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第24回 白酒ひとり 国立演芸場 12月12日

気にはなっていたがなかなか縁がなく、たまに都合が良い時も、あっと言う間に売り切れになっていた会に、ようやく行くことができた。会場前には「満員御礼」の看板。初めて見るような気がする。

構成は次の通り。白酒の三席はすべて私には初モノである。
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(開口一番 林家扇 『牛ほめ』)
桃月庵白酒 『四段目』
桃月庵白酒 『景清』
(仲入り)
桃月庵白酒 『富久』
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林家扇『牛ほめ』 (18:50-19:02)
何度か聞いているが、これだけ会場からクスッとも笑いのない高座も珍しい。落語協会のプロフィールにある自己PRには“明るく元気”という言葉があるが・・・・・・。

桃月庵白酒『四段目』 (19:03-19:33)
 マクラで、師匠雲助と、ある落語家との二人会での楽屋仕事の失敗談ネタが可笑しかった。ある落語家の高座中によだれ垂れ流し状態で“熟睡”してしまい、つい仲入り用のテープのボタンを押すのを忘れたらしい。その御仁、雲助に向かって「おたくの若いのが・・・・・・」とクレーム。それについて、「ついつまんなくて」と言った後で、「眠れるというのは、悪口じゃない。もっとひどいと眠れない」などとフォローはしていたが・・・これ以上はこのネタについて書かないほうがいいだろう。他のブロガーの方が暴露するかもしれませんが。白酒も「書かないで」とは言っていないし、もしかして書いて欲しいのかなぁ。でも、私はやめておこう。
 談志のことがニュースになり、落語を知らない人も彼らの贔屓のお笑い芸人が追悼の言葉をテレビで語るのを見たせいか、勘違いした落語入門志願者が増えている、というネタもあった。白酒を池袋がハネるのを待ち構えていた、挙動不審の人物がいて、横浜(にぎわい座)へ急いでいたことあって振り切ったが、同じ男があちこちに出没していた、とのネタは、ネタなのか事実なのか不明だが、あり得るかもしれない。しかし、「三十歳超えているから、落語協会ではダメです」とのこと。そうなんだ、協会には年齢制限があったのだと、初めて知った。
 さて本編。この人では初なのだが、意外と言っては白酒に失礼だが、結構歌舞伎も知っているのかな、と思わせる本寸法。ヤマ場の蔵の中での定吉の一人芝居も堂に入っていた。印象に残ったのは、蔵の扉を使ったパントマイム風の手の表現でお清が通り過ぎる動きを現す演出。旦那役はどの噺でもニンだし、安心して楽しめた高座。しかし、白酒なら“想定内”ということだろう。

桃月庵白酒『景清』 (1934-20:05)
 まず、前回(9月)のアンケートの質問への回答が10分余り。なかで興味深かったのが、「東京と大阪のお客さんの違いは?」という質問に、「ほとんど変りません」という答え。これは、ある意味で“自慢”と言っていい。本人はそう思っていないだろうが、東京の噺家さんで上方でまったく受けない人だっているのだ。白酒の落語が、東京と変わりなく受けている、ということ。また、それは十分に頷ける。そして、大阪の「木戸銭」の安さにふれる。落語会はせいぜい2,000円か高くて2,500円位で、それ以上は“三枝クラス”とのこと。ちなみに、この会の木戸銭は2,500円。だからなおさらチケットは争奪戦になるわけだ。この話を聞いて、某上方落語家が東京でベラボウな木戸銭の落語会を開く理由が分かったような気にもなった。関西で4,500円だ、5,000円だという木戸銭で開いたら、きっと客にも芸能マスコミにも叩かれるに違いない。
 さて、本編。実は三席のうちもっとも私の印象に残ったのが、この高座。師匠雲助もよくかけるようだが未見。このネタは東京版とオリジナルの上方版で内容が大きく異なるが、文楽譲りの東京版のほうが、やや人情噺的で日本人には向いている気がする。三月の震災直前に小満んの会で聞き、大いにウルウルさせてもらったが、白酒もなかなかの高座。清水様に目が見えるよう願掛けした百日目。何度も観音経を唱えては、目が開いていないか確認する定次郎。しかし、何も見えない。お経を唱えてからの表情が、勝新の「座頭市」に似ていなくもない。なかなか、サマになっているというか、決まっているのだ。あきらめて観音様に毒づいて帰るところを、願掛けを勧めてくれた石田の旦那に見つかり叱られて一緒に帰ろうと言われる。定次郎の母親についての泣かせる科白を効果的にはさみ、急な雨、そして雷鳴。その雷に打たれて目が見えるようになった定次郎が、自然に着物を見ながら「・・・縞が見える・・・・・・」というところは、なかなかにグッときた。「こういう噺もいいじゃない」と感心した。
 もともと、東京版は長い噺ではないが、下手な噺家では、こうは盛り上がらない。マクラのことは別にして、本編は20分弱とは言え、マイベスト十席候補として記録しておきたい。

桃月庵白酒『富久』 (20:19-20:56)
 マクラもふらずに本編へ。先日、市馬との二人会で市馬のこの噺を聞いたが、白酒の方が良かったのは間違いがない。古今亭版の設定になるだろう、と思って聞いていたのだが、なるほど大師匠馬生版を踏襲。志ん生と馬生、微妙に違うのだ。
・富札の番号:「鶴の千五百番」
・久蔵の住まい:浅草三間町
・富興行の場所:椙森神社
までは志ん生も馬生も同じ。
・旦那の住まい:志ん生は芝の久保町、馬生は日本橋石町
 他にもこのネタのことに興味がある方は、私の古いブログをご参照のほどを。2008年12月25日のブログ
 古今亭だからいいか、とも思わないでもないが、久蔵の描き方が少し軽すぎたか、という気がしないでもない。いずれにしても、白酒のことだ、今後もっと練られていくことを期待したい。
 彼らしさも、もちろんあった。千両富が当たったのを知って腰を抜かす久蔵が、「ぁたった、ぁたった~」と相撲の行司の掛け声の如く口走るのを聞いた周囲の若い衆が、「おい、木村庄之助がいるぞ」「いや、式守伊之助だ!」、には笑った。 他にも、当たったらどうする、という野次馬の会話の中で、一人が「寄席を買って席亭になる」というのがあった。その理由が、「小三治、マクラ長いぞっ!って言ってやりたい」、に会場大爆笑。他の噺のマクラでも小三治会長のことは、ほどよく登場。決して“悪口”じゃないですよ、会長^^
 全体的に結構だったのだが、富札を買って大神宮様に手を合わせる場面の久蔵の独り言部分などは、もっとクスグリを挟みたいのに時間の関係で短縮したような気がするし、火事が収まった後で本家から届いた見舞いの燗酒を飲んで酔っていくシーンなどには、もっとこの人らしい盛り上げ方があるように思う。今後に期待。


 「満員御礼」になるのも十分に頷ける一人会。この人が今後しばらく東京の落語界の中核を担うのは間違いがない、とあらためて確認できた。めずらしく、女性の登場人物が『四段目』のお清どんだけだったことを帰宅の電車の中で思い返していた。それも、あの定次郎に会えたのなら良しとしよう。そんな思いで帰宅し、高座を思い出しながら家で飲む酒も、また上手かった。久蔵と同様にうとうとしていたら、半鐘ではなく、連れ合いから「風邪ひくわよ!」、とジャンが鳴った。
Commented by らくだ at 2011-12-13 10:34
私も久かたぶりにこの会に行けました。おっしゃるとおり、景清をかけたのには驚きました。
もっと驚いたのはこの噺のよかったこと。いつぞや、滑稽噺系以外は、自分には合ってないとおっしゃっていた記憶があるのですが、どうしてどうしてすばらしい高座でしたね。今後に期待するところ大です。

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-12-13 11:20
 「景清」良かったですよね!滑稽噺も人情噺も、どんどん白酒は自分のものにしていく、そんな印象を受けました。
 三遊亭兼好は、どこかで“滑稽噺しかやらない”というようなことを話していたようですが・・・・・・。彼だって自分の可能性を自ら狭めることはないのに。
 白酒には、後輩の三三をライバルとして競い合って欲しいです。今後どんな噺を聞かせてくれるのか、ともかく期待ですね!

Commented by ほめ・く at 2011-12-13 16:47
文楽、志ん生、小さんのいずれの得意ネタもこなしてしまうんですから、白酒は凄い。
記事を拝見すると歳の瀬に相応しい3席が選ばれ、それぞれ滑稽噺、人情噺風、大ネタと振り分けられています。こうしたサービス精神も人気の秘訣なんでしょう。

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-12-13 17:50
まったくご指摘の通りです。往年の名人が手がけたネタ選びの妙、それぞれのレベルの高さ、マクラの程よい“毒”、そして古典本寸法なのに、必ず白酒ならではのモダン(?)な演出が違和感なく盛り込まれている、そんな三席でした。
ほめ・くさんのおっしゃっているように、若手は「三白」時代の到来かもしれません。香盤では「白三」ですが、ゴロが悪い^^
その二人の後に、“一”と“兼”の文字がつくかどうかが、今後の大きな楽しみでもあります。

Commented by 佐平次 at 2011-12-14 10:53
豪華な演目ですね。
いきたかったノウ。

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-12-14 11:05
もしかしたら、チケットをお持ちで病欠だったのですね・・・・・・。
まさに、白酒は“旬”です。
マクラで言ってましたが、この夏に若干ダイエットしたようで、動きも滑らかでした。
相変わらずの汗っかきではありましたが^^

Commented by 創塁パパ at 2011-12-19 09:38
珍しいですね。「景清」とは。
また、縞物で泣いてしまいます(笑)

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-12-19 11:25
「縞物が見える・・・・・・」で、この高座も“ぐっ”ときましたよ。
いやぁ、達者な人です。今年は結構彼の会に行ってますが、ハズレはなかったです。

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by kogotokoubei | 2011-12-12 23:06 | 寄席・落語会 | Trackback | Comments(8)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛
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