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『落語 37号』(弘文出版)

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「落語30年、これまでとこれからの」という特集で、京須偕充さんが編者である。
36号が2003年4月の発行だから5年3カ月ぶりの発行。その前の35号は2001年7月、34号となると1997年6月 だから、3号前は10年以上遡る必要がある。たぶん38号は30年後に発行予定なので、こういった特集になったのでは?というツッコミも入れたくなるが、ぜひ3年以内で38号の発行を期待したいものだ。しかし、季刊ではなくなっても忘れた頃に発行し、いまだに通し番号を付けている弘文出版のしぶとさも、ある意味で凄い。

執筆陣は京須さんをはじめ、落語に関する論客ぞろいの多彩 な顔ぶれである。大友浩、長井好弘、今野徹、佐藤友美、木村万里、田中徹、瀧口雅仁、寺脇研、浜美雪、などなどの名前が並ぶ。 現役の落語指南役で加えて欲しかったのは堀井憲一郎さんだが、執筆依頼がそもそもなかったのか、依頼はあったが何らかの事情で断ったのかは不明。

最初に京須さんが、「さらば、名人の世紀」という長いマクラをふっている。各章のタイトルのみ並べてみる。
(1)志ん朝は名人か (2)名人は幻 (3)名人の黄昏 (4)名人は人間か
(5)名人の逸話と背景 (6)真に迫る (7)名人の世紀 (8)聴き手の想像力
(9)「名人」を捨てた名人 (10)アンチ名人の時代へ (11)ポスト名人時代のリーダーは

「名人」が存在しない、あるいは存在できない時代にあって、今から30年後の落語界を背負って立つのはどういった人たちだろうか、そんな酔狂な企画もあっていいでしょう、という企画のマクラを京須さんは「名人」への考察から始めたわけだ。これに続いて、骨のある落語指南番それぞれの30年後の期待とシミュレーションが記録されている。まさに、各書き手による記録なのだ。皆、自分がその時に存在するか否かという不安を持ちながら、30年後に読み返したいと思っている。

それぞれの書き手による「30年後」の落語界を背負って立つだろう噺家の名前は。本書を読んで確認していただきたいが、落語ファンであれば、ほぼ想像通りの顔 ぶれが並んでいるといえるだろう。 ただし、出てくる噺家の数はとんでもなく多い。もちろん、書き手の視線、好みなどの違いによるが、「この人がこの噺家を推すんだ・・・・・・」という発見も楽しい。

これでもか、というお奨め噺家のオンパレードでお腹一杯になった頃、ほっとさせてくれるとともに、非常に楽しませてくれるのが「柳家喬太郎日記」である。本年4月一ヶ月間の日記が掲載されている。私自身もこの期間の喬太郎のいくつかの落語会に足を運んだので非常に楽しく読めた。特に4月9日のにぎわい座でのさん喬一門会に関する事後の反省には、同じような感想を持っていたので、大いにうれしくもあった。この日記で最初にわかることは、想像はしていたが、喬太郎がどれほど“売れている”か、かつ仕事を断らずにこなしているかという実態。また、日記なので、なんといっても等身大の日常生活を覗く楽しさがある。しかし、彼の日常が楽しいことばかりでは、もちろんない。池袋の行きつけのバーで翌日締切りの原稿を書く夜があれば、なぜか深夜あるいは早朝まで眠れない日々もある。また、十八番(オハコ)を演じた後でも出来栄えに自責の言葉を綴る日も少なくなく、正直言って、「30年後、喬太郎は大丈夫か?」という不安も感じた。もちろん本書でも多くの書き手が喬太郎を30年後の落語界のリーダーとして推している。少しは仕事を選び無理をしないで欲しいと思った次第である。でも、休まんだろうなぁ、彼は・・・・・・。
 
また、長井好弘さんによる「データで読む『当世落語事情』」は、得難い資料となって いる。過去数年間の鈴本や末広亭の演目や、過去数年“演じられていない”噺、といった 情報が提供されており、非常にタメになる。 上方落語に割くページも相応に用意されている。トリを務める花井伸夫さんや相羽秋夫さん達による「これまでの30年」も読み応えある記録である。総体として長期保存版としての価値はある。
 
7月に発行されたが発行部数が多くないのだろう、インターネットでの購入でも数週間かかるようだ。私は、神保町の落語専門古書店で入手したが、通常の書店では間違いなく取り寄せになってしまうだろう。しかし、落語ファンの皆さんが、数年後に古書店ルートで苦労して買い求めることになるのなら、今のうち買っておくだけの価値は十分にある。 自分の贔屓の噺家がどのように評価されているかを知る楽しみもある。そして、今はよく知らないがこれから長い間見守るべき若手成長株の新たな名前を知ることのほうが重要なのかもしれない。次の大友浩さんの言葉が示唆的である。
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30年後の落語界がどうなっているか、遊び半分に考えてみることはある。
しかし、未来を言い当てようとすることがいかに虚しいかは、私たちがこれまで
さまざまな形で目にしてきた多くの未来論で証明済みだろう。・・・・・・
「30年後に期待する噺家は?」と問われたら、「明日入門するあなたです」と
答えたくなってしまう。
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本書を読んで人生が変わった未来の噺家がいないとは限らない。

弘文出版_落語37号
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by kogotokoubei | 2008-08-05 18:50 | 落語の本 | Trackback | Comments(0)

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by 小言幸兵衛
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