落語睦会 年末スペシャル2days! 二日目 12月17日
2009年 12月 18日
初日の昨日のテーマが「わるい奴」ということで、ジャマさんのブログ「落語の噺とネコの話」によると、次のネタだったようだ。
□初日(12月16日) テーマ「わるい奴」のネタ
柳家喜多八『鰻の幇間』、瀧川鯉昇『ねずみ』、入船亭扇遊『三枚起請』
落語の噺とネコの話_12月16日
さて、二日目のテーマは「こまった人たち」。落語の多くが「こまった人」を扱っているので、初日よりネタの選択肢は多かろう。事前のネタ予想として、
「季節柄『二番煎じ』は誰かやるんじゃないかなぁ、扇遊かなぁ。『居残り佐平次』は・・・やるなら昨日だなぁ。
鯉昇は『時そば』かな?喜多八の『いかけ屋』なんかもいいなぁ・・・・・・。」
といった心境で出かけたが、ものの見事にはずれた。
演者とネタは次の通り。
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(開口一番 柳亭こみち 黄金の大黒)
入船亭扇遊 明 烏
(仲入り)
柳家喜多八 粗忽の釘
瀧川鯉昇 味噌蔵
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こみち(19:00-19:21)
上手くなったのは間違いない。しかし、・・・・・・。好みの問題にもなるので失礼なことは書きたくないが、女流落語家でも好きな人はいるが、この人は私には合わないかもしれない。
扇遊(19:22-20:00)
マクラで師匠扇橋のことを題材にして、入門時に前座の時は「酒、煙草、博打」はダメと言われたが女性に関してはダメとは言われなかった・・・・・・という話が出たので、「もしや、昨日演らなかったので、『佐平次』か!」と淡い期待をしたが、郭噺ではあっても、こちらだった。「こまった人」は時次郎ということらしい。しかし、源兵衛と太助も、たぶん町内では“こまった”札付きだろうから、いずれにしてもテーマには合致しているが、季節感にはちょっとはずれ、という感じ。しかし、この人の噺の完成度というか上手さには聞く度に感心する。まず、見た目も所作も語り口も丁寧で綺麗、かつ“江戸”がしっかり描かれている。野球なら安定した三割打者というイメージ。残る二人ほど“毒”がないので熱狂的なファンは少ないのだろうが、私はこういう本寸法の人は好きだ。今後、もっと枯れてきたら師匠のような存在になるのかなぁ・・・・・・。“今年の漢字”というイベントで「新」が選ばれたらしいが、これを真似て扇遊を表すならば“颯爽”の「爽」かな。
喜多八(20:15-20:44)
いやぁー、楽しませてもらった。『首提灯』など噺自体が「見て味わう」ものなら当たり前なのだが、こういう噺でも「見せる」ことで「魅せる」技を十分に発揮して会場を沸かせた。特に、慌て者の亭主が八寸のかわら釘を隣家との壁に打ち込んでしまって詫びに行ってからの「顔」と「目」の演技が真骨頂。こういった楽しさは、CDでは味わえない。女房に「あんたも落ち着いたら一人前なんだから」と決め台詞で後押しされ隣家で一服し、自分達夫婦の馴れ初めでのろけるくだりが絶妙だった。隣家の主とのセリフの入らない掛け合いにも笑った。今日は、結果として喜多八が一番。昨夜飲んで寝て夕方起きたので休養十分、という意味のことをマクラで言っていた通り、私が今まで見た喜多八の中で一番良かった。
この人を漢字一字で表現するなら、エンジンがかかる前の絶妙な病的イメージ演出とその後のフルパワーとの転回の妙で「転」かな。
鯉昇(20:45-21:20)
何度聞いても笑えるタミフルのマクラから本編へ。マクラで登場した「近所の(医者の)青木先生」を本編でも活かすなど、流石の鯉昇ワールド。ケチな主人の店に奉公に来てから「刺身」にお目にかかっていない奉公人が、食べ方を思い出すシーンで笑いをとるなど、あらためて、「食べ物」ネタでこの人を上回る人は今いないんじゃないか、と思わせたが、『ちりとてちん』や『時そば』を知っている者としては、これが十八番とは言えない。実際に今日は喜多八ほどは笑いを取れていなかった。(喜多八は絶好調だったと思う。)
しかし鯉昇ワールドを堪能した。さて、漢字なら・・・・・・鯉昇流の演出やクスグリの“捻り出し”方にいつも驚くので「捻」かなぁ。
睦会のお三方、漢字のイメージをつなぐと「爽転捻」となった。「総天然」の洒落!?
今年私が行く落語会や寄席は1月6日の横浜にぎわい座の睦会に始まり、この池袋の睦会で終わりそうだ。このままだと回数は39。本年も落語に“サンキュー”という洒落ですね。もしあと一回行くことができれば四十回。“しじゅう”落語にお世話になります、となるかどうかは年内のスケジュール次第。
ともかく、今日は三者三様で楽しませていただきました。
