三三独演会 紀尾井ホール-小ホール- 8月1日
2008年 08月 01日
三三の独演会は昨年以来なので、内幸町ホールと思っていたので勝手が違ったが、これはバージョンアップ、ということなのだろうか・・・・・・それはともかく演目。
----------------------------------
三遊亭王楽 「しびん(花瓶)」
柳家三三 「帯久」
(仲入り)
柳家三三 「唐茄子屋政談」
----------------------------------
「しびん(花瓶)」
王楽は昨年の9月15日の朝日名人会以来、久しぶりの再会。この噺は、”田舎侍”が道具屋で「しびん」を「花瓶」と間違えるというのが大前提。田舎侍を描けなければ噺の輪郭が見えない。三三が自分の噺のマクラで「王楽さんは血筋が違いますよ」などとよいしょしたのは、「残念ながら田舎侍を演じるのはDNA的に難しかったのでしょう」というフォローにさえ聞こえた。昨年の朝日名人会の『兵庫船』が、期待していなかったせいか意外に印象が良かったので、ネタの選択ミスともいえるだろう。文楽(八代目)がよく演じたとはいえ、噺自体があまりおもしろくのないネタであり、若さの勢いで聞かせるのは難しい噺である。芝居噺などがニンのはず。これ以上はあえて小言を我慢して今後に期待。
「帯久」
五貫裁きなど政談ものはニンであり、若さに似合わず大店の主など年輩の登場人物を演じたらピカイチといえるので、この噺は期待していた。演じ分けの見事さなど十分期待に応える内容で、ぜひ十八番(オハコ)に加えて欲しい。
サゲの「身をこがして」は三三のオリジナルなのかどうか勉強不足だが、米朝をはじめ「本卦(本家)」と「別家」というサゲが通じにくい今日、志の輔の「帯だけにきつく」というサゲに勝るとは言えないが、話の流れとしては無理がなく好感は持てた。
「唐茄子屋政談」
徳が商売から帰り、おじが徳の話を聞いた後で誓願寺店に向かう場面。二人に向かっておばが言う「二人で吉原に行くのかい」のクスグリがいちばん笑えた。また、吉原田圃での売り声の練習と、花魁との回想とを交える中盤の聴かせどころも、三三らしい色気と笑いがあって、良い。矢野誠一さんの文章に、志ん朝が二つ目朝太の時代の勉強会でこの噺を見事に演じ、若いのに驚いた、という表現があったことを思い出すが、三三の唐茄子屋も若いのにもかかわらずニンである。
月例の三三独演会は、もっと広い会場でも十分集客できるだろう。しかし、内幸町や紀尾井ホールといった会場をあえて選んでいるのであれば、その三三の心意気がもっとも価値がある、そんな思いでトラブルで20分遅れた小田急の、これでもかという位に度重なるお詫びの車内放送を聞きながら、多摩川を超えて帰った夜だった。
三三、たしかに柳家の正統派の伝統を担う逸材にちがいない。しかしこの日の内容で欲を言えば、「帯久」のマクラで姫路城を訪ねた話をしたが、「なぜ姫路城だったのか」という彼の思い入れなども聞きたかった。マクラには人柄が出る。もっと姫路城への旅の心情面での掘り下げがあれば、三三という一人の人間への理解が深まったのに、と感じた次第。まだ三十代前半ではあるが、あえて自分の思いや好みなどもテレずに吐露してほしい、という小言で締めたい。「上手い!」の段階はすでに到達しているのだから、マクラを含め「できる!」「なるほど・・・・・・」と思わせ、その著作が出たら買いたくさせるような噺家にぜひなって欲しい。
