噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

カテゴリ:落語のCD( 10 )

 ミュージックテイトから届いたダイレクト・メールで知ったのだが、明日11月18日、ユニバーサル・ミュージックから、「決定版!!NHK落語名人選」が発売される。

 とはいえ、「NHK落語名人選」として以前から発売していた音源を安く再販することも含む企画なので、自分がすでに持っているものを再び買わないよう注意が必要だ。

 118席を100枚のCDに収め、一枚づつ千円(税抜き)でバラ売りもするし、100枚まとめたBOXでも発売するようだ。
 BOXについては、ユニバーサルのサイトで次のように案内されている。
「ユニバーサル・ミュージック」サイトの該当ページ。
「NHK落語名人選100」の100タイトル全てを素敵なBOXに収納し、豪華特典と一緒にしてCD100枚分と同価格でお届けする超お得セットも在ります。
初回限定商品 POCS-25901 ¥100,000(税抜)
「NHK落語名人選100」BOX
※数に限りがありますので、必ずお近くのCDショップでご確認の上、お早めにご予約ください。

 同サイトによると、次の噺家さんの演目を含んだシリーズ。(現役を含む)

九代目 入船亭扇橋・桂歌丸・古今亭志ん輔・五代目 古今亭今輔・五代目 古今亭志ん生・五代目 三遊亭円楽・五代目 春風亭柳昇・五代目 春風亭柳朝・五代目 柳家小さん・三代目 桂三木助・三代目 桂文朝・三代目 三遊亭金馬・三代目 三遊亭遊三・三代目 三遊亭圓歌・三代目 柳家権太楼・三代目 柳家小満ん・四代目 桂米丸・四代目 三遊亭金馬・四代目 三遊亭圓遊・四代目 春風亭柳好・四代目 柳亭市馬・十代目 金原亭馬生・十代目 桂文治・十代目 柳家小三治・十代目 鈴々舎馬風・初代 桂小文治・初代 三笑亭夢楽・初代 林家三平・二代目 桂小南・二代目 三遊亭円歌・二代目 三遊亭小遊三・八代目 橘家圓蔵・八代目 三笑亭可楽・八代目 雷門助六・八代目 林家正蔵・柳家さん喬・林家木久扇・六代目 五街道雲助・六代目 春風亭柳橋

 志ん朝や談志、文楽、圓生などの名は見当たらないが、なかなかの顔ぶれだと思う。

 ミュージックテイトのサイトにも、拙ブログ10月2日の記事(2015年10月2日のブログ)でご紹介した古今亭志ん朝のCDとDVDのセット「志ん朝 三十四席」や「落語CDブック 人形町末広 圓生独演会」などと同じページで紹介されている。

 今回初CD化の演目などを含め、同サイトから引用。
「ミュージックテイト」サイトの該当ページ


NHK落語名人選100

・NHKが保有する落語音源のなかから、古典落語の名作をピックアップし39の演者による118演目を100枚のCDに納めました(今までのPOCNシリーズの出し直しになります)
・CD1枚価格は税抜千円!収録時間は30分弱とコンパクトにし、1席または2席分を収録。
・初CD化の21演目を含め、まさに、落語CDの決定盤です。
・演者紹介、演目解説付
初CD化商品
〇二代目三遊亭圓歌「社長の電話」 〇五代目古今亭今輔「ねぎまの殿様」
〇六代目春風亭柳橋「時そば・青菜」 〇初代林家三平「源平盛衰記」
〇四代目三遊亭圓遊「七福神・浮世床」 〇四代目春風亭柳好「味噌蔵」
〇五代目柳家小さん「宿屋の富」 〇五代目柳家小さん「粗忽の使者」
〇五代目柳家小さん「たぬき」 〇四代目三遊亭金馬「池田大助」
〇柳家小満ん「寝床」 〇柳家小満ん「盃の殿様」 
〇六代目五街道雲助「お見立て」 〇六代目五街道雲助「文違い」 
〇柳家さん喬「福禄寿」 〇柳家さん喬「幾代餅」 
〇古今亭志ん輔「佐々木政談」 〇古今亭志ん輔「猫忠」 
〇四代目柳亭市馬「花見の仇討」

 東京落語会での高座が中心で、その多くは「日本の話芸」で放送されたものだろう。

 初代夢楽や四代目圓遊、初代小文治などの音源は持っていないので、バラ売りはありがたい。

 そう思うと、先日の記事で書いたことの繰り返しになるが、「志ん朝 三十四席」だって、バラ売りはできないにしても、CDだけでも販売して欲しいものだ。

 それとも、十年後に、半額になるのか・・・・・・。
 ならないだろうなぁ。

 NHKが、その販売形態はともかく、落語の貴重な財産である東京落語会の音源を中心に、積極的に市場に投入し始めた。

 こちらは、相手の商売上手に負けず、持っている音源を確認し、買い物上手になりたいものだ。

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by kogotokoubei | 2015-11-17 21:41 | 落語のCD | Comments(0)
 ここ数年、毎年祥月命日10月1日に、志ん朝のことを書いてきた。

 そろそろ、特別に記事を書くこともないかなぁ、と思って昨日『堪忍袋』に関する記事を書いたのだが、今日2日、ミュージック・テイトから「落語くらぶ」のメールが届いた。

 このメールで知ったのだが、NHKエンタープライズから、志ん朝のCDとDVDのセット、合計34席が発売されるようだ。
 
 ミュージック・テイトのサイトでも紹介されているが、販売元であるNHKエンタープライズのサイトから、収録内容を紹介。
NHKエンタープライズのサイト該当ページ
ミュージック・テイトのサイト

 そのままコピペすると見にくいので、ちょっと手間をかけて各巻ごとの演目に並べてみた。

■DVD 1 収録時間 1:12:00
「素人鰻」 1976年9月17日収録 20:40
「たがや」 1978年8月18日収録 21:20
「酢豆腐」 1982年6月18日収録 30:00

DVD 2 収録時間 1:40:30
「大工調べ」 1983年11月18日収録 44:30
「幾代餅」 1984(昭和59)年収録 27:40
イントロコメント「大山詣り」について 01:50
「大山詣り」('85) 1985年4月19日収録 26:30

■DVD 3 収録時間 1:21:10
「元犬」 1986年収録 14:20
「居残り佐平次」 1986年10月17日収録 37:40
イントロコメント「火焔太鼓」について 01:30
「火焔太鼓」 1987年9月18日収録 27:40

■DVD 4 収録時間 1:19:10
「品川心中」 1987年3月13日収録 30:40
「唐茄子屋政談」 1988年収録 25:45
「四段目」 1988年9月16日収録 22:45

■DVD 5 収録時間 1:41:30
「刀屋」 1990年3月16日収録 27:55
「付き馬」 1990年8月31日収録 44:45
「抜け雀」 1991年10月18日収録 28:50

■DVD 6 収録時間 1:14:10
「坊主の遊び」 1992年収録 29:10
「愛宕山」 1993年4月16日収録 28:40
「風呂敷」 1993年収録 16:20

■DVD 7 収録時間 1:25:45
「井戸の茶碗」 1993年9月17日収録 28:40
「宿屋の富」 1994年4月15日収録 27:45
「首提灯」 1995年2月17日収録 25:15
コメント「首提灯」について 04:05

■DVD 8 収録時間 0:59:00
「お見立て」  1996年3月15日収録 29:30
「お若伊之助」 1997年3月14日収録 29:30

CD 全5枚
■CD 1 収録時間 1:13:06
「替り目」 1964年4月17日収録 18:07
「干物箱」 (1967年放送) 27:55
「お化け長屋」 1967年8月18日収録 27:04

■CD 2 収録時間 0:56:51
「船徳」 1968年8月16日収録 27:20
「明烏」 1972年10月13日収録 29:31
■CD 3 収録時間 1:16:38
「あくび指南」 (1975年放送) 10:39
「花見の仇討」 1975年4月18日収録 39:34
「鰻の幇間」 1975年8月15日収録 26:25

■CD 4 収録時間 1:04:05
「品川心中」  1977年3月12日収録 29:58
「大工調べ」 1981年3月14日収録 34:07

■CD 5 収録時間 0:42:48
「抜け雀」(インタビュー付き) 1981年収録 42:48

さて、この「志ん朝三十四席 DVD全8枚+CD全5枚セット」のお値段は、36,720円(税込)。



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志ん朝一門_よってたかって古今亭志ん朝

 次の表は、何度も引用している『よってたかって古今亭志ん朝』の巻末にある「古今亭志ん朝 主要演目一覧」から、東京落語会の71席の演目をリスト化したもの。

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 今回発売される演目と見比べてもらえば分かることだが、三十四席は間違いなく東京落語会の映像と音源が中心だ。

 拙ブログでは、NHKが文化的遺産とでも言える東京落語会での志ん朝の音源や映像を放送することや販売することを期待する、ということを書いてきた。

 しかし、実際に販売のニュースを知って、正直なところ複雑な思いがしている。

 一つの要因は、数年前と今現在の私のNHKへの思いが、大きく違っていることだ。

 あの会長は、自民党と一緒に、マイナンバーとからめて受信料の義務化を図ろうと画策しているようだ。
 また、NHkは、日本の将来にとって重要な法案に関する国会中継を放棄した。
 国会前デモは、ほぼ無視していた。
 会長を筆頭に、“安倍チャンネル”と言われるほど権力に媚びを売る姿勢には辟易する。

 内容が、兄弟ブログ「幸兵衛の小言」的になってきたので、戻す。

 そもそも、受信料を中心とする収入を元に開催した落語会の素材なのだから、総合でもBSでもいいし、ラジオでもいいから、放送してくれれば良いのだ。
 
 東京落語会の映像や音源は、東横落語会や大須の音源の販売とは同列に語れないと思う。
 東横や大須は、本来販売を目的としていなかった個人所蔵の埋もれた記録が公開されたものである。
 だから、その音源の品質が良いとは言えない。
 しかし、特に大須の音源は、主要落語会とは違う普段着の志ん朝の姿が察することができるし、何と言ってもまくらが良い。

 東京落語会の映像と音源は、プロが収録したものだから、品質は高いだろう。
 でも、それは、このように販売することを意図していたものなのだろうか。

 主目的は「日本の話芸」での放送であったように思う。
 しかし、志ん朝の映像の放送は実に少ない。

 ある時から、「これは、金になる!」という思いが強くなってきたのではなかろうか。

 小学館のシリーズ、東横、そして大須の販売などが、まちがいなくNHKの関係者に刺激を与えたと察する。

 私は、結構落語の音源は持っている方だと思う。
 しかし、DVDなどの映像はほとんど持っていない。なぜなら、音だけの方がイメージが広がって楽しいからだし、映像は、その撮り方によって、落語の空間性を狭めてしまいかねない。
 だから、物故者の高座を中心に音源は結構楽しんでいる。
 志ん生、志ん朝、米朝、枝雀などが中心で、八代目春風亭柳枝なども結構持っている。
 しかし、コレクターではないので、携帯音楽プレーヤーに収録後は、CDの場合は中古品流通網に手放している。
 

 今回販売される東京落語会の音源、志ん朝ファンとして聴きたくはあるが・・・NHKの儲け話に乗るのは癪だなぁ。

  
 少なくとも、この半額位でCDだけのセットという選択肢もつくって欲しかった。


 悩ましいが、現時点では、このセットは買わないつもりだ。

 今のNHKへの不満がどうしても根強いし、この値段も決して安くはない。


 
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by kogotokoubei | 2015-10-02 21:43 | 落語のCD | Comments(4)
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 小学館から発売された「昭和の名人」の最初のシリーズの第11巻を、昨日帰宅途中の乗換駅の書店(あのシリーズのバックナンバーを結構揃えている)で購入できたので、携帯音楽プレーヤーに収録し、今日通勤時間中に、馬生の『天狗裁き』を聞くことができた。

 なぜ、この号を2009年発売後にすぐ買わなかったかと言うと、CDに収録された三席、『笠碁』『天狗裁き』『そば清』のうち、この『天狗裁き』以外の二席は、音源が違うとはいえすでに持っていたから、というのが理由の一つ。とにかくあのシリーズは第一回の志ん朝(特別価格で安かったが)を買って、すでに持っている音源と同じと分かって以来、ほとんど買うことがなくなっていた。その時の心境はブログにも書いた。
2009年1月10日のブログ

 馬生の号を買わなかった理由のもう一つは、『天狗裁き』について、志ん生→馬生と継承される“型”が、今日の東京の噺家さんの多くが演じる桂米朝の“型”と違うなどとは、ち~っとも知らなかったせいもある。


 その後の私の調べ(?)によると、、東京落語には古くから伝わる『羽団扇』という噺がある。そして、志ん生独特の『天狗裁き』がある。加えて、米朝が志ん生や馬生の噺に触発されて、上方に古くから伝わる『天狗裁き』を掘り起こし、今日では、この米朝版が東京に逆流した、ということのようだ。

 “天狗伝説”は全国的に残っており、民話などで、似たような話が各地で伝承されていたようなので、様々な内容の天狗にちなんだ話があったのだろう。そして、落語として、大きく次の三つの型がある、ということのようだ。

(1)『羽団扇』 
 二代目の三遊亭円歌や立川談志が演じていたようだが、この噺は、天狗からだまし取った羽団扇を仰いで空に舞い上がった主人公が落ちた場所は、下記のように七福神の宝船。引用は、いつもお世話になっている河合昌次さんの「落語の舞台を歩く」から。

落ちたところが、七福神の宝船の中。「今日は正月だから七福神が集まって吉例の宴会をしている」と大黒。それでは仲間に入れてと頼んだが、「何か、芸が出来れば」と許され、仲間の中に。
 そこには綺麗な弁天が居て、お酌をしてもらいご機嫌で、恵比寿にも勧めたがお酒は駄目でビールだけという(エビスビールのシャレですよ)。肴は恵比寿様が釣った鯛のお刺身、またこれが美味いこと。飲んで食べて、芸をする間もなく寝入ってしまった。弁天様に起こされると・・・


 これ以上の解説は、ぜひ「落語の舞台を歩く」でご確認のほどを。なお、ネタ元は談志の高座。「落語の舞台を歩く」の『羽団扇』のページ
 ちなみに、この噺は、正月二日の“初夢”という設定で、“旬”の明確な落語となっている。志ん生大好きの談志が、なぜ志ん生版の『天狗裁き』ではなくこの噺を好んだのかは、まだ調査不足である。

(2)馬生(志ん生)版『天狗裁き』
 今回聞いたばかりの馬生版、と言うより志ん生版と言ってよいのだろう。志ん生の音源は、まだ聞いていないのだが、調べたところ、馬生はほぼ父親の型で演じているようだ。
 特に季節感は明確ではない。近所の寅さんが蛇をまたぐ夢を見てから運が回ってきたと聞いた女房が、朝起きたばかりの亭主(梅さん)に、「あんたも縁起のいい夢を見て!」と無理やり寝かせるのが幕開き。
 そこからしばらくは、米朝版とほぼ同じ筋書となる。いろんな人が梅さんの夢を知りたがるわけだ。
・女房
・長屋の仲間(寅さん)
・大家
・奉行
・天狗
 それぞれから、梅さんは見ていない(あるいは覚えていない)夢の内容を明かすよう無理強いされるのだが、米朝版との違いは、舞台にやや動きがあること。同じ長屋の寅さんは、梅さんから夢を聞き出すために、梅さんを外に連れ出し長屋の隅っこで聞こうとする。大家は自分の家へ引き込む。
 また、奉行に向かって、「お奉行様でも天狗でも、見てない夢は話せねえ」と啖呵を切った梅さんを、奉行が「それはおもしろい!」と、天狗が出ると言われる愛宕山に梅を連れて行き、木に体を縛り付けて、わざわざ天狗に裁きを依頼する書置きまで残してくる。このあたりも、米朝版とは大きな違いである。
 そして、誠に私が迂闊だったことに、よくお世話になる「落語のあらすじ事典 千字寄席」の『天狗裁き』には、しっかりと志ん生・馬生版の説明があったのだ。「落語のあらすじ事典 千字寄席」の『天狗裁き』
 天狗の羽団扇を奪い空に舞い上がった梅さんは、宝船ではなく、商家の大店に着陸するのだが、その部分を引用したい。

しばらく空中を漂って、
下り立った所が大きな屋敷。

ようすが変なので聞いてみると、
お嬢さんが明日をも知れぬ大病とのこと。

たちまち一計を案じた熊、
医者になりすまし、
お嬢さんの体を天狗団扇で扇ぐとアーラ不思議、
たちまち病気は全快した。

その功あってめでたくこの家の入り婿に。


 さて、無事、町内で小町と呼ばれる美人のお嬢様の婿となって、一夜を過ごそうとするんだが・・・・・・そこからサゲは、お察しのほどを。

(3)米朝版『天狗裁き』
 このブログにお立ち寄りになる落語愛好家の方には、ほとんど説明は不要だろう。あえて蛇足で書くなら、志ん生版や『羽団扇』のように、主人公が羽団扇を天狗から騙し取ることはない。夢の内容を明かさないため怒った天狗に八つ裂きにされようとするところで、女房に起こされる、という筋。
 そして、私は、今日東京でもほとんどがこの型なので、(1)や(2)を調べることすらしていなかったわけだ。まだまだ、未熟である。


 と、言うことで、志ん生・馬生版の『天狗裁き』の、「大店のお嬢様の病気を治して婿になる」という“出世話”を、確認することはできた。

 ここで、今回の一連の事件(?)の発端に戻る。

 古今亭志ん輔の日記風ブログ「日々是凡日」の3月8日の記事の、次の部分が発端。「日々是凡日」の3月8日の記事

15時35分 浅草楽屋入り。「妾馬」をやりたかったが「天狗裁き」が前に出ていて 少しだが似た箇所があるのでやめにして「子は鎹」をやらせて貰った。


 『妾馬』と志ん生版の『天狗裁き』では、お殿様(赤井御門守)が、たまたま江戸の町で見かけた八五郎の妹のお鶴を見初め“側室”になるのと、夢とはいえ大店のお嬢様の病気を治して“入り婿”となる話、確かに同じ“出世”あるいは“抜擢”“僥倖”という意味で共通点はある。
 先日のブログには想像を超える多くの方にコメントを頂戴し、私などよりもずっと筋金入りの落語愛好家の方々から、この部分しかありそうにない、とご指摘を受け、私も「そうかな」と思わないではないのだが、実は、まだ納得はできていない。

 まず、『天狗裁き』は、志ん輔の高座より“前”に出ていたのだ。志ん輔が古今亭版のこのネタをするのならともかく、他の噺家さんなら、確率的には米朝版である可能性のほうが高い。その場合、その噺には入り婿として“出世”する筋書はない。
 しかし、古今亭版の場合は、その部分があるので、志ん輔がついこだわった、と言えなくもない。楽屋でネタ帳を見て、瞬時の判断なのだろうから、固定観念に左右されることは、あるだろう。

 しかし、もしそうだとしても、「えっ、そこにこだわるの?!」という思いは残る。

 それとも、“少しだが似た箇所”は、前回のブログに他の方がコメントしていただいている、大家と主人公との会話に潜んでいるのか・・・・・・。それとも、『妾馬』の殿様と八五郎との会話と、『天狗裁き』の奉行と主人公との会話あたりに、ヒントがあるのだろうか。謎なのだ、いまだに。


 この件、少し時間を置いてみたい。それにしても、お陰様で数多くの方のご参加(?)をいただき、私も『羽団扇』の存在を知り、馬生の『天狗裁き』を聞くきっかけになったので、得るものは多かった。

 志ん輔の“何かへの”こだわりのミステリーは、この後も続く。まるで、権太楼版『天狗裁き』のサゲのように、エンドレスかもしれない・・・・・・。


 まさか、このブログを書いていることは夢ではないだろうなぁ・・・・・・あっ、連れ合いの声が聞こえる。
「あんた、起きなさいよ!」、「あっ、夢か・・・・・・」(蛇足でオソマツ)
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by kogotokoubei | 2012-03-13 11:31 | 落語のCD | Comments(10)
命日の10月1日に、小学館から東横落語会の古今亭志ん朝の高座41席が発売になった。「幻」と銘打たれた初出しの音源ばかり。ネット販売のサイトは軒並み品切れ状態だ。買うつもりだが慌てる必要はないだろう、と思っている。(でも時間がたっても安くはならないかなぁ・・・・・・。 )
小学館「東横落語会 古今亭志ん朝」専用サイト
今では文春文庫で読むことができる『よってたかって古今亭志ん朝』の巻末にある記録から、志ん朝の東横落語会全高座をリストアップして、専用サイトの「全演目」から、今回発売される音源を確認し青い字にしてみた。なかなか綺麗に文字をそろえて並べることができず見にくい点はご容赦のほどを。 志ん朝一門 『よってたかって古今亭志ん朝』(文春文庫)

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No. 昭和 西暦   月 日     演 目
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1   33  1958   11月10日   天災
2   34  1959    7月31日   百人坊主
3   35  1960    9月30日   粗忽の釘
4   36  1961   7月29日   王子の狐
5   37  1962   1月31日    風呂敷
6            7月30日    船徳
7            9月28日    搗屋幸兵衛
8           11月28日     黄金餅
9   38  1963   5月29日    のめる
10           9月30日    錦の袈裟
11   43  1968  7月29日    巌流島
12   44  1969  9月29日    花色木綿
13           11月28日    厩火事
14   47  1972  4月28日     三年目
15           9月29日    締め込み
16   48  1973  3月30日    宿屋の富
17           9月28日    三枚起請
18   49  1974   3月26日    火焔太鼓
19           8月30日    坊主の遊び
20   50  1975  3月28日     井戸の茶碗
21           9月29日    化け物使い
22   51  1976  5月28日    小言幸兵衛
23            9月29日    酢豆腐
24   52  1977   1月31日    首ったけ
25            3月29日    雛鍔
26            5月30日    刀屋
27            7月29日    三方一両損
28            9月30日   三枚起請
29           11月30日   稽古屋
30   53  1978    3月29日    碁泥
31            5月29日     船徳
32            7月31日   宗の滝
33            8月30日   唐茄子屋政談
34            9月29日   蒟蒻問答
35           11月29日   猫の皿

36   54  1979   1月31日    二番煎じ
37            3月30日   愛宕山
38            5月30日   鰻の幇間
39            7月30日     たがや
40            9月28日     子別れ
41            11月30日     夢金
42           12月28日   文違い
43   55   1980   4月21日   干物箱
44             5月30日    今戸の狐
45             6月30日   佃祭
46             7月29日   茶金
47           10月29日   付き馬
48           12月29日   幾代餅
49  56    1981   3月31日   近江八景
50            5月29日   三軒長屋
51            7月31日   豊志賀の死
52            9月30日   百川
53           10月27日    品川心中
54           12月29日    富久
55  57   1982   1月29日    妾馬
56            5月28日    柳田格之進
57            7月30日    水屋の富
58            9月29日    お直し
59           10月27日    巌流島
60           12月29日    芝浜
61  58   1983  5月30日    明烏
62           9月28日    碁泥
63           11月29日    三軒長屋
64           12月29日    夢金
65  59   1984  1月31日    幇間腹
66           6月29日     船徳
67           7月30日    千両みかん
68           10月31日    四段目
69           12月29日    火事息子
70  60   1985  1月25日     明烏
71            3月27日    佃祭
72            6月28日    火焔太鼓

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全72席のうち、青字が37席。 すべて昭和52(1977)年以降。昭和52年・54年・56年は、その年の全高座発売である。
『首ったけ』『稽古屋』『近江八景』は、これまで未発売の演目のはずで、期待したい。

さて、ここでミステリー。「えっ?全部で41席でしょ!」ということ・・・・・・。
専用サイトには、照合できた37席以外に、次の日付とネタの名が並ぶ。
昭和55(1980)年 5月16日 「居残り佐平次」 、9月19日 「井戸の茶碗」
昭和56(1981)年 3月17日 「鰻屋」 、10月19日 「黄金餅」

この4席を加えて41席なのだが、「よってたかって古今亭志ん朝」の巻末には、この4席の日付に落語会が開催された記録はない。どちらが誤りなのかは、私には正直分からない。
本の記録では、他の年にも「居残り佐平次」と「鰻屋」が高座にかかった記録がない。
上述のように、「井戸の茶碗」なら昭和50(1975)年3月28日、「黄金餅」は昭和37(1962)年11月28日に記録されている。

まぁ、このセットを買って、同封された資料や本を見たり音源を聞けば分かるのかもしれないが、専用サイトを見て素朴な疑問を感じたので、ついこんなことを書いてしまった次第。

ともかく楽しみなのは間違いなく、あの“伝説”のプロデューサー湯浅喜久治が主宰するホール落語の頂点とも言ってよいこの落語会で、38歳から47歳までの充実した時期に、志ん朝がどんな高座を残してくれたのか、今からワクワクする。上述した4席のミステリー(?)の謎解きという楽しみもある。しかし、この価格では日々の小遣いの枠を超えており、先立つものも必要。暮れのボーナス待ちとしよう・・・・・・。
*早い話が、欲しくてもすぐ買う金がないということがバレてしまった・・・・・・。
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by kogotokoubei | 2010-10-05 13:46 | 落語のCD | Comments(8)
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HMV 古今亭右朝 『締め込み』『百川』
東海ラジオ開局50周年を記念して昨年から順次発売されている「なごやか寄席」の6月発売分にある右朝の高座二席を聴いた。
*「なごやか寄席」のことは4月26日のブログをご参照ください。2010年4月26日のブログ
昭和63(1988)年6月21日中電ホールでの収録。一席目のマクラでも説明しているように、10日前まで東京の寄席四軒、計40日間に渡る真打昇進披露興行を終えてからの高座。なお、右朝は“昭和最後の真打”である。昭和23年11月2日生まれだから、当時39歳。

私は生の右朝の高座を知らない。しかし、かつてテレビ朝日で製作された「右朝の落語定席」(全76話)やMXテレビで制作された「東京落語図絵」のCSでの放送をケーブルテレビで結構な回数を見た。
*我が家の近くに住宅都市公団の高層住宅が出来たため、工事費が無料ということで加入したのがケーブルテレビ。見るコンテンツは、主に落語と昔懐かしのテレビドラマ。
これらの映像は50歳前後での収録だろうろ思うので、このCDよりも深みや味わいがある。しかし、この真打ホヤホヤの高座も決して悪くない。特に『締め込み』は語り口もテンポもリズムも心地良く、この人にはニンな噺だと思う。『百川』の方は百兵衛さんの例の「ウッヒョイ!」を、それほど田舎言葉としてデフォルメしていないので、聞く人によっては物足りなく感じるかもしれないが、丁寧な高座姿が偲ばれる貴重な記録である。前述したテレビの映像もそうだったが、この人の噺は“教科書”としても優れていると思う。本寸法でツボを外さないしっかりした落語。享年53歳とは、本当に惜しい。このCDを買ってまったく損はなかった。

ところで、「右朝の落語定席」のDVDあるいはCDをテレビ朝日は発売しないのだろうか・・・・・・。この全76話は、それこそ落語ファンにも落語入門仕立てのプロの勉強のためにも価値あるコンテンツだと思うのだ。いろいろしがらみがあるのかもしれないが、右朝という達者な噺家さんの労作がもっと世に出ることを期待したい。

右朝という噺家さんについてもっと知りたい方は、昨年彼の命日4月29日に書いたブログをご参照ください。
2009年4月29日のブログ
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by kogotokoubei | 2010-07-06 11:23 | 落語のCD | Comments(2)
 2001年4月29日に、師匠志ん朝に先立って亡くなった古今亭右朝のことを、昨年の命日4月29日に書いた。
2009年4月29日のブログ

 その右朝のCDが、6月に発売されるらしい。朗報である。
 
 東海ラジオ「なごやか寄席」に残した音源。ネタは『締め込み』と『百川』。HMV 古今亭右朝 「締め込み・百川」
 たまたまネットで右朝のCDを検索していて発見した。
 没後ほぼ一年後に限定で発売されたCDがあったが、現在は入手困難なので、このCDは貴重だ。

 東海ラジオは昭和35(1960)年4月1日開局。今年の開局50周年を記念した企画として、昨年末以降発売されているようだ。発売元はユニバーサルミュージック。
東海ラジオのホームページに、これまで4回にわたって発売されたCDが紹介されている。
東海ラジオ 「なごやか寄席」
 
 同ホームページの謳い文句は次のようになっている。

1974年4月15日の第一回放送から1999年3月23日まで続いた、東海ラジオ放送伝説の長寿番組「なごやか寄席」が遂に完全版 (ノーカット)にてCD化!!をスタート。
ネタ帳には東西合わせて200人を超える演目でファンを魅了した 「なごやか寄席」を是非お楽しみください。


 詳しい噺家さんとネタはこのホームページでご確認いただきたいが、円生、小さん、正蔵、柳朝など錚々たる顔ぶれが並んでいる。その中から、あえて発売数が少ない噺家さんの音源を中心に収録日と会場を含めてご紹介する。
*それぞれ、同じ日の高座二席をCD化。

第一回(2009年12月16日発売、全10作)
四代目三遊亭小圓遊(1979.8.10中電ホール)
・「宮戸川」「へっつい幽霊」
初代金原亭馬の助(1975.4.16中小企業ホール)
・「粗忽の使者」「厩火事」
など。

第二回(2010年1月20日発売、全15作)
四代目柳家小せん(1981.2.18中電ホール)
・「長屋の花見」「三人旅」
十代目桂文治(1980.10.10中電ホール)
・「火焔太鼓」「八百屋お七」
など。

第三回(2010年2月17日、全15作)
八代目古今亭志ん馬(1980.12.6中電ホール)
・「たいこ腹」「干物箱」
三代目桂 文朝(1976.4.13中電ホール)
・「長屋の花見」「元犬」
など。

第四回(2010年4月21日、全10作)
十代目金原亭馬生(1974.11.2名相銀ホール)
・「らくだ」「芝浜」
三代目三遊亭圓歌(1980.2.20中電ホール)
・「月給日」「品川心中」
など。

 そして、第五回目として6月23日に全10作が発売される中に、右朝のCDが一枚含まれるのだ。こちらは、東海ラジオの前掲のホームページには、まだ案内されていない。HMVで「なごやか寄席」で検索し、情報を入手した。HMV なごやか寄席
 右朝以外にも、桂文朝の『たらちね』『池田大助』、三遊亭円楽の『悋気の火の玉』『花見の仇討』、古今亭円菊『幾代餅』『まんじゅうこわい』『鮑のし』などなど、なかなか渋いラインナップ。

 右朝はもちろん買うつもりだが、発売済みの中から紹介した作品などにも食指が動く。かつて笑点で「キザ」を売り物に人気者になり、そしてその“偶像”のために悩みを抱えて苦労した小円遊の『宮戸川』と『へっつい幽霊』には大いに興味があるし、馬生の『らくだ』と『芝浜』のカップリングは、あまりにも贅沢。

 東京以外の地区での落語会の音源から右朝のCDが発売されることもうれしいし、東海ラジオの企画そのものにも拍手を送りたい。

 古今亭志ん朝の大須演芸場での名演や談志家元の地方口演における数々の伝説のように、東京を少し離れた落語会においては、噺家さんが肩の力を少し抜きながらも、その地域の純粋(?)な落語ファンの前で素晴らしい高座を披露することが少なくない。まだまだストックはありそうなので、今回のように歴史的にも貴重な音源の発掘が今後もあることを期待したい。また、東海ラジオ以外にも過去に落語を放送していたラジオ局には未発表の宝があるはず。ぜひ倉庫を熱心に探してみてください。とんでもないものが出てくるかも。
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by kogotokoubei | 2010-04-26 17:02 | 落語のCD | Comments(0)
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 今年一月に第一巻古今亭志ん朝を買って以来の購入。
 第一巻に関するブログも書いた。
2009年1月10日のブログ

 音源の詳細情報は買うまで分からないが、「初出し」をしてくれたことと、それを購入前に分かるよう表紙に明示していることは、PRの意味もあるだろうが、評価したい。

その、“初出し”音源と表紙に書いてあった『たらちね』と、保田武宏さんによるブックレットの内容が目当てである。
CDの内容は次の通り。
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(1)王子の狐 22分30秒 
  昭和33年3月28日、ラジオ京都ほかにて放送
(2)子ほめ   13分16秒 
  昭和34年7月15日、ニッポン放送「お楽しみ演芸会」にて放送
(3)元犬    13分52秒
  昭和34年6月17日、ニッポン放送「お楽しみ演芸会」にて放送
(4)たらちね  13分14秒
  昭和34年1月1日、ニッポン放送「お楽しみ演芸会」にて放送
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買ってすぐに『たらちね』を聴いて、やはりこの人はいい、と再認識。
お決まりの「今朝は怒風激しゅうして、小砂眼入す」のクスグリなども省くコンパクト版なのだが、この噺の楽しさは十分に伝わるし、何気ない語り口で会場を沸かせている。相変わらずの丁寧な口調が心地よい。
今日、この噺をこれだけの長さで柳枝ほど見事に演じることのできる人は、残念ながら思い当たらない。

このブログでは柳枝のことをこれまでも書いているので、八代目春風亭柳枝の詳細は、たとえば昨年6月27日のブログなどを参照していただくとして、今回は最後に保田さんの文章から抜粋。
2008年6月27日のブログ
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 柳枝の唯一の速記全集が、没後の昭和52年7月に弘文出版から出た
『八代目春風亭柳枝全集』である。これには『花色木綿』・・・(中略)・・・
『宮戸川』の27席が載っている。このほか巻末に「柳枝を偲んで」という
座談会が載っており、柳枝の門下だった林家枝二(現・春風亭栄枝)、
三遊亭圓弥、三遊亭圓窓に司会の三遊亭圓楽の4師匠が、柳枝について
語っている。・・・(中略)・・・圓楽師匠は前掲の全集でこう語っている。
 <私が柳枝師匠から『締め込み』という噺を教わったときに、『私はこれを
やるについて、どれだけ悩んだか知れない』と聞かされました。ということは、
黒門町(文楽)が十八番でやっていたし、五代目圓生のよさが頭に入って
いるし、どうやって二人とは違うようにやろうかと考えてもなかなかよい案が
浮かばない。ほんとうにこの噺だけは苦労したと言っていました>
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昭和の名人「春風亭柳枝」は10月27日発売。円楽師匠が亡くなったのは、その2日後である。柳枝の思い出を語れる噺家がまた一人減った、という意味でも寂しい限り。
また、弘文出版の全集が発行された昭和52年は、円生一門落語協会脱退騒動の一年前。
巻末に掲載された座談会のために一緒に柳枝の思い出を語り合っていた円楽と円窓のお二人の関係も、この一年後から激変したわけだ。

ともかく、この「落語 昭和の名人-CDマガジン-」シリーズで春風亭柳枝のファンが増えてくれるなら、同好の士としてはうれしい限りである。
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by kogotokoubei | 2009-11-21 10:08 | 落語のCD | Comments(0)
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ビクター(正式なレーベル名は日本伝統文化振興財団)から、3月25日に八代目春風亭柳枝のCDが三枚同時に発売された。同日には志ん生も三巻、可楽が一巻発売されている。
柳枝の各巻のネタと音源は下記の通り。ラジオ京都の音源が目立つ。
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第一巻
1 王子の狐:1956年(昭和31年)6月26日放送「お好み寄席」
     (ラジオ東京[現TBSラジオ])ラジオ東京ホール(有楽町)
2 甲府い:1956年(昭和31年)10月9日放送「お好み寄席」
     (ラジオ東京[現TBSラジオ])ラジオ東京第1スタジオ(有楽町)
3 締め込み:1957年(昭和32年)2月1日放送 ラジオ京都・他 人形町末廣

第二巻
1 野ざらし:1957年(昭和32年)3月8日放送 ラジオ京都・他
2 大山詣り: 1958年(昭和33年)7月11日放送 ラジオ京都・他
3 搗屋無間:1959年(昭和34年)2月6日放送 ラジオ京都・他
4 二人癖:1958年(昭和33年)10月31日放送 ラジオ京都・他

第三巻
1 宮戸川:1958年(昭和33年)10月3日放送 ラジオ京都・他
2 喜撰小僧:1957年(昭和32年)10月11日放送 ラジオ京都・他
3 熊の皮:放送日不詳 電通制作地方局用番組
4 花色木綿:1959年(昭和34年)6月5日放送 ラジオ京都・他
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キングからも「昭和の名人~古典落語名演集」の中で、3月11日にCDが2枚発売されており、収録されたネタは下記の各5席づつ。
①『子ほめ』・『喜撰小僧』・『堪忍袋』・『元犬』・『宗論』
②『高砂や』・『四段目』・『ずっこけ』・『節分』・『金明竹』

このシリーズは全50枚の一挙発売だが、一部過去に発売されたものの再収録もある。ちなみに、噺家ごとに発売された枚数は次の通り。
---キングレコード「昭和の名人~古典落語名演集」収録の噺家とCD枚数---
□円生、小さん 各10枚
□小三治、円窓  各9枚
□文楽、金馬(三代目)、可楽、柳枝 各2枚
□柳橋(六代目)、正蔵(八代目)、円歌(二代目)、馬生(十代目) 各1枚
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*キングには円生と小さん、小三治と円窓のライブラリが、なぜか多いということですな。

さて、柳枝に関してもっとも新しいところでは、コロムビアから『花色木綿』『王子の狐』のカップリングが4月22日に発売される予定。ちなみに、柳好(三代目)のCDも同日発売される。

よって、3月から4月にかけて、春風亭柳枝に関するCDが、なんと計6枚も相次いで発売されることになる。素直にうれしい。

ビクターは音源を明示しているので、大いに助かる。生まれが明治38(1905)年、亡くなったのが昭和34(1959)年である。音源は昭和31(1956)年から34(1959)年なので、51歳から54歳の間の、絶頂期といえるだろう。
さっそく聞いたのが、このビクターの第二巻にある『野ざらし』。

立川談志家元は『談志絶倒昭和落語家伝』の中で、こう書いている。
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この師匠、何処へ出しても受けた。爆笑させた。といっても大してオーバーに
演るわけではない。天下一品の柳好の『野ざらし』に対して、同じ噺を演った
のは柳枝師匠しか知らない。その柳好師匠の『野ざらし』は緻密なものであり、
柳好を“陽”とすると、“陰”とまではいかないまでも柳枝独特で、『野ざらし』
は“柳好とは比べものにならない”と言い切れないものがあるのだ。
-------------------------------------------------------------------------
立川談志 『談志絶倒昭和落語家伝』

この本を読んでいながら、まだ聞く機会がなかったので、まずこのネタから拝聴。家元が誉めるだけのことはある。そして、家元が主張する対比もまったくその通りであり、「陰」ではないが、柳好の謳うような「陽」とはテイストの違う渋い味がある。同じCDの『大山詣り』も、『野ざらし』ほどは期待していなかっただけに、聞き惚れた。前半はあっさりで、熊さんが喧嘩をして頭を剃られて以降が中心だが、熊さんと長屋のオカミさん達との絡みがいい。オカミさん達が「あーら、熊さん」「あーら、熊さん」「あーら、熊さん、アラクマさん」という独自のクスグリもこの人らしい。このCDの他の二作のうち、『搗屋無間』はポリドールから発売されているCDにも別音源で収録があるが、『二人癖』は初ものだと思う。この噺の二人の掛け合いがいいんだなぁ・・・・・・。

もちろんファンの身びいきがあるのは承知だが、柳枝の音源が多く世に出されるのは、今日では少なくなったタイプの噺家さんだけにうれしいし、できるだけ多くの若い落語ファンの皆さんに聞いて欲しい。丁寧な語り口もあいまって、口癖と本名島田勝巳から、「お結構の勝っちゃん」と呼ばれ愛された噺家さんである。

春風亭柳枝という名跡は柳派では小さくない名前である。ここ50年間、この名が空白になっている。「封印」されたとも言われる。それは当時睦会の「お結構の勝っちゃん」と、芸術協会にいた頃の芝浜の三代目桂三木助が、柳枝につながる出世名であった小柳枝の襲名を争う騒動があったからだ。結果として三木助が五代目の小柳枝を襲名したものの、三木助は一時落語家をやめたため柳枝を継ぐことはなかった。こういった経緯の後で「勝っちゃん」が八代目になった。この大名跡は、八代目が睦会から移ったこともあり、現在は落語協会に残っているはずだ。

八代目の弟子の春風亭栄枝は入門から2年後に師匠が亡くなり、八代目正蔵門下に入ったが、春風亭の屋号に戻ったものの柳枝を継がなかった。同じく弟子の円窓は入門直後に師匠が亡くなった後は円生門下に入ってしまった。語り口などから思うに、八代目が今しばらく存命だったら、円窓が九代目を継いでいたのではないかと察する。円窓の兄弟子で同様に円生門下に移り、その後落語協会に復帰した円彌にも九代目を期待する声があったらしい。しかし円彌にとっては円生への想いが強かったのだろう、継ぐことはなく三年前に亡くなった。

立川流に字は違えど読みの同じ龍志がいることもあり、九代目がなかなか誕生しないとも言われるが、これは大きな障害とは思えない。継いで欲しい人材が見当たらないこともあろうが、もう芸協と協会の反目でもないだろう。ぜひ九代目の誕生により、この名の歴史をつないでもらいたいものだ。八代目の直系からは難しいのだから、目一杯ルーツを遡って、柳派ということで柔軟に考え、小さん門下からふさわしい人に継いでもらってはどうだろうか。

個人的好みであえて大胆な案を言うなら、小三治門下で来年にも真打が期待される三之助を推す。丁寧な語り口や雰囲気が八代目に近いものがある。師匠は大名跡小さんを継がなかった。ならば、この一門から柳の別な大名跡が生まれてもいいのではなかろうか。三三はこの名前のままでいくのではないかと思うので、次に将来有望な二つ目のこの人が適任だと思うのだ。「名前が大きすぎる」「名前負けする」という心配は、長~い目で見てあげましょう。昨今大きな名を襲名した何人かに比べれば、ず~っと似合っているのでは。まぁ、波風立てることを避けたいだろうし、すでに別な名前の襲名が決まっている可能性のほうが大きいとは思うが・・・・・・。
ビクター落語
キングレコード_昭和の名人_古典落語名演集
コロムビア_ベスト落語_春風亭柳枝
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by kogotokoubei | 2009-04-15 17:56 | 落語のCD | Comments(0)
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昨年末12月17日、日本ビクター(正式なレーベル名は「日本伝統文化振興財団」)から、三代目春風亭柳好のCDが3作同時に発売された。仮に3つのCDをA、B、Cとし、収録作品は次の通り。

A
1.野ざらし
2.鰻の幇間
3.羽織の遊び
4.宮戸川

B
1.蝦蟇の油
2.権助芝居
3.たいこ腹
4.二十四孝

C
1.青菜
2.居残り佐平次
3.穴泥

高座に上がったとたんに客席から「野ざらし~」「蝦蟇の油~」と声がかかったというから、AとBはその代表作を中心に構成されている。定評がある幇間や酔っ払いのネタもいくつか選ばれているのもうれしい。また、Cの『穴泥』は遺作である。昭和31(1956)年3月14日に、専属だったラジオ東京(現在のTBS)のスタジオで収録され、その後に向かった鈴本で脳溢血で倒れ、その夜に亡くなっている。翌日の追悼番組の中で放送されたが、その際の正岡容さんのメッセージも併せて収録されており貴重な音源といえるだろう。明治20(1887)年生まれ、享年70歳。落語芸術協会の所属だった。

柳好の全盛期、当時の落語協会の中心人物であった桂文楽は、柳好のはなやかさや人気の高さから、「序列は上でも構わないから落語協会の方に来て欲しい」と真顔で語っていたらしい。当時は、芸術協会の寄席の方が落語協会よりも人気があったようだが、たぶんに柳好の貢献があったのだろう。

その人気に反して、いわゆる落語通や大半の評論家からは無視されていたことが、これまであまり音源が発表されなかった理由なのだろうか。他の噺家とのカップリングなどが多く、もっぱら『野ざらし』『蝦蟇の油』ばかりが市場に出回っていた印象がぬぐえない。だからこそ今回の一挙発売は、「謡う」と言われた名調子をさまざまな作品で味わえ、うれしい限りである。出囃子は現在は立川志の輔で御馴染みの「梅は咲いたか」。志の輔が柳好ファンか否かは知らないが、柳好を知らないはずがないので、きっと好きなのだと察する。あるいは家元の推薦だったかもしれない。出囃子が鳴るや否やの会場の拍手が、当時の寄席の熱気を彷彿とさせる。

もしかしたらちょっとした柳好ブームになるのだろうか、コロムビアからも4月22日に、『野ざらし』『ガマの油』『電車風景』『青菜』の4作収録のCDが出るらしい。別な音源かと思うので、こちらも期待したい。

春風亭柳好_野ざらし_他
春風亭柳好_蝦蟇の油_他
春風亭柳好_青菜_他

コロンビア_春風亭柳好ベスト
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by kogotokoubei | 2009-02-11 16:40 | 落語のCD | Comments(5)

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 小学館から隔週で全26巻発売予定のシリーズ第一巻「志ん朝(壱)」を特別価格490円で購入した。『夢金』と『品川心中』二席のCDが付いている。第二巻以降は、「志ん生(壱)」、「小さん(壱)」、「円生(壱)」と各三席づつ入ったCDの発売が続くようだ。その後に「志ん朝(弐)」。ちなみにネタは『抜け雀』と『厩火事』である。各噺家を紹介する雑誌部分もあるが、目玉はあくまでCDである。
 このシリーズについては、評価を書くのが難しい。第一巻に収録されている志ん朝師匠二席の音源は、『夢金』が昭和52年12月3日の三百人劇場での収録、『品川心中』が昭和54年11月12日の大阪は毎日ホールでの収録。いずれもソニー・ミュージックの「志ん朝復活」シリーズで発売済みの音源である。『夢金』は『佐々木政談』と、『品川心中』は『抜け雀』とのカップリングだった。
 まだこの音源を持っていない人が、この値段でこの二席を購入でき、かつ雑誌もついているとなると、これは間違いなく☆五つであろう。しかし、私のようにすでに持っている人が淡い期待で購入して、「なんだぁ、同じ音源か・・・・・・」となると、雑誌の内容だけの評価にならざるを得ない。また、第二巻からは1,190円となると、このシリーズをどう考えるか難しいのだ。早い話が、たとえば3席のうち2席はすでに持っているような場合、1,190円での投資対効果は見合うのかどうか。

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 もちろんそれぞれの落語ファンは、愛好家としての歴史も好みも違う。図のようなマトリックスで考えた場合、このシリーズにもっとも魅力を感じる人は、落語愛好家歴が浅く、かつ現役の落語家よりも過去の古典の名作に思い入れのある落語ファンだろう。Cのタイプ向けということになる。小学館の狙いがそこにあるのなら、それはそれで結構。AやDのタイプ、要するに現役志向の落語ファンからの購入は、それほど期待できないかもしれない。なぜなら現役志向の落語ファンは、私のようにCDの音を聴いて想像力を膨らませることに喜びを感じるタイプよりも高座のライブ映像を欲する傾向が強いように思うのだ。たぶん、DやAのタイプに近い落語愛好家は、ディアゴスティーニの「落語百選」DVDコレクションの方を好むだろう。あえて言えば、私はBゾーンである。すでに相当数の音源を所有済みである。いわば古株の古典中心の落語ファンの財布から1,190円をどれだけ引き出せるか、非常に疑わしい。
 
 小学館は最近になって落語ファンになった多くの若い人達に、格安で古典の名作を提供する企画をしてくれたようだ。
 しかし、今後発売されるそれぞれの名人の音源は、まず間違いなく過去に発売済みのコピーだろう。また、志ん朝シリーズ、円生シリーズのCDをすでにビジネス化しているソニー・ミュージックが、今後もこのシリーズに既存の音源を提供するのなら、市場でのカンニバリズムをどう考えているのか疑問も感じる。
 『サライ』での落語特集をすべて購入していたので、今後に期待していた。ぜひ古株の落語ファンも喜べる、たとえば未発表新音源の発売などの企画を期待したい。

 このシリーズによって落語の名作を味わう人が増えることについては拍手を送りたいが、いろいろと考えさせられることもある、そんな企画である。
 そして、今後発売される音源に未発表の新規発売が数多く用意されているのなら、私はこのブログで素直にあやまりたい。そういう意味では期待もしているのだ。だから、購入して開封しなくても分かるよう、音源情報を明かにして欲しい。

昭和の名人_古今亭志ん朝(壱)
志ん朝復活_夢金・佐々木政談
志ん朝復活_品川心中・抜け雀
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by kogotokoubei | 2009-01-10 09:20 | 落語のCD | Comments(4)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛