柳家小三治独演会 麻生市民館 11月9日
2009年 11月 09日
演者とネタは次の通り。
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柳家一琴 権助芝居 18:36-18:50
柳家小三治 マクラ「今年を振り返る①」、転宅 18:51-19:46
(仲入り)
柳家小三治 マクラ「今年を振り返る②」、小言念仏 20:01-20:30
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開口一番が柳家一琴である。これからして贅沢。携帯電話の注意をマクラでふって、あっさりと「権助芝居」のさわりだけ演じて、さて師匠登場。
いつものゆったりとした入りでマクラが始まったが、私には今日のマクラがこれまでの小三治体験の中では一番良かった。後頭部の髪の毛の生え際がかゆくなって・・・・・・という日常の異変から話はいろいろ飛んだが、ともすればダレる発散が、今日はわざとらしくなく自然に流れて丸く弧を描いて戻るような、そんな心地よいマクラだった。
後頭部の異変から“飛んだ”先は戦後の思い出話。昭和14年生まれで小学校に入学したのが戦後すぐ昭和21年。女の子の頭にはシラミ、男の子にはシラクモ(!?)やハタケ(!?)ができ、進駐軍支給のDDTでもなかなか治らなかった・・・・・・進駐軍に感謝しなさいと先生は言っていたが、実はあれは我々の税金で買っていたんじゃないですか!・・・・・・などと小言幸兵衛としての役回りも忘れず、絶妙の間の後でようやく戻った後頭部の湿疹の話。近所の病院と大きな病院の両方に行くことになるのだが、このマクラのキーワードの一つ近所の医者のひと言は、会場にいた人だけの秘密にしよう。大きな病院の皮膚科の医者に後頭部より、“顔の赤いのが心配”と言われ、その病名「脂漏性湿疹」の説明を同音異議をネタにして聞き間違えたというクスグリなどは、「このネタも本になりそうだな」と思わせたほど、出来すぎである。
とにかく35分のマクラは、まったく飽きさせなかったし、その後の『転宅』も、良かった。
仲入り後、「今年を振り返って、その弐」ということなので、上述のネタ表記もそのタイトルにした次第。今年3月にNHK BSで放送されたフランク永井さんの特集を、最初の30分見逃したのが悔しくて、再放送はないのか確認するためNHKに電話した、という話から始まった。話は途中、昨年出演した『プロフェッショナル-仕事の流儀-』におよび、「たくさん高座も撮ったのに、夏場の一番きつい時の映像と山盛りの薬を飲んでいるシーンを流したから、放送の後で会う人が皆、『お体、大丈夫ですか?』と聞くようになった」という話は笑えた。
ちなみに、この『プロフェッショナル-仕事の流儀-』の小三治師匠編にご興味のある方は私の感想ブログをご覧ください。
プロフェッショナル 柳家小三治
さて、無類の落語好きだったフランクさんのエピソードから飛んだ先は、やはり唄。、『公園の手品師』の一番だけだったが、今日は声の調子も良かったようだ。
マクラの中でもっとも印象に残ったのが、親が教育者で躾が厳しかった、という話を自ら語ったこと。今までご本人の口からはあまり話されたことはないように思う。そして、「一生懸命がんばれば末にはいいことがある。少なくとも来世にはいいことがある」と親に言われて、それなりに一生懸命がんばってきたつもりだが、「五十を過ぎたあたりで、先が見えちゃった。そこから考え方を変えて、来世なんかどうでもいいや、今が楽しけりゃ、と思うようになった」、という話には、まさに五十半ばの今、同じような感慨を持つ自分にとって、妙にうれしかったし、心の中で、「師匠もそうだったの!」と叫んでいた。さて、フランクさんの放送の件だが、結局、その再放送が今日21:00からある、という結構会場にはサプライズな種明かしをして、「皆さんもお帰りになって間に合ったらご覧ください」と勧めて時計を見た。そしてお得意の『小言念仏』へ。10分で「どじょうさん」のサゲまで無理なく、そして爆笑もので演じ頭を下げ万雷の拍手。顔を上げてから会場の壁に架かった時計が8:30を指しているのを確認して差し出した右手親指のGoodのサインまで、自然な演出で見事。もちろん、ご本人は再放送を留守予約しているだろうが、“皆さんもご近所ならまだ間に合うかも”という意味だろう。
一期一会としての得がたい時間と空間が、間違いなくそこにあったし、マクラもネタも含めてこれこそが小三治、なのだろう。1,000人が、まるで一つになったような感覚が何度かあった。2時間がまったく短く感じられないし、ダレもしない。マクラも、ネタも師匠ならではの楽しいひと時。
私にとっては、今年、いやここ数年の中でも演者と観客が醸し出す心地よい落語会として相当上位に位置付けられるし、長らく思い出に残るだろう。
ありがとう小三治師匠!そして、無理に頑張らなくてもいいですけど、また多摩川越えて遊びに来てください。お待ちしています。
