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「襲名争奪戦」は、最初で最後か!?

七代目三遊亭円生の襲名争奪戦のニュースを目にして、落語家の名跡について少し考えた。
今回のような「争奪戦」は、もしかすると最初で最後かもしれない。
なぜなら、他の大きな名跡については、複数の噺家がこのような形で争いそうな気がしないからだ。

たとえば、三遊亭の円生に匹敵する柳派の名跡は小さんだが、こちらの七代目は、数年後に花緑が襲名することで、たぶんスンナリおさまるだろう。五代目の孫、六代目の甥という「血統」は動かし難いアドバンテージである。

また、三遊亭の他の大名跡となると円朝になるが、円朝の二代目を襲名するはずだった初代円右は襲名することが決まってすぐに亡くなっているので、二代目としては実質的には認められていない。円朝は一代限りの名人として「止め名」になるのだろう。もちろん、初代円右も名人だったという評価は残っている。

柳派で空席となっている大きな名跡は春風亭柳枝。この名もこれまでの経緯を考えると止め名になりそうな気がする。落語の世界では、すでにそう決まっているのかもしれないが、あの世界からは“公式発表”的なことがないし、またいつどのようなきっかけや力で状況が変わるか知れたものじゃない。だから、今のところは止め名状態、ということかと思う。先代が亡くなった時点では落語協会に所属していた。しかし出世名である小柳枝の名は現在落語芸術協会にある。ネジレ現象なのだ。詳しいことは過去のブログに書いたが、誰が継ぐにしても、えらいややこしいことになるので敬遠されるだろう。
2009年4月15日のブログ

さて、また三遊派にもどって、現在空席となっている大きな名前なら古今亭志ん生。鈴本の席亭を後ろ盾にして六代目を志ん輔が継ぐことになっても、一部に反対の声を上げる人はいても、対抗して決戦を挑む噺家がいるようには思えない。たぶんスンナリいくと思うし、できれば早く襲名してもらいたい。五代目の思い出を語れる人がまだ存命なうちに襲名して欲しい。

また、現在活躍する中堅噺家さん達は、歴史的な名跡に、ほとんど関心がないように察する。志ん朝が志ん生を継がず、小三治が小さんを襲名せずに自らの名前を大きくしたことに端を発し、今の自分の名前を大きくする、という思いが強いのではなかろうか。
たとえば、立川流。志の輔も談春も、そして志らくだって、談志を襲名しようとは思わないだろう。もし、志らくが欲しがっても、それは無理だろう。争奪戦もありそうにない。立川流は止め名にしたがるような気がする。
また、柳家喬太郎が花緑に対抗して七代目小さんの名を欲しがるとは思えない。実は、個人的に喬太郎に襲名して欲しい名跡がある。柳派の大きな名前が空席なのだ。円朝のライバルだった柳亭燕枝(談洲楼燕枝)の名が、三代目が亡くなった昭和30年以来途絶えている。初代は名人三代目小さんの師匠である。小さんの名は、この三代目が大きくしたわけで、燕枝の名跡のほうが柳派では上ともいえる。新作も演じたらしいので、大名跡を相応しい人に継いで欲しいという意味で喬太郎に襲名してもらいたいのだが、さて彼自身にその気があるかどうか疑問だ。

芸術協会に話を移そう。もしかしたら春風亭昇太が、師匠柳昇の名を欲しがっているかもしれない。香盤で先輩の人たちはどうか。小柳枝は、もうこの名前のままでいいと思っているだろう。もし柳昇を襲名したら、本来継ぐべき柳枝の名跡の権利を落語協会に譲ることにもなる。昔々亭桃太郎が柳昇の名を欲しがりはしないだろう。瀧川鯉昇も、自分の名前を大きくすることを優先するような気がする。すでに大きくなりつつある。ただし、小柳枝という名であれば、欲しいかもしれない。私の邪推が正しいとして、昇太が「柳昇を襲名したい」と言えば、たぶん柳昇一門の皆さんは賛成するはず。まぁ、「その前に結婚しろ!」とギャグを一発喰らうくらいだろう。

そんなことを考えていると、この「争奪戦」、最初で最後かと思う。出来レースかもしれないし、一つの興行でしかないかもしれないが、歴史の一頁を飾ることにはなるだろう。
まさか、今回の一件が「争奪杯」ブームにつながって、「円朝争奪杯」「柳枝争奪杯」「燕枝争奪杯」が行われる、なんてことはないだろうなぁ・・・・・・。実現すればそれはそれで面白いのだが、まずありえないだろう。
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by kogotokoubei | 2010-02-16 08:46 | 襲名 | Trackback | Comments(0)

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