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春風亭小朝独演会 よみうりホール 9月20日

今日は目と鼻の先の有楽町朝日ホールでは志の輔などが出演の朝日名人会があるが、多摩川を越えない都心で小朝がどんなパフォーマンスを見せてくれるのかと思いこちらへ。平均年齢が、決して低くない。朝日ホールより3歳位は上であろう。小朝が年輩に強い、という証であろうが、複雑な心境。志の輔、談春、喬太郎の都内での独演会の客層とは、間違いなく違う。

本日の出し物。
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春風亭ぽっぽ  たらちね
春風亭小朝   船徳
(仲入り)
林家木久蔵   やかんなめ
春風亭小朝   池田屋(近藤勇)~お菊の皿
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ぽっぽ、は小朝の三番弟子とのこと。初めてだが、暖かい会場の笑いの助けもあり、なかなかの内容である。女流ということを抜きにして期待させる。

『船徳』14:20-14:50
弟子の゛ぽっぽ゛のあと登場。台風のニュースから、自分が゛晴れ男゛であるというネタをしばらく、そして今日は゛夏の名残りのネタ゛を、ということで「昔は、道楽が過ぎて勘当になる若旦那が多かった・・・・・・・」のフリ。(まさか『唐茄子屋』じゃないよな、8月に聞いたばかりだし・・・・・・)と思っていたら若旦那は船宿の二階に厄介で、ホッとした。小朝らしい工夫が随所にある。船頭達が親方に呼ばれてからの定番のドタバタを刈り込み、しばらく肉を食っていないからネコを食べようという船頭達の話を耳にした若旦那の徳がおごってやった、といういきさつから、船頭達が親方に徳の船頭志願を後押しする、という設定。船に乗るのが嫌な゛傘をさした太った旦那゛の臆病ぶりも全編を通じて良い演出だ。船宿の女将さんが、船を出す時に徳にお守りを渡し「お前だけでいいから助かりな」のセリフも、○に「徳」の字が船腹に描かれた自分の船を持つほどの若旦那を預かった身の上を考えると当然だろう。石垣にぶつかった際に、「もうやめた」と一旦軽く゛切れる゛ところも、なかなかおもしろい。陸に上がる際、先に徳が背におぶさるというくだりも、他の人にはないユニークなくすぐりだ。マクラを含めた30分でこれだけの芸を魅せられると、次を期待するのは当然。

『池田屋(近藤勇)』(15:23-15:47)『お菊の皿』(15:50-16:05)
まず、膝がわりの演者についてギャグを語る。「木久扇、木久蔵のダブル襲名披露公演で熊本に行った際、昼の公演の後に地元の評判の占い師に木久蔵が見てもらったら、『あなたは落語家をやめたほうがいい』とのこと。木久蔵が『霊がそう言ってますか』と聞いたら、『いえ、昼間、あなたの落語を聞きました』」というギャグは笑えたし、事実であっても驚かない。元気だけが取り柄というのはせいぜい二つ目まで。木久蔵は、本当に将来を考えたほうがいいのでは。さて、小朝の二席目は、お得意の゛地ばなし゛である。近藤勇を中心としたこの噺、8月12日の川崎市麻生市民館では一席目のネタだった。有楽町でも、さすがに場内はドッカンドッカンである。20分ちょっとで暗転し、あらためて照明がついて、小噺を二つ。この小噺が、実はおもしろいのだが、内容はもちろん明かさない。そのまま『お菊の皿』へ。そうなのだ。゛夏゛の噺で近藤勇で終わられては困る。照明の演出とBGM「恋のバカンス」をバックにした゛お菊ダンス゛を含め、定評のある独自のギャグのオンパレードに、会場のお父さんお母さんは大興奮。たった15分とはいえ確かに楽しめたのだが、会場のノリのあまりの゛暑さ゛にちょっと汗が出るほど恥ずかしかった。そこで思い出した。矢野誠一さんの『落語読本』(文春文庫、1989年発行)の解説の中で、テレビで小朝がこの噺を演じたのを見た人から「幽霊が汗をかいているのはおかしい」という新聞への投書が掲載されたことがあるらしい。しかし、あれだけ動けば汗も出る。

会場を出ると、まだ4時10分。朝日ホールでは、膝がわりは誰だろう、トリは歌丸師匠だろうな、などと思いながら地下鉄の駅へ向かった。

今年、小朝独演会に行くのは3回目である。1月12日の相模原(杜のホールはしもと)での独演会は、『禁酒番屋』と、もう一席は源平から『扇の的』、8月2日の新百合ヶ丘(麻生市民館)では一席目が『池田屋』で、トリが『唐茄子屋政談』だった。古典一席と゛地ばなし゛一席というスタイルが基本なのだろう。たしかに源平系も池田屋も小朝のオリジナルが盛りだくさんで、会場の受け方は都内も多摩川超えも同様にドッカン、である。選ばれた古典も、これまでに十分練られているもので、まったく危なげない。
逆に言えば、冒険のないプログラムである。

年250回と自ら語る全国各地での落語会開催の一番の目的を、小朝は「落語をめったに聞いたことのないお客様に落語の魅力を味わってもらい、落語ファンを増やしたい」と説明するかもしれない。そのために代表的な古典を一席は披露し、もう一席は独自のギャグ満載の゛地ばなし゛で目一杯笑ってもらおう、という構成になるのだろう。
しかし、思うのだ。もう、その役割をあなたが担うことはないだろう、と。昔、博品館に通い、次世代のリーダーと期待したファンは、今日の会場には少ないはず。そして志の輔、談春の立川流や柳家喬太郎に負けずに今後の落語界を引っ張って欲しい、と思っているファンも、今日のような小朝を見たいわけではあるまい。あまりにコンパクトなネタの構成に、どうしても一昨日のさん喬師匠の長講『品川心中』を重ねて比べてしまう。確かにさん喬師匠は、常に゛たっぷり゛気味ではあるが、一期一会の芸に賭ける噺家の気合のようなものを強く感じる。小朝には、洗練されたエンターティナーとしての存在感を認めるが、そのパフォーマンスは、すでに体と頭に染み付いたテンプレートのコピーの印象が強い。

『お菊の皿』で唯一といってよい滑ったネタが「ラジバンダリ」。会場の年齢層が高すぎる、ということに原因を求めてよいのだろうか。以前からのオリジナルのギャグで危なげなく大ホールの笑いをとることはできるが、最近のお笑いネタを使った際の会場の空気と演者の照れ笑いに、何かさみしいものを感じた。

小朝は、間違いなく上手い。それは多くの落語ファンの異論のないところだろう。しかし、今日のような独演会ばかりなら、これから10年後の落語界のリーダーとして、彼の名前をあげる人はいないだろう。そんな複雑な思いで帰途についたのであった。
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by kogotokoubei | 2008-09-20 19:16 | 寄席・落語会 | Trackback | Comments(0)

あっちに行ったりこっちに来たり、いろんなことを書きなぐっております。


by 小言幸兵衛
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