新宿末広亭 昼席 4月4日
2009年 04月 04日
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(開口一番 柳家小んぶ 道灌 11:52-12:00)
柳家喬之進 真田小僧 12:01-12:14(13m)
ペペ桜井 ギター漫談 12:15-12:23( 8m)
林家久蔵 勘定板 12:24-12:36(12m)
柳家喬之助 長短 12:37-12:51(14m)
にゃん子・金魚 漫才 12:52-13:00( 8m)
桂才賀 漫談 13:01-13:11(10m)
柳家小里ん 親子酒 13:12-13:26(14m)
太田家元九郎 津軽三味線 13:27-13:41(14m)
川柳川柳 ガーコン 13:42-14:00(18m)
柳家はん治 ぼやき居酒屋 14:01-14:15(14m)
伊藤夢葉 奇術 14:16-14:29(13m)
三遊亭歌之介 龍馬伝 14:30-14:45(15m)
(仲入り)
柳亭燕路 幇間腹 14:57-15:10(13m)
笑組 漫才 15:11-15:20( 9m)
三升家小勝 漫談 15:21-15:33(12m)
柳家小さん 長屋の花見 15:34-15:50(16m)
仙三郎社中 太神楽曲芸 15:51-15:59( 8m)
柳家さん喬 井戸の茶碗 16:00-16:30(30m)
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久しぶりの喬之進だが、ちょっと太めになったような気がする。まぁまぁ、無難な出来。
久蔵が、本日の笑い獲得量では一番だったかもしれない。ベテラン落語ファンのお客さんでも滅多に聞けないネタであったのと、ネタ自体の可笑しさもあるが、十分に自分のものにしていた。下ネタではあるが、これも落語ならではの世界だ。
喬之助の横浜にぎわい座での真打昇進披露に行ったのが、もう2年前のことになった。昇進当時は、結構、一杯一杯といった感じで先を案じたが、ようやく落着きが出てきたようだ。難しい噺だが勘どころは押さえていたと思う。もしかして化けるかな、と思わせた。
ナイキのロゴ風の頭髪カットで登場の才賀師。ネタ収集にうってつけなのは、台東区役所の高齢者福祉課だ、という漫談、結構会場を沸かせていました。お元気で寄席に顔を出し続けて欲しい人だ。
小さん門下の層の厚さを示す落語家さんの一人、小里ん師。安心して聞ける本寸法の噺でした。こういう人が、寄席には欠かせない。
柳家紫文の代演、元九郎師。いいんだねぇ、津軽三味線での「パイプライン」や「コンドルは飛んでいく」が。津軽弁でのたどたどしいギャグも好きだなぁ。
昭和6年3月生まれ、78歳になったばかりの川柳師匠。相変わらず「舌」好調。自分の著作の売り込みも忘れず、寄席の定番で沸かせる芸、これはギネス級じゃないかと思う。
はん治師は、結構私が今ハマリそうな噺家さんである。前進座での『背なで老いてる唐獅子牡丹』も良かったが、この噺も「自分の味を良く知っているなぁ」と思わせるニンな噺である。落語ではなく、「地」で居酒屋で語っているように思わせるところは、見事な「芸」だ。
仲入り前は、池袋の昼席での主任と掛け持ちの歌之介。この噺と『B型人間』は、何度聞いても笑える。本人が噺の中で言う通り、英語と古典が苦手なのだから、あえて古典に挑まず、歌之介ワールドのラインアップを増やす次の新作に期待したい。まだ今の持ちネタだけで保身に走る年ではないはず。龍馬とB型のギャグも三分の一はかぶっているからねぇ。
勢朝の代演が燕路師。非常に良かった。この噺は、名人文楽が甚語楼時代の志ん生に稽古をつけてもらったが、なかなか納得できず自分で演じることをあきらめたという噺。燕路はニンである。はん治とこの人の二人の小三治一門が、主任のさん喬師以外では、今日は光っていた。
文生の代演が小勝師。昭和13年生まれだから志ん朝と同じ年だ。才賀師と同様に刑務所の慰問などで社会貢献されている。こういう噺家さんが寄席の名脇役となっている。昔、テレビのレポーターなどで活躍する姿を思い出した。
季節ピッタリの噺だった小さん師。無難だが、さて、どうコメントしたらよいのだろう。はん治師、燕路師ともに、しっかりと「個性」や「味」を示しているのだが、どうもこの人には形容する言葉を捜すのが苦だ。名前が重いかな、と思わざるを得ない。
さん喬師の『井戸の茶碗』のよさは、屑屋の清兵衛さんに集約されているように思う。騒動の中であたふたする姿も秀逸だし、最終的に二人の潔癖な武士とその娘の仲人役を務めることになる清兵衛さんが、「こんな私でいいんですか・・・」といった泣かせの芸が、さん喬師ならではであり、わかっていながら目頭を熱くさせる。夜席と入替えなので30分という時間を厳守しながら、丁寧かつツボをはずさない芸、やはりこの人は凄い。
あえて、演じた時間を記した。出演者が多すぎる、などと野暮な話をしたいわけではない。あらためて思うのだ。たったこれだけの時間で、これだけ多くの噺家さんがしっかりと自分の空間を作って楽しませてくれる。もちろん、漫才、奇術、太神楽といった色物の皆さんも含めて久しぶりの寄席は良かった。10分前後で、あれだけ会場を沸かせるって、そうは出来ませんよ。ビジネスで言うなら、プレゼンテーションの原則であるが、時間が短かければ短い程、相手に思いを伝えるのは難しいのである。落語という芸も、ある意味でプレゼンテーション。凝縮した芸のてんこ盛りである寄席。やはりたまに来ないといけないと思う。
外に出ると、夜席のお客さんの大行列。三平襲名披露である。いっ平が三平になるだけでも、これだけ並ぶのかぁ・・・・・・と妙な気分になった。昼席にも大きな名前を継いだ人が何人かいた。非常に悩ましいのが、この襲名問題である。代が変われば先代とは別なのは当たり前なのだが、「世襲」は歌舞伎の世界だけにして欲しい、と思いながら駅に向かった。