白酒ばなし 横浜にぎわい座 のげシャーレ 10月30日
2009年 10月 30日
今日が第二回目で一回目は気がついた時には“ぴあ”では完売だったので今回は発売日に購入していた、楽しみにしていた会。
時間を含めて下記の通り。
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古今亭志ん公 厩火事 19:15-19:35
桃月庵白酒 錦の袈裟 19:36-20:11
(仲入り)
桃月庵白酒 宿屋の仇討 20:23-21:05
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開口一番はないのかと思ったが、前座ではなく二つ目の志ん公が白酒の依頼で務めたようだ。
この会場は不思議な空間で、階段席は高座よりも高い位置になり、私の席あたりが噺家の目線と同じ位の高さになる。「高座」ではなく「低座」である。主役の白酒はさすがに目線がしっかりしていたが、志ん公にはこの環境はプレッシャーがかかったようで、前半はややオドオドした様子。「麹町のサル」あたりから落ち着き出したが、噺の出来は本人も満足はしていないだろう。いい雰囲気のある古今亭の若手なので、今後も暖かく見守りたい。
白酒の第一席。
今日の高座だから、やはり円楽のことからマクラが始まったが、途中から円生つながりで川柳のことになり結構引っ張る。先日のよみうりホールでも共演した記憶も蘇ったのだろうつい長引いて円楽ネタになかなか戻らなかったのだが、それはそれで、いつもの“毒”のある現代風のエスプリが楽しい。マクラ15分で、さてどんなネタかと思ったら『錦の袈裟』へ。本編20分だが肝腎な筋はしっかり押さえて、与太郎の味もよく、「澄み切ったバカ」などの白酒ならではの表現も笑いを誘い、十分に楽しめた。
二席目のマクラは約10分で、チケットの購入ノウハウなど。
この噺でこの人らしさがもっとも発揮されたと感心したのは、三人組で相撲をとる際に「佐野山」や「花筏」をクスグリで巧に盛り込んだところ。もちろん、江戸っ子三人組の中でリフレインされる「想い出づくり」というキーワードも現代風でユニークだし、効いている。侍が何度も伊八に前夜のことを繰り返すダレ場もうまく聞かせて、流石である。先日の『替り目』通しを聞いたあとなので、今後はこの噺の江戸版とも言える、かつて志ん生くらいしか演らなかった『庚申待』を聞きたいものだ。
エスプリの効いたマクラにオリジナルの現代版クスグリ、そして師匠雲助譲りの本寸法。この人の可能性は体型と同様大きい。朴訥や素朴というイメージの強い九州男児とは思えない現代的なセンスの良さ(九州出身の方、ゴメンナサイ)もあって、急速に人気が高まってくる理由が、よく分かる。12月の会の次は会場の関係で来春4月らしいが、その前に上の演芸ホールで雲助一門会があるかもしれないとのこと。なかなかの顔ぶれが揃ってきた一門である。都合次第で要検討だ。
現代と古典の融合という観点で落語の可能性を考えた場合、白酒への期待は高まる。志ん輔が志ん生の名を継がないのなら、この人ではないかとも思う。七代目円生も継ぐ人がいるようだし、早く誰かが六代目志ん生を襲名して欲しい。若手で可能性のある人という選択肢があったっていいんじゃないだろうか。そんな思いもした夜だった。