遊雀玉手箱 -年明けの巻- 内幸町ホール 1月24日
2011年 01月 25日
構成は次の通り。
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オープニングトーク 三遊亭遊雀・瀧川鯉昇
三遊亭遊雀 『初天神』~『浮世床』
瀧川鯉昇 『千早ふる』
(仲入り)
三遊亭遊雀 『井戸の茶碗』
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オープニングトーク (19:00-19:08)
緞帳が上がると、深々と下がる二つの頭。下手に茶髪、上手には“やかん”。
頭を上げてからの会場は、「えっ、鯉昇!?」という私と同様に驚いた人たちのドヨメキ。
なんと芸術協会のツートップの登場。(個人的には昇太はトップではないので)
遊雀いわく、ここで会場をどよめかせるためだけの企画、とのこと。
プログラムに「オープニングトーク」や「お楽しみ」という言葉が並んでいたので、
誰かゲストがいるだろうとは察していたが、まさかのうれしい人選である。
遊雀が紹介する際、つい「春風亭鯉昇師匠、いえっ、瀧川鯉昇師匠!」と間違えたのはマジにミスったのであろう。遊雀が芸協に移籍(?)したのは、鯉昇が瀧川の名跡に変えた一年後だが、二人の付き合いは結構古いようなので、つい旧名が口をついたということか。
その古い付き合いにまつわる相当下品で笑えるトークだったが、とてもとても書けない。ある意味、遊雀が権太楼をしくじるのも頷けるエピソードだった。
遊雀『初天神』 (19:09-19:35)
この噺は、ブログを書く前の2007年4月14日に、現在は開催されていない「南大沢寄席」の白酒との二人会で、パイプ椅子の前の方に座り、高座から汗や唾もかかろうかという席で最初に聞いて以来。その時は白酒が『花筏』をかけたのだが、彼の汗が飛んできた、ような気がしたものだ。南大沢における遊雀のもう一席が『紺屋高雄』だったとノートには書いているのだが、実は『初天神』しか覚えていない。というよりも、金坊の壊れ方が夢にまで出たほどの衝撃だった。今回は、時間のせいもあり飴のシーンは飛ばして団子だけなのだが、初めて彼のこのネタに出会う人には十分にそのエキスが伝わる高座ではあったと思う。ちなみに、テレビ朝日『落語者』の再開第二回で林家彦いちがこのネタをかけたが、このネタに関して言うのならば、格が違う。遊雀の持ち味である“狂気”を秘めた演出を小品に凝縮したこの人十八番だ。
遊雀『浮世床』 (19:37-19:57)
いったん高座をおりて着替えての再登場。2分の早替わり。ついでにお茶も一口飲んだらしい。あの金坊をやれば、喉も渇くだろう。この噺は『初天神』に比べれば“まっとう”だが、私は彼のこういう噺も好きだ。半公が夢物語の惚気噺を語るシーンなどは、安心して楽しめる。この二つのネタを、この順番で並べたのもよく分かる。いったんざわめいた空気を整え、客演の先輩の高座につなげようという気配り、と言ったら大げさかもしれないが、二つのネタの順が逆だったら、いくら鯉昇と言えどもは出にくいよねぇ。
鯉昇 (19:58-20:33)
定番のマクラで会場の空気を測る。
□集合住宅の下の階の家が寒がりでその部屋の暖房のおかげで・・・・・・
□熱があるので測ろうと思ったら体温計が見当たらず・・・・・・
□インフルエンザが流行った時、大阪でマスクがどこも売り切れて月亭八方の奥さんが北海道にいた八方の携帯に・・・・・・
などなど。
このマクラへの反応で“初鯉昇”が結構いると見立てたのだろう、どの会場でもハズレのないこのネタへ。
私は何度目かなぁ、この噺。とにかくよく聞いている。もちろん、モンゴルまでをも舞台にするネタは大受け。確かに、鯉昇に馴染みの薄いお客さんが多かったようだ。そりゃぁ、遊雀の独演会で、ゲストはシークレットだったからね。しかし、本当に風邪気味のようで、絶好調時のこの人と比べると、ややパワーダウン。とは言え収穫はあった。サゲが変わっていた。なるほど、本編は進化してますなぁ。できれば、マクラももう少し新ネタで、と言いたいところだが、客演としては十分の高座。
遊雀『井戸の茶碗』 (2045-21:25)
予想に反して(?)本寸法だった。まとまった印象はあるが、しかし平凡ではない。この人独特の表情と声による演じわけが演出としては評価できる。基本的には声がよく役者的なので侍には合っている。たとえば、千代田卜斎や高木作左衛門が屑屋の清兵衛を、刀の鞘に手をかけながら、「ちこうへ寄れ!」と言って脅す場面などには効果的だ。『初天神』の金坊の壊れ方でも発揮されるが、時折出す太い声が芝居じみて効いている。全体の演出としては、もっと清兵衛を可笑しくすることもできるのだろうが、三作目でもあり無難にこなしたかな、という印象。
サプライズゲストを含め、内幸町ホールで、この内容で木戸銭2,200円(前売り)は、とんでもなくお徳。1,000人以上収容できる大ホールで、人気者ばかり集めて3,500円とか4,000円という会に比べれば、寄席の感覚も残しながらの落語会、アットホームで好ましい。
終演後には落語ブログ仲間と美味しい酒をいただくこともできた。そういえば会場から近いそのお店には、あちらこちらのテーブルで、この落語会に行かれた方が反省会(?)を開いていたなぁ。考えることは皆同じ、ということですなぁ^^
残念なのは2月、3月が日曜開催で行けそうにないこと。特に3月は、2009年3月21日の朝日名人会の高座で、見事に他の演者を“喰った”と思わせた『崇徳院』がネタ出しされているのだが、行けそうにない。残念でならない。 土曜の落語は昼席のみとしているし、日曜は落語以外の日としている我が身としては、ぜひ平日夜か土曜昼での開催をご検討願いたいところだ。
本寸法の実力を持ちながら、ほのかな“狂気”を宿す噺家として、今後も遊雀は気にかけていきたい。しかし、余計なところでは尖る必要はない。1月8日の末広亭初席では、芸協移籍の翌年に南大沢で聞いた時に比べれば、良い意味で年ずいぶん相応の丸みを帯びてきたように思ったが、できれば髪型や髪の毛の色なども“普通”にしてもらいたい。見た目でムダに客を警戒させるような印象を与えずに、噺そのものはキラっ光る鋭さを隠し持つ、そんな噺家さんになって欲しいのだ。 茶髪の噺家は一人でたくさんだ・・・・・・。
私は、今でも遊雀が喬太郎の好敵手であると思っている。喬太郎より入門は一年早かったが、NHK新人演芸大賞は喬太郎が受賞する三年前の1995年に『反対俥』で獲得している。芸協に移籍後にも2008年には国立演芸場の「花形演芸大賞」を受賞した。もちろん、受賞歴が全てではないが、それだけの実力者である証ではなる。しかし、私にとっては、今のままでは物足らない。まだ、のびしろがあるし、化ける余地があると思う。もっともっと大きくなって欲しい。それが、二人の師匠や彼をこれまで支持してくれた人達への恩返しでもあるはず。白酒や三三そして遊雀の、手作り感のある落語会を長らく主催しているショーキャンプによる新たな独演会によって、この人が一層飛躍することを祈っている。
あの「表情」(笑)
