噺の話

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*お江戸日本橋亭のホームページより

オフィスM'Sさん主催のミックス寄席も、会場のお江戸日本橋亭も初めてである。
なんと言えばいいのだろう、この密集度、そして舞台と客席の密着感・・・・・・。
前の4列は床に畳を敷いて座椅子を並べ1列9席。その後ろにパイプ椅子で一列10席が5列。加えて舞台上手側には壁のくぼみのスペースに8席分が作られている。約100席が無駄なく積み込まれた空間。とにかく狭いのだが、馴染みのお客さんが多いらしく、江戸しぐさで言うところの肩引きなどをして、お互い譲り合いながら席が埋まっていき、ほぼ満席である。
一列目の座椅子のお客さんと高座までの距離は2mmくらいではなかろうか。床に座っているので視線は45度見上げる先が高座という按配かと察する。その゛かぶりつき゛には、常連と見られる菊之丞ファンが並んでいるようだ。なんとも言えない濃~い寄席空間があった。

さて演目。
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(開口一番 柳亭市也 道具屋)
古今亭菊之丞 明烏
(仲入り)
古今亭菊之丞 茶の湯
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市也(19:00-19:17)
菊之丞と市馬がよく飲みに行くという話が後であったことから察するに、両師匠の友好関係に基づく開口一番なのかと思うのだが、今後の精進を期待しよう。

菊之丞・明烏(10:18-20:00)
15回目の会で過去11回が雨、そして今日も雨、という雨男の話に続き前日まで青森で三日間行ってきた学校寄席でのエピソード。学校と言っても「保育園」だというからすごい。このマクラから明烏が聞けるとは思ってもいなかった。若旦那も似合うし、源兵衛と太助の掛け合いのテンポもよく、加えてお茶屋の女将も色っぽい。若旦那が吉原でぐずるシーンでは独特のクスグリも楽しめた。

菊之丞・茶の湯(20:10-20:50)
市馬師との二人カラオケボックスのマクラから「寝床かな?」と思っていたらこの噺。ご隠居や定吉、三軒長屋の住人などなど、安心して落語の世界に身をあずけられる。この人としては珍しいネタかと察するが、こういう噺でも味わい深い。

年末12月20日のビクター落語会大感謝祭で、たった20分の菊之丞にストレスがたまっていたので、゛聞きなおし゛のつもりで来た「ひとり会」。たっぷりの菊之丞は、やはり良い。間違いなく将来の本寸法江戸落語を背負って立つ一人である。会場も常連さんが多いようで寄席の雰囲気満喫である。
少し狭いのが難だが、もしかするとこれが江戸時代の典型的な寄席に近いのかもしれない。演者が近いので、細かな所作も含めて噺を丸ごと楽しめる落語、という印象。地下鉄駅に向かいながら、大きなホール落語の合間にまた来てみよう、と思った次第である。
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by kogotokoubei | 2009-01-30 22:52 | 落語会 | Comments(0)
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*木彫りの鷽(亀戸天神社のホームページより)

 明日1月25日は初天神である。

 この噺は前座噺の範疇に入れられるが、決して生易しい噺ではない。

 浜美雪さん『師匠噺』の中の柳家さん喬・喬太郎の章で、「初天神」修行中の喬太郎の回想があるので引用する。
浜美雪_師匠噺
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「僕も中途半端な覚え方をしていたんですけど、『もうわかった。
全然ダメだ』って途中で止められてこう言われたんです。
『お前の「初天神」には雑踏が出てない』って」
 劇画の名台詞を思わせる印象的な言葉だ。
「でもそんなことを前座の頃言われてもね(笑)。でも、あとの
弟弟子はみんな『初天神』をどんどん上げてもらってるんですからね。
 ですから普段の生活については厳しいと思ったことはないですけど、
落語の稽古に関しては確かに『何で俺だけが』っていうのはあったかも
しれません(笑)」
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 雑踏の中にはアベックもいただろうし、恋焦がれた人に会いたい思いで出かける人もいただろう。

 次のような初天神を季語にした俳句がある。
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紅すこし 初天神と いひて濃く (上村占魚)
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 なかなか艶っぽいじゃありませんか。

 原話は、安永2(1773)年の『聞上手』にある「凧」であると、『落語手帖』(矢野誠一著)にある。落語としての成り立ちは元が上方種で、松富久亭松竹作。この松竹さんは『千両みかん』や『立ち切れ線香』の作者とも言われる。江戸に移したのは桂文楽(八代目)や三遊亭金馬(三代目)の芸の師匠であった三代目三遊亭円馬。この人の上方ネタの江戸移植に関する貢献は、名人と言われた三代目小さん同様に大きいと思う。

 さて、現在よく演じられる内容を簡潔に説明すると、こんな噺である。
(1)大工の熊五郎が金坊と初天神に出かける
旧暦正月25日、大工の熊さん新しい羽織を着て初天神に出かけようとするが、おかみさんに「だったら金坊も連れてって」と言われる。「あいつを連れて行くとあれも買ってくれこれも買ってくれって何でも欲しがるからだめだ」と断ろうとするが、そこに倅の金坊がちょうど帰ってきて、「今日はおねだりをしない」という約束で金坊を連れて行くことになる。

(2)金坊のおねだり
天神様の境内に近づくにつれ出店が多くなってくる。しばらくは金坊もがまんしていたが、とうとうたまらず「飴買って~」と大きな声で往来の真ん中で泣き出し、熊さんもたまらず買ってしまう。次に「団子買って~」となり、゛蜜゛が着物にたれるといけないからと熊さんほとんど舐めてから金坊にあげるが、「これじゃ蜜がない~」と泣き出して、蜜壷に舐めまくった団子を入れなおしたので熊さんと団子屋の親父と口論となる、というお決まりの場面がある。

(3)熊の凧上げ
今度は凧を買ってくれと騒ぎ出す金坊。熊さん根負けして買ってしまう。しかし、凧上げに自信のある熊さん、空き地に行って金坊から凧を取り上げ熱中し、金坊が「代わっておくれよ」といっても「うるせい、黙ってねえとひっぱたくぞ」と貸さない。酔っ払いに熊さんがぶつかり金坊が謝る始末。
金坊の嘆き節でオチ。「あーあー、こんなことなら、おとっつぁんなんか連れてくるんじゃなかった」

 上方版は微妙に違っていて、子供は金坊から寅ちゃんに代わるが、彼のマセ具合と悪童度合いがエスカレートしている。

 寄席で15分位で切り上げる時は凧上げの前までがほとんど。というか凧上げまでを演じたこの噺を聞くことは最近は稀だ。原話が「凧」なので、昔はなかったであろう団子のくすぐりなどを削ってでも「凧」まで通すべきかもしれないが、この噺の本来の可笑し味が伝わるならよいのだと思う。
この噺のエキスともいえる金坊のキャラクターを象徴する例をいくつか紹介しよう。
(a)初天神に連れて行くかどうかで夫婦がもめている場面に登場する金坊の言葉
「へへへ・・・・・・おとっつぁんとおかっつぁん、言いあらそいをしていますねェ。あの、一家に波風が立つというのは、よくないよ、ご両人」

(b)大福や蜜柑を買ってくれとねだる時の熊さんとの会話
金「ねえ、おとっつぁん、そんなこと言わないで買っておくれよ。
  あそこに大福売っている。ねえ、買ってよ」
熊「大福はだめ、大福は毒だ」
金「毒?へえ、大福毒なんての、はじめて聞いた。じゃ蜜柑買って」
熊「蜜柑も毒だ」
金「じゃあ・・・・・・」
熊「毒だ」
金「なにも言ってないじゃないか。ほらね。あすこ、バナナ売ってるよ、あれ」
熊「あれ?バナナ、八十銭・・・・・・あ、あ、、毒だ毒だ」
金「おとっつぁんは、八十銭が毒なんだ」

(c)凧上げに夢中になった熊さんが酔っ払いにぶつかった時の金坊の言葉
「あっ、こんだ、おとっつぁんがぶつかっちゃったい。しょうがねえな。・・・・・・どうもすいません、それァ、あたしの父親なんで、ご勘弁願います。・・・・・・おとっつぁん、泣くんじゃあねェ、おいらがついてらあ」
                     (麻生芳伸編『落語百選』-冬-より)
麻生芳伸編_落語百選-冬-

 一般的なサゲは、「こんなことなら、おとっつぁん連れて来るんじゃなかった」であるが、紹介したサゲも楽しい。
 少しませたところのある、かしこくて洒落っ気のある金坊がイメージできるかと思う。

 大工の熊さんだから、この天神様は亀戸天神がふさわしいだろう。正式名称は「東宰府天満宮」または「亀戸宰府天満宮」といって正保3(1646)年天神信仰を広めていた菅原道真公の末裔によって祠を建てたことが最初らしい。

 初天神には「うそ替え」が行われる。落語を素材にした傑作映画『幕末太陽伝』にも「うそ替え」のシーンがあったが、どんな行事なのか、亀戸天神社のホームページから引用する。
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“うそ”は幸運を招く鳥とされ、毎年新しいうそ鳥に替えると
これまでの悪い事が“うそ”になり一年の吉兆(きっちょう)を
招き開運・出世・幸運を得ることができると信仰されてきました。
江戸時代には、多くの人が集まりうそ鳥を交換する習わしがあり
ましたが、現在は神社にお納めし新しいうそ鳥と取替えるように
なり、1月24・25日両日は多くのうそ替えの参拝者で賑わいます。

うそ鳥は、日本海沿岸に生息するスズメ科の鳥で、太宰府天満宮
のお祭りの時、害虫を駆除したことで天神様とご縁があります。
又、鷽(うそ)の字が學(がく)の字に似てることから、学問の神様
である天神様とのつながりが深いと考えられています。
亀戸天神社の“うそ鳥”は、檜で神職の手で一体一体心を込めて
作られ、この日にしか手に入らない貴重な開運のお守りとして
とても人気があります。
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 今日の亀戸天神は、「うその木彫り」を持った人々よりも、「合格祈願の絵馬」を持った受験生と親ででごった返すようだ。たしかに、受験シーズン真っ盛りでの初天神である。受験戦争など存在しない時代のガラッパチ熊さんとやんちゃで外で遊ぶのが大好きな金坊の江戸っ子親子から、中には「モンスター」もいる教育ママとそのママが溺愛する、ゲームが大好きな屋内派の受験生に役者は代わったわけだが、いずれにしても親子とは縁が切れないのが天神様のようだ。

 若手中堅で思い出すのは三遊亭遊雀だ。今は開催されていない「南大沢寄席」という多摩地域の寄席で、パイプ椅子の三列目、唾がかかるかと思われる距離で体験した遊雀の初天神には圧倒された。とにかく金坊の「こわれ方」が凄い。ベテランで定評のあるのは、やはり東の小三治と西の仁鶴ということだろう。小三治師匠のこの噺は若い時の勢いのある音源も良いし、今年初席の末広で演じていた様子をテレビで見たが、今でも十分に味わいがある。仁鶴師匠の上方版は聞く度に大爆笑である。仁鶴師匠の関東エリアでの今以上の落語会開催を願う人は結構多いと思うが、どうだろうか。
 「うそ替え」が現在の経済環境を「嘘」にしてくれるのなら、少しでも大きな新しい「鷽」を買いに行ってもいいのだが・・・・・・。せいぜいこの時期は『初天神』を聞き、いっときの笑いで暗い現実を忘れるのが精一杯かもしれない。
柳家小三治_初天神
笑福亭仁鶴_初天神ほか
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by kogotokoubei | 2009-01-24 11:13 | 落語のネタ | Comments(0)
昨年5月17日以来の有楽町朝日ホールである。演目は次の通り。
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(開口一番 柳家花いち 元犬)
古今亭朝太    熊の皮
三遊亭歌武蔵   鹿政談
五街道雲助    二番煎じ
(仲入り)
林家正蔵     悋気の独楽
柳家さん喬    福禄寿
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花いち(14:00-14:14)
あなたが獲得した約15分という時間の重みを感じて、精進して欲しい。

朝太(14:15-14:34)
かつて写真入りのポスター(チラシ)を見て憧れていた会への初出演、とのこと。昨日はカミさんと会場に来てポスターを見たら、写真入りは真打だけで名前だけだった、という話から昨年7月以降の結婚生活にふれたマクラをふって本編へ。この人は志ん朝師匠最後の弟子。志ん朝師匠追悼記念の落語研究会や「いつか朝日名人会」などをテレビで見るだけで実は生は初めて。お互い初である。正直なところテレビの朝太には魅力を感じなかった。今日は、その後の成長が明確に見て取れる。甚兵衛さんとおカミさんの会話の前半部分でのおカミさんの演技、医者と甚兵衛さんとの後半部分での甚兵衛さんのとぼけた味に可能性を感じる。なるほど、師匠がこの人を弟子にしたのは、この潜在力なのか、という印象。

三遊亭歌武蔵(14:35-14:56)
お決まりの相撲ネタは某横綱の思いがけない快進撃。そして、相撲も江戸の名物、他にも江戸名物があり、奈良では犬ではなく鹿、と本編へ。今日は、この会のさまざまなしがらみのありそうな雰囲気の中で、歌武蔵だけがいつもの力量を発揮していたような気がする。裁きの場での悪役などのモノマネのクスグリは笑えた。大滝秀治のマネを分かった人がどの位いるかは不明だが。

五街道雲助(14:57-15:36)
この噺の要諦は、火の番をするそれぞれの旦那衆の演出と、いのしし鍋をつつくシーンだと思うが、さすがの雲助師匠、という印象。二組が交代で回るという設定ではなく一人が留守番で他の旦那衆が出かける設定であるとか、いくつか定番との違いはあるものの、見せ場はきっちり押さえる。月番さん、高田の先生、河内屋さん、伊勢屋さん、そして半ちゃんというそれぞれのキャラクターを活かしながら、色気に乏しい部分を半ちゃんの吉原での思い出話で登場する花魁たちがカバーする。心憎い演出だ。

正蔵(15:55-16:19)
林家の正月の行事のマクラから本年へ。たしかに上手くなったと思う。しかし、なのだ。非常にコメントが難しいのだが、寄席に人を呼ぶためにがんばって欲しい、ということで今回は終わり。

さん喬(16:20-17:00)
初席でのお年玉の話題などで様子を見ながら本編へ。間違いなくさん喬師匠、ニンな噺だと思う。円朝作に人情噺でサゲはなく、異母兄弟の愛憎物語が主題。残念なのは後半のヤマでの言い間違いだ。私自身は、このままCDで発売して欲しいが、果たしてさん喬師匠がどう思うかだ。

記録の通りで、それぞれの持ち時間は次の通り。
開口一番   15分
朝太      20分
歌武蔵     20分
雲助      40分
正蔵      25分
さん喬     40分
皆さん、きっちり時間厳守であった。
これは実に悩ましい時間配分だ。「朝日名人会」であって、寄席ではない。
歌武蔵が20分?、トリのさん喬師匠で40分?
納得できない。
朝太が「開口一番」の役割なら花いちは必要ない。これは人の問題ではなく番組構成の問題である。私がこれまでに行ったこの会で、午後5時に終わった記憶がない。5時半位になるのは覚悟しているのだ。だから2時開演なのだろう。この会は、確かにお尻が痛くなる位長時間の会なのだが、それを承知でお客さんはやって来ているはず。
良くも悪くも”落語でお腹いっぱい”、がこの会の特徴とも言えるのだが、今回は喩えて言えば、どうもフルコースの中で肴か肉のどちらか一品が不足していたような印象なのだ。あるいはそれぞれの料理を食べ終わらないうちに料理を替えられた感じ、といったほうがよいかもしれない。

昨年12月20日のビクター落語会大感謝祭でも書いたが、演者を減らしてでも一人当たりの持ち時間を増やすべきだと思う。20分なら寄席でいいし、むしろ寄席のほうが、こんな異様な緊張感のないなごやかな雰囲気の中で、マクラも自由にできる。
この会の関係者の新年会が予定されていて、どうしても5時には終わりたい、という決め事でもあったかのような時間厳守へのプレッシャーを各演者から感じた。だから、それぞれの噺に余裕がないように思えたのだ。それが非常に残念であった。さん喬師匠はあと最低10分プラスでしょう、と言いたい。
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by kogotokoubei | 2009-01-17 19:58 | 落語会 | Comments(0)

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 小学館から隔週で全26巻発売予定のシリーズ第一巻「志ん朝(壱)」を特別価格490円で購入した。『夢金』と『品川心中』二席のCDが付いている。第二巻以降は、「志ん生(壱)」、「小さん(壱)」、「円生(壱)」と各三席づつ入ったCDの発売が続くようだ。その後に「志ん朝(弐)」。ちなみにネタは『抜け雀』と『厩火事』である。各噺家を紹介する雑誌部分もあるが、目玉はあくまでCDである。
 このシリーズについては、評価を書くのが難しい。第一巻に収録されている志ん朝師匠二席の音源は、『夢金』が昭和52年12月3日の三百人劇場での収録、『品川心中』が昭和54年11月12日の大阪は毎日ホールでの収録。いずれもソニー・ミュージックの「志ん朝復活」シリーズで発売済みの音源である。『夢金』は『佐々木政談』と、『品川心中』は『抜け雀』とのカップリングだった。
 まだこの音源を持っていない人が、この値段でこの二席を購入でき、かつ雑誌もついているとなると、これは間違いなく☆五つであろう。しかし、私のようにすでに持っている人が淡い期待で購入して、「なんだぁ、同じ音源か・・・・・・」となると、雑誌の内容だけの評価にならざるを得ない。また、第二巻からは1,190円となると、このシリーズをどう考えるか難しいのだ。早い話が、たとえば3席のうち2席はすでに持っているような場合、1,190円での投資対効果は見合うのかどうか。

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 もちろんそれぞれの落語ファンは、愛好家としての歴史も好みも違う。図のようなマトリックスで考えた場合、このシリーズにもっとも魅力を感じる人は、落語愛好家歴が浅く、かつ現役の落語家よりも過去の古典の名作に思い入れのある落語ファンだろう。Cのタイプ向けということになる。小学館の狙いがそこにあるのなら、それはそれで結構。AやDのタイプ、要するに現役志向の落語ファンからの購入は、それほど期待できないかもしれない。なぜなら現役志向の落語ファンは、私のようにCDの音を聴いて想像力を膨らませることに喜びを感じるタイプよりも高座のライブ映像を欲する傾向が強いように思うのだ。たぶん、DやAのタイプに近い落語愛好家は、ディアゴスティーニの「落語百選」DVDコレクションの方を好むだろう。あえて言えば、私はBゾーンである。すでに相当数の音源を所有済みである。いわば古株の古典中心の落語ファンの財布から1,190円をどれだけ引き出せるか、非常に疑わしい。
 
 小学館は最近になって落語ファンになった多くの若い人達に、格安で古典の名作を提供する企画をしてくれたようだ。
 しかし、今後発売されるそれぞれの名人の音源は、まず間違いなく過去に発売済みのコピーだろう。また、志ん朝シリーズ、円生シリーズのCDをすでにビジネス化しているソニー・ミュージックが、今後もこのシリーズに既存の音源を提供するのなら、市場でのカンニバリズムをどう考えているのか疑問も感じる。
 『サライ』での落語特集をすべて購入していたので、今後に期待していた。ぜひ古株の落語ファンも喜べる、たとえば未発表新音源の発売などの企画を期待したい。

 このシリーズによって落語の名作を味わう人が増えることについては拍手を送りたいが、いろいろと考えさせられることもある、そんな企画である。
 そして、今後発売される音源に未発表の新規発売が数多く用意されているのなら、私はこのブログで素直にあやまりたい。そういう意味では期待もしているのだ。だから、購入して開封しなくても分かるよう、音源情報を明かにして欲しい。

昭和の名人_古今亭志ん朝(壱)
志ん朝復活_夢金・佐々木政談
志ん朝復活_品川心中・抜け雀
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by kogotokoubei | 2009-01-10 09:20 | 落語のCD | Comments(4)
会場はほぼ六分の入り。寄席らしい雰囲気がほど良い。
演者とネタは次の通り。
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春風亭正太郎 牛ほめ
瀧川鯉昇    武助馬
柳家喜多八   盃の殿様
(仲入り)
入船亭扇遊   厩火事
瀧川鯉昇    宿屋の富
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正太郎(19:00-19:17)
昨年3月のビクター落語会の開口一番(『初天神』)以来、久しぶりで聞いた。
前座としてなら「よく出来ました」といえるが、正朝師の唯一の弟子なら、もっと江戸弁でテンポの良い元気な落語ができるよう、今後がんばって欲しい。

鯉昇『武助馬』(19:18-19:42)
カミさんとタミフルをネタにしたマクラが可笑しかった。その後、昔は役者になりたかった、という伏線から『四段目』など歌舞伎系かと察していたら、生で初めて聞くこの噺。トリの一席もあるため手短かなネタということなのだろう。馬の前足を担当する兄貴分の放屁で「目にしみる」と演ずる場面などは、十八番の『時そば』でまずいそばに七転八倒する場面を彷彿とさせる名演技。この人は、やはり生で聞かないといけない。まだエンジン全開という感じではなかったが、そのパワーはトリに残していたのだろう。

喜多八(19:43-20:17)
寄席初席の慌しさ、というこの時期にはお決まりのマクラでなごませながら、12月20日のビクター落語会大感謝祭と同じネタ。本人が弁解がましくマクラでふっていたように、少し初席とアルコールの疲れであろう、東海道の道中言い立てもやや噛みっぱなしで生彩がない。お客さんが暖かく拍手は出たものの、12月20日の出来とどうしても比べてしまう。残念ながら今日は喜多八の日ではなかったようだ。終了後は三人で都内で一杯飲る予定とかマクラで言っていたが、今夜は反省の弁が多そうだ。

扇遊(20:28-20:50)
良かった。髪結いのお崎さんも相談相手の旦那も、そして年下の髪結いの亭主も、十分に人物が生きていて、そこになんとも言えない落語の世界が広がっている。昨年も結構拝見したが、『夢の酒』や『佃祭』など、夫婦をはじめ江戸庶民の世界に、ス~ッと連れて行ってくれる。今年も安心して落語の世界を楽しむために、この人に会いに行く回数は増えそうだ。

鯉昇『宿屋の富』(20:52-21:26)
扇遊師の出来に刺激を受けたのだろう、気合が入っていたように見受けた。とにかく十分に笑えた。冒頭の「庭に富士山」「池が琵琶湖」という上沼恵美子ばりのオリジナルのくすぐりも秀逸だが、ヤマ場は何と言っても富くじ番号を照合する場面。何度も当たり番号を読み上げながら次第に変わる表情と仕草。これだけは生でしか味わえない。鯉昇ワールドを堪能した。

この会は昨年5月7日以来。その時は、三人の中での主任が扇遊師で『人形買い』と『佃祭』の2席。どちらも結構だったし、喜多八師の『鰻の幇間』、鯉昇師『蒟蒻問答』も大いに楽しめた。
「睦会」は現在の正蔵が発起人だったようなことを、この時に誰かが言っていたが、今の三人会で十分。三人三様ながら、昔ながらの落語の世界を味わわせてくれる。

今年の初落語会。寄席の空気が一杯の環境とお気に入りの噺家さん達に満足した夜だった。定時退社で間に合うこともあり番組もいろいろ工夫されているので、できる限り通いたい。しかし、談春、志の輔の独演会に加え、明日の”ほぼSWAの会”など、チケット争奪戦の激しい番組も増えてきた。無理しない範囲で、喜多八師いわく「昔と違ってきれいごとの寄席」の雰囲気を味わうことにしよう。
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by kogotokoubei | 2009-01-06 22:58 | 落語会 | Comments(0)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛