噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

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M-1最終回を見て思うこと

先日、M-1が終了することについて書いた。。2010年12月13日のブログ
どとらかと言うと、終了を喜ぶ内容だったが、M-1ファンの方に、「見もしないで!」と言われるのも癪だから、今夜の最終回は九組すべて見た 決勝3組はすべて吉本所属。
◇笑い飯:何がおもしろいか未だに分からないが、九回連続決勝出場らしい。同じ設定のギャクを二人で交互に行うパターン。これなら4分でも3分でも大丈夫なはずだ。
◇パンクブーブー:昨年の優勝者で、今回は敗者復活戦から。一回戦と決勝、あの同じような“思わせぶり虚言”を基本としたコントは、決勝では見る者も予想がつくので笑えず、ちょっときつい。
◇スリムクラブ:沖縄出身で何とも不思議な味があるコンビ。背の高い方は、ピンでフランケンシュタインのギャクを演じていたような気がする。私はこのコンビの醸し出す、妙に“シュール”っぽい部分と、語らない“間”が好きで、二回の演技とも結構楽しめた。

 たった4分のギャクで1,000万の賞金を左右するのだがら、ある意味恐ろしい240秒である。
 決勝は、一回戦の点数方式ではなく、七人の審査委員が三組の中から一組を選ぶのだが、「笑い飯」4票、「スリムクラブ」3評となった。なるほど、という決着。“談合”“演出”“シナリオ”といった言葉が匂うエンディングである。(“八百長”とは言ってませんよ!)

 同じ吉本の三組で、いわば“有終の美”をベテランに飾らせたのだろうが、私の採点は圧倒的にスリムクラブである。まぁ、彼らもそのうちテレビで露出が一気に増えると、飽きられるのも早いだろうが、しばらくは何が飛び出すか分からない会話の楽しみはあるかもしれない。決勝での「民主党」というクスグリには、結構笑えた。

 M-1終了にあたって、島田紳助はこう語っている(と、サンスポに載っていた)。
サンスポの記事

イベントを企画した大会委員長の紳助は「たくさんの後輩が育ち、漫才を目指す若者が増え、レベルも上がった。漫才へ恩返しできた気持ち。最後のM−1で、また1組スターが生まれることを心から願ってます」とコメントし、国民的イベントに成長したことに満足している様子。



 スリムクラブが“スター”になるかどうかは、分からない。しかし、「笑い飯」を優勝させることが“スター誕生”とは、誰も思わないだろう。彼らはすでに十分に名を売っていて、その芸のインパクトも年々薄れているし、一回戦と決勝ともに、私には余りにも無理のある芸に思えていた。

 スリムクラブが今後どう育つかは分からないが、「笑い飯」や「パンクブーブー」に比べて計算できにくい面は“テレビ向き”ではないかもしれない。たぶん、本人達も自分達がどんな芸をすべきかは、まだよく分かっていないはずだ。しかし、今までの漫才においては稀有なシュールさや、その芸の不安定さこそが魅力の沖縄コンビを優勝させることのほうが、最後にふさわしかったのではなかろうか。
 決勝の審査結果発表の前に、スリムクラブの一人が、「ここまで来れて幸せです。どんな結果でも甘んじます。」という言葉ほど、この番組の背景を感じさせるものはなかった。彼らも先輩をさしおいて優勝するとは、思っていなかったのだろう。
 「苦節○年・・・・・・」といった浪花節な記事がスポーツ紙を賑わしそうだが、ほとんど「予定原稿」で行けそうな、そんなシナリオ通りとも言えるエンディング。主催側としてはこの番組の“レギュラー”「笑い飯」に“功労賞”を贈呈できて無事終了することで、ホッとしているのだろう。とにかく、この番組が終わってよかった。
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by kogotokoubei | 2010-12-26 21:07 | 幸兵衛の独り言 | Comments(2)
一之輔が、新たな“勲章”をもらったらしい。落語協会HPに下記のニュースが載った。
落語協会HPの12月25日のニュース

平成22年度 第65回 文化庁芸術祭賞の新人賞受賞

春風亭一之輔が
『「まちのゆめ・まちのこころ・まちのことば」落語会における話芸』
において、平成22年度 第65回 文化庁芸術祭賞の新人賞を受賞いたしました。



 11月7日に下谷神社でアート(東京藝術大学の学生の作品)と芸能とのコラボレーションのイベントとして開かれた落語会については、この会の開催にも携わったらしい“あん子”さんのブログ「生きてるだけで、まるもうけ」に詳しい。
あん子さんのブログ「生きてるだけで、まるもうけ」(2010年11月8日)
 あん子さんのブログによれば、当日の出演者とネタは次のようだったらしい。
--------------------------------
宮治  『元犬』
市楽  『やかん』
夢吉  『猫の皿』
一之輔 『茶の湯』
仲入り
遊一  『干物箱』
鯉橋 『粗忽の釘』
菊六 『権助提灯』+かっぽれ
平治 『掛取り』
--------------------------------

 一之輔の『茶の湯』は昨年の「よってたかって秋らくごスペシャル」という無駄に長いタイトルの会で聞いて感心した記憶がある。
2009年10月24日のブログ
 え~っ、芸術祭には、兼好(かもめ亭)、生志(内幸町ホール)達が独演会で勝負したのだが、一之輔は寄席に近い複数の出演者が登場する落語会で、彼の高座が対象となっての受賞ということらしい。
 こういうこともあるんだねぇ・・・などと思いながら一之輔のブログ「いちのすけえん」を見たら、ちゃんと他の出演者へのお礼の言葉を含めた案内があったので、ご紹介。
「いちのすけえん」

この度、

  平成22年度 文化庁芸術祭 大衆芸能部門 新人賞

という賞を頂戴いたしました。長い名前だ。

11月に下谷神社で行われた「まちのゆめ・まちのこころ・まちのことば落語会」での「茶の湯」がいい塩梅だったようです。ありがたい限りです。

自分主催の独演会ではありませんので、前に上がった前座さんからトリの平治師匠、全出演者の皆さん、お客さま、主催者、関係者の皆様のおかげです。

この場を借りて御礼申し上げます。



 よしよし、その感謝の気持ちを忘れるなよ。

 NHK新人演芸大賞に続く勲章。そう言えば、小言幸兵衛の「マイベスト十席」にも選ばれたし、最優秀新人賞も受賞したなぁ(笑)
 もう頼むから来年真打にしてあげてよ、小三治会長、市馬副会長!
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by kogotokoubei | 2010-12-25 13:57 | 幸兵衛の独り言 | Comments(0)

今年のマイベスト十席

本当に迷いに迷う「マイベスト十席」選びだった。選定のプロセスを振り返るために、まず、今年出向いた47回の落語会の後で、私がその日のうちに採点したメモを元に、100点満点で85点以上とした高座二十三席全てを並べてみる。
*月日・会の略称/会場/噺家さんの名前とネタ/当日付けた点数
(1)1/7 白酒独演会/横浜にぎわい座 市馬『厄払い』85
(2)1/29 みなと毎月落語会/菊之丞・菊六兄弟会/麻布区民ホール 菊之丞『山崎屋』85
(3)2/6 仁鶴独演会/相模原市民会館 仁鶴『道具屋』85
(4)2/12 如月の三枚看板 文左衛門・喬太郎・扇辰/銀座ブロッサム 文左衛門『らくだ』85
(5)2/27 第一回 大手町落語会/日経ホール 喬太郎『ハンバーグができるまで』85
(6)2/27 第一回 大手町落語会/日経ホール 鯉昇『長屋の花見』85
(7)4/3 春の若手花の三人会/グリーンホール相模大野 三三『花見の仇討』87
(8)4/8 はん治・喬太郎 二人会/横浜にぎわい座 喬太郎『寝床』87
(9)5/7 第九回 新文芸坐落語会/新文芸坐 菊之丞『愛宕山』85
(10)5/7 第九回 新文芸坐落語会/新文芸坐 花緑『紺屋高雄』87
(11)5/17 第二十五回 人形町らくだ亭/日本橋劇場 小満ん『笠碁』85
(12)6/5 たから寄席 扇辰・兼好/寶憧院 兼好『天災』87
(13)6/23 第二十六回 人形町らくだ亭/日本橋劇場 志ん輔『佃祭』85
(14)8/20 百栄と一之輔で「落語101」/横浜にぎわい座 一之輔『五人廻し』85
(15)9/2 柳家さんと○○さん/横浜にぎわい座 三三『大工調べ』85
(16)9/17 通ごのみ 扇辰・白酒ふたり会/日本橋社会教育会館 白酒『抜け雀』85 
(17)9/17 通ごのみ 扇辰・白酒ふたり会/日本橋社会教育会館 扇辰『阿武松』85
(18)9/24 亭砥寄席 市馬・鯉昇・権太楼/新宿文化センター 市馬『締め込み』85
(19)9/28 落語睦会 秋の夜長のゼントルマン/国立演芸場 喜多八『船徳』85
(20)10/28 第二十九回 人形町らくだ亭/日本橋劇場 小満ん『小言幸兵衛』90
(21)11/16 三三 談洲楼三夜・第一夜/紀尾井ホール 三三『嶋千鳥沖津白浪』92
(22)12/6 桂文我 極彩色高座賑 第四幕/国立演芸場 桂小金治『三方一両損』
(23)12/11 落語 東へ西へ/渋谷区総合文化センター大和田 桂春団治『代書屋』

 この中で、小金治さんと三代目の高座(朱書き)については、点数をつけたりランキングの対象にするなど、まったく失礼の極みなので別格扱い。 その場に居れただけで幸せだった。

 残った二十一席の中からベスト十席を決めるということは、半分以上を落すということである。
 まず、私の選考ルールとして一人の噺家さんからは一席ということにしているので、複数リストアップされた噺家さんの高座を一つに絞る。
・菊之丞は『山崎屋』と『愛宕山』のうち→『山崎屋』を、ちょっと迷いながらも選択。
・喬太郎は『ハンバーグができるまで』と『寝床』のうち→迷わず『寝床』を選択。
・市馬は『厄払い』と『締め込み』のうち→『締め込み』を、結構迷いながらも選択。
・小満んは『笠碁』と『小言幸兵衛』のうち→『小言幸兵衛』を迷わず選択。
・三三は『花見の仇討』、『大工調べ』と『嶋千鳥沖津白浪』のうち→『嶋千鳥~』を、一切迷わず選択。
 
 さぁ、これで十五席に絞られた。あと、五席を苦渋の決断で落とさなければならない。
*「そんなに悩むなら、無理に選ばなくてもいいだろう!」という声は、聞こえないことになっている。

 点数は当日の興奮などもあるから、その時は冷静なつもりでもややブレもあるので、あらためてブログを読み返し、日々大量に喪失する中でなんとかしがみついている脳細胞を叱咤して、当日の記憶を掘り起こしながら再検討してみた。

 その結果、心を鬼にして除外した五席は・・・・・・、仁鶴『道具屋』、鯉昇『長屋の花見』、白酒『抜け雀』、扇辰『阿武松』、そして市馬『締め込み』。もちろん、どの高座も記憶に残る良い出来栄えだったが、しょうがないのよ、十席に絞るためには・・・・・・。

ということで、あらためて「2010年マイベスト十席」を、短いコメント付きでご紹介。
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古今亭菊之丞『山崎屋』 
 →今年正月に兄弟会で聞いた丁寧な高座は未だに耳に残る。「了見」が違うのだ!
(1/29 みなと毎月落語会 菊之丞・菊六兄弟会 麻布区民ホール)
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橘家文左衛門『らくだ』 
 →あの三人の中でのあの高座、大迫力だった。見た目と違う繊細な演出が光る。
(2/12 如月の三枚看板 文左衛門・喬太郎・扇辰 銀座ブロッサム)
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柳家喬太郎『寝床』 
 →なんとも地味な会なのに、未だに甦る見事な出来。私には“古典の喬太郎”なのだ。
(4/8 はん治・喬太郎 二人会 横浜にぎわい座)
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柳家花緑『紺屋高雄』 
 →談春に稽古をつけてもらった噺を、自分のものにしている。清清しさも印象深い。
(5/7 第九回 新文芸坐落語会 新文芸坐)
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三遊亭兼好『天災』 
 →初めてお寺での落語会で、弾けまくる八五郎に大爆笑。来年も期待しているよ!
(6/5 たから寄席 扇辰・兼好 寶憧院)
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古今亭志ん輔『佃祭』
 →ブログでリアルな日常を曝け出す稀有な噺家。今後も生々しく葛藤して欲しい。
(6/23 第二十六回 人形町らくだ亭/日本橋劇場) 
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春風亭一之輔『五人廻し』
 →二ツ目で唯一。唸った、そして感動した。実力はもう十分に真打。来年も期待!
(8/20 百栄と一之輔で「落語101」 横浜にぎわい座・のげシャーレ)
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柳家喜多八『船徳』
 →気だるさを演出していながらの緩急をつけた喜多八ワールドは、結構奥が深いよ!
(9/28 落語睦会 秋の夜長のゼントルマン/国立演芸場)
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柳家小満ん『小言幸兵衛』
 →文楽の世界をきっちり伝承しながら、さりげない演出でも沸かせる。これぞ名人芸!
(10/28 人形町らくだ亭(第29回) 日本橋劇場)
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柳家三三『嶋千鳥沖津白浪』
 →これを歴史的な快挙と言わずして何と言おうか!?チャレンジ精神に拍手。
(11/16 三三 談洲楼 三夜 -第一夜- 紀尾井ホール・小ホール)

 そして、特別に、客演として小金治さんと春団治師匠の高座を開催してくれた桂文我と古今亭志ん輔に「企画賞」をあげたい。
 また、「ベスト落語会」を一つ選びたい。それは、「喬太郎 古典の風に吹かれて 座@高円寺 4月20日 夜の部」である。小満ん師匠との対談だけでも価値があった。2010年4月20日のブログ
 
 ご覧のように、立川流は一席もない。なぜなら行ってないから。4月3日に相模大野で談春の『慶安太平記-吉田の焼き打ち-』を聞いただけである。私はこの地噺を評価できなかった。この日は三三の『花見の仇討』が光った。昨年から今年にかけて、どうしても、“立川流バブル”が足を遠ざける。それは、異常にチケットが手に入りにくいということに抵抗感があるとともに、その状況を見るに、ほぼ評価の定まった人たちについて無理に追いかける必要はないだろう、という諦観めいた思いが漂うのだ。また、談春にしても志らくにしても談笑についても、もちろん志の輔にしても、私がとやかく言わんでも多くの“立川流命”みたいな人たちや落語ビギナーの人まで褒めまくるから、いいでしょ、という思いもあった。この思いは来年も基本的には変わらないなぁ。まぁ、家の近くで開催される会で、チケットに縁があったら行くかもしれないけどね。

 今年は、権太楼、さん喬という落語協会のツートップ(?)の会には、結果としてあまり行けていない。来年は権ちゃんのことも気になるので、できるだけ行くつもりである。
 鯉昇は睦会を含め結構聞いたし、まず外れなく安定した独自の世界を楽しんだが、トップテン選定においては、結果として他の人の高座が上になった。私好みであることには変わらない。ただ、マクラがちょっとマンネリかもしれないなぁ。「磨き上げたマクラ」とも言えるが、「またか・・・・・・」という思いもないではない。来年、どう変わるかは、やっぱり行って聞かなきゃ分からない。

 ベスト3を挙げるなら、
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三三『嶋千鳥沖津白浪』

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小満ん『小言幸兵衛』
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喬太郎『寝床』

ということになるだろう。これも、迷い出したらキリがないが、まぁ、このへんで思考停止!
*三三と喬太郎は二年連続での受賞(?)
*昨年はどうだったか気になる物好きな方は、2009年12月24日のブログをご覧のほどを。
2009年12月24日のブログ

 懲りずに個人賞的なものを無理に作ろうとするなら、こんな感じ。
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年間MVP 柳家三三
 *「嶋千鳥沖津白浪」の三夜通し口演が最大の受賞理由
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最優秀新人賞
(入門十年目までが対象) 春風亭一之輔
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カムバック賞 桂小金治
 *説明の必要なし、でしょう。

 来年は、三三、一之輔の成長を継続して追って行きたい。また、遊雀を含め芸術協会の人をもっと聞いてみたいと思う。結構、もったいない人材を見逃しているような気がしている。そして、超若手では辰じんが二つ目になるだろうから、彼の独演会開催を期待したい。前座では今年ピカ一。今後も間違いなく彼は伸びるだろう。
 安心して古典の世界に浸れる“らくだ亭”にはできる限り足を運び、できれば、噺を肴に人形町で上手い酒を飲みたいと思っている。

 さぁ、大名跡の襲名問題や、未だに発表のない真打昇進者のことなども含め目の離せない落語の世界。来年も楽しい時間と空間の心のオアシスに数多く浸りたいと思うばかりである。
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by kogotokoubei | 2010-12-23 17:09 | 落語会 | Comments(10)
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*MBSの番組紹介ホームページより

 昨夜、「浜松町かもめ亭」から帰ってから、録画を見た。毎日放送 「情熱大陸」12月19日放送“柳家三三”のページ
 かもめ亭で白酒がさっそくマクラで話していたので、見ないわかにもいかなかったのだが、なるほど、白酒も少しだけ写ってはいた。私も初日行った「談洲楼三夜」での『嶋千鳥沖津白浪』の通し口演をヤマにしてはいるが、日常の定席での高座姿や楽屋での様子、掛け持ちでの移動の姿なども紹介されて楽しいドキュメンタリーだった。

 中でも今年一月に師匠小三治からひどく叱られたという一件が印象に残る。たぶん与太郎噺についての一言だったのだろう。「利口が馬鹿のフリをしている、いやらしさがある」といったことだったらしい。
 そして、小三治と久しぶりに会うという鈴本の楽屋では、三三が到着する前に禽太夫に対して小三治が言う。「思いをなかに入れて、表に出さない。噺なんだから、所作はいらないんだよ・・・・・・」と言っているなかで三三が登場。そのまま師匠の言葉は誰にともなく続く。 「皆おもしろくやろうとしている。笑いをとろうとしている、そうすると客はどんどん逃げていく・・・・・・」
 この後にナレーションが、「事態を飲み込めていない三三は、俺のことか、と勘違いしたのじゃないだろうか」と続く。なかなかの演出だと思う。

 「受けよう、笑わせようとしてはダメだ」という格言(?)は、大師匠五代目小さんが小三治にも常々言っていたこと。なるほど、 “芸の継承”は“小言の継承”でもあるなぁ、とあらためて納得。鈴本の楽屋の一幕の後、小三治の『初天神』の高座が、なんとも楽しそうであった。

 さて、三三に戻る。「三夜」のための三宅島への“取材”が、本人の意志なのか、それとも(白酒がかもめ亭でイジったように)テレビ局の“やらせ”なのかはともかく、私が行けなかった三夜目の高座が少しだけ放送されたのを見ても、間違いなく厳寒の海を前に立ちすくんだ彼の実体験が生きたはずだ。大それたことを言えば、かの円朝が『塩原多助』を生み出すに至る”取材”などは、ちょっとした大旅行であり、旅行中もいろいろと苦しみながらも詳細な記録を日記に残していった。戻ってからその膨大な記録を再吟味して、もがき苦しんで、さまざまな話とつなぎ合わせて編集していって、あの歴史的な新作の誕生なのである。そういえば、今はこの噺を演る人がいないなぁ。
 円朝に比べれば(比較に無理は承知!)、三宅島一泊二日(だと思うが)など、ある意味当然の下準備なのだ 。かと言って誰でも出きることではない。 また、大師匠小さんが、「登場人物の了見になれ」と言っていた言葉をかみ締めれば、自ずと噺の舞台を訪れようという了見にもなろうと言うものだ。
 
 日常生活の、甘党、缶ピース、カラオケボックスでの稽古といったことは、あくまでも演出の一つ。毎日放送(MBS)のスタッフがこの番組で訴えたかったことが、三三という若手噺家を紹介するにあたり、彼が柳家のDNAをどれだけ継承しつつあるか、またその了見があるのか、ということを明かすためであるなら、それは概ね成功したといえるだろう。非常によくまとまった、そして質の高い30分だった。

 あえて比較するが、三三を評する噺家の一人として登場した立川談春についてBSフジが制作した12月15日放送の「らくごの時間」とは、まったく違う出来栄えの番組であった。 もちろん、談春本人が問題というわけではない。番組としてのコンセプトから始まって、まったく根っこのところで大きな差がある。噺家で例えるならば、前座と真打の差である。番組という作品づくり、モノづくりに対する「了見」が根本的に違うのだ。「らくごの時間」は録画を見てからデリートしたが、「情熱大陸」は保存しておこうと思う。それだけの大きな違いである。
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by kogotokoubei | 2010-12-21 17:41 | テレビの落語 | Comments(2)
定席での落語協会の秋の真打披露は、10月7日の鬼丸の末広亭しか行けなかったので、先輩として口上に立ち会う白酒も楽しみに久しぶりに大門を訪れた。昨年は2月の「喜多八・白酒二人会」に一度、今年は最初で最後の「かもめ亭」である。また、白酒である。 2009年2月18日のブログ
 口上で白酒もふれていたが、残念だったのはこの会のマドンナ(?)立川こはるがインフルエンザで休演となり、春樹が代演になったこと。

結果として構成はこうなった。
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口上 白酒・龍玉・小せん
立川春樹  『ろくろ首』
柳家小せん 『夜鷹の野ざらし』
(仲入り)
桃月庵白酒 『転宅』
蜃気楼龍玉 『夢金』
------------------------------------

口上 (19:02-19:09)
三人が高座に上がり、まずは白酒から。「真打昇進披露だから、本来は二人の師匠が登場すべきなんですが・・・まだ龍玉は同じ一門だから私が代わりでもおかしくはないですが、小せんは違うし、仲がいいわけでもないし・・・」とサラッと彼らしいか幕開けで、お辞儀をしていた小せんが驚いて頭を上げるという構図が、なかなか可笑しい。定席ではやらない本人達の、彼ららしい口上も短くあって、あっさりと終了。

春樹『ろくろ首』 (19:10-19:31)
少し酷な言い方になるが、こんな噺を20分もダラダラ聞くために来たのではない。こはるの欠場は痛い。彼自身も急な出番となって緊張もあり可愛そうだが、よく談春に入門できたものだと思う。どこか褒めるところをと探したのだが、残念ながら太鼓も含めて、相当覚悟をして修行するか、早めに転職を考えるべきだろう。

小せん『夜鷹の野ざらし』 (19:32-20:07)
ようやく後半がこの人のオリジナルという『野ざらし』を聞くことができた。前半は本寸法の内容、八っあんが向島で骨つりに精を出していたのを聞いていたのが、幇間ではなく大年増の夜鷹だった、という設定。なかなか楽しい趣向である。サゲは、まだ練り上げて欲しいと思うが、全編に渡りこの人らしさが活かされているように思う。声がいいし、様子(?)が渋めなので侍が登場する噺も合うし、江戸の香りもする。軽妙な語り口でも流されないリズムも持ち味だろう。今後は、ぜひ新たな小せん像を少しづつつくり上げて欲しい。この名跡を選んだ一つの理由に先代小せんにいくつか稽古をつけてもらった、と話していたが、ぜひ先代のネタ、また初代の郭ネタにも挑戦していただこう。

白酒『転宅』 (20:18-20:44)
マクラは、本人が「ここは固有名詞を出したから、またカットでしょう」と言っていたが、たしかに音源として販売する場合は残念ながらカットだろうなぁ。12月19日に放送されたばかりのTBS「情熱大陸 柳家三三」をイジッタ話で、頗る笑えたが、私も割愛する。一つだけ暴露すると、「私もちょっと写ったんですが、事前に相談もなければギャラもない」とのこと。まぁ、あの数秒間、三三の後ろに顔半分写った程度ではしょうがないわな。本編は、今年1月に二俣川の地域寄席でも聞いたが、ほぼこの人の十八番として手中に入れたな、という印象。なぜ、あの顔、頭、そして体(?)であれほど女性を色っぽく演じることができるのか、いつ見ても不思議な思いでいる。それが、芸なのだろう。マヌケな泥棒も、いつ見ても笑える。

龍玉『夢金』 (2045-21-16)
ニンな噺だとは、思う。こういう噺を聞くと、この人は将来どんな噺家さんになっていくのだろう、という疑問もわく。見た目の表情のキツさ、というか渋さ(?)と語り口の重さなどは、良くも悪くも個性なので、それを生かした噺をするのはいいのだが、そうなると暗めの人情噺ばかりになってしまうような気がする。6月に国立の睦会で聞いた『夏泥』は良かったが、やはり他の多くの噺家が明るく演じるのとは違って、弾けた笑いというよりは、一瞬の間を置いた笑いになる。しかし、それでもいいじゃないか、という意見もあるだろう。かつての噺家さんで言えば、八代目三笑亭可楽あたりの線が狙い目なのかもしれない。いつも不機嫌そうな顔をしながら、『味噌蔵』『反魂香』『らくだ』あたりで玄人を唸らせた人だが、そういった持ち味はある。しかし、それで今の時代にどれだけのファンを獲得できるのか、という心配もあるのだ。まだ、昇進したばかりなので、今後長い時間をかけて見守りたい、そんな気にさせる器であることは間違いない。


 定席で昇進披露に行きたくて行けなかった二人だったので、そのお祝いが出来たと個人的にはホッとしている。そして、白酒の“毒”と“芸“を楽しむこともできた。こはる欠場は何とも残念だが、これもめぐり合わせである。定席に彼らを祝いに行けなかった天からの罰とあきらめれば、気も楽だ、と紅羅坊名丸も言っている。

 どうも、この会が今年の落語会の打ち止めになりそうだ。年末はいつになく飲み会や野暮用で結構埋まってしまった。今年の落語会・寄席は年間で47回と過去最多となった。さぁ、これからマイベスト十席を選ぶ楽しみを味わおうと思うが、昨年以上に悩みに悩みそうだ。備忘録代わりに書き始めたこのブログの本領を発揮してもらい、日に日に物忘れが進む五十代半ばの疲れた脳を叱咤して各落語会を振り返ってみるとしよう。マイベスト十席は、今週末には公表するつもりです。順位はつけずに十席。それを選ぶだけでも大変なのよ、これが。
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by kogotokoubei | 2010-12-20 23:26 | 落語会 | Comments(6)
録画していた「立川談春 らくごの時間」(BSフジ、2010年12月15日19:25~19:55)を、ようやく今日見た。
 BSフジの番組案内には、こうある。BSフジの番組案内ページ

社会教育、人材教育に「落語」を取り入れる企業が続出の昨今。
ブームとも言えるこの現象の一翼を担う、まさに旬の噺家が立川談春です。
 番組では、落語の熱烈なファンであり公私ともに仲がいい女優坂井真紀と、落語研究会出身のシンガーソングライターさだまさしに談春本人が突撃。大いに笑わせ、時にほろっとさせる談春の落語の魅力を余すところなく語る。また、ほとんど映像化されていない落語『六尺棒』を完全ノーカットで紹介する。



 開局10周年記念番組の一つだったらしい。
 放送された『六尺棒』の収録については、私もメールで届いた案内を見たので、どれほど急な収録だったかという背景も察することができる。“拙速”な企画の証である。

 まったく、意図が見えない番組。誰を相手にして制作したのだろう。
 いくつか目的を仮定した上で検証してみる。
(1)落語初心者に落語の魅力を伝える
→あくまで談春のための番組で、元々こんな狙いはない。

(2)立川談春という噺家の魅力を伝える
→落語に少しでも接している落語愛好家には蛇足。坂井真紀とさだまさしとの対談も時間不足でこれでは“余すところなく”は伝わらない。高座の後のファンの感想を談春自身がビデオを持って収録した内容も、あの雑誌編集者にして落語評論家(らしい)のH氏について談春が「さくら」と評したごとく、やらせ的で彼のファンだから当り前の内容。まったく、訴求力がない。それに加えて、談春本人、坂井真紀、さだまさしに「(談春を)聞きに来い!」と言わせているが、チケットが“分殺”あるいは“瞬殺”の状況で落語ファンが行きたくても行けない状況を、一層煽ってどうしようと言うのだ。(しかし、そういう談春の会のチケットをようやく入手して出かけると、必ずと言っていいほど、あの編集者H氏はいるなぁ・・・・・・不思議だ。)せめて、談春の魅力を知るためにも、まずは、寄席に行け!」とでも言わせて欲しかった。

(3)談春の“完全ノーカット”『六尺棒』を放送することが魅力
→すでに述べたように“拙速”な企画のため、談春の高座そのものも、音響を含めたコンテンツとしても秀逸とは言えない。あの文楽の芸の師匠であった三代目三遊亭円馬の音源が残っているが、ノイズはあっても、この噺を聞くなら、当り前だが円馬のほうが上である。 コロムビア「落語蔵出しシリーズ(10)」

 この番組をコンテンツとして肯定するなら、「立川談春ファン倶楽部結成10年記念ビデオ」というところだ。
 もし、本当に“余すところなく”談春の魅力を伝えたいという意図があるのなら、後日『紺屋高尾』『文七元結』『三軒長屋』あるいは『包丁』『九州吹き戻し』あたりをノーカットで放送し、談春フアンや落語ファンの“お耳直し”とすべきだろう。

 BSのコンテンツは、開局当時からは随分、質も量も改善されたと思う。しかし、立川談春さえ出せば、今の落語ファンが見て、かつ評価すると考え、突然の収録のために落語会を開催するなどまったくもって論外。そもそも30分で高座と対談とを詰め込もうということ自体に無理がある。談春自身、また坂井さんやさだまさしさんも分かっていながらの登場なのかもしれないが、こんなお手軽な番組を作っているようでは、開局10周年記念が泣くだろう。
 見た後で、このデータは消去。その代わりに、時代劇専門チャンネルで放送された横浜にぎわい座での三遊亭遊雀の『四段目』を収録したが、良かった。もちろんこれは蛇足・・・・・・。
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by kogotokoubei | 2010-12-18 19:00 | テレビの落語 | Comments(2)
通算五回目の最終回。“野毛の地下秘密倶楽部”は、大いに盛り上がった。
 前回(8月20日)も楽しめたので、期待していたが、期待を上回るフィナーレ。この二人それぞれの持ち味が十分に発揮された。
2010年8月20日のブログ

構成は次の通り。
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(開口一番 林家扇 『真田小僧』)
春風亭百栄  『桃太郎後日譚』
春風亭一之輔 『富久』
(仲入り)
春風亭一之輔 『加賀の千代』
春風亭百栄  『天使と悪魔』
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扇(19:00-19:13)
木久扇の弟子の女流前座さんだが、ちょっとコメントしずらい。最後に高座を降りるときに躓いて屏風にぶつかった時が一番笑いが多かった。勉強してもらいましょう。

百栄『桃太郎後日譚』 (19:14-19:36)
なるほど、こういう新作もあっていい、と思わせるこの人ならではの噺。鬼退治の後で桃太郎の家に犬、猿、雉が居ついて飲んだくれるという設定。「きび団子一つであれだけ重労働させられたんだから・・・・・・」ということで悪態をつく三匹。ただし、雉は喋れず奇声を発するのだが、この奇声もほど良いアクセントになっており、結構練られているように思う。こういうアプローチならいくらでも「お伽噺シリーズ」でもっとこの人ならではの新作が出来そうだ。

一之輔『富久』 (19:37-20:14)
二席目のマクラで「演るんじゃなかった・・・・・・」という反省めいた言葉があったが、私は非常に良かったと思う。久蔵の家が浅草三間町、旦那の家が芝の久保町、富札が鶴の千五百番、富興行の場所が椙森神社という古今亭の設定。師匠一朝譲りなのだろうが、志ん生版がベースであることは間違いない。クスグリも志ん生ネタを多く取り入れており、音源を相当聞いて稽古したような印象。本人の反省は、たぶん、まだコピーしているだけ、という点なのだろう。これから磨くべき要素はあるが、基本部分はまったく問題ない。また、火事が収まった後で見舞客の帳面づけを任せられる場面などは、なかなかの味だ。前回の『五人廻し』の出来が良すぎるので、まだ比較しては可哀想だろうが、今後は冬の十八番に入れることができると感じた。とにかく、早く真打になっていただこう。この長講をダレさせず、しっかりこなせる人は、先輩達にもそう多くない。
*ネタとしての『富久』については過去に書いたので、興味のある方はご参照のほどを。2008年12月25日のブログ

一之輔『加賀の千代』 (20:24-20:39)
軽いこういった噺でも、要所を押さえて笑わせてくれる。このネタは三三もよくかけるが、この人も十分に寄席ネタの定番として自分のものにしている。目一杯のメインディッシュの後に、少しだけおいしいデザートという感じで、味の良い締め方だった。

百栄『天使と悪魔』 (20:40-21:10)
“擬似ノンフィクション”とでも言うべき、この人でしかありえない新作。これこそ百栄落語だろう。真打昇進の三年前、古典か新作かと悩む本人(栄助)の回顧談的(?)なフィクションとマクラで紹介していたが、実際に大いに悩んだからこそ、この作品につながったのだろう。設定は鈴本に一之輔の代演でやってきた栄助。久しぶりの高座なので、楽屋で「古典か新作か?」とネタ選びに悩んでいるところに、「古典の天使」と「新作の悪魔」が登場して葛藤するドタバタなのだが、途中にリアルな業界ネタもふんだんに入るので、ともかく笑えた。会場もひっくり返った、という印象。新作派の同業者(?)からも支持されるような気がする噺で、喬太郎がやっても間違いなく会場は大爆笑であろう。


 この二人のこの会場での会はひとまず終わるようだが、来年は同じ会場で一之輔独演会が始まる。仲入りの際、にぎわい座の方が説明するには、桃月庵白酒のような成功パターンを狙っての独演会、とのこと。要するに“地下秘密倶楽部”で固定客を増やし、ネタを磨き、評判も広がって上の階の演芸ホールで独演会を開くまでに出世(?)しようという戦略だ。一之輔なら十分に可能なプランだろう。残念ながら1月21日の第一回目は予定があり行けないが、ぜひ機会を見て駆けつけたい。

 古典の王道を目指す若者一之輔、新作で独自の世界を開きつつある百栄、それぞれの魅力が大いに発揮されたフィナーレ、最後に私服に着替えた一之輔も高座に上がっての挨拶に会場から送られた大きな拍手が、この日の二人の出来の良さを物語っていた。
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by kogotokoubei | 2010-12-17 23:06 | 落語会 | Comments(2)

市馬が副会長!?

昨日の落語協会の理事会で、市馬が副会長に就任したようだ。
落語協会HP
 「ニュース」で次の案内がある。

12月16日の理事会にて副会長に柳亭市馬が決まりました。


 そして、役員一覧。

当期役員 (任期:平成22年6月25日より2年間)
会長 柳家小三治
副会長 柳亭市馬
常任理事 柳家さん喬・林家正蔵・三遊亭吉窓
理事 桂文楽・古今亭志ん輔・入船亭扇遊・三遊亭歌る多・五明楼玉の輔
監事 三遊亭圓丈・柳家さん八・柳家小さん
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相談役 柳家さん助・橘家圓蔵・古今亭圓菊・三遊亭圓窓・
入船亭扇橋・林家こん平・林家木久扇
顧問 三遊亭金馬
最高顧問 三遊亭圓歌・鈴々舎馬風



 古今亭志ん輔のユニークなブログで昨日「月例の寄合い」があったことは知っていたが、その内容はもちろん明かされていなかった。私は、故志ん五師に代わって、志ん輔が理事から常任理事になったのでは、と勝手に推測していた。その場合、入門も真打昇進も同期の扇遊と一緒になるだろうと思っていたが、さすがに今年理事になったばかりでは難しかったようだ。しかし、まさか市馬副会長は読めなかったなぁ。
 
 下記の前期までの役員の顔ぶれを見てもらえば分かるとおり、市馬だって今年の入閣(?)なんだよね。
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当期役員 (任期:平成20年4月1日~平成22年3月31日)
会長 鈴々舎馬風
常任理事 三遊亭金馬・柳家さん喬・三遊亭歌司・柳家権太楼・古今亭志ん五
理事 古今亭圓菊・柳家小三治・入船亭扇橋・桂文楽・林家木久扇・
   古今亭志ん駒・春風亭一朝
監事 三遊亭圓丈・柳家さん八・柳家小さん
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 これは、ビジネス社会で言うと、とんでもない市馬の抜擢ということになるが、来年でようやく五十歳。あの世界では、まだまだ若手ですよ、はっきり言って。
 古希を越えた会長を支えるのに、昭和二十年代生まれの六十歳前後の人ではなく、二世代若手を右腕にしようという案が小三治会長自身によるものなのか、ある理事の根回しがあったのか、はたまた理事達の総意に近いのか、もちろん分からないが、私は違和感を拭えない。
 柳家門下によるリーダーシップは強いとは思うが、ハイテク企業でも外資でもない落語協会で、そんなに一気に若手に委譲する必要はなかろう。
 分からん、やはりこの人事はよく分からんぞ・・・・・・。次期会長として市馬に帝王学(?)を授けるための措置、なんてことはないだろうね!?
 はっきり言って名誉職でしょう、この団体の会長なんて。過去は文楽、志ん生、円生、そして小さん、円歌、馬風、小三治ときたんだから、あたしゃ、次期会長はさん喬か権太楼を想定している。もちろん、体調の問題や本人の意志もいろいろ影響するけど、次期会長に市馬は、ないわなぁ。

 まぁ、同じ小さん門下の中で、会長の手足となって動けて、若手との橋渡し役ができる、ということで市馬への期待が強いのは分かるが、それって副会長なんて役職名を必要とするものなの?
 どうも、この人事の裏側に何かあると勘ぐりたくなるなぁ・・・・・・。

 次に協会が発信するだろう大きなニュースは来年の真打昇進者の発表だろう。例年ならとっくに公表されている時期を過ぎている。しかし、志ん五師匠が急逝され、その後の新役員体制づくりの後で、小三治新会長としての意図が見える形で昇進者が明らかになると思っていた。だから、この人事も真打昇進者の選定にからんだものと察することもできる。
 さてさて、従来通りの年功トコロテン方式なのか、それとも抜擢昇進などがあるのか、今のところは、楽しみに待つとしよう。ちなみに、来年の昇進者については、一之輔の抜擢期待などを含めて過去に書いているので、ご興味のある方は10月13日のブログをご参照のほどを。
2010年10月13日のブログ
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by kogotokoubei | 2010-12-17 08:56 | 落語協会 | Comments(10)
久しぶりの紀伊國屋ホール。ブログを書く前、2008年2月19日の「黒談春」以来である。あの時は『札所の霊験』だったなぁ。そういえば、会場で3月に新百合ヶ丘の麻生市民館での独演会のチケットを売ってたっけ。あの頃は多摩川越えはまだ制覇(?)していなかった。
 回想はここまでとして、今夜の内容。ある程度、この二人でこのテーマなので想像はしていたが、そのお目当てを楽しむことができた趣向だった。次のような構成。

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市馬・喬太郎 プロローグ
市馬 『七段目』
喬太郎『カマ手本忠臣蔵』
(仲入り)
鹿芝居 市馬・喬太郎・二楽
二楽  紙切り
市馬 『俵星玄蕃』
市馬・喬太郎 エピローグ
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プロローグ(19:03-19:13)
ご両人登場。昨晩が初日で今夜が千秋楽という忠臣蔵をテーマにした会について、喬太郎は「最初は談春と三三に依頼があって彼らが断ったのでこの二人になったんでしょう」などと言っていたが、この二人だから、この会なのだろう。二日目なのに、やや不安の色がある喬太郎と、とにかくうれしそうな市馬の表情が対照的だった。

市馬『七段目』(19:14-19:33)
昔の東京落語会の鹿芝居の話がマクラ。七段目で円生の由良助に対して文楽におかるを依頼したが断られ、円生の入れ知恵で小さんにおかる役を頼んだらしいが、今なら涎の出る顔ぶれの鹿芝居だったろう。本編は、あとで喬太郎にいじられていた通り、やや軽めに流した感じ。トリに本番(?)が控えているからね。

喬太郎『カマ手本忠臣蔵』(19:34-20:14)
これを一度は聞きたかったので、まずは目的一つ達成。マクラは笑えたが、あれほど喬太郎に“他言無用”と釘をさされては、書けないなぁ。忠臣蔵を現在の噺家で演じるなら、誰がどの役か、という話なのだが、それ以上は書かない。本編は、“なるほど”という構成、ではある。要するに浅野内匠頭が吉良義央に刀傷におよぶ理由が、内匠頭がオカマだったことにある、という仮説からどんどんストーリーを膨らませている。四十七士を結ぶものは、義でも忠でもなく、オカマの主君への愛であった、という設定が背景にあるのだが、たしかにユニークな筋書きである。しかし、私も、近い席にいた年配の方々もちょっとこの高座には引いてしまう。私の場合、喬太郎の新作は、大いに笑えたりその創作能力に感心したりするるものと、どうしてもついて行けないものとに極端に分かれる。一度聞けたことを良しとするが、やはり彼には古典を期待してしまう。

鹿芝居(20:30-20:42)
市馬の大石内蔵助、喬太郎の吉良、二楽が赤穂浪士の一人、という設定。とりたてて言うこともないが、槍で刺したり、刀で切る効果音と動作のシンクロが合わなすぎる。裏方はもうちょっと練習するなりして臨んで欲しい。いくら鹿芝居だと言っても、あれでは興醒めである。

二楽(20:44-20:58)
市馬も笑いながら言ってはいたが、あまりにも忠臣蔵や落語を知らなすぎるだろう。『中村仲蔵』『淀五郎』というお題をいただくことは十分想定できたはず。また、『淀五郎』について会場に助けと求めた際に、「市馬さんが落語でやる」という答えをいいことに市馬の顔を切ったが、答える客も客だ。「四段目」「あるいは「切腹」と答えて欲しいものだ。

市馬『俵星玄蕃』(20:59-21:10)
これも、一度は聞いて見ておきたかったので、目的の二つ目は達成。確かに唄は上手いが、全体として、やはり三波春夫には勝てない。特に「時は元禄15年12月14日~」の語りの部分の声の艶、リズムが違う。もちろんしょうがないことだが、市馬もお金をとって聴かせるなら、少し浪曲も勉強してあの三波春夫の語り口を真似る必要があるだろう。唄は自分なりにこなしていいが、浪花節をベースにした語りは、一応基本の形や口調がある。語りの部分でもっと盛り上がるはずなのだ、この唄は。


忠臣蔵をテーマにした余興としては楽しかったし、目的とする芸も聞くことはできた。しかし、企画全体が色物という感じで、満足感はあまりない。幕開けが微妙に遅れたり、芝居と音響との度重なるズレ、開演前の館内放送でのつまらない川柳など、正直言って居心地が良いとは言えなかった。これは初めから分かってしかるべきことだったが、同じ高田文夫事務所が企画した4月20日の高円寺での喬太郎の小満んとの会が素晴らしかったので、ないものネダリの期待をしてしまったようだ。2010年4月20日のブログ
こういった企画ものは用心してかからないと、いけない。そんなことを反省しながら新宿駅に向かっていた。
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by kogotokoubei | 2010-12-14 23:12 | 落語会 | Comments(4)
M-1が今年の第10会大会を最後に終了するらしい。 スポニチに載っている島田紳助のコメント。 スポニチの記事

大会委員長であり、発起人とも言える島田紳助(54)は「漫才に対する感謝・恩返しの気持ちと、後輩達が漫才で夢の世界に行ってくれたらと、10年前の吉本興業の谷君とM−1を作りました。私の中でほんの少し漫才に恩返しできた気持ちです。最後のM−1で、また一組スターが生まれる事を心より願っています」とコメントを発表した。



 サンケイスポーツには微妙に内容の違う下記のコメントが紹介されている。 サンケイスポーツの記事

イベントを企画した大会委員長の紳助は「たくさんの後輩が育ち、漫才を目指す若者が増え、レベルも上がった。漫才へ恩返しできた気持ち。最後のM−1で、また1組スターが生まれることを心から願ってます」とコメントし、国民的イベントに成長したことに満足している様子。



 12月12日に行われた準決勝の会場で、今年で終了の件が発表されたらしい。主催者のコメントは次の通り。

主催するよしもとクリエイティブ・エージェンシーは「この大会から、若い才能を発掘し、多くのスターを生み出した。目的を達成できた」と説明。放送を担当する朝日放送も「全国に漫才を広めて国民的イベントとして成長した。ステップアップするいい時期として発展的に解消する。今後は新たなイベントに取り組んでいきたい。前向きなピリオドです」と語った。

 

 他のメディアにも、“発展的終了”というような紹介がされている。確かに、視聴率的には悪くないし、今年も予選参加組数が4,000を越えているようだから、この番組のファンや視聴率低迷にあえぐ他の番組の制作者などから見れば、「なぜ、やめるの?」ということなのかもしれない。

 私は、あえて言えば、ホッとしている。
 以前に、いわゆる“ショートコント”や“一発ギャグ”ばかりをたれ流すテレビのお笑い番組が相次いで終了することについて書いたが、ああいった番組が数多く生れたことにM-1の影響は小さくなかったはず。
2010年9月15日のブログ
 M-1での持ち時間は、予選一回戦が2分、二回戦・三回戦が3分、準決勝と決勝でさえ4分である。寄席だって短くても10分以上の出番はある。予選の2分で生き残りをかけるため、出場者はたった2分間でインパクトを与えることができる“一発芸”に賭けるようになるのはやむを得ない。そして、そういった“芸”を持つ多くの若手お笑い芸人を、一山いくら、とばかりに出演させる、制作費も中身もお手軽なお笑い番組が同時多発的に始まった。それらの番組は、どのチャンネルを回しても、同じような顔ぶれ同じような内容に終始するから、出演者もその“芸”とやらも飽きられるのは時間の問題だった。 そういった番組発生の源はM-1にあったと、私は見ている。

 さて、そのM-1、これまでの優勝者と事務所、そして予選参加組数は次のようになっている。
□第1回(2001年) 中川家 吉本興業(大阪) 1,603組
□第2回(2002年) ますだおかだ 松竹芸能 1,756組
□第3回(2003年) フットボールアワー 吉本興業(大阪) 1,906組
□第4回(2004年) アンタッチャブル プロダクション人力舎 2,617組
□第5回(2005年) ブラックマヨネーズ 吉本興業(大阪) 3,378組
□第6回(2006年) チュートリアル 吉本興業(大阪) 3,922組
□第7回(2007年) サンドウィッチマン フラットファイヴ 4,239組
□第8回(2008年) NON STYLE よしもとクリエイティブ・エージェンシー東京 4,489組
□第9回(2009年) パンクブーブー よしもとクリエイティブ・エージェンシー東京 4,629組

 過去九回中、吉本の所属が六回と三分の二を占める。出場者そのものに吉本所属の人が多いのだろうし、あくまで結果なのかもしれないが、ちょっとねぇ・・・・・・。
 参加組数が年々増えているということは、それだけ参加するためのハードルが低いということであり、“一発芸”で“一発”当ててやろうとコンピを組む若者が増えている、ということでもあるのだろう。もちろん、生まれる数も多いが、消えていく数も相当に多いはず。

 もし、10分持たせる芸でなければ勝ち残れないルールなら、こんなには参加しないと思う。それは、過去の優勝者のうち、どれだけ寄席で10分持つか、と想像するだけで分かることだ。寄席では、時間がかかる舞台設営を伴うコントなどは望めないし、客も期待していない。それこそ、「しゃべり」だけで10分間会場を沸かせるのは、大変なことである。
 こんなこと言うと、こういう指摘もあるだろう。「昔はしゃべくり漫才が中心だったけど、テレビの時代なんだからしゃべくりだけでなく、ショートコントだっていいじゃないか!」など。
 しかし、島田紳助がこの番組を発案した時、彼が恩返ししたかったのは、彼を育てた上方ならではの“しゃべくり”漫才の世界じゃなかったのか、ということ。
 紳助という芸人については必ずしもポジティンブな見方をしていないが、彼の“恩返し”という気持は評価できなくもない。最初は、若手漫才芸人が陽の目を見る場をつくろうという、純粋な思いもあったのだろう。

 では、芸人としてそれ相応の地位にまでたどり着いた島田紳助という個人ではなく、企業として成長した吉本が“恩返し”すべきなのは何か、とあえて問おう。それは明らかに“上方落語”ではないだろうか。初代と二代目の春団治、三代目の三遊亭円馬、東京での柳家金語楼などなど、吉本は、かつて落語、とりわけ上方落語の隆盛に貢献してきた歴史がある。しかし、その後は漫才に強く傾斜した結果、噺家が活躍する場が減り、そうじゃなくても元気をなくしてきた上方落語が風前の灯の状態になることを後押ししたとも言える。ある意味、上方落語を踏み台にした結果の吉本の今の繁栄なのだ。M-1が終了し、同じ漫才で新たなイベントを考えるのはビジネスとして構わないが、せっかくの機会である。漫才のことを考えるだけでなく、その歴史の重要な場面で踏み台にしてきた上方落語への恩返しを考えても、決してバチは当たらないだろう。

 そういえば、今年4月には、吉本、松竹芸能、米朝事務所が合同で「上方落語まつりinミナミ」を開催した。2010年4月28日のブログ
 この企画は吉本の上方落語への恩返しの気持の第一歩と考えられないこともない。これだけに限らず、ぜひ吉本がバックアップして上方落語が末長く活気づくような企画を考えてもらいたいものだ。たとえば、繁昌亭が主催する賞だけでなく、「よしもと上方落語新人賞」というような若手の登竜門的な賞の主催などはどうだろうか。もちろん、所属事務所を問わず、たっぷりな持ち時間で、若手落語家が憧れるようなイベントになれば、漫才だけではない吉本、としてその存在感も増すだろう。もはや、創業者吉本家でも、その後継だった林家の会社でもないのだから、過去のしがらみはないだろう。落語がまだ元気な今のうちだからこそ、その灯を消さず、いやもっと輝かせるような企画を、ぜひご一考願いたい。
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by kogotokoubei | 2010-12-13 11:08 | 幸兵衛の独り言 | Comments(2)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛