桃月庵白酒独演会 横浜にぎわい座 1月7日
2010年 01月 08日
出演者とネタは次の通り。
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(開口一番 入船亭辰じん 狸の札)
桃月庵白酒 つる
柳亭市馬 厄払い
(仲入り)
柳家紫文 俗曲
桃月庵白酒 妾馬
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辰じん(19:00-19:14)
落語協会のプロフィールによれば扇辰に平成20年2月入門とのことだから、もうじき丸2年。年齢は28歳らしいので社会人を経験してから26歳での入門のようだ。なかなかシャープな江戸っ子のいなせなおぁ兄さんという感じ。扇辰を師匠に選んだのもわかるような気がする。語り口はメリハリが利いていて、強面ながらなかなかのイケメン。今後に期待。
白酒『つる』(19:15-19:40)
このネタは昨年2月18日の浜松町かもめ亭での喜多八との二人会の時にも聞いた。その時も大笑いしたが、いっそう笑いの演出に磨きがかかってきた。とは言っても、この人らしいセンスのある、若干ブラックなマクラが約15分あってからのネタなので、ほぼ10分で話しきったことになる。正月初席でも、けっこう演じてきたショートバージョンなのだろうが、笑いのツボはしっかり押さえている。さすがだ。
市馬(19:41-20:10)
実は、白酒独演会なのに、一番の収穫はこのネタに生で出会えたこと。八代目桂文楽や米朝の音源では聞いたことがあるが、実際の高座では初めて聞くことができた。
この人らしく、正月にふさわしい相撲甚句や相撲ネタで会場をあたためておいてから与太郎が登場した時は、「えっ、まさか市馬が『道具屋』・・・・・・・」とがっかりしかかったのだが、なんとなんと節分を前に、今では演じる人の少なくなった文化的に貴重なネタだった。言い立てを含んだ前座噺の範疇には入るが、職業としての「厄払い」が死語となった今日、次のような口上で節分の夜に厄払いをする習慣があったという歴史を学ばせてくれる。矢野誠一さんの『落語手帖』からご紹介。
*下記は1988年駸々堂出版発行から引用していますが、講談社から新装版が発行されました。拍手!
矢野誠一_落語手帖(新装版)
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「ああら、めでたいなめでたいな、今晩今宵のご祝儀に、目出たきことにて払おうなら、
まず一夜あければ元朝の、門に松竹しめ飾り、床にだいだい鏡餅、蓬莱山に舞い遊ぶ、
鶴は千年、亀は万年、東方朔は八千歳、浦島太郎は三千年、三浦の大介百六ツ、この
三長年が集りて、酒盛りいたす折からに、悪魔外道がとんで出て、さまたげなさんと
するところを、この厄払いがかいつかみ、西の海への思えども、蓬莱山のことなれば、
須弥山のほうへサラリ、サラリ」
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紫文(20:20-20:39)
私自身は、いわゆるオヤジギャグを言って周囲から顰蹙をかっている駄洒落オヤジだが、どうもこの人の駄洒落芸は合わない。三味線は上手いのだろうから“本寸法の俗曲”を演じてくれないものだろうか。初めてだったので、そういった芸もあるのかどうか不案内なのだが、この手の芸では、“華”のある女性の俗曲のお姉さん達にはかなわないでしょう。得がたい存在だと思うので、ぜひその芸を生かした“古典”でがんばって欲しい。
白酒『妾馬』(20:40-21:15)
この人としては珍しいくらい噛んでいた。もちろん、白酒ならではの現代的なクスグリなどで盛り上げるのだが、どうも初席などの疲れが残っているような、あるいはネタの新たな構成にトライしているせいなのか、今一つ切れ味に欠ける出来。会場をそれなりに沸かしてはいたが、『つる』があまりに弾けていたので過剰に期待していたのかもしれないが、もっともっと白酒ワールドは凄いはず。また、後日聞きたいネタだ。
全体としては、市馬効果もあって楽しい会だった。『つる』で初笑い、そして初の生『厄払い』の収穫あり、という今年のスタートでした。
