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平成特選寄席 赤坂区民ホール 8月24日

ほぼ一年前の8月27日に、かつて夕刊フジの主催だった会が産経新聞主催になった第一回に行った。今日が第五回とのこと。ちなみに第一回は次のような演者とネタだった。

*2009年8月27日 第一回の内容
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(開口一番 立川らく兵 『初天神』)
林家彦いち   『権助魚』
立川志らく   『お化け長屋』
(仲入り)
古今亭菊之丞  『船徳』
柳家三三    『髪結新三』

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この時は、菊之丞の『船徳』が良かった。
昨年のマイベスト十席には入れなかったが次点レベルの結構な高座だった。2009年8月27日のブログ

チケットを取った時の動機は、もちろん久しぶりの市馬、花緑、そして二週連続となるが百栄という顔ぶれが良かったからだが、実は桂三木男も一度聞いておきたかった、ということもある。
構成は次の通り。
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(開口一番 立川志らべ 『強情灸』)
桂三木男  『悋気の独楽』
柳家花緑  『野ざらし』
(仲入り)
春風亭百栄 『甲子園の魔物』
柳亭市馬  『船徳』
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結果として、今日も『船徳』の日。

志らべ(19:01-19:12)
初めてだが、ネットで調べると2000年志らくに入門、2007年に立川流二ツ目となったらしい。なるほど志らく的なクスグリが入る。なぜかこのネタに清水健太郎やら加山雄三の名が挟まれる。この会での開口一番の回数は多く、会場では結構笑いが沸くが、私にはその可笑しさが理解できない。語り口は良く、心地よく眠くなる口調。しかし、このネタは大師匠となる談志家元の師匠五代目小さんのように、ネタの面白さだけで笑わせることができるはず。ギャグを考えるより前に、まず、噺そのものを磨いて欲しい。配布されたプログラムに主催の産経新聞の方が出演者のプロフィールを書かれており、この人のことを「フラ」がある、と記されている。残念ながら、今日の高座ではそれを発見することはできなかった。どちらかというと「フラ」よりは「ムラ」が多かったかな。

三木男(19:13-19:33)
祖父が三代目の桂三木助、母の弟が亡くなった四代目という噺家の血筋。なかなか聞く機会がなく今回が初である。2003年に当代の馬生に入門。2006年に二ツ目。ということは、志らべより深く上がったというのは二ツ目の香盤ということなのかと思うが、落語協会と立川流の二ツ目だから、微妙なところ。力量も志らべといい勝負だと思う。ネタの持つ可笑しさで定吉の可愛さなど持ち味の良さも感じるのだが、“血統”だけではこの世界は難しい。しかし、確かに血筋による潜在力は感じるので今後の精進次第だろう。

花緑(19:34-20:01)
祖父小さんのことなどマクラで会場を沸かし、小三治から稽古をつけてもらった噺ということで5月の国立演芸場の花形演芸会とネタがかぶったことが分かった。2010年5月22日のブログ
それでも流石の内容なのだが、この会の都合で午後9時には終わるということで端折ったのだろう、本来のサゲまではいかなかった。尾形清十郎の早口の言い立てを口ごもったのも、時間厳守の焦りのせいだろう。マクラが良かったし、全体的には二ツ目二人とは圧倒的な違いを見せつけたが、このネタなら通しで演じるだけの持ち時間を与えて欲しかった。あと5分あれば、という気がする。しかし、それは噺家本人の問題とは言えないだろう。

百栄(20:15-20:38)
夏の甲子園のマクラで、早くも先週20日のにぎわい座での一之輔との二人会とネタがかぶることが判明。しかし、あえてそれを楽しもうと思い聞いていた。この後で市馬が、この噺を今輔の作と紹介するまで、百栄の新作と思っていた。先週よりも流石にこなれていて平均年齢が結構高い会場も沸きに沸いた。持ち時間はオーバーしたと思うが、会場の盛り上がりは一番だった。初めて百栄に出会った港区のお客さんには、強烈なインパクトを与えたに違いない。

市馬(20:39-21:01)
久しぶりだ。百栄をいじっていたのは、彼の持ち時間が20分と想定するが、それをオーバーし市馬自身の持ち時間が減ったからと察する。終演21:00厳守なのだろう。しかし、20分でこの噺のエキスを詰め込んだ高座は、見事としか言えない。徳三郎が船頭になると言い出して、先輩の船頭を親方が招集する場面が端折られたが、それ以外の場面の重要な要素をしっかり演じ、徳の歌として自慢の喉を披露。会場を沸かせ、笑わせながらも引き締めた手腕は、他の演者と比較して際立っていた。特に船宿の女将が茶目っ気があって好きだ。もっとたっぷりな時間、できればあと10分あれば・・・とは思うが、これも噺家さんの責任ではないのだろう。打上げが21:00スタートなのかな。


ある意味で、もったいない会だった。もし、どうしても午後9時に終演したいのなら、出演者が一人多すぎる。逆に、この人数で構成したいのなら、終演は遅くなってもやむを得ない。あるいは開演を早くすべきだろう。
産経新聞主催とはいえ会場を提供している港区も共催なので、難しい面もあるのだろうが、せっかく多くのお客さんが楽しみにしているのトリの市馬が時間調整役にならないような番組構成にすべきだろう。

花緑には焦らず演じて欲しかったし、市馬の“江戸の風”をもっと感じていたかっただけに、少し残念な思いで、残暑きびしい都会の雑踏の中を地下鉄の駅に向かっていた。
Commented by 創塁パパ at 2010-08-25 07:33 x
おはようございます。二時間ですか。四席がいいとこでしょう(苦笑)花緑が早口になってしまうの目に浮かびます。
「野ざらし」はいいだけに残念ですよね。
市馬も30分頂ければ、この噺はきっちりいけると思います。
昨日、米二の会も7:00~9:15で四席(内幸町)
主催者側の理由もあるのでしょうが、それはもう少し何とかしてほしいですよね。いい噺家さんが出ているのにもったいないですよね。

Commented by 小言幸兵衛 at 2010-08-25 08:12 x
さっそくのコメント、ありがとうございます。
創塁パパさんのお好きな市馬師匠は流石でしたが、書いた通りで、もったいない時間配分でした。
企画制作が立川企画なので立川流の誰かが出演するのは分かるのですが、声の大きい常連さんの意向なのかどうか、ちょっと「アレもコレも」を追い求めすぎかと思います。
会場で11月30日の第6回目のチケットを先行販売していました。
志らく、談笑、三三、一之輔の名があります。しかし、実際は立川流から開口一番があるのでしょうねぇ。ちなみに、この会には行きません。
米二の会のご報告をお待ちしております!

Commented by 佐平次 at 2010-08-25 09:44 x
>ネタの面白さだけで笑わせることができるはず。ギャグを考えるより前に、まず、噺そのものを磨いて欲しい

それができないつらさでしょうか、ね。若いのに。
立川流をそう沢山聴くわけではないのですが、どこか勘違いしているように思うときがあります。

Commented by 小言幸兵衛 at 2010-08-25 10:34 x
お立寄りありがとうございます。
そうですね、何か勘違いしているように昨夜は思いました。
大学の落研出身(喬太郎の後輩かな?)の噺家さんで、落研のノリをまだ目一杯引きずっているような印象です。師匠の志らくは噺の本筋を磨いた上で、独特のクスグリを加えていると思いますが、その表面上だけを真似ているように思えます。まず、素の噺で勝負して欲しいものです。

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by kogotokoubei | 2010-08-24 23:00 | 落語会 | Trackback | Comments(4)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛