池袋演芸場 昼席 9月19日
2009年 09月 19日
演者とネタは次の通り。
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(開口一番 鈴々舎やえ馬 道灌)
三遊亭歌太郎 道具屋
ペペ桜井 ギター漫談
三遊亭歌奴 棒 鱈
橘家圓十郎 紙入れ
ダーク広和 奇 術
古今亭志ん馬 初音の鼓
いなせ家半七 教科書にかける情熱
大瀬ゆめじ・うたじ 漫 才
金原亭伯楽 猫の皿
(仲入り)
三遊亭多歌介 短 命
橘家文左衛門 千早ふる
三遊亭小円歌 三味線漫談
三遊亭歌武蔵 ぼやき居酒屋
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やえ馬(12:15-12:32)
いくら池袋が他の寄席よりも時間が使えるとはいえ、これはゆったりすぎ。「開口一番」であって「前座」ではない。もっとメリハリをきかせましょう。
歌太郎(12:33-12:48)
歌ぶとの名での前座時代から約二年ぶりだが、ずいぶん上手くなった。いなせな江戸弁でまくし立てる本寸法の噺家に育つ可能性を感じた。やえ馬のダラダラの後だけに、その差は際立った。
歌奴(13:00-13:15)
円歌一門会に近い顔ぶれなのだが、この一門の将来を背負うのは間違いなくこの人だろう。歌彦時代から評価は高かったが、いわゆる“様子の良さ”と達者な語り口が魅力だ。さん喬師匠も昔は寄席でよくかけたが最近は演る機会が減ったというこの噺、落語会を含め久しぶりりだった。「赤べろべろの醤油漬け」に熱唱(?)「十二か月」、この噺をしっかり15分で楽しませてくれた。さすがだ。
圓十郎(13:16-13:34)
お初である。結構いい味を出しているが、歌奴の後で少し損をした、そんな印象。
志ん馬(13:46-14:02)
昨夜も神宮球場で阿部のホームランを見てきた、という巨人ファンネタのマクラの後、最近は喬太郎で有名になった『初音の鼓』へ。まぁ、それなりの出来。そう言えば、この人は1996年にNHK新人演芸大賞を『宮戸川』で受賞している。喬太郎が『午後の保健室』で受賞するのは、その二年後である。師匠の先代志ん馬が亡くなった後は志ん朝門下だった人だ。野球焼けの顔を見ているうちに、他力本願でただ応援するだけの野球に時間を費やすくらいなら、あなた自身の落語にもっと時間を注いでみてはいかが、そんな思いが生じた。他人の好みや趣味に口を出すほど野暮なことはないが、そんな個人的でまったくつまらないマクラを聞かされたアンチジャイアンツファンの代弁として、あえて書かせてもらった。
半七(14:03-14:18)
黄色の派手な高座着で登場のこの人もお初。不思議な魅力がある。先代柳朝師匠に入門し、今は小朝門下。暴力団から足を洗った“高倉さん”が網走時代の訓練を生かし印刷所を始め、教科書を作るために役所(文部科学省)に出向いた際の担当者とのやりとりで構成されているのだが、結構イケル新作なのだ。この人、声はほとんど“坂東英二”なのだが“様子がいい”ので少し損しているかもしれない。小噺も含めオリジナリティは相当ありそうだ。ぜひ、別な新作も聞いてみたい。
伯楽(14:31-14:46)
マクラで志ん生師匠の思い出があり、素直にうれしかった。昭和14年生まれなので小三治師匠と同じ古希である。志ん五の代演で鈴本の主任とダブルヘッダー(表現が古い!)なのに、短いながらしっかり『猫の皿』で楽しませてくれた。とにかく「渋い」のだ。
談志、小三治、圓菊といった師匠と同様、元気な姿を見ることができれば幸せだ。
多歌介(14:55-15:19)
クイツキとして、少し長めのマクラで引っ張り本編へ。上手いし、笑いの勘どころを押さえている。この噺もニンである。初めてだが円歌一門の奥の深さのようなものを感じる人。寄席の席亭には重宝な噺家さんだろう。
文左衛門(15:20-15:41)
楽屋で歌武蔵と話していてネタを考えていなかったと、前座にネタ帳を持ってこさせた。結果としてこのネタとなったが、さて、この人の『千早ふる』はどうなるのかと思って聞いていたが、のっけから、通常は八っあんの指南役は“先生”や“ご隠居”なのに“兄貴”ときた。なるほど、この人らしい。「百人一首」という言葉を思い出す際のギャグや、時節柄のクスグリを含め楽しませてくれた。オチを歌武蔵にふるのも、ある意味でお約束。一朝師匠の代演として、お目当てのお客さんは喜んだのではないだろうか。
小円歌(15:42-15:58)
いつもながらお綺麗でしたし、「奴さん」も良かった。
歌武蔵(15:59-16:27)
いつものマクラから本編へ。柳家はん治のこの噺もいいが、酔っ払いの噺での歌武蔵の迫力は、尋常ではない。明日が千秋楽なので、ある意味で力を貯めたい日だろう。ネタもほぼ予想通りで、出来栄えも期待通り。しかし、主任の時くらいは、名前の読み間違いのマクラはいらないだろう。さすがに「ただいまの勝負」の出だしではなかったが、「主任だろ、池袋だろ・・・・・・。」と違和感をおぼえた。
今日は、芸なら歌奴、懐かしさなら伯楽、意外性で半七、なるほどそうきたか、の文左衛門、いいんだけどなぁ・・・・・・の歌武蔵という印象。
歌武蔵には、そろそろ定番のマクラをやめて欲しい。寄席での『親子酒』や長講『らくだ』など酔っぱらいネタの凄さを筆頭に、この人はもはや名前を売る必要もないし、決して「元相撲取り」という異色性を売りにしなくても十分に実力は認められているはず。もちろんその体つきは並ではないが。「この名をカブゾウと呼んだり、なかにはキャバクラ・・・・・・」というマクラは必要ないだろう。そもそもキャバクラとは読めんわい。たしかに“初歌武蔵”のお客さんもいただろうし、いつものマクラで笑うお客さんも多かったが、「サービス精神」のつもりで定番マクラと相撲界ネタのくすぐりを繰り返しているうちに、この人の次の飛躍がどんどん遅くなるように思うのだ。潜在力は体の大きさと同様相当なものだと思う。喬太郎、喜多八との落語会でも遜色なく競い合っている。今が落語界での「前頭」クラスとすれば「関脇」いや「大関」に早くなって欲しい。今日の文左衛門の『千早ふる』では三年で大関だったが、さていつ「もう十分に大関だ」と思わせてくれるだろうか、それが楽しみだ。
