対談に、つい書く小言も長くなってしまった。

柳亭市也『一目上り』 (19:23-19:33)
 10分で何とかまとめた市也は責められない。構成から考えて、開口一番は余分だった。

古今亭駒次『電車戦国絵巻』 (19:34-19:52)
 駒次の“テッパン”ネタで会場は沸きに沸いた。しかし、本の出版を記念した企画なのに、駒次の存在は何だったのか。これまた、疑問の残る構成と言える。「あれも、これも」の企画は、結果としてうまくいかないのだよ。

柳亭市馬『花見の仇討ち』 (19:53-20:20)
 市馬は、こういうネタで活きることを再確認。「桜」を二度「松」といい違えたのは愛嬌とも言える、弟子が開口一番の後の高座返しも勤めながら師匠の姿を見ていたことを考えると、あまり褒められたものでもないなぁ。とにかく、明るい落語ならこの人、あるいは、どんな噺でも明るく、といった個性がはっきりしてきたようだ。

桂平治『平林』 (20:39-20:58)
 師匠の文治のことから、先代の小文治の逸話あたりまでは良かった。小文治が、「茄子」と言われていたらしく、その意味が「ヘタなりに付いている」というのは、なかなか可笑しかった。
 しかし、トリの権太楼のネタをバラしたのは、まったくいただけない。いくら、市馬に足袋を隠されたとか、権太楼が楽屋で口をきいてくれないとか、落語協会包囲網でイジメられていたにせよ、これから登場する噺家のネタを明かすのか、御法度だろう。「さぁ、何をかけてくれるのか」とマクラの内容から推理するのも、客の楽しみなのである。
 本編も無理なギャグを入れすぎで、この人らしさのない、やや品のない高座。この会の企画の悪い面が露呈したような流れとなり、ややがっかりした。

柳家権太楼『一人酒盛り』 (20:59-21:32)
 座ったとたん、「あんな落語だから、芸協はダメなんです」。
 ネタをバラされて、怒っていないはずがない。
 いやぁ~な幕開けだったが、初めてこの人で聞く本編はなかなかの高座で、見て聞いているこちらが、だんだん酔ってくるような気がした。この噺となると、何と言っても上方の六代目松鶴となるが、設定なども少し違う東京版のこの噺、十分に権太楼の十八番となり得るだろう。 『猫の災難』と噺の構成的には似たネタ。権太楼に合わないはずがない。


 事前に厭な予感はしていたのだが、やはりこの手の企画モノは、なかなか難しい。瀧口氏が最新刊を書くため、異なる過去の噺家のことを取材した三人の現役の噺家さんに集まってもらい、
・会場で本も宣伝し、販売もしよう
・出演する噺家さんの既存のCDを売ろう
・高座を収録してCD化して発売しよう

 という商売っ気が明白な会であるのはわかっていたが、運営上の未熟さがあまりに目立った。
 
 開場後にも、全ての席にプログラムが配置されていなかったり、結構前のほうの席がまとまって空いていたり、構成上の問題として、仲入りでサイン会があり休憩時間が20分近くになり、対談があって、開口一番もあり、肝腎な三人の高座の持ち時間に微妙な差があって、結果として終演が九時半過ぎにであったり・・・・・・。
 プラスに働けば「手作り感のあるアットホームさ」のある会になるはずだが、今回は素人の運営による杜撰さとなって露呈した感がある。何より、対談そのものがチグハグ。権太楼の受賞という計算外の要因が加わったという点もあるだろうが、いずれにしても主催者側の落ち度は少なくないように思う。
 邪推だが、両協会の看板が集う楽屋で、あまり良い空気、雰囲気が作れなかったのではないだろうか。そうだとするなら、それもスタッフの重要な仕事だと思う。

 などと、必ずしも満足とは言えない気持ちではありながら、ほぼ午後10時頃から始まった「居残り会」は、大いに盛り上がった。Sさんは、雲助一門の会、権太楼を含む長講の会に続く落語会三連チャン。Yさんは長講との二連ちゃん。皆さん、ホントに落語が好きなんだなぁ。酒の勢いから、後半はSさんと私が、最近ブログの更新のないYさんへのイジメ(?)が中心となった。「居残り会」でお約束とも言えるネタで、また盛り上がる。もちろん、帰宅は日付変更線を大幅に超えることになった。
Commented by 佐平次 at 2012-03-18 13:31
いやはや、Yさんの更新しない症候群が伝染したらしく、まだ書いてないです。人を呪わば、、呪ったわけじゃないけどねえ^^。

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-03-18 15:33
他にもいろいろ書きたいことがあるのですから、いいじゃないですか。
まぁ、じっくりどうぞ。

Commented by 創塁パパ at 2012-03-19 10:28
二人で噂している(笑)平治は次回
期待しましょう(笑)

Commented by 小言幸兵衛 at 2012-03-19 10:38
平治にとって“アウェー”でしたね。
かと言って、誰にとっても“ホーム”とは言えなかったかなぁ。
駒次のみ、“マイウェイ”と言う感じでした^^
企画モノは、当たりハズレが激しいので、しょうがないですね。
また、後日を楽しみにしましょう。

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by kogotokoubei | 2012-03-17 09:58 | 寄席・落語会 | Trackback | Comments(4)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛
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