『上方落語十八番でございます』 桂米二 日経プレミアシリーズ(新書)
2010年 05月 14日

日本経済新聞のNIKKEI NETに、今年の2月まで七年間連載してきた「京の噺家桂米二でございます」を元にした本が出た。3月11日のご本人のブログに、NIKKEI NETの連載終了について、次のように記されている。
桂米二のブログ
7年間連載したNIKKEI NET「京の噺家桂米二でございます」が先月で終了いたしました。ご愛読ありがとうございました。原則として隔週更新で全部で176回。我ながらたいしたものです。締め切りに遅れたことは1回もありませんよ。危なかったことは何回もあったけど……。
この連載は、たまに目を通していたが、実はこの人の落語を聞いたことはない。連載で少し名前が売れ東京でも内幸町ホールなどで落語会を行っていたようだが、これまで行く機会がなかった。
代表的な上方落語十八席を紹介しながら、それぞれの噺にまつわるエピソードがちりばめられていて、なかなか楽しい。章と章の途中には「ちょっと休憩」と題して、さまざまな質問にユーモアたっぷりに答えていたり、「噺家の就職試験」-米二の30年-といったネタなど、なかなか読み飽きしない構成。
十八席は登場順に次の通り。
百年目・初天神・牛ほめ・千両みかん・くしゃ講釈・猫の忠信・崇徳院・饅頭こわい・つぼ算・
道具屋・宿屋仇・まめだ・代書・質屋蔵・かわり目・子ほめ・口入屋・たちぎれ線香
本書は、米朝ファンや上方落語とその歴史に興味がある人にとっても楽しい本。たとえば、『くしゃみ講釈』の章には、次のような思い出話が披露されている。
私が噺家になる少し前、朝日放送テレビで、うちの師匠が司会で「和朗亭」という番組(1974~1976年まで放送)がありました。落語だけでなくあらゆる寄席芸を紹介するという番組でした。その中で「くしゃみ講釈」を実際にやってみるという趣向がありました。笑福亭松之助師匠が講釈師の役で、桂枝雀、桂べかこ(現南光)のおふたりが寄席で唐辛子をくすべる役です。その様子が放送されたのです。
おもしろい趣向でしたね。客席には一般のお客さんも座っておられるので、まさか本当に唐辛子をくすべるわけにもいかず、何か差し障りなく煙が出るものをくすべたのでしょう。松之助師匠の講釈師は落語と同じようにくしゃみ連発となったわけです。
その番組のおしまいのところでうちの師匠もコメントしておりましたが、この落語はウソやな、ということがよくわかりました。というのは、くすべた煙がなかなか上へ、講釈師のほうへ行ってくれないのです。扇いでも扇いでも上へ行かず、横へ広がってましたから、あれでは講釈師だけではなく、周りのお客さまも全員くしゃみをすることになるでしょう。ま、落語にウソは付き物です。お許しください。
落語の高座のテレビ番組は、もちろん数多く放送して欲しいが、こういった遊び心のある番組も欲しいものだ。最近「江戸」や「和風」というテーマの番組はクイズ形式のものも含め少し増えてきており良い傾向かとは思うが、関西流のノリで「おっ、そこまでやるか!」と思わせる“洒落”の利いた番組はほとんどない。あえて懐古するなら、かつて談志がいた頃の「笑点」は、もっとエスプリも利いていたし刺激的なブラックなユーモアもあったが、今はシナリオに基づく無害な大喜利番組。困ったものだ。
さて、この本に戻る。京都出身で昭和32(1957)年生まれ、米朝に入門したのが19歳だった昭和51(1976)年の著者は、ホームページのプロフィール欄で、“こんな人”の題で次のように自己紹介している。桂米二のホームページ
入門当時から師匠、兄弟子に見境もなく理屈や意見を言ったので、「リクツ」「リクやん」という愛称を頂戴する。落語では、屈指の大ネタ「百年目」に挑戦するなど、師匠米朝の持ちネタを継承する一方、「牛ほめ」「ろくろ首」などの軽い噺も、飄々とした味でさっぱりと演じる。落語以外では、結婚式披露宴の司会で百組以上のカップルの誕生を見てきた。
自称、文筆家でもあり、エッセイ、ブログ、メルマガの評判も良い
また、落語ユニット「とにいじゃっく」のメンバーで、名前の由来は同期入門のメンバー、桂都(ト)丸と桂米二(ニ)と桂雀(ジャック)々に由来しているようだ。
余談だが、亡くなった吉朝は米二の入門により、米朝宅での住み込み期間が通常より短縮されたらしい。
私とほぼ同年代の上方の噺家さんで、私もたまに、「りくつ屋」と言われることもある。本書を読み、またプロフィールなどを拝見し、この人が東京に来る時は極力出かけようと思った次第。
日経プレミアシリーズの本書紹介ページ
私は、仕事が大阪の担当で、よく上方落語も聴きますが
米二師匠は、一番の米朝落語を伝承していく人だと思います。
私も、内幸町ホールの会は必ず行ってます。
是非、応援してあげてください(笑)
そうですか、長いこと関東で“のほほん”としていると、
こういう大事な噺家さんのことを見逃しかねませんね。
勉強不足でした。
枝雀一門や吉朝一門は結構知っているのですが、
この方についてはほとんど知りませんでした。
東京での落語会を楽しみにしたいと思います。
