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噺の話

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第29回 人形町らくだ亭 日本橋劇場 10月28日

一気に冬になったかのような寒さと雨の中、誤って社会教育会館に一度行きかけて軌道修正し、日本橋公会堂の会場へ向かったが、この天気でも駆けつけただけの収穫はあった。会場は約八分ほどの入り。ベテラン落語ファンがほとんどかと思わせる心地よい空間だった。

先に結論(?)から。小満ん『小言幸兵衛』に恐れ入った!もちろん、“小言”を挟む余地は微塵もなし。

構成は次のようなものだった。
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(開口一番 林家扇 『饅頭こわい』)
古今亭志ん輔 『佐々木政談』
柳家さん喬  『お若伊之助』
(仲入り)
柳家小満ん  『小言幸兵衛』
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(18:50-19:00)
木久扇門下で三年目の前座さんのようだが、女性とはいえ厳しく言えば、“会場を緊張させてどうするの!”という内容。本人が楽しむだけの余裕がないのはしょうがないが、もっと笑顔が欲しい。

志ん輔(10:01-19:33)
まだネタおろしして間がないのかもしれないが、主人公の四郎吉の可愛さ、小憎らしさは十分に伝わった。この噺を聞くと、どうしても師匠志ん朝を思い出す。もっと佐々木信濃守と子供とのやりとりが生き生きとして、そして楽しい。まだまだ師匠を目指しながら志ん輔独自の味わいに磨けると思うので、しばらくしてまた聞きたいものだ。マクラで、近くの甘酒横丁にあるお菓子屋さん亀井堂は、この佐々木信濃守を祖先にもつお店だと説明があった。せっかくだからお店のホームページから、信濃守の関連部分を抜粋。
人形町 亀井堂のHP

人形町亀井堂は、今より約百三十年前の明治六年、神戸元町に創業した亀井堂総本店より、昭和四年、江戸初期から東京に在住する旧家、人形町佐々木家嫡流に、のれん分けのかたちで任された店でございます。
 人形町佐々木家は平安時代より約千年にわたって続く宇多源氏の名族で、江戸時代には三千石を拝領する大身の旗本となりました。
なかでも幕末に江戸南北町奉行や外国奉行を歴任した幕閣の重鎮、朝散大夫(ちょうさんだいぶ)佐々木信濃守顯發(あきのぶ)は著名であり、本店にはその顯發に栄誉ある信濃守任官を宣下する朝廷の宣旨が掲げられております。


志ん輔は、「お店に行って、志ん輔に聞いた、って言わないでくださいね」と笑って言っていたが、落語と縁のある人形町のお店ということだ。紹介しないわけには行かない。次回はお店に寄ってこよう。

さん喬(19:34-20:14)
さん喬の出来は悪くなかったと思うが、どうもこの噺そのものが好きになれない。一つの理由は、志ん朝の音源への思い出によるものだ。志ん輔の『佐々木政談』で想起する音源が、志ん朝が三十九歳の頃、昭和52年12月3日の三百人劇場でのそれなのに対し、この噺を聞くと、志ん朝が亡くなる半年前の朝日名人会の高座の音源を思い出してしまう。
もう一つの理由が、後味の悪さ、ということ。同じ狸が出るネタでも『狸賽』や『狸の札』など一連の落とし噺とは違って、ややおどろおどろしい結末である。数少ない笑いどころは、棟梁が根岸の隠居と伊之助の間を行ったり来たりする場面だろうが、ここもとってつけた印象。円朝作とも言われるが、違う説も有力。人情噺なら他にもいくらでもある。さん喬のきめ細かい演出や語り口があっても、嫌いな噺にはのめり込めない。残念。

小満ん(20:25-20:56)
“至芸”と言っても過言ではないだろう。最初の師匠文楽の十八番を、文楽版を底流にしながら、二人目の師匠小さんの軽妙さも加わって、結果として小満ん落語として仕上がっており、ご通家の多い客席もツボを押さえた場面でしっかり笑いが起こっていた。高座と会場が作り出すその場にしかない得がたい時間と空間が30分間存在した。
この噺は、これまで喬太郎で二度感心させられた(2007年6月30日の“前進座”でのさん喬との親子会、2008年11月15日の“あつぎ寄席”)2008年11月15日のブログが、喬太郎ももちろん素晴らしいが、本寸法としては小満んに軍配が上がる。というか、小満んを慕う喬太郎は、きっと小満んのこの噺を手本にしているのだろう。
 また、小満んらしい細かな味付けも心憎い。たとえば「仕立屋だから“営む”かい。それじゃ提灯屋は張りなむ、飴屋はベトナムだ」などのクスグリは、最初の二つは文楽譲りだが“飴屋でベトナム”には笑えた。花火屋が登場するサゲまでをしっかり演じての大満足の高座だった。昨今、この人を賛美する声が同業者を含め多いが、非常に良い傾向だと思う。今、もっとも“江戸の粋”を感じさせてくれる噺家さんと言ってよいだろう。

 志ん輔は同じネタを少し先にまた聞きたくなり、さん喬は違うネタで近いうちに聞きたくなった。そして小満んは、どんなネタでもいいので、今後数多く聞きたいと思う。
 ともかくこの日の小満んの高座は、今年のマイベスト十席入りが確実。終演後、せっかく人形町まで来たので帰りに居酒屋に寄り道し、高座を思い出しながら飲む熱燗は格別に上手かった。
Commented by 佐平次 at 2010-10-29 15:41 x
「金魚芸者」にも通じる粋でしたね。
志ん輔はちょっと疲れていたのかもしれませんね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2010-10-29 18:04 x
お立寄りありがとうございます。
おっしゃる通りだと思います。
「江戸の粋」を感じながら、一気に会場が幸兵衛長屋にワープしたような、そんな印象です。
豆腐屋、仕立て屋、そして花火師に幸兵衛じいさんと婆さんの誰もが生き生きとしていましたし、語り口のリズムが絶妙でした。
さん喬は、ネタがねぇ・・・・・・。志ん輔は沖縄から帰ったばかりで、あの寒さですから、やむなしでしょうか。

Commented by 創塁パパ at 2010-10-31 23:06 x
いやあ、小満ん師は感動ものでした。
「黒門町」の良さと「小さん」の洒脱さ。はっきり言って「目から鱗」。
うまい酒でした(笑)ではまた。

Commented by 小言幸兵衛 at 2010-11-01 09:18 x
お立寄りありがとうございます。
「黒門町」x「目白」=「小満ん」、とでも言うような高座だったと思います。
なかなか滅多には味わえない至芸でした。
今後も楽しみですね。また、上手い酒が飲みたいですね(笑)

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by kogotokoubei | 2010-10-29 09:11 | 寄席・落語会 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


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