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はん治・喬太郎 二人会 横浜にぎわい座 4月8日

喬太郎がしっかり説明してくれたが、主役の二人のみならずの、柳家の会。喬太郎も目当てであることはもちろんだが、久しぶりのはん治も楽しみだった。この秋真打昇進で小せんを襲名するわか馬や小菊姐さん含め、なかなか粒ぞろいの会。

演者とネタ。
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(開口一番 入船亭辰じん 『道灌』)
鈴々舎わか馬 『新聞記事』
柳家喬太郎  『寝床』
(中入り)
柳家小菊   俗曲
柳家はん治  『背なで老いてる唐獅子牡丹』
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辰じん(19:00-19:14)
この人は聞く度に上手くなっている。私が知る前座の中では頭一つ抜けている印象。語り口も良く、粋な江戸の香りは師匠選びが間違っていなかったことを物語る。会場を十分に暖めて、わか馬につないだ。

わか馬(19:15-19:35)
この噺を知らないお客さんが多かったようで、ネタそのものの可笑しさで会場は受けていたが、この人ならではの芸でも笑いを誘っていた。今秋小せんを襲名して真打に昇進するということを意識しすぎることなく、いつもの落ち着いたペースで、その声の良さも健在。今後どんな小せんになっていくのかが大いに楽しみだ。

喬太郎(19:36-20:08)
マクラで「今日は柳家の会」であることをしっかり押さえて本編へ。私にとってこのネタはうれしい誤算だった。前半は師匠さん喬と同様に、旦那が“人間ばなれ”した声で発声練習する場面が効いている。後半で魅せ場は、長屋の店子そして使用人一同が旦那の義太夫の会に都合が悪く参加できないことになり、茂蔵が“犠牲”になって義太夫を一人で聞かされそうになった時の、その狂わんばかりの落胆ぶり。この人の魅力はいくつもあるだろうが、私が好きなのは、本寸法でありながらもココという場面で、人間が本来持っているやや狂気めいた素顔をデフォルメした演出で描いてみせるところ。ともかく、終始会場をどよめかせた。この噺を初めて聞くお客さんも多かったようで、いつものにぎわい座とは違った空気ではあったが、喬太郎落語の出来は期待通り。
扇辰はすでに弟子をとっていて、その弟子はなかなか見どころがある。喬太郎はなぜか弟子をとらないが、そろそろ彼のDNAを身近で継承する者があっていいように思う。

小菊(20:20-20:33)
流石の芸と大人の女性の色気でした。小円歌姉さん、そしてうめ吉と比べ、艶っぽい都都逸ならこの姐さんが一番いい。もちろん他のお姉さんにもそれぞれ魅力的な芸があるが。(このへんは、微妙なバランス感覚が必要!?)

はん治(20:34-21:03)
新幹線の中での迷惑な携帯電話、というマクラからネタは察したが、桂三枝の新作をこの人は十分に自分のものにしている。風貌やそのハスキーな声などはトコトン古典のテイストなのだが、ネタは現代社会を反映した新作。この何とも言えない微妙なブレンドがこの人の魅力になっている。あの声で唄う場面が結構な味つけになっている。歌っているうつに『唐獅子牡丹』が『月の法善寺横丁』に化けていくところは何度聞いても笑える。同じ三枝作の『ぼやき居酒屋』とこのネタ以外にも、まだまだこの人らいい味のある噺を聞きたいものだ。もちろん古典でもニンな噺があるだろう。なんとか都合をつけて主任のときの寄席に行きたいと思った。小三治一門の底力のようなものも感じる噺家さんだ。


これだけコンパクトにして、かつバランスのとれた落語会は久しぶりのような気がする。“重厚”ではないが、それぞれの演者がニンな芸で魅せてくれた。あえて言うが立川流の人気者の落語会のような、あの奇妙な緊張感はない。例えば談春のように過度に照明を暗くすることも、もちろんない。
(あの“暗闇落語”はやめて欲しい。目が疲れるのだ。)
まぁ、立川流の、あの空気が好きな人もいるんだろうし、それは好みの問題。あえて言うなら、喬太郎は噺家で、談春はアーティストなのかな・・・・・・。どちらが上という意味ではなく。立て続けに二人を聞いて、そんな思いもした。個人的には、もちろん噺家が好きだ。喬太郎は競演だろうが、独演会だろうが関係なくしっかり噺を聞かせてくれる。

久しぶりに堀井憲一郎さんを見かけた。(スイマセン、バラして。有名税と思ってください。)
さて、誰が、あるいは何がお目当てだったのか。『落語論』についてちょっと辛口の感想を書いたが、次の作品を期待しているのでよろしくお願いします!

今日の落語会のみならず、柳家の顔ぶれは豊富で、将来も明るい。立川流の存在感も、もちろん十分にある。しかし、立川流もルーツは柳家。三遊をルーツとする古今亭も粒揃いだが、あくまで古今亭だ。歴史や落語界全体を考えると、やはり三遊亭にも他のライバル(?)に伍していくだけの力をつけて欲しい。はっきり言うが、人気者と抱き合わせで襲名披露興行中の円楽には、多くを期待できない。いくら笑点仲間の芸協の歌さんが支援しても、あくまで一時の興行としての盛り上がりでしかない。七代目円生襲名を争う鳳楽も、三遊派を復興させるだけの器ではない・・・・・・。こう考えると、やはり兼好の時代を待つしかないのか、と思う。3日の相模大野に続く今日のにぎわい座の後、桜木町の駅に向かいながら脳裏をかすめたのは、なぜかこんなことだった。
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by kogotokoubei | 2010-04-08 23:01 | 落語会 | Trackback | Comments(0)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛