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rakugo オルタナティブ vol.4 「マクラ王」 草月ホール 7月16日

“ぴあ”が主催する企画の顔ぶれが良かったので、初めての会場、草月ホールにやって来た。実は、私がお誘いした「居残り会」の7月例会(?)落語会でもあった。
 
 会場は七分の入り。実は“居残り三人組”は、このチケットのプリリザーブで、Yさんと私は最初の抽選でチケットを入手できたのだが、Sさんは二度抽選にハズレていた。そこまで厳選していて、この入りというには解せない。このへんから、この会そのものについて不安がよぎった。元々「この顔ぶれだからハズレはないだろうが、マクラを主役にしてどんな会になるのか?」という疑問もなかったわけではない。
 
 さて、その疑問への答えはどうだったのか。構成は次のようなものだった。
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(開口一番 立川こしら マクラ&『王子の狐』)
三遊亭兼好 マクラ&『蛇含草』
三遊亭歌之介 マクラ&『お父さんのハンディ』
(仲入り)
桃月庵白酒  マクラ&『松曳き』
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こしら(14:01-14:13)
プログラムのこの人の名を見て「えっ」と思ったが、この会の主催は“ぴあ”だが、制作は立川企画だし、この会場での夜の部では「柳家と立川」ということで、さん喬・志らくの二人会・・・なるほどと思った。夜も開口一番を務めるのだろうか。
初めてだと思うが、落語家というより、会場近くを歩いていた普通のお兄ちゃんが間違って高座に上がった、という感じ。持ち時間10分と言っておきながら、携帯ソーラーパネルのことなどのマクラ8分のあとでネタに入った。いくらなんでも『王子の狐』を2分でこなす芸当は、寄席に出ていない立川流の若手では無理。ネタ5分で時間超過で降りたが、開口一番は必要だったの、という疑問のみ残った。

兼好(14:14-14:47)
マクラは、ついこの前まで行っていたドイツでの落語会。会場の一つは医大の「解剖室」だったとのことなど、非常に新鮮なネタに、先代円楽を素材にした定番の話などを交えマクラ約20分の後で本編へ。12分ほどでの『蛇含草』での芸は結構笑えたのだが、持ち時間は30分だったのだろうか、この企画の「マクラ」に注力して時間を使いすぎたのを挽回しようというような性急さがあった。以前に聞いた内容の記憶では、餅を食べるシーンでのクスグリとサゲの前を少しカットしたと思う。マクラにいつも以上に神経を使ったことも力加減としてバランスを崩した印象。ドイツとオーストリア行脚のことは、もっと聞きたかったが、これは次の機会に期待しよう。まず、この兼好の高座から、「マクラはあくまでマクラだよなぁ・・・・・・・」という思いが募り始めた。

歌之介(14:48-15:14)
ほとんどいつものマクラ、というかこの人の場合はマクラ全体も一つのネタと言ってよい、こなれた芸。同じマクラを聞いても常に笑えるというのも凄いことだと思う。ほぼ20分経過してから『お父さんのハンディ』を7分ほどでこなした。「あれ、短かすぎない?」という気がしたが、こしら、兼好の超過分の調整だったかもしれない。あとの不思議な対談(?)で明らかにしたが、「マクラでアドリブは、なし」と言っていたので、やはりいくつかあるパターンのマクラネタからしっかり計算された構成されているようなので、歌之介のそれをマクラと言っていいのか、と思わないでもない。

白酒(15:25-15:53)
仲入りから戻る客のざわめきが続いている中で出囃子が鳴ってしまい、高座に上がった時にも席につく人の動きが終わっていない。これは、通常なら客の動きを見ながら出囃子を流すか、スタッフが、まもなく始まることを告げて着席を誘導すべきであり、主催者側の落ち度である。こういう時は噺家は落ち着いて噺の口火を切ることができない。「薩摩二人に会津若松一人で、楽屋は大変」とか円楽党や根岸を素材にした白酒らしいマクラもあったが、他の二人よりは短い15分で本編へ。三太夫の粗忽ぶりは楽しかったが、ところどころ噛みながら、ややドタバタした高座。

座談(15:54-16:18)
高座が少し片付けられたが、椅子は出ない。最初の“ぴあ”のTさんという人が登場。やや緊張気味。固い。その後、こしらを含め4人が壇上に並ぶが、司会者の固さが伝染し皆さんぎこちない。Tさんが、四人に質問するという妙な形式の対談が始まった。
 その質問が、少しピントはずれと言わないわかにはいかない。
・マクラはいつ考えるのか?
・どのネタにするか、マクラをふりながらどんなふうに決めるのか?
 緊張した口ぶりと、この質問の仕方では、盛り上がらない。
マクラは日常いつでも考える機会があるわけで、いつ、と限定できるものではなかろう。ネタは、ほぼ決めているか、せいぜい二つ三つの候補をしぼっていて客の温度を測りながら決めるものだろう。そして、ほぼ出演した噺家もそのように答えていた。お題はもっと違うもので欲しかったし、全員を立ったまま並べてでの「対談」というのは、あり得ない。
 唯一、まぁまぁなお題が、芸能人などでどの人のトークが上手いと思うか、というものだったろうか。
こしらは即座に「志らく!」と応えて白けたが、白酒の永六輔に関する話は、なるほど、というものだった。
途中で歌之介が同郷の白酒をいじって、「名門高校から早稲田に行かせたのに、落語家になったと言ってお母さんが泣いた」というネタに白酒が、「兄さんそれだけは、本当に勘弁してください」と弱っていたところが可笑しかったが、これだけの顔ぶれにしては盛り上がりに欠けた。こういう対談は難しいのだが、もう少し工夫のしようがあったと思う。 少なくとも椅子に座って行うべきだった。

 ぴあのサイトのこの企画の紹介では次のように書かれていた。「ぴあ」のサイトの該当ページ

昼公演の「マクラ王」は、“マクラ・本編・オチ”で構成される落語において、本編よりあえて“マクラ”に着目した落語会です。そのマクラの面白さに定評のある三遊亭歌之介、桃月庵白酒、三遊亭兼好が登場。45分にも及ぶ彼らの漫談マクラバトルは必聴です。


 いったい、この「45分」とは何のことだったのだろう。ぴあの落語会企画は意欲的な試みではあるだろうが、今ひとつ企画が練りきれていない印象。もっと、構成の仕方はあったように思う。

 さて終演後は楽しい「居残り会」である。Sさんお奨めの表参道で唯一の銭湯「清水湯」への15分ほどの散歩。外は暑かったが風がほどよいし、とことどころ日陰に入ると涼を感じる。Sさんが以前に来た頃の昔ながらの銭湯から近代的な設備に変っていたがさっぱりできた。場所がら、外人さんが多かったなぁ。
 湯上り、そして気持ちのよい風を受けながら、Sさんが事前にチェクしていた南青山5丁目の焼き鳥屋さんへ。それぞれが酒、焼酎、ビールと好みの酒と焼き鳥を楽しみながらの話題は、落語会のことから昔の居酒屋のこと、そして日本の将来のこと(?)などに広がり、楽しい宴はあっと言う間の2時間半。その中で落語会への共通意見として出たのが、次のこと。
・開口一番不要。
 Sさんからは、「この会のマクラを歌之介がやれば良かった」という秀逸なアイデア!
・対談は、司会者なしで、例えば白酒に司会役を任せて自由に対談させたほうが良かった。
・「マクラは、あくまでマクラ」ということ。
 噺家の好みは三人微妙に違うのだが、落語や落語会への評価についてはほぼ共感できるので、この「居残り会」は楽しいのだ。
 
 帰りの電車、気持ち良くうとうとしてきた時に、マクラが欲しかった。
Commented by 甘木 at 2011-07-17 09:07 x
青山ですか。懐かしいですね。私の青春の地であります。
南青山4丁目の会社の寮に何年も住んでいましたので、青山の路地を探検したり、
神宮球場と国立演芸場には随分通ったものです。
私がふらっと国立に行くと、よく小南師匠がお出になっていました。
清水湯さんにも何度も行きましたが、初めて行った時(まだ昭和でした)、
青山通りをジャージにつっかけで歩いていたら、その当時でも随分浮きましたね^^。
いま住んでいる羽田では、全くそんな事はないのですが(笑)。
焼き鳥屋さんは、畳敷きの小さなお店に、よく先輩と飲みに行きました。
青山もすっかりご無沙汰なので、今どうなっているかそのうち見に行きたいです。

Commented by 佐平次 at 2011-07-17 10:15 x
お早いお着きで^^。
いろんな落語経験ができてシアワセです^^。

Commented by hajime at 2011-07-17 10:30 x
記事を読ませて戴くと、何だか消化不良のような会だった様ですね。
主催者の手際といい、たまにはありますね。
今朝の文化放送の「はやおき亭」で歌之介さんの「お父さんのハンディ」が掛かっていましたが、やはり本編は10分ありませんでしたね。

Commented by 創塁パパ at 2011-07-17 11:26 x
企画には、無理がありましたが
それもまた楽し。しかし、司会は
下手くそでした(苦笑)
まあ、会の後が一番楽しいです!!

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-07-17 15:53 x
甘木さんの青春時代の懐かしい場所だったようですね。
清水湯はリフォームしていますから、昔の銭湯のような造りではありませんでしたが、さっぱりしてから飲むビールは最高でした。
表参道、南青山、確かにジャージでは浮く場所ですね^^

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-07-17 15:57 x
まぁ、ああいう落語会に行くことも滅多にない、ということでご容赦の程を^^
上手い酒と肴(もちろん話題の肴を含め)でした!

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-07-17 16:12 x
マクラは、定番ネタ、本編との関係や時事的話題などを、自然な流れで語るのがいい味が出るわけで、あまり力んでしまうといけない、ということですよね。
そして「マクラ王」と名付けるなら、小三治を呼べ、ということでしょう^^
歌之介は、結構いい感じで対談を盛上げていました。流石です。

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-07-17 16:17 x
いやぁ、楽しかったですね、居残り会^^
落語会のほうも、顔ぶれは良かったんですがねぇ。
次回「居残り会」も楽しみです!

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by kogotokoubei | 2011-07-16 22:14 | 寄席・落語会 | Trackback | Comments(8)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛