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噺の話

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通ごのみ 扇辰・白酒二人会 日本橋社会教育会館 2月25日

この二人会は昨年9月17日にも来て楽しかったので再び週末の日本橋へ。2010年9月18日のブログ
 近くの日本橋劇場では「らくだ亭」も開催されていて、体が二つあったらどちらにも行きたい落語会が水天宮近辺で重なった日だった。都内での仕事を終えてなんとか間に合った。構成は次の通り。
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(開口一番 春風亭昇々 『雑俳』)
桃月庵白酒  『馬の田楽』
入船亭扇辰  『徂徠豆腐』
(中入り)
入船亭扇辰  『天狗裁き』
桃月庵白酒  『幾代餅』
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昇々(18:46-18:56)
辰じんを期待していたが、昇太のお弟子さんの芸術協会の前座さん。大師匠の柳昇が十八番としていた一門のネタだが、なんとも形容しがたい。今どきの雑俳を並べるが、私には笑えない。若い人には受け入れられるかもしれないが、どうもオチケンの学生が間違って高座に上がった、という印象。18:45に開演なので持ち時間は15分あったかと察するが、10分ほどで唐突に切り上げた。
あとで辰じんが高座返しをしていたので会場には来ていたわけだ。辰じんでなかった理由が謎だ。

白酒『馬の田楽』 (18:58-19:25)
やはり昇々が予定より早く高座をおりたようで、1分以上の間を空けて登場。高座に上がるなり「前座さんが予定より早く切り上げたので楽屋で大変で・・・・・・」。そりゃあ、そうだろう。マクラは花粉症からパンダとなり動物つながりで本編へ。一昨日行った県民ホール寄席の『木乃伊取り』における飯炊きの清蔵もそうだが、田舎者を演じさせたらニンだ。特に馬方と耳の不自由な(差別用語を一応避けました)お婆さんとのやりとりが秀逸。馬方が「うま~」と言って、「ルンバ?」と返すあたりがなんとも可笑しい。結果として二席目ほどではなかったが、会場は大いに笑いに溢れた楽しい高座。

扇辰『徂徠豆腐』 (19:26-20:05)
マクラでは恒例(?)のように白酒を少しいじる。「白酒さんは花粉症ではないですが、肥満症で・・・」と会場の温度をキープするが、ネタは講釈物で笑いは少ない噺。昨年の銀座ブロッサムでの喬太郎・文左衛門との三人会でも聞いて良かったが、あの日は文左衛門の『らくだ』のパワーに結果として隠れた印象。今日は、この噺が堂々の主役と言える。何と言っても荻生徂徠が宝井其角と隣同士で住んでいたのが日本橋茅場町である。この噺は志の輔がパルコで演じた映像をWOWOWで見たが、私は扇辰に軍配を上げる。古典落語ファンの悪弊として指摘されるものに、「蕎麦を食べる仕草がいい」とか「あのうどんの食べ方がなんともいえない」という細かな仕草を褒めるのは噺の本質的な評価ではない、という指摘がある。しかし、そういった仕草も含めての高座であるわけで、この高座については、あえて言いたい。扇辰が演じる徂徠が冷奴を食べる仕草は秀逸だ。一日の食事の全てである一丁の豆腐。あの豆腐を無心に、そして大事に食べる姿に、いつか世に出ることを夢に極貧の中で勉学に励む徂徠の姿が語られている。また、豆腐屋の上総屋七兵衛が徂徠の姿に感心する言葉、「えらい!」を、リフレインの中でそれぞれ演出を変えているが、これも巧な“間”の効果もあって高座と期待する客とのキャッチボールのような楽しさがある。 講釈では噺の中に赤穂浪士の討ち入りがからむらしいが、今後どのように変わるかも含めて、この人のこの噺には注目したい。
二席目の高座のマクラで解説してくれたが、締めの宝井其角の句は「梅が香や隣は荻生惣右衛門」 。「荻生徂徠かな」ではなく「荻生惣右衛門」とするのが本来の俳句、とのこと。勉強になった。文句なしで、年間マイベスト十席の候補。

扇辰『天狗裁き』 (20:17-20:44)
上述したように、一席目の其角の句の説明から始まった。「(講)釈ものは、いい話ではあるんですが、笑いは少なくて・・・・・・」というような言葉もあったが、たまには、“いい話”も聞きたいのだ。短いマクラから本編へ。このネタを知らなかったお客さんは、「女房が聞きたがり」+「隣家の男が聞きたがり」+「大家が聞きたがり」+「奉行が聞きたがる」という、夢を聞きたがる、熊五郎にとっては困った人たちが増える度に笑いが起こる。しかし、この噺を知っていると、この“夢を聞きたがる人の足し算”と“鸚鵡返し”の効果は、なかなか活かしにくいように思う。このネタは噺の筋そのものが主役ともいえるので、客が古手の落語ファンであればあるほど笑いを誘うのが難しい。そういう意味では、ネタ選びそのものが、この“通ごのみ”の会に適していたのかどうか、と若干疑問に思う。一席目の良さもあっての相対比較かもしれないが、そんなことを思いながら聞いていた。

白酒『幾代餅』 (20:45-21:15)
こんな爆笑の“幾代餅”は聞いたことがない。古今亭一門は『紺屋高尾』ではなく『幾代餅』というのはお決まりだが、一門の中で、こんな滑稽噺に仕立てた人を知らない。なんと言っても搗き米屋夫婦が揃いも揃って清蔵が“恋煩い”だと聞いて、文字通り“腹をかかえて”笑い転げる部分で、涙が出るほど笑った。多くの落語通のお客様も、途中からは「これは白酒の幾代餅なんだから、笑ってしまえ!」みたいな気持ちの切り替えを自然にしていたのではなかろうか。時間の関係なのか、本来の演出なのか、吉原での幾代太夫と清蔵との艶めかしいやりとりはほとんどカットしたが、それもやむなしだろ。この噺は、間違いなく白酒でなくては出来ない『新版・幾代餅』として記憶に残る。最終的には除外するかもしれないが、年間マイベスト十席候補としておく。


 この会は主催のオフィス・エムズさんによる手作り感いっぱいの落語会で、開演前や終演後も、常連さん同士という感じの歓談があちこちで見かけられる。エムズさんの落語会は、大手興行会社が1,000人を越える会場をとりあえず押さえて人気者だけ集めた落語会とは一線を画しており好きだ。今回は私も落語ブログ仲間のYさんと誘い合って来ていた。そして、近くの日本橋劇場の「らくだ亭」に行かれていた、これまた落語ブログ仲間のSさんと某居酒屋で待ち合わせての反省(?)会となった。落語や相撲やその他楽しい話を肴にした酒が頗る美味しく、つい日付変更線を越えての帰宅。そりゃあしょうがないよね、飲み始めが九時半では。さて、昨年のこの会の二人の高座も年間マイベスト十席に一席づつリストアップしたのだが、最終的には残らなかった。今年はどうなることやら、我ながら楽しみ。対照的な二人の芸達者による噺に酔い、その後には噺を肴にした美味しい酒にも酔った日本橋の夜だった。
Commented by 佐平次 at 2011-02-26 13:48 x
こっちもよかったのですね。
天狗裁きのような繰り返しが多い噺をダレさせずにやるのはかなり登場人物を細かく、しかも面白く描き分けないとならないのではないでしょうか。
そして熊さんのリアクションも変化させる。
なかなか難しいと思います。

Commented by 創塁パパ at 2011-02-26 14:12 x
おつかれさまです。体調最悪。
昨日の「春一番」で・・・(泣)
徂徠豆腐・幾代餅2席得した気分です。いい噺家さんですね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-02-26 17:40 x
ご指摘の通りで、あの噺は結構難しいですよね。
花緑が米朝から稽古をつけてもらったということで、一時頻繁にかけていた時期に聞いたたことがあったのですが、当たりハズレが激しかったことを思い出します。
全体的には良い会でした。

Commented by 小言幸兵衛 at 2011-02-26 17:43 x
体調大丈夫ですか?
二人会としては、なかなかの組み合わせだと思います。
花粉症と肥満症、どちらもいやですね^^

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by kogotokoubei | 2011-02-26 09:09 | 寄席・落語会 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛