噺の話

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<   2011年 12月 ( 12 )   > この月の画像一覧

昨日、複数の高座がリストアップされた八名について各一席に絞ったわけだが、あらためて、マイベスト十席の候補二十席を並べてみる。
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(1)桂かい枝『天王寺詣り』
:西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月14日
(2)入船亭扇辰『徂徠豆腐』
:通ごのみ 扇辰・白酒二人会 日本橋社会教育会館 2月25日
(3)柳家小満ん『景清』
:弥生の独り看板 柳家小満ん (雪月花の夕べ) 東京芸術劇場 3月1日
(4)柳家花緑『蜘蛛駕籠』
:第六回 大手町落語会 日経ホール 4月9日
(5)桂平治『禁酒番屋』
(6)柳家喬太郎『錦の袈裟』
:桂平治独演会 日本橋社会教育会館ホール 4月18日
(7)三遊亭兼好『締め込み』
:シブヤ落語会~兼好 朧月の会~渋谷区 大和田伝承ホール 4月27日
(8)春風亭一之輔『粗忽の釘』
:第3回 ハマのすけえん 横浜にぎわい座(のげシャーレ) 5月20日
(9)桃月庵白酒『化け物使い』
:第七回 大手町落語会 日経ホール 6月11日
(10)柳家小三治『馬の田楽』
:新宿末広亭 6月下席 夜の部 6月23日
(11)柳家三三 『嶋鵆沖白浪』第四夜の弐
:柳家三三 嶋鵆沖白浪 第四夜 横浜にぎわい座 8月5日
(12)桂文我『宿屋仇』
:桂文我 極彩色高座賑 第五幕-其の二- 国立演芸場 9月29日
(13)五街道雲助『お初徳兵衛浮名桟橋』
:第37回 人形町らくだ亭 それぞれの徳兵衛 日本橋劇場 8月22日
(14)瀧川鯉昇『質屋庫』
:通ごのみ 鯉昇ひとり会 日本橋社会教育会館ホール 9月2日
(15)古今亭志ん丸『鰻の幇間』
:あさひ亭まねき寄席 三三・志ん丸 サンハートホール 9月24日
(16)立川談春 『庖丁』
:新文芸坐落語会 看板と若手たち③ 11月2日
(17)柳家喜多八 『長屋の算術』
:喜多八膝栗毛 秋之声 博品館劇場 11月7日
(18)古今亭志ん輔 『幾代餅』
:志ん輔三夜 第三夜 国立演芸場 11月15日
(19)柳家権太楼 『笠碁』
:ちがさき寄席 茅ケ崎市民文化会館 11月23日
(20)柳家さん喬『棒鱈』
:新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月27日
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 さて、この二十席の中に、末広亭での高座が、二席含まれている。ここで思案タイムなのだ。寄席の高座も落語会と同列で扱っていいのか、分けるべきか・・・・・・。

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幸兵衛A「寄席だろうが、落語会だろうが、高座は高座、落語は落語だろう。一緒に並べて選ぶべきだ!」
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幸兵衛B「ちょっと待て、定席寄席と落語会では、その環境や所要時間、噺家の臨み方など違うだろう!」
 もし、定席寄席にもっと通えていたなら“A”の言い分に加担しそうなのだが、今年は末広亭のみ六回という数。合計で四十七回の一割余り。加えて、マイベスト十席の候補は、六月までの上期に一席、下期にも一席。
 ということで、今年は寄席での二つの高座については「寄席大賞」として、二席を別格として表彰(?)したい。
「寄席大賞」
-上期-
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柳家小三治『馬の田楽』 :新宿末広亭 6月下席 夜の部 6月23日
-下期-
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柳家さん喬『棒鱈』 :新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月27日

 
 ご両人とも寄席ならではのネタで、大いに末広亭客席を沸かせた二席である。もちろん、私も大満足の高座だった。

 あらためて、この寄席大賞を除外した十八席から、悩みに悩んで選んだ十席は・・・ここで、“パンパカパーン”とファンファーレが入るとご想像ください^^・・・次の通り!

本年の「マイベスト十席」の発表である。寸評と該当落語会について書いたブログへのリンクも併せてご紹介。

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入船亭扇辰『徂徠豆腐』
:通ごのみ 扇辰・白酒二人会 日本橋社会教育会館 2月25日2011年2月26日のブログ
→扇辰の、益々円熟しつつある芸を目一杯感じさせた高座。中堅からベテラン勢において、この人の存在は大きくなるばかり。

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柳家小満ん『景清』
:弥生の独り看板 柳家小満ん (雪月花の夕べ) 東京芸術劇場 3月1日2011年3月2日のブログ
→“3.11”直前に味わった素晴らしい独演会での三席を代表する高座として。小朝、喬太郎、扇辰などが慕い尊敬する人。落語家が選ぶ落語家、ということは、プロの中のプロ、と言うことだろう。その“粋”なことも含め、今は希少な“江戸”を感じさせてくれる噺家さん。ぜひ、今後も元気な高座を聞かせていただきたい。

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桂平治『禁酒番屋』
:桂平治独演会 日本橋社会教育会館ホール 4月18日2011年4月18日のブログ
→来年の文治襲名が伊達ではないことを証明した、一門の代表的ネタは、決して下品にならず結構だった。襲名披露興行、一日でもいいから行きたいものだ。

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柳家喬太郎『錦の袈裟』
:桂平治独演会 日本橋社会教育会館ホール 4月18日
→今年は、都合とチケットの入手困難などもあって、この人の高座を聞く機会は少なかった。この会は客演ながら、見事だった。平治とネタ的には“ツク”噺と言えなくもないが、そんなことを微塵も感じさせない喬太郎ならではの高座。来年は、もっとこの人の会に行くつもりだ。

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三遊亭兼好『締め込み』
:シブヤ落語会~兼好 朧月の会~渋谷区 大和田伝承ホール 4月27日2011年4月28日のブログ
→この手の滑稽噺では比類のない芸を見せつける。あの一門では首一つ、いや二つ分は抜きん出ていると思う。本人は意図的に滑稽噺に傾斜しているようだが、今後はぜひこの人の人情噺も聞きたいものだ。

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桃月庵白酒『化け物使い』
:第七回 大手町落語会 日経ホール 6月11日2011年6月11日のブログ
→今が、まさしく“旬”と言えるだろう。古今亭のお家芸のみならず、さまざまなネタにも挑戦し、それぞれ高いレベルに仕上げている力量は、三三との「三白時代」到来を予感させる。一人の噺家の重複を許すならその全てがベストテンに入りそうな高座だった。

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柳家三三 『嶋鵆沖白浪』第四夜の弐*『島抜け』(仮称)
:柳家三三 嶋鵆沖白浪 第四夜 横浜にぎわい座 8月5日2011年8月5日のブログ
→独立した『島抜け』としても演じて欲しいし、それだけのネタに磨かれていると思う。さまざまな分野への挑戦をしているが、この噺の通し口演は、毎年期待したい。現在、東京の落語界のトップ近くを間違いなく走っている人である。小説などとのコラボレーションも結構だが、まだ彼には埋もれた噺の発掘などにも期待したい。

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五街道雲助『お初徳兵衛浮名桟橋』
:第37回 人形町らくだ亭 それぞれの徳兵衛 日本橋劇場 8月22日2011年8月23日のブログ →先代馬生門下の底力のようなものを見せてくれた高座。師匠が大師匠志ん生のサゲを変えて、あくまでお初を上品かつ艶っぽく演じた芸を継承している。近松門左衛門の『曽根崎心中』を下敷きにした、本来それほど起伏のない噺に、油屋というバイプレーヤーを巧みに配置するなど、師匠の芸にオリジナルの工夫も加え、十分に見ごたえのある高座に仕立てた。

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瀧川鯉昇『質屋庫』
:通ごのみ 鯉昇ひとり会 日本橋社会教育会館ホール 9月2日2011年9月2日のブログ
→東京の噺家さんの中で、権太楼とともに、“枝雀”への熱い想いを感じる人。そして、このネタは、その想いを背景に、この人ならではの演出で、噺の長さを感じさせない、多くのツボを押さえた高座を堪能した。やはり、この人は侮れない(?)。

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古今亭志ん輔 『幾代餅』
:志ん輔三夜 第三夜 国立演芸場 11月15日2011年11月15日のブログ
→本人曰く、“師匠没後十年にして、その呪縛から解放”されたと言える、一皮むけた印象の高座。肩の力がほどよくとれた志ん輔に、今後のさらなる可能性を期待させた。そして、ブログでの日々の葛藤は、今後も引き続き読ませていただきたい。加えて三代目との会は、来年も期待しているよ!

 
 あ~っ、何とか、今年もマイベスト十席をご紹介することができた。選考からはずれた高座も、決して見劣りするものではなく、ある意味では私の思い入れの、ちょっとした差の問題である。

 来年は、東日本大震災とフクシマを経験した日本の復興の年になることを強く期待したい。

 また、このブログにご訪問いただいた皆様にとって、来年が良い年でありますようお祈り申し上げます。
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by kogotokoubei | 2011-12-29 19:48 | 落語会 | Comments(6)
さて、いろいろあった今年も、恒例(?)のマイベスト十席を選ぶ時期となった。
 明日まとめて書こうと思っていたが、今年の候補作を振り返っていたら、とんでもない分量になりそうなので、まず「その壱」として書くことにした。それは、明後日(30日)からミミー、ユウと一緒に旅行と里帰り(連れ合いの実家へ)の予定のため、明日29日までに書く必要があったことも、理由の一つである。

 今年行った落語会と寄席の数は、昨夜日付変更線を越えて帰宅した末広亭を含め、偶然にも昨年と同数で、赤穂浪士の討ち入りみたいな数の四十七。定席寄席は、末広亭ばかり初席を含め六回。結果として、末広亭で始まり、末広亭で締めとなった一年。
 後で探しやすいように候補を朱書きしていた効果もあり、リスト化は結構楽ではあった。しかし、選ぶのは大変だ。
*「大変だったら、やめりゃあいいのに」、という“ツッコミ”を聞き流して、ブログは続く・・・・・・。
 
 選考作業の前に、“別格”扱いの二席。「ますますお元気で賞」ということでご紹介。

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桂小金治『渋酒』、および、あのサプライズ発言。
:桂文我 極彩色高座賑 第五幕-其の二- 国立演芸場 9月29日2011年9月30日のブログ
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桂春団治『お玉牛』
:第七回 落語 東へ西へ 赤坂区民ホール 12月21日2011年12月22日のブログ

 昨年もこのお二人の高座を別格としたが、やはり今年もお二人は、私ごときがランキングの対象などにするのはおこがましく、その場に居合わせただけで幸せ、という特別の高座だった。
 小金治さん(落語家として真打ちになられる前に映画界に転出されたので、残念ながら“師匠”とは呼べない)の、あのサプライズ発言には、座布団に座ったままの文我も、会場の我々も一瞬“絶句”だった。
その後どのように過ごされているか分からないが、高座に上がらなくても、元気な姿に、また是非お会いしたいものだ。
 三代目の『お玉牛』には、本当に感心し、爆笑し、圧倒された。お玉ちゃんも可愛いんだ、三代目が演じると。あの高座こそが、「名人芸」なのだと痛感した珠玉の時間だった。来年も、ぜひこの会には行きたい。

 さて、別格二席を棚に祭って(?)、他の候補を並べてみる。六月までの「上期」と七月以降の「下期」では、二十一と十八で、ほぼ同数。その顔ぶれは次の通り。
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<上期(1月~6月)>
(1)瀧川鯉昇『二番煎じ』
:睦会 ~扇遊・鯉昇・喜多八 三人会~ 横浜にぎわい座 1月11日

(2)三遊亭兼好『蛙茶番』
(3)桂かい枝『天王寺詣り』
:西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月14日

(4)入船亭扇辰『明烏』
:如月の三枚看板 喬太郎・文左衛門・扇辰 銀座ブロッサム 2月16日

(5)桃月庵白酒『火焔太鼓』
:桃月庵白酒独演会 県民ホール寄席 神奈川県民ホール(小ホール) 2月23日

(6)入船亭扇辰『徂徠豆腐』
(7)白酒『幾代餅』
:通ごのみ 扇辰・白酒二人会 日本橋社会教育会館 2月25日

(8)柳家小満ん『盃の殿様』
(9)小満ん『夢金』
(10)小満ん『景清』
:弥生の独り看板 柳家小満ん (雪月花の夕べ) 東京芸術劇場 3月1日

(11)柳家花緑『蜘蛛駕籠』
:第六回 大手町落語会 日経ホール 4月9日

(12)桂平治『禁酒番屋』
(13)柳家喬太郎『錦の袈裟』
:桂平治独演会 日本橋社会教育会館ホール 4月18日

(14)三遊亭兼好『締め込み』
(15)瀧川鯉昇『時そば』
:シブヤ落語会~兼好 朧月の会~渋谷区 大和田伝承ホール 4月27日

(16)古今亭志ん輔『幾代餅』
:国立演芸場  五月中席 5月14日

(17)春風亭一之輔『粗忽の釘』
:第3回 ハマのすけえん 横浜にぎわい座(のげシャーレ) 5月20日

(18)柳家小満ん『花見小僧』
:第36回 人形町らくだ亭 通し口演『おせつ徳三郎』 日本橋劇場 6月8日

(19)桃月庵白酒『化け物使い』
(20)柳家権太楼『青菜』
:第七回 大手町落語会 日経ホール 6月11日

(21)柳家小三治『馬の田楽』
:新宿末広亭 6月下席 夜の部 6月23日

<下期(7月~12月)>
(22)柳家三三 『嶋鵆沖白浪』第三夜の壱
(23)柳家三三 『嶋鵆沖白浪』第三夜の弐
:柳家三三 嶋鵆沖白浪 第三夜 横浜にぎわい座 7月7日

(24)柳家三三 『嶋鵆沖白浪』第四夜の弐
:柳家三三 嶋鵆沖白浪 第四夜 横浜にぎわい座 8月5日

(25)桃月庵白酒『千両みかん』
:白酒ばなし 横浜にぎわい座 8月9日

(26)五街道雲助『お初徳兵衛浮名桟橋』
(27)古今亭志ん輔『船徳』
:第37回 人形町らくだ亭 それぞれの徳兵衛 日本橋劇場 8月22日

(28)瀧川鯉昇『質屋庫』
:通ごのみ 鯉昇ひとり会 日本橋社会教育会館ホール 9月2日

(29)古今亭志ん丸『鰻の幇間』
:あさひ亭まねき寄席 三三・志ん丸 サンハートホール 9月24日

(30)桂文我『宿屋仇』
:桂文我 極彩色高座賑 第五幕-其の二- 国立演芸場 9月29日
*桂小金治『渋酒』とハプニング

(31)入船亭扇辰『三井の大黒』
:ざま昼席落語会 扇辰・菊志ん ハーモニーホール座間 10月8日

(32)柳家三三  『三枚起請』
:柳の家三人会 グリーンホール相模大野 10月29日

(33)立川談春 『庖丁』
:新文芸坐落語会 看板と若手たち③ 11月2日

(34)柳家喜多八 『長屋の算術』
:喜多八膝栗毛 秋之声 博品館劇場 11月7日

(35)古今亭志ん輔 『幾代餅』
:志ん輔三夜 第三夜 国立演芸場 11月15日

(36)桃月庵白酒 『転宅』
:紀伊國屋寄席 紀伊國屋ホール 11月21日

(37)柳家権太楼 『笠碁』
:ちがさき寄席 茅ケ崎市民文化会館 11月23日

(38)桃月庵白酒『景清』
:第24回 白酒ひとり 国立演芸場 12月12日

(39)柳家さん喬『棒鱈』
:新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月27日
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 眺めているだけで、それぞれの会のことを思い出し、結構時間がたつのを忘れてしまうが、そんな呑気なことは言ってられないなぁ。嬉しい苦労(?)が、これから始まる。


 一人の噺家からは一席に絞る、という自ら決めたルールに基づき、まず複数リストアップされた人の高座を一つに絞る。
 複数の高座がリストアップされたのは、小満ん、権太楼、志ん輔、鯉昇、扇辰、白酒、三三そして兼好の八名。それぞれの噺家さんのノミネート(?)は次の通り。

小満んは次のような内容。(同じ会から三席というのも珍しい。しかし、すべて良かったんだよ、本当に。)
①『盃の殿様』
②『夢金』
『景清』
:弥生の独り看板 柳家小満ん (雪月花の夕べ) 東京芸術劇場 3月1日
④『花見小僧』:第36回 人形町らくだ亭 通し口演『おせつ徳三郎』 日本橋劇場 6月8日
 この中では、震災前、あの3月1日の素晴らしい会のトリネタである『景清』を選びたい。所要時間は20分余りだったが、最初の師匠であった文楽譲りの見事な高座を思い出す。

権太楼は次の二席。
①『青菜』:第七回 大手町落語会 日経ホール 6月11日
『笠碁』:ちがさき寄席 茅ケ崎市民文化会館 11月23日
 迷わず、まだ記憶も新しい『笠碁』を選択。当初3月12日に予定されていた会の仕切り直しだったが、権太楼ワールドは健在だった。地域落語会での権ちゃんは凄いのだ。

志ん輔は次の三つの高座。
①『幾代餅』:国立演芸場 五月中席 5月14日
②『船徳』:第37回 人形町らくだ亭 それぞれの徳兵衛 日本橋劇場 8月22日
『幾代餅』:志ん輔三夜 第三夜 国立演芸場 11月15日
 三夜”の『幾代餅』を選びたい。師匠没後十年の節目に、その“呪縛”から解放された思いでの落語企画の千秋楽の高座には、肩の力が抜けた新たな志ん輔の姿を見た。

鯉昇は次の三席。
①『二番煎じ』:睦会 ~扇遊・鯉昇・喜多八 三人会~ 横浜にぎわい座 1月11日
②『時そば』:シブヤ落語会~兼好 朧月の会~渋谷区 大和田伝承ホール 4月27日
『質屋庫』:通ごのみ 鯉昇ひとり会 日本橋社会教育会館ホール 9月2日
 悩ましいが、『質屋庫』を選ぶ。東京の噺家さんではこの人と権太楼でしか聞いたことがないが、二人とも枝雀への思い入れを感じる。この日の鯉昇の高座は、あくまで彼のネタとして存在感があった。

扇辰は次の三席。
①『明烏』:如月の三枚看板 喬太郎・文左衛門・扇辰 銀座ブロッサム 2月16日
『徂徠豆腐』:通ごのみ 扇辰・白酒二人会 日本橋社会教育会館 2月25日
③『三井の大黒』:ざま昼席落語会 扇辰・菊志ん ハーモニーホール座間 10月8日
 『徂徠豆腐』が秀逸だった。ブログにも書いたが、このネタに関しては、やや演出過剰な志の輔よりも、私はこの人を買う。あの冷奴を食べる仕草を思い出すなぁ。

白酒は次の六席。
①『火焔太鼓』:独演会 県民ホール寄席 神奈川県民ホール(小ホール) 2月23日
②『幾代餅』:通ごのみ 扇辰・白酒二人会 日本橋社会教育会館 2月25日
『化物使い』:第七回 大手町落語会 日経ホール 6月11日
④『千両みかん』:白酒ばなし 横浜にぎわい座 8月9日
⑤『転宅』:紀伊國屋寄席 紀伊國屋ホール 11月21日
⑥『景清』:第24回 白酒ひとり 国立演芸場 12月12日
 数では最多ノミネート。それだけ白酒の落語会に行っている、ということも言えるのだが、ハズレが少ないとも言ってよいだろう。
 これは迷う。それぞれの高座が、それぞれに味わいがあって、良いのだ。
 横浜の熟練落語愛好家であふれる会場を沸かせた『火焔太鼓』か、古今亭のお家芸を大爆笑ネタにした『幾代餅』か、それとも、人使いの荒い隠居と使用人の杢助、隠居と化け物達とのやりとりが見事だった『化け物使い』、はたまた先日聞いたばかりの驚きの『景清』・・・・・・。
 悩みに悩んだ挙句、『化け物使い』を選ぶ。これこそ落語の世界、という噺そのものの魅力を十分に引き出した高座だった。当日のプログラムのことなどを巧みにアドリブで挟んだ、この人のセンスの良さも含めた選択である。

三三は、次のような内容がリストに上がった。
①『嶋鵆沖白浪』第三夜の壱
②『嶋鵆沖白浪』第三夜の弐
:嶋鵆沖白浪 第三夜 横浜にぎわい座 7月7日
『嶋鵆沖白浪』第四夜の弐
:嶋鵆沖白浪 第四夜 横浜にぎわい座 8月5日
④『三枚起請』:柳の家三人会 グリーンホール相模大野 10月29日
 もちろん『嶋鵆沖白浪』の中から選ぶことになるのだが、7月の第三夜も良かったが、あの部分には『大坂屋花鳥』として参考にすべき馬生の音源などもある。
 そういった意味では、三三が新たに作りあげた第四夜の後半(『島抜け』と題しても良いだろう)を選ぶ。貴重なバイプレーヤー役の玄若の登場や、「船幽霊」が登場する場面の太鼓と三味線の鳴り物入りで怪談じみた演出などが、高座を立体的にさせていたし、ぜひ、この部分だけでも一席の高座として今後かけて欲しいという期待を含込めた選択。

兼好は次の二席。
①『蛙茶番』:西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月14日
『締め込み』:シブヤ落語会~兼好 朧月の会~渋谷区 大和田伝承ホール 4月27日
 迷わず『締め込み』を選択。泥棒が可笑しかったこと。マクラも含め会場を大いに沸かせた。この人の滑稽噺の冴えは凄いものがある。しかし、来年は人情噺の大ネタにも挑戦して欲しい。
 
 複数の高座がリストアップされた八名について各一席(二十七席を八席に)絞ったわけだが、あらためて、マイベスト十席の候補を時系列に並べてみる。ちょうど二十席、ということになった。
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(1)桂かい枝『天王寺詣り』
:西のかい枝・東の兼好 横浜にぎわい座 2月14日

(2)入船亭扇辰『徂徠豆腐』
:通ごのみ 扇辰・白酒二人会 日本橋社会教育会館 2月25日

(3)柳家小満ん『景清』
:弥生の独り看板 柳家小満ん (雪月花の夕べ) 東京芸術劇場 3月1日

(4)柳家花緑『蜘蛛駕籠』
:第六回 大手町落語会 日経ホール 4月9日

(5)桂平治『禁酒番屋』
(6)柳家喬太郎『錦の袈裟』
:桂平治独演会 日本橋社会教育会館ホール 4月18日

(7)三遊亭兼好『締め込み』
:シブヤ落語会~兼好 朧月の会~渋谷区 大和田伝承ホール 4月27日

(8)春風亭一之輔『粗忽の釘』
:第3回 ハマのすけえん 横浜にぎわい座(のげシャーレ) 5月20日

(9)桃月庵白酒『化物使い』
:第七回 大手町落語会 日経ホール 6月11日

(10)柳家小三治『馬の田楽』
:新宿末広亭 6月下席 夜の部 6月23日

(11)柳家三三 『嶋鵆沖白浪』第四夜の弐
:柳家三三 嶋鵆沖白浪 第四夜 横浜にぎわい座 8月5日

(12)桂文我『宿屋仇』
:桂文我 極彩色高座賑 第五幕-其の二- 国立演芸場 9月29日

(13)五街道雲助『お初徳兵衛浮名桟橋』
:第37回 人形町らくだ亭 それぞれの徳兵衛 日本橋劇場 8月22日

(14)瀧川鯉昇『質屋庫』
:通ごのみ 鯉昇ひとり会 日本橋社会教育会館ホール 9月2日

(15)古今亭志ん丸『鰻の幇間』
:あさひ亭まねき寄席 三三・志ん丸 サンハートホール 9月24日

(16)立川談春 『庖丁』
:新文芸坐落語会 看板と若手たち③ 11月2日

(17)柳家喜多八 『長屋の算術』
:喜多八膝栗毛 秋之声 博品館劇場 11月7日

(18)古今亭志ん輔 『幾代餅』
:志ん輔三夜 第三夜 国立演芸場 11月15日

(19)柳家権太楼 『笠碁』
:ちがさき寄席 茅ケ崎市民文化会館 11月23日

(20)柳家さん喬『棒鱈』
:新宿末広亭 12月下席 夜の部 12月27日
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 さて、この二十席を、半分の十席に絞るわけだ・・・・・・。まるで他人事のように言っているが、誰あろう、小言幸兵衛、私が決めなくはならない。

 この続きは、明日(29日)ということで、本日はお開き。*ここからも苦闘は続くのである。
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by kogotokoubei | 2011-12-28 19:57 | 落語会 | Comments(4)
先代馬生門下で、まだ一度も聞いていない、むかし家今松。落語ブログ仲間のYさんは、今松主任の末広亭師走下席の夜の部を年末恒例としているとのことで、初めてご一緒した次第。都内での仕事を終えて駆けつけた時は、紫文の途中。YさんとYさんの中学・高校の同級生のご友人と三名で桟敷に落ち着き、左龍から聞き始めた。椅子席は九分程度の入り。

演者とネタ、所要時間、ならびに感想は次の通り。

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 柳亭左龍『初天神』 (15分)
 途中入場だったが幸先良し、だった。吉窓の代演。この人の“強み”である個性的な顔と目を十分に活かした、出色の高座だった。金坊がねだる食べ物に「みかん」「りんご」を加えたのは、自分の工夫なのかどうか分からないが、違和感がなかった。そして、「みかん、みかん・・・」「りんご、りんご、・・・」「飴、飴、・・・」とリフレインしながらわめくのをやめてからが秀逸。だんだん目はすわってきて、大声を出して叫ぶ助走の“間”が結構。この人のこのネタは初だったが、こういう演出なら十八番になり得ると感心した高座。

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 古今亭菊龍『ちしゃ医者』 (13分)
 初である。後で調べたら昭和48年入門の円菊の総領弟子のようだ。入門も真打昇進も志ん弥の一年先輩。一見、志ん橋に似ているように思ったが、よく見ると頭以外」(?)は似ていず、志ん橋よりも明るい雰囲気。
 落語協会のプロフィール覧に、このネタを得意としていると記載されているが、上方の噺を十八番に加えているのは、なぜかうれしい。主人が病気で駆けつけた使用人と医者とのやりとりなどで枝雀のように弾けるようなことはなかったが、ネタ選びの点で評価した。実は、主任の今松と同門の古今亭からの出演は、この人と左橋の二人。他は柳家のベテランで固めていた。今松という人を知るヒントなのか、はたまた席亭の好みなのか・・・・・・。

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 松旭斉美智・美登 奇術 (14分)
 いつもながら巧みな話芸で客席を巻き込む熟練の芸。程よい艶っぽさも含め、寄席の彩りとして貴重な存在だ。

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 初音家左橋『壷算』 (15分)
 初である。同じ先代馬生門下からの助演と言うことではこの人のみ。名前は知っていて、若い時には受賞歴も多く、楽しみだったのだが・・・・・・体調が悪かったのか、これが実力なのか、噛みながら言いよどみながらの高座は、あまり褒められない。ネタそのものでも笑いが取れるはずなのに、リズムが悪く、客席も笑うに笑えない、そんな印象。

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 柳家さん喬『棒鱈』 (18分)
 「ねぇ~、寅さん」の一言で、「やった!」と小躍りしたのが、Yさんと私のみならず会場に数多くいたはず。この人、この季節、やはりこのネタでしょう。「赤べろべろの醤油づけ」ですぜ^^
 ずいぶん前のことだが、長井好弘さんの『新宿末広亭のネタ帳』という本を紹介したことがある。2009年7月16日のブログ
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長井好弘_新宿末広亭のネタ帳
 この本は、2001年から2007年までの七年間の末広亭のネタ帳を全て調べて統計をとった上で、どんなネタが多く演じられているか、あるいはあまり演じられていないネタは何か、そしてよく出演している噺家さんは誰か、といった切り口でランキングを紹介しており、それらの統計を元にした噺家さん達との楽しい対談で構成された好著。
 以前にも引用した長井さんとさん喬の対談を再び紹介したい。実は、さん喬の十八番とも言える『棒鱈』は、ここ数年、あまり高座にかけていないネタでもあるのだ。

−そういえば、師匠お得意の滑稽噺、「棒鱈」だとか「片棒」は、ネタ一覧で見るかぎり、そんなに多くやってないですね。
さん喬 ・・・・・・そうです。一時はどこへ行ってもかけていたんですけど。
    でも、最近は、ちょっと息切れ状態かなあ。お客さんも変わってるん
    だから、噺も動かなきゃいけない。あれこれ棚卸しをしているうちに、
    ついやらなくなっちゃったんですねえ。「棒鱈」も「片棒」も、まだ
    まだ改良の余地があると思うんだけど。

 
 ブログを書く前に聞いて以来ずいぶん久しぶりなので、“改良”の度合いを指摘するのが難しいのだが、間違いなく超一級のさん喬の十八番であった。本年最後の寄席でこのネタに出会えただけでも、十分に価値があった。もちろん、今年のマイベスト十席候補としたい。

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 桂才賀『台東区の老人たち』 (13分)
 仲入り後のクイツキは、順番が入れ替わりこの人。そして、いつものネタ。会場で初めて聞くと思しきお客さんを沸かせる。ここまでくれば、立派なネタであり、芸であろう。以前に釈台を前に椅子に座っての高座に出会ったことがあるので、志ん朝門下のベテランの元気な姿を見れただけでも、私はうれしい。

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 ロケット団 漫才 (10分)
 メモを見るとたった10分。しかし、定番の四文字熟語から始まった彼らの芸は、やはり良い。特に先日亡くなった金○○ネタは爆笑だった。テレビでは出来ないネタにこそ、寄席の漫才の素晴らしさがあるのだ^^

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 柳家〆治『尻餅』 (13分)
 初である。地味な噺家さんだなぁ、という印象。八代目三笑亭可楽の音源をしばしば楽しむ懐かしい(?)ネタ。ネタ選びは“旬”でもあり、結構でした。

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 柳家小里ん『二人旅』 (11分)
 小さん一門の奥深さ(?)を物語る噺家さんで、私は好きだ。また、ネタも一門の十八番であり、前半の“トンデモ”都都逸から、後半の茶屋のお婆さんの、何ともゆるゆるしたキャラクターから醸し出される笑いも結構だった。酒の銘柄が、「村さめ」、「庭さめ」、「じきさめ」と答えるお婆さん、いいなぁ。こういう人が仲入り後に控えていると、寄席は引き締まる。

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 鏡味仙三郎社中 大神楽 (13分)
 寄席の「吉右衛門」健在!いいなぁ、この人達の芸。仙花ちゃんが、最初に傘の芸をしている時の、あの真剣な眼差しが、結構好きだ。以前に升を落とした時の泣きそうな表情なども思い出すので、見ている方も無事演技を終えると、ホッとする。また、仙三郎師匠の芸に解説的に挟む言葉のあどけなさが、なかなかよろしい。頑張れ、仙花ちゃん!

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 むかし家今松『風の神送り』 (30分)
 どう言えばいいのだろう、この人の高座。噺そのものは米朝の音源を知っているが、とても同じネタとは思えなかった。もちろん、演出の違いがあるのは当然なのだが、とにかく気負いがない、と言うか淡白と言うか、不思議な噺家さんとしか、今は言えない。淡々とした高座、とも言える。“癒し系”といえなくもない。
 ともかく、普段の会話のような高座で、良し悪しは別として、起伏が少ないのだ。例えば、このネタの前半の奉加帳を持って若い衆が町内を回る場面。尾張屋、相模屋、医者、そして渋ちんの伊勢屋と寄付を募るのだが、若い衆と相手との会話を、決して無理に可笑しく盛り上げようとはしない。後半の「風の神」に見立てた人形を川に捨てに行く場面、それを投網で救う釣り人、その全体の芸において、その感情の触れ幅が実にフラットなのだ。


 終演後は本年締めの「居残り会」。今松の話題でYさんが「年に一回は、聞きたくなる」という言葉が、なんとなく、分かる。きっと、つかまえにくい噺家さんなので、また聞きたくなる、ということなのではなかろうか。また、若手中心に演技過剰な高座も多いなか、力まないで、自然体で疲れなく聞ける噺家さん、と言う評価もできそうだ。そんな魅力を感じる特定の固定客がいる人なのだと思う。かく言う私も、またこの人の高座を聞きたくなった。それが、一年後かどうかは今のところ分からないが、とにかく個性的なことは間違いない。
 9時過ぎに始まった宴である、今年一年のアレやコレを振り返っているうち盃を重ね、帰宅は、もちろん(?)日付変更線を超えたのだった。
  本年の落語会・寄席の数は、偶然にも昨年と同数の四十七。結果として、末広亭に始まり末広亭でお開きとなった。さぁ、この後は、マイベスト十席選びが待っている。我ながら楽しみではあるが、難航必至!
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by kogotokoubei | 2011-12-28 08:38 | 落語会 | Comments(6)
昨夜のフィギュアスケート全日本選手権女子フリーのテレビ放送の視聴率は、良かったらしい。実は、私でさえ『坂の上の雲』最終回を録画しておいて見た位だ・・・・・・。それは、今まで知らなかった中学生などの若手選手を知ることも理由の一つだったし、確かに、村上、浅尾、鈴木他の上位陣の戦いにも興味はあった。

 浅田真央の「母に捧げる金メダル!」という決着は、放送したフジテレビにとっても、お涙ちょうだい“浪花節”大好きの日本人にとっても、ひじょうに心地よい“サゲ”だったのかもしれない。

 しかし、私はフジテレビの放送のあり方に小言を言いたい。

 浅田真央の得点結果の後、すでに次の今井遥の演技がスタートしているのにもかかわらず、テレビ画面は浅田のインタビューを映し続けていた。ここで、「えっ、今井が始まっているよ?!」と素朴な疑問を感じた人も多かったのではなかろうか。

 もちろん、放送そのものがリアルタイムではなく録画の再構成なのだろうし、今井の演技も後から放送はされた。しかし、それでいいのか?

 今井の演技を“擬似的”なリアルタイム感覚とは言え、浅田の演技の後で見たかった人だって多いはずだ。少なくとも私は見たかった。それは、特段彼女のファンということではなく、最後の三名の演技を、リアルタイムに近い臨場感を味わって見たかった、ということ。そして、今井を応援していた方々でテレビにかじりついていた人達なら、「さぁ、次だ!」、と力も入ったはず。しかし、「あれっ、なんで浅田のインタビューなの?」ということだろう。これこそ“肩すかし”である。
 そのインタビューだって、アナウンサーが何とか浅田を泣かせようとするのだが、そんなヤワな真央でもない。妙にギクシャクしたインタビューの背後には、今井の演技の音楽が聞こえていた。

 当たり前だが、オリンピックなどで日本選手中心の放送をするのと、日本国内での大会で特定の個人中心に放送するのとは、まったく違うものである。母親が亡くなったばかり、という特殊な状況にいる人気者を主役にしたい意図はミエミエだが、「全日本」と冠されたスポーツイベントの放送において、昨夜のように放送することは、許されてはならないのではないか。

 私はフィギュアスケートのことは良く分からないが、一応、体育会系サークルでスポーツをしてきた人間である。「一日休むと、その遅れを取り戻すのに二日かかる」と教えられてきた。実際、あるレベルの技術や能力を維持するには、この格言は妥当だと思っている。そういう意味では、理由はともかく、練習不足の浅田に他の選手が勝てなかった、低調な大会と私は見た。そして、フジテレビの演出の露骨な“不公平”さに、興醒めしていた。
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by kogotokoubei | 2011-12-26 11:47 | 幸兵衛の独り言 | Comments(2)
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 クリスマスということで(?)、我が家のシーズーが特別出演。

 左がミミー(Mimy)、女の子で二歳半、右はユウ(You)、男の子で一歳と三ヵ月。ややスリムな二人ですが、元気一杯、やんちゃし放題です。

 普段は落語のことや様々なことに偉そうな物言いをしている私ですが、この二人(二匹、ではありません!)の前では、もう駄目^^
 
 昨日から伊豆のペンションに一緒に泊まってきて帰ったばかり。たまには、この二人のこともブログで紹介しようかということで・・・・・・酔狂をお許しのほどを!
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by kogotokoubei | 2011-12-24 20:29 | 幸兵衛の独り言 | Comments(4)
 昨年の第六回は、渋谷で土曜日の開催(2010年12月11日のブログ)だったが、また元の赤坂に戻って平日の開催。400席程の会場の入りは八割程度だろうか。落語研究会などど重なっているし、開演時間が早いせもあるのかもしれない。この会場は昨年の8月以来、久しぶりである。

次のような構成だった。
-----------------------------------
(開口一番 古今亭半輔 『たらちね』)
古今亭朝太   『あくび指南』
ホンキートンク  漫才
古今亭志ん輔  『明烏』
(仲入り)
内海英華    女道楽
桂春団治    『お玉牛』
-----------------------------------

古今亭半輔『たらちね』 (18:00-18:15)
ずいぶん上手くなったと思う。また、師匠にどんどん似てきた。大家が八五郎に嫁を世話すると言う前段で、あえて「実はうちの婆さんがお前を好きでねぇ」という言葉を挟み、「えっ、婆さんはいらねえ!」という会話も結構笑えた。「たまごの会」を含む精進で成長していることが分かる高座。今後も楽しみだ。

古今亭朝太『あくび指南』 (18:16-18:37)
これまでは、何か落ち着きのない高座が少なくなかったのだが、今回はなかなか堂々としたものだった。来年秋の真打ち昇進が良い方向に作用しているのだろう。途中で「湯屋のあくび」を挟んだが、これは初めて聞く。「うなって、都都逸、最後は念仏」というなかなか難しい“あくび”なので、やはり“夏のあくび”の稽古となる。「おい船頭さん」以降の調子の良い軽いリズムの語り口が、この人の若さに似合って好ましい。煙草(高級煙草の水戸産の「水府」の名も登場)を素材としたクスグリは、小三治(そして喜多八、三三)も挟むが、少し演出が違う。と言うか、全体のリズム、スピードが違う。どちらかと言うと小三治版が“スローバラード”のリズムなら、朝太はアップテンポのジャムセッション、という感じ。(つい、前回の内容を引きずってジャズで喩えてしまった^^)これまた良し、である。

ホンキートンク『漫才』 (18:38-18:54)
寄席の雰囲気を醸し出すための人選だと思うが、最初はちょっと会場と温度差はあった。しかし、出身地のネタになり、客席から左側の弾(DAN)が「愛知出身の人」と会場に声をかけ、元気に手のあがった前の方のお客さんに助けられるなどして、次第にいつものペースに。私はこの二人、嫌いではない。

古今亭志ん輔『明烏』 (18:55-19:40)
 震災復興ハガキのことをマクラで宣伝していたが、その効果はてきめん(?)で、仲入りで私が買いに言ったらすでに売り切れだった。奥さんと志ん輔の二人で、「もっと用意したら良かった」と言いながらも笑っていた姿が、微笑ましかったなぁ。
 さて本編。前半は何とも言えずリズムに乗り切れない感じ。堅物の息子時次郎を父の日向屋半兵衛が叱る場面なども、何かぎこちない。この人独特の“間”の効果ではなく、少しリズムが狂って言葉を探し探ししながら進んだような、そんな印象。
 しかし、源兵衛と太助が登場したあたりから、だんだん好転してきた。二人の会話でどちらが源兵衛で、どちらが太助かを分かるように工夫して会話していたように思う。実はこの噺を聞くと、ほぼ必ず途中から“喉にひっかかった小骨”のように、「どっちが源兵衛だったっけぇ?」という疑問が沸くのだ。そういった、高座を楽しむ上で邪魔になる、いわば“ノイズ”を減らしてくれた。結構、意識してそうしていたのではなかろうか。そして、ついそんな思いで聞いていたものだから、お茶屋の女将が、「あ~ら、源兵衛さんお久しぶりじゃありませんか」と言った科白に、“おっ、この演出はオリジナルか?!”と喜んで、終演後の「居残り会」でも自説を披露したのだが、残念。帰りの電車で志ん朝の音源を聞いたら、女将が「源兵衛さん」と、しっかり言っている・・・・・・。
 それはともかく、主役は三代目、という遠慮などもあるように思えた前半に比べ、後半の高座には、師匠の呪縛から解放された、新生志ん輔版『明烏』の片鱗を見たように思う。時次郎が駄々を捏ねる場面や翌朝の源兵衛と太助とのグチ噺も、工夫が見られた。「成績」の悪かった二人の会話で、。兵衛が、文楽なら有名な“甘納豆”のところを、お茶に“小梅”とする。ちなみに師匠志ん朝は砂糖まぶしの“梅干”である。三つも食べてはタネを太助めがけて吹き飛ばすのだが、この人の強みである顔の表情による演技が生きていて、サゲに向かう前の楽しいアクセントになっていた。
 前半のもたつきさえなければ、今年のマイベスト十席候補にしていたのだが。しかし、今後に大いに期待させた高座であった。

内海英華『女道楽』 (19:52-20:12)
 いいんだなぁ、この人。まず出囃子「老松」での登場から「おっ!」と思わせる。恩田えりちゃんにお願いしたようだが、会場の多くの志ん朝ファンは喜んだと思う。途中に挟む話でも、「大阪で志ん朝師匠が『明烏』を演じた後、『英華ちゃんは、大阪のお巫女頭だね!』と言ってくれました」、という言葉で、私は熱いものがこみ上げてきた。
 もちろん、その芸も結構なもので、「伊勢音頭」から「さのさ」の本寸法・京都弁版・河内弁版、都都逸と、客がお茶屋で遊ぶ雰囲気を楽しませてくれた。「ぬるい酒でもお前の手からついでくれれば熱くなる」なんて、結構でんなぁ。酒の銚子の色っぽい持ち方と注ぎ方の講義(?)なども良かったが、叶(化膿)姉妹ネタのみ、余計だったかな。

桂春団治『お玉牛』 (20:13-20:32)
 4月27日に腸閉塞で入院し、5月14日に復帰した高座もこのネタだったらしい。また、昨年のNHK新人演芸大賞で桂まん我が、三代目直伝のこの噺で勝負し、その高座は良かったものの、勝負は一之輔に譲ったことを思い出させる。
2010年11月6日のブログ

 昨年の渋谷での会の『代書屋』も楽しかったが、今回のほうがお元気そうにお見受けした。結構前のほうの席だったので、お顔の色合いなども十分に分かったのだが、元気一杯の感じで、うれしかった。志ん輔がマクラで言っていたが、毎年だんだん元気になるような気がする。「百二十歳まで」は無理としても、過去に百歳で現役の落語家は存在したはずなので、頑張っていただきましょう。
 いつものように短いマクラからの本編は、感心と爆笑の連続。
・最初に大勢登場する村の若い衆の名前を並べる、道中言い立て風の楽しくも見事な口調
・アババの茂平が、若い者の憧れであるお玉ちゃんの唾のついた煙管を舐める場面
・夜這い男が、牛と知らずに寝床に忍び込み、牛の尻尾をお玉ちゃんのお下髪げと間違い、
 そのお下げ(尻尾)で頭を叩かれる場面での、扇子を使った見事な芸
・鬢付け油と間違えた○○○の臭いを嗅いだ時の、何とも可笑しな仕草
などなど。
 絶妙と言うか何と言うか、終演後も余韻がしばらく消えない素晴らしい三代目の高座に、ただ感謝である。


 落語会全体としてハズレがまったくなく、十分に満足して、お約束の忘年「居残り会」へ。ある意味でレギュラーと言える、紅一点の美人を含む“よったり”で飲んだお酒の楽しかったこと。もちろん帰宅は日付変更線を超えたのであった。
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by kogotokoubei | 2011-12-22 08:44 | 落語会 | Comments(4)
最近、落語仲間でジャズでも趣味の合うYさんと楽しいお酒を飲んだり、今話題のジャズピアニスト上原ひろみが桂南光のファンで南光もジャズが好きらしいことなどを知って、落語とジャズで何か書こうと思っていた。
 北村英治が八代目三笑亭可楽のファンだったことは結構有名な話。談志はディキシーランドが好きだった。他にもジャズプレーヤーで落語ファンも多いし、志ん朝をはじめ落語家でジャズ好きも多い。

 そこで(何が“そこ”なのか?)、落語家をジャズプレーヤーに、やや強引に譬えててみようと思った次第である。
 実は、昨年3月10日のブログで、『落語を聴くなら 古今亭志ん朝を聴こう』『落語を聴くなら 古今亭志ん朝を聴こう』という本を紹介した時、同書の志の輔の話を引用してから少し発展させて、次のように書いたことがある。
2010年3月10日のブログ

-------------------2010年3月10日のブログから-------------------
立川志の輔の章から、少し長いが引用。

 確か地方の落語会でご一緒した時なんですが、驚いたのは、志ん朝師匠がいらっしゃるだけで、楽屋がパーッと明るくなったこと。
 志ん朝師匠は、おかみさんと楽屋で何ごとか話してたんですけど、居場所が見つからなくてうろうろしていた私にふと気づいて、「ねぇ志の輔さん、お弁当あるからさ、こっちぃ来ておあがんなさいよ」って声をかけて下さった。
「わー、志ん朝師匠がわたしの名前を呼んで下さった」って、もうまるでジャニーズのファンのような気分でした。
 そして、驚いたことに、その声がもう高座そのままだったんです。
 志ん朝師匠は落語の時だけ、ああいう口調になるわけじゃない。
 普段の会話からしてもう、人が心地よいと感じる口調なんです。
 しかも、どんな言葉も落語の台詞に聞こえるんです。
 そういう音、リズム感が体中から出てたんです。
 志ん朝師匠って、やっぱりミュージシャンなんだ、って、その時改めて確信しましたね。
 私の知人で、大の落語ファンのジャズ・ミュージシャンがこんな風にたとえてくれました。
 志ん生支師匠が、チャーリー・パーカー。
 我が師匠の談志は、マイルス・デイヴィス。
 そして、志ん朝師匠はビル・エヴァンスだよ、と。
 ついでに、私のこともたとえてくれたので、言っていいですか?
 本当にいいですか?(笑)
 ハービー・ハンコックですって。うれしいー、ははは。


 ジャズ・ミュージシャンのたとえは、志ん生のバード、談志のマイルスと管楽器できて、なぜ志ん朝でピアノになるの?管で揃えるなら、私なら迷うことなく志ん朝さんはクリフォード・ブラウンだ。たとえば、「チェロキー」のノーブレスのアドリブ・ソロのような、凄くて美しくて心地よいメロディー。マイルスならミュートを使いそうなバラードもオープンで泣かせる技術、まさに志ん朝落語に通じると思う。ビル・エヴァンスねぇ・・・・・・。もしピアノで揃えるとして、志ん生がモンク、談志がキース・ジャレット、そして志ん朝がビル・エヴァンスときて、まぁそれもあるかな、という感じ。金管・木管でたとえるなら、バード、マイルス、そしてブラウニーでしょう。人によっては異論もあるでしょうが、志ん朝さんはブラウニー。
そうそう、これはジャズのブログじゃなかった・・・・・・。そのうち、ジャズと落語についても書こうとは思っている。
-------------------------------引用ここまで-------------------------------

 私のジャズの好みは、1950年代から60年代前半に活躍した木管と金管、要するに“ラッパ”のジャズプレーヤーだが、昨年3月も書いた次の組み合わせは変らない。その“理屈”も簡単に添える。

古今亭志ん生  —  チャーリー・パーカー
:飲む・打つ・買う揃い踏み、奔放さの中の繊細さ、天才肌、など多くの共通点があると思う。後輩が真似しようとしても、そうは簡単にはコピーできない芸、そしてその人生、という点でも似ている気がするなぁ。

立川談志     —  マイルス・デイヴィス
:ある意味で、その“芸の道”の改革者。また、その“芸”の「優れた聴き手」である。加えて、数多くの若手を育てた。なかにはその哲学について行けなくて離れていった者もいる。

古今亭志ん朝  —  クリフォード・ブラウン
:両者とも“毛並み”が良い、と言うことはできると思う。「天才」と言われるが、「努力」の人でもある。志ん朝の流れるような、そして唄うような“語り口”は、アドリブがそのまま計算されたような絶妙なフレージングになるブラウニーと、相通じるものを感じる。

 すでに亡くなった噺家の中から、今日は一人だけ加えたい。

三遊亭円生 — ジョン・コルトレーン
:円生の昭和53年落語協会脱退後の動きは、「ブルートレイン」や「バラッド」のコルトレーンが、あの「至上の愛」にまで行っちゃったのと、何故か相通じるものを感じる。もちろん二人とも紛れもない「名人」なのだが、人物としては他人から誤解の多い“My Way”な人なのも似ているのではなかろうか。

 落語とジャズの両方お好きな方から、「それはない!」というクレームの声も聞こえなくはないが、あくまで“酔狂”としてお笑いのほどを。また、そのうち続編を書くつもり。本日はこれでお開きということで。
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by kogotokoubei | 2011-12-20 17:46 | 幸兵衛の独り言 | Comments(6)
気にはなっていたがなかなか縁がなく、たまに都合が良い時も、あっと言う間に売り切れになっていた会に、ようやく行くことができた。会場前には「満員御礼」の看板。初めて見るような気がする。

構成は次の通り。白酒の三席はすべて私には初モノである。
-------------------------------
(開口一番 林家扇 『牛ほめ』)
桃月庵白酒 『四段目』
桃月庵白酒 『景清』
(仲入り)
桃月庵白酒 『富久』
-------------------------------

林家扇『牛ほめ』 (18:50-19:02)
何度か聞いているが、これだけ会場からクスッとも笑いのない高座も珍しい。落語協会のプロフィールにある自己PRには“明るく元気”という言葉があるが・・・・・・。

桃月庵白酒『四段目』 (19:03-19:33)
 マクラで、師匠雲助と、ある落語家との二人会での楽屋仕事の失敗談ネタが可笑しかった。ある落語家の高座中によだれ垂れ流し状態で“熟睡”してしまい、つい仲入り用のテープのボタンを押すのを忘れたらしい。その御仁、雲助に向かって「おたくの若いのが・・・・・・」とクレーム。それについて、「ついつまんなくて」と言った後で、「眠れるというのは、悪口じゃない。もっとひどいと眠れない」などとフォローはしていたが・・・これ以上はこのネタについて書かないほうがいいだろう。他のブロガーの方が暴露するかもしれませんが。白酒も「書かないで」とは言っていないし、もしかして書いて欲しいのかなぁ。でも、私はやめておこう。
 談志のことがニュースになり、落語を知らない人も彼らの贔屓のお笑い芸人が追悼の言葉をテレビで語るのを見たせいか、勘違いした落語入門志願者が増えている、というネタもあった。白酒を池袋がハネるのを待ち構えていた、挙動不審の人物がいて、横浜(にぎわい座)へ急いでいたことあって振り切ったが、同じ男があちこちに出没していた、とのネタは、ネタなのか事実なのか不明だが、あり得るかもしれない。しかし、「三十歳超えているから、落語協会ではダメです」とのこと。そうなんだ、協会には年齢制限があったのだと、初めて知った。
 さて本編。この人では初なのだが、意外と言っては白酒に失礼だが、結構歌舞伎も知っているのかな、と思わせる本寸法。ヤマ場の蔵の中での定吉の一人芝居も堂に入っていた。印象に残ったのは、蔵の扉を使ったパントマイム風の手の表現でお清が通り過ぎる動きを現す演出。旦那役はどの噺でもニンだし、安心して楽しめた高座。しかし、白酒なら“想定内”ということだろう。

桃月庵白酒『景清』 (1934-20:05)
 まず、前回(9月)のアンケートの質問への回答が10分余り。なかで興味深かったのが、「東京と大阪のお客さんの違いは?」という質問に、「ほとんど変りません」という答え。これは、ある意味で“自慢”と言っていい。本人はそう思っていないだろうが、東京の噺家さんで上方でまったく受けない人だっているのだ。白酒の落語が、東京と変わりなく受けている、ということ。また、それは十分に頷ける。そして、大阪の「木戸銭」の安さにふれる。落語会はせいぜい2,000円か高くて2,500円位で、それ以上は“三枝クラス”とのこと。ちなみに、この会の木戸銭は2,500円。だからなおさらチケットは争奪戦になるわけだ。この話を聞いて、某上方落語家が東京でベラボウな木戸銭の落語会を開く理由が分かったような気にもなった。関西で4,500円だ、5,000円だという木戸銭で開いたら、きっと客にも芸能マスコミにも叩かれるに違いない。
 さて、本編。実は三席のうちもっとも私の印象に残ったのが、この高座。師匠雲助もよくかけるようだが未見。このネタは東京版とオリジナルの上方版で内容が大きく異なるが、文楽譲りの東京版のほうが、やや人情噺的で日本人には向いている気がする。三月の震災直前に小満んの会で聞き、大いにウルウルさせてもらったが、白酒もなかなかの高座。清水様に目が見えるよう願掛けした百日目。何度も観音経を唱えては、目が開いていないか確認する定次郎。しかし、何も見えない。お経を唱えてからの表情が、勝新の「座頭市」に似ていなくもない。なかなか、サマになっているというか、決まっているのだ。あきらめて観音様に毒づいて帰るところを、願掛けを勧めてくれた石田の旦那に見つかり叱られて一緒に帰ろうと言われる。定次郎の母親についての泣かせる科白を効果的にはさみ、急な雨、そして雷鳴。その雷に打たれて目が見えるようになった定次郎が、自然に着物を見ながら「・・・縞が見える・・・・・・」というところは、なかなかにグッときた。「こういう噺もいいじゃない」と感心した。
 もともと、東京版は長い噺ではないが、下手な噺家では、こうは盛り上がらない。マクラのことは別にして、本編は20分弱とは言え、マイベスト十席候補として記録しておきたい。

桃月庵白酒『富久』 (20:19-20:56)
 マクラもふらずに本編へ。先日、市馬との二人会で市馬のこの噺を聞いたが、白酒の方が良かったのは間違いがない。古今亭版の設定になるだろう、と思って聞いていたのだが、なるほど大師匠馬生版を踏襲。志ん生と馬生、微妙に違うのだ。
・富札の番号:「鶴の千五百番」
・久蔵の住まい:浅草三間町
・富興行の場所:椙森神社
までは志ん生も馬生も同じ。
・旦那の住まい:志ん生は芝の久保町、馬生は日本橋石町
 他にもこのネタのことに興味がある方は、私の古いブログをご参照のほどを。2008年12月25日のブログ
 古今亭だからいいか、とも思わないでもないが、久蔵の描き方が少し軽すぎたか、という気がしないでもない。いずれにしても、白酒のことだ、今後もっと練られていくことを期待したい。
 彼らしさも、もちろんあった。千両富が当たったのを知って腰を抜かす久蔵が、「ぁたった、ぁたった~」と相撲の行司の掛け声の如く口走るのを聞いた周囲の若い衆が、「おい、木村庄之助がいるぞ」「いや、式守伊之助だ!」、には笑った。 他にも、当たったらどうする、という野次馬の会話の中で、一人が「寄席を買って席亭になる」というのがあった。その理由が、「小三治、マクラ長いぞっ!って言ってやりたい」、に会場大爆笑。他の噺のマクラでも小三治会長のことは、ほどよく登場。決して“悪口”じゃないですよ、会長^^
 全体的に結構だったのだが、富札を買って大神宮様に手を合わせる場面の久蔵の独り言部分などは、もっとクスグリを挟みたいのに時間の関係で短縮したような気がするし、火事が収まった後で本家から届いた見舞いの燗酒を飲んで酔っていくシーンなどには、もっとこの人らしい盛り上げ方があるように思う。今後に期待。


 「満員御礼」になるのも十分に頷ける一人会。この人が今後しばらく東京の落語界の中核を担うのは間違いがない、とあらためて確認できた。めずらしく、女性の登場人物が『四段目』のお清どんだけだったことを帰宅の電車の中で思い返していた。それも、あの定次郎に会えたのなら良しとしよう。そんな思いで帰宅し、高座を思い出しながら家で飲む酒も、また上手かった。久蔵と同様にうとうとしていたら、半鐘ではなく、連れ合いから「風邪ひくわよ!」、とジャンが鳴った。
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by kogotokoubei | 2011-12-12 23:06 | 落語会 | Comments(8)
最高齢の浪曲師、木村若友さんが亡くなった。47NEWSの該当記事

浪曲師の木村若友さんが死去 現役最高齢 
 現役最高齢の浪曲師として活躍した木村若友(本名大森政貫)さんが11月30日午後2時12分、動脈瘤破裂のため東京都北区の病院で死去したことが、6日分かった。100歳。福島県出身。葬儀は近親者のみで済ませた。喪主は長女大森政子さん。

 初代木村友衛に入門し、戦前から浪曲師として活躍。ことし4月に第45回吉川英治文化賞を受賞。5月に開かれた東京・国立演芸場での100歳を祝う会の出演直前に楽屋で倒れ、復帰に向けてリハビリ中だった。得意演目に「塩原多助」など。
2011/12/06 22:19 【共同通信】


 残念ながら木村若友さんの芸を拝見したことはないが、入門した初代木村友衛という名を見ると、浪曲興行で名を上げ、その後力道山を中心にプロレス興行に貢献し、ボリショイサーカスや大物シャンソン歌手などの来日興行などで幅広く活躍し、“最後の興行師”と言われた永田貞雄さんのことを思い浮かべてしまう。


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猪野健治著『興行界の顔役』(ちくま文庫)
 どんな人だったのか、以前に“やくざと芸能界”について書いた
2011年10月10日のブログ

 その際に紹介した、猪野健治著『興行界の顔役』から少し引用したい。

 永田が興行界入りするきっかけになったのは、浪曲界の大御所天中軒雲月に弟子入りしたことからだった。
 はじめは浪曲家として売り出すつもりだったが、変声期に声帯を痛め、舞台を諦めて興行界で身を立てる決意をしたのである。
 大正九年、雲月の元を去って東浅草の大谷興行部に押しかけて入った。永田の熱心な仕事ぶりに一目置いた社主の大谷光造は、まだ十七歳の永田に浅草初音会の浪曲興行をゆだねた。
 これを見事につとめた永田は、翌年十八歳で独立、鼈甲斎小虎丸を座長に女月(のちの女雲月)を助演にした一座を組んで、博多川丈夫座で旗揚げ興行、その成功を足がかりに、当時人気のあった木村友衛の九州興行を一カ月打って、興行師としての地盤を固めた。当時の興行界は未成熟で、一座を組んで興行を打つには、やくざとのやりとりから、海千山千の小家主たちとの交渉まで非常な労力を要した。永田はそれを十八歳の若さでやり遂げたのである。



 本書において、三波春夫は永田貞雄のことを次のように語っている。三波のプロィール部分から。

 三波春夫は、中学一年のとき、父の経営する商売が行き詰まり、新潟から上京して米屋の店員、製麺工場、魚河岸の問屋と転々としながら、十六歳で浪曲界に入った苦労人である。戦後の四年間はソ連に抑留され、昭和二十四年九月に帰国。しばらく郷里で自己流にアレンジした“社会主義浪曲”をうなっていた。
 しかし<眠れる農民よ、新しい時代に目覚めよ>といった生硬な、左翼臭ただよう浪曲が受けるはずがない。
 三波はほどなくシベリア洗脳症候群から立ち直って、民謡調歌謡曲という新しい分野を創り出す。永田と交流するようになるのは、三十二年春、テイチクから出した『チャンチキおけさ』『船方さん』が大ヒットしてからである。
 三波の永田評。
「永田さんに地方興行でお世話になるようになったのは、三十二年秋からですから、もう三十年ですね。
 多いときは、一年のうち四十日から四十五日ぐらい、私の仕事をやっておられたのではないでしょうか。東北二週間、北陸一週間、関東一週間、信州一週間といったぐあいで東北は長かったですね。
 東北の旅では、一日の公演が終わって、一緒に食事をすることがたびたびありました。記憶力が抜群なんですよ。会食しながら永田さんは、初代天中軒雲月の雲月節とか、東家楽燕の節使い、桃月軒雲右衛門の節使いなどのすばらしさの話をする。あそこがよかったここがよかったと、心の底に男の夢というかすごく美しいものを持っていらっしゃっいましたね。純粋な人なんですよ」
 そうしてこう結んだ。
「ひとことでいえば、永田さんは快男子ですよ。
 日本中に芸の華を咲かせた夢の勝負師だと思いますね。
 誰とだれを競演させたらいいんじゃないか、浪曲でも一人の名人よりも、何人も名人を集めてやった方がお客様が喜ぶんじゃないかというように。
 永田さんのちょっと先輩に亡くなった松尾国三さんという興行師がいましたが、松尾さんも永田さんも企画力、勝負どころのカン、人心をつかみ、時の流れを先取りすることにかけては天才じゃないですか。
 永田さんは仕事が生き甲斐で、真面目な人です。あのような人は二度と現れないでしょうね」



 永田さんの後に登場するには、“興行師”と言うよりも、永島達司(ナット・キングコールやビートルズを手がけた協同企画-現在のキョードー東京-の創立者)などの“イベント・プロデューサー”の時代になる。

 北海道の実家で今なお健在の八十四歳の母は、私が子供の頃テレビで浪曲や三波春夫の唄がかかると、店の商売の手を休めても見て聞いていたのを憶えている。また、その頃はテレビでも、今よりは浪曲、講談が頻繁に放送されていた。三代目の広沢虎造はよく見て聞いたものだ。十八番の「清水次郎長伝」が耳に残る。

 浪曲は、永田貞雄という稀代の興行師の熱い情熱で支えられ、それまでは地元やくざに牛耳られてきた興行の独占を永田が体を張って切りくずし、常にその番組を魅力的にする努力で大ブームを迎えた時代があった。その後、テレビの普及など時代の趨勢で、映像的には地味な「一人語り」の芸は講談と同様に勢いを失って、現在は決してメジャーな芸能とは言えなくなった。もちろん国本武春という新たなスターが登場してはいるが、その後に続く人材はそう多くはないのではなかろうか。しかし、昔テレビで見たかぎりの私の浪曲経験で、いい加減なことは言えないなぁ。だから、浅草の木馬亭に近いうちに行ってみようかと思う。定席があるだけでも、この芸の救いはあるのかもしれない。安藤鶴夫が直木賞を受賞した著書で題材になった本牧亭は、経営に苦労しながらもいくつか場所を替え、最近までは講談を聞ける料理屋として頑張ってきたが、九月に閉館した。しかし、再出発を目指しているとも聞くので、その時はぜひ行ってみたい。

 優れた興行師の存在なしでも、江戸から明治、大正、昭和という流れの中で、同じ寄席という場で浪曲や講談の後塵を拝してきた時期もある落語が、今日これだけ活気があることを、素直に感謝したい。

 落語という芸能が他の二つの「一人語り」芸と違って、今でもベテラン、中堅、若手の各層に魅力的な芸人を多数抱えて、寄席やホールを活気づけているのはなぜなのか。そんなことについても、そのうち考え、書いてみたいと思う。

 大ベテラン浪曲師木村若友さんの芸は一度も拝見したことがなかったが、その訃報は私に永田貞雄さんのこと、そして同じ一人芸の落語のことなど、さまざまな思いをめぐらせた。
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by kogotokoubei | 2011-12-10 10:24 | 幸兵衛の独り言 | Comments(0)
テレビ朝日で放送されている「落語者」は、BS朝日でもほぼ半年遅れで放送されている。テレビ朝日が金曜の深夜の放送、BSの再放送は月曜夜。次の12月12日は入船亭扇辰の『天狗裁き』。今年5月20日地上波での放送分であるが、BS朝日のサイトの番組ページが、何ともそっけないのと、更新が遅すぎる。次のように、現時点(12月7日午前6時半時点)で、11月放送分を「放送予定」として掲載したまま。BS朝日のサイトの「落語者」のページ

放送予定
11月7日(月) 夜11:30~深夜0:00 三遊亭兼好
11月14日(月) 夜11:30~深夜0:00 三遊亭兼好
11月21日(月) 夜11:30~深夜0:00 桂吉坊
11月28日(月) 夜11:30~深夜0:00 桂吉坊



 おいおい、なのだ。地上波のそのままの順番での放送なら、12日の『天狗裁き』の次は同じ扇辰で『三方一両損』になる。テレビ朝日サイト「落語者」の過去の放送のページ

 テレビの現役落語家の高座を中心にした番組で、「落語研究会」(TBS)や「日本の話芸」(NHK)のように落語会が主体でテレビが二次的な場合を別とするなら、「落語者」と対抗するのは、BSジャパンの「今どき落語」になるだろう。プリ(放送前)でもポスト(放送後)でも、その番組の情報の確認は放送局サイトの番組のページが主体となると思うが、BSジャパンの「今どき落語」のページは、なかなか充実していると思う。BSジャパンのサイトの「今どき落語」のページ
 
 良くも悪くも、ネットの時代である。そして、デジタル化によって、BSの視聴対象者も格段に増えたはず。番宣の中核メディアであるサイトの内容や更新のスピードは、その局が番組にかける意気込みを反映しているように思うのだが、朝日さんは、どう思っているのだろう。

 私は、両局ともに頑張ってもらい、今のシリーズが長続きすることを願っている。テレビの落語は、もちろん生の高座とは違うが、重要な情報源として私は結構見ている。ブログにはすべてを書いていないが、それはご容赦のほどを。第1シリーズの「落語者」が終ってBSで再放送された時は、結構ポジティブなことを書いた。2010年4月1日のブログぜひ、番組のサイトも手を抜かずに願いたい。


 さて、扇辰のこと。私はブログで二席とも取り上げた。未見の方の楽しみのためにあえてリンクはしないが、早い話がお奨めである。

 BS朝日のサイトへの小言を言いたいことと、扇辰の高座を地上波で未見の方にお奨めしたくて書いた次第です。扇辰、今もっとも充実している噺家さんかもしれない。見て損はないと思いますよ。
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by kogotokoubei | 2011-12-07 15:39 | テレビの落語 | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛