第87回 朝日名人会 有楽町朝日ホール 3月21日
2009年 03月 21日
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(開口一番 古今亭志ん坊 道灌)
鈴々舎わか馬 紋三郎稲荷
三遊亭遊雀 崇徳院
古今亭志ん橋 宗珉の滝
(仲入り)
柳家花緑 天狗裁き
桂歌丸 鰍沢
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志ん坊(14:00-14:15)
よほど緊張していたのだろう、名乗らず始めた。声の大きさだけは前座らしく良いが、こんな機会に自分の名を売り込む余裕がなかったことは大反省だろう。頑張ってください。
わか馬(14:16-14:35)
きっと志ん坊の名前を言ってあげるだろう、という期待は裏切られ、わか馬でさえ出だしから緊張度は高く、その後も噛むことが多かった。この人のこの噺はニフティのポッドキャスト落語で聞いているが、結構良い出来だったと思う。しかし、この会場と名前がプレッシャーになるのだろう、彼の持ち味の半分位しか発揮できんかったのではなかろうか。声が非常に良い人なので、今後に期待したい。
遊雀(14:36-15:06)
期待通りだった。マクラでは、ちょうど眠い時間で楽屋では志ん橋師匠が熟睡しているという話も゛らしく゛ていい。本編では、まず熊さんの弾け方が予想通りでうれしかった。患っている若旦那の部屋に入る際の大きな声での「ターッ、ターッ、若旦那ぁ!」、そして若旦那の消え入るような声の「ばかっ」のやりとりから先は遊雀ワールドである。熊さんのオカミさんの表情を含めた名演技、床屋、鳶頭との最後のカラミの場面など、大いに笑い、楽しめた。話の骨格から志ん朝版をベースとしているような気がするが、直接稽古をつけてもらったことがあったのだろうか。もちろん、ところどころの遊雀らしいくすぐりや人物描写も秀逸で、前に出た二人への欲求不満もあるだろう、場内はいっきに盛り上がった。出の際の拍手から察して大半のお客さんが初遊雀ではないかと思うが大いにアピールできたのではないだろうか。結果として、本日のベストは、この人でした。
志ん橋(15:07-15:52)
せっかく遊雀が暖めた会場を、ネタのせいもあるが目一杯冷やしていただいたのが、楽屋で寝ていたこの人。結果として今日のトリの歌丸師匠よりも長い45分。歌丸師匠は本当は45分の予定だったのかもしれないが、いずれにしても途中で眠ってしまった。落語会や寄席で寝たのは久しぶりだ。抑揚のない口調とネタの悪循環であろう。師匠志ん朝が好きだからその弟子も好きになるというわけではない。結構贔屓目に見ようとも思うのだが、どうもいただけない。しかし、この人は風貌や口調、声の調子から三代目の三遊亭金馬師匠を彷彿とさせるものがある。金馬の十八番だった噺を演ってもらえると、もっと好きになれるかもしれない。
花緑(16:13-16:48)
他の噺家さんと着物の色がかぶらないよう注意したが、毛氈の色とかぶった、という話から自分のみた夢のネタへ。永谷園の味噌汁のCM出演も、前夜師匠小さんと二人会の夢を見た後にCMの依頼があったなどとフッて、芝居の夢で出トチリをし、その原因は出番前の楽屋にミッキーマウス姿の米朝師匠が現れたから、と米朝師匠に稽古をつけてもらった本編へ。今回はCD収録への気合が相当入っていたような気がする。なかなかの出来だし、新たなくすぐりも加え楽しませてくれていたのだが、大岡裁きの部分での情景描写で残念ながらリズムを狂わせ言い直しがあった。これではCD化は難しいかもしれない。サゲてからのややがっかりした顔が印象的だった。しかし、私は、今日の花緑には結構好感を持てた。オカミさん、長屋の隣に住む仲の良い男、家主と進むそれぞれの場面での描写には味があり、ところどころ「おっ!」と思わせる芸もあった。この人はもっと聞きたいと思わせてくれた。七光りだけではなく、より成長する潜在力を秘めている。
歌丸(16:49-17:24)
この会のチケットを購入した直後、歌丸師匠の体調問題が発生したので、当日はどうなるのかと思っていたが、元気な姿を見ることができただけでも来た甲斐があったのだろう。談志家元と同じ昭和11年生まれなので今年73歳。小三治師匠より三歳年上である。そう思うと、さすがと言うべき出来だ。とにかく丁寧で細かい。
この会も運営が厳しいのかもしれないが、さて、次回から全席4300円という価格設定はいかがなものだろう。抽選による通し券でも、従来は一回当たり3700円だったのが4000円となる。私が初めてこの会に来た2年前から比べても、若いお客さんが増えるとともに、通し券で購入する常連さんが減っているようにも思う。噺の中で受ける場面や笑い方なども微妙に変わってきた気がする。新たな客層に変わりつつあるし、また獲得しなければならないはずなのに、プログラム編成や会場運営の姿勢は変わらないという硬直感を、前回に続き感じた。仲入りでロビーで味わうコーヒー、ビールやワインなども、これだけ混雑していては、決して「晴れの日」の感覚など味わえない。
人とネタの選定にも少し違和感がある。そんなことを考えるうちに、京須さんが落語研究会にもこっちにも絡んでいることに思い当たった。それって無理があるのでは・・・・・・。ある意味で競争することで、お互いの落語会が磨かれていくようにも思うのだ。もちろん京須さんが嫌いということではなく、現在のホール落語会でのツートップとも言える会の両方で同一人物がプロデュース的役割を担っていることが問題ではないかと思うのである。席料を考えると、ぜひ驚くような顔ぶれとネタで、行きたくなるようなプログラムを組んで欲しいと思う。
