朝日名人会について その三
2009年 12月 03日
今年になって5月30日、8月25日と二度この会について書いたので三回目となるが、「三という数字は縁起のいい数字」ですから・・・・・。(先代の三平です、念のため)
2009年5月30日のブログ
2009年8月25日のブログ
来年3月までの顔ぶれが決まったようなので、今年4月以降の結果と併せて記すと次の通り。
朝日名人会ホームページ
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・第88回 2009年4月18日(土)
桂文珍・入船亭扇遊・柳家喬太郎・桂平治・立川志の吉
・第89回 5月16日(土)
三遊亭圓窓・柳家権太楼・林家たい平・柳家三三・三遊亭きん歌
・第90回 6月20日(土)
柳家小三治・立川志の輔・古今亭菊之丞・柳亭左龍・入船亭遊一
・第91回 7月18日(土)
柳家さん喬・金原亭馬生・瀧川鯉昇・柳家喜多八 ・三遊亭金兵衛
・第92回 9月19日(土)
五街道雲助・柳亭市馬・柳家花緑・柳家三三・柳家三之助
・第93回 10月17日(土)
桂歌丸・桂文珍・三遊亭小遊三・三遊亭金時・春風亭一之輔
・第94回 11月21日(土)
柳家さん喬・柳家権太楼・入船亭扇遊・橘家圓太郎・五街道弥助
・第95回 12月19日(土)
柳家さん喬・柳家小さん・柳家喬太郎・古今亭志ん丸・金原亭馬治
・第96回 2010年1月16日(土)
柳家権太楼・五街道雲助・古今亭志ん輔・桃月庵白酒・立川志の吉
・第97回 3月20日(土)
柳家小三治・古今亭志ん橋・林家正雀・三遊亭歌武蔵・柳家三之助
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念のため、次の注が書かれている。
「※2009年12月現在の予定です。出演者は都合により変更になることもあります。」
5月30日のブログでは、その時点で出演予定者として名前がなく私が今後出演するかどうか気になっている人として次の名前を挙げた。
・桃月庵白酒
・古今亭菊志ん
・三遊亭兼好
・歌奴
あくまで、若手・中堅で、この会に出演してもいいだけの技量と人気があると思っていた人たちである。もっと端的に言えば、この人たちが出て他の顔ぶれも良ければ、4,300円払ってでも行ってもいいかな、という名前である。結果として、白酒はうれしいことに来年1月に師匠と一緒に登場だ。もちろん初めてではない。さて、他の人は出演予定がないが、あえて百歩譲って(?)、同門の先輩が出演するならやむなしと考えるとして、菊志ん、歌奴は、ご本人の来年4月以降での出演を期待しよう。
ここで残るのが兼好なのだが、今年4月から来年3月までの一年間は、彼どころか、まったく円楽グループから出演がない。
私は、円楽グループを特に贔屓にしているわけではない。しかし、顔ぶれを固定しないホール落語会で、公平を信条にするはずの天下の朝日新聞社が主催する、今ではホール落語会のビッグスリーに数えられるであろう朝日名人会に、一年間を通じて円楽グループから出演がないのは、尋常ではないと思うのだ。開口一番を除けば各回5名、一年間10回(2月と8月には開催がない)だから50人の噺家さんが出演する“枠”がある中で、である。東京の落語会なのに、上方から文珍さえ出演しているというのに。(ただし、彼以外の上方からの参加はほとんどないのだが・・・・・・。)
もちろん、円楽グループの所帯は小さい。落語協会の約300人、落語芸術協会の約120人、そして立川流の約50人に比べても、20人ほどの所帯は数では圧倒的にマイナーである。しかし、過去に出演の実績がある。2007年9月15日の会場に私はいたが、その日は王楽が出演していた。ネタは『兵庫船』。なぜこのネタを選んだのか疑問に思ったが、ともかく彼は出演した。また、2006年7月5日に浜離宮朝日ホールで行われた「朝日いつかは名人会」の第二回目に、当時の三遊亭好二郎(現、兼好)が三遊亭遊馬とともに出演し、喬太郎との対談もしている。その後、遊馬は2007年7月21日に晴れて朝日名人会に出演し、私は会場で季節の噺『たがや』を聞いている。この人らしく豪快かつ繊細な、なかなか良い出来だったと記憶している。
当然、兼好も今年あたりは出演するだろうと思っていたのだが・・・・・・。
どう考えても、昨年円楽が弟子の鳳楽に円生を継がせると言ったことが、京須偕充プロデューサーの人選に影響しているとしか思えない。六代目未亡人、稲葉修氏、京須氏、山本進氏、そして円楽の五人が相談して、円生の名を「止め名」にすると決めた約束を円楽が相談もなく破った、という例の一件である。そして、この件を自身のブログで暴露した円窓が、今年5月には出演している。京須氏と円窓がつるんでいる証拠と判断していいだろう。
*襲名問題については11月12日に書いたので、興味のある方はお読みください。
2009年11月12日のブログ
芸能の世界に、きな臭い政治的な争いは本来似合わないし洒落にもならないのだが、円生襲名問題に何らかの決着がつくか、円楽グループと京須さんとの間で手打ちでもない限り、この朝日名人会からの円楽グループ締め出しは続きそうだ。TBSの落語研究会も京須さんが人選をするのだろうから、大きな二つの落語会で、円楽グループは無視されるのだろう。こうなると、昨年NHKの新人演芸大賞落語部門で三遊亭王楽が大賞を受賞したのは、朝日、TBSへのNHKの抵抗か、などとまったく下衆な勘ぐりもしてしまう。
まったく個人的な好みだが、私は兼好だけは、円楽グループの中でお金を出しても聞きたいと思っている。加えて、三遊亭きつつきも気になる落語家で、今後どうなるか関心がある。
兼好が、名人上手が並ぶ落語会で、どんな戦いをするかについては大いに興味があるが、この状況なのである。まぁ、たしかにプロデューサーという位だから偉いのでしょうが、本当に偉いなら、広い度量で幅広く落語愛好家が期待する出演者を人選して欲しいものだ。
ちなみに、来年4月以降で一部の出演者が決まっている会の予定は次のようなっている。
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・第98回 2010年4月17日(土)
柳家さん喬・五街道雲助・桂ひな太郎・柳家三三・三笑亭可龍
・第99回 5月15日(土)
立川志の輔・柳亭市馬・柳家喬太郎 ほか
・第100回 6月19日(土)
桂文珍・柳家権太楼・柳家花緑 ほか
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そして、第101回7月17日(土)、第102回9月18日(土)、第103回10月16日(土)、第104回11月20日(土)、第105回12月18日(土)、第106回 2011年1月15日(土)、第107回 3月19日(土)、については「出演者未定」となっている。
私自身がこの会に出向いた回数は、2007年に4回、昨年は1回、そして今年は3回。果たして来年は何回行く気になり、そしてチケットがとれるのかは分からない。全席4,300円なので、チケットを取れそうでもその席が相当後ろの席の場合は行かないこともある。
いずれにしても、上記の日程表にある「ほか」や「未定」が、どんな名前に置き換わっていくのかは、しばらく様子を見ていくことにしよう。その顔ぶれの変化で、あらためてこの会へのモチベーションが上がることを、内心では期待しているのだ。寄席もいい、他の落語会もいいのだが、ちょっとだけ「ハレ」の日を感じることのできる有楽町朝日ホールにも、たまには行きたいというのが正直な思いだ。
もし、円楽グループのファンが朝日新聞を購読しないとしたら、それは商売にも(ちょっとだけ)影響するんではなかろうか。そして、この件は「倫理」上でも問題があるように、私は思うのだ。
朝日新聞社のホームページの「行動規範」のページには次のように記されている。
朝日新聞ホームページ 行動規範
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(1)朝日新聞社の使命
《基本方針》
「私たちは、新聞づくりの理念を定めた朝日新聞綱領にのっとり、高い倫理観をもち、
言論・報道機関としての責務を全うすべく努力します。国民の知る権利に応えるため、
いかなる権力にも左右されず、言論・表現の自由を貫き、新聞をはじめ多様なメディア
を通じて公共的・文化的使命を果たします」
《具体的指針》
(ア)新聞、出版物、通信、放送など時代に応じた情報媒体を積極的に活用し、市民生活
に必要とされる情報を正確かつ迅速に提供します。
(イ)あらゆる不正行為を追及し、暴力と闘い、より良い市民生活の実現を目指します。
(以下割愛)
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上記の表現を借りるならば、「いかなる権力にも左右されず」、「朝日名人会」というメディアを通じ、落語ファンの「知る」(「見る」、「聞く」)権利に応えることが、「文化的使命」を果たすことになる、と思うのだが、さてさて今後どうなることやら・・・・・・。
