噺の話

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カテゴリ:木戸銭( 4 )

 メールで、ほぼ毎日、落語会の案内がくる。

 三ヵ月も四か月も先の案内などもあって、予定を決めることもできず予約はしないが、内容によってはリンク先で詳細を確認することもある。

 木戸銭を確認すると、それなりに名の通った噺家さんが複数出演する会は、四千円を超えるものが増えてきたような気がする。

 また、独演会や二人会でも、噺家さんや会場によって、結構な木戸銭を設定している。

 その中でも驚いたのが、この落語会だ。
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赤坂ACTシアタープロデュース 恒例 志の輔らくご
第一部 大忠臣蔵-仮名手本忠臣蔵のすべて/第二部 落語 中村仲蔵
[出演]立川志の輔
2017年5月4日(木・祝)-2017年5月7日(日)
会場:TBS赤坂ACTシアター (東京都)
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 木戸銭は、5500円。
赤坂ACTシアターサイトの同公演のページ

 赤坂ACTシアターは、一階席が890、二階席434で、合計1324席もある大ホールだ。
 そもそも、落語に相応しい小屋とは言えない。

 渋谷のパルコがなくなってからの目玉づくり、ということか。

 志の輔の企画では、恒例で『牡丹燈篭』のあらすじ説明を含む落語会をしているようだが、ゴールデンウィークは赤坂「大忠臣蔵」を恒例にしようということか。

 すでに「恒例」と謳っている・・・・・・。
 演目についても、“恒例となった「中村仲蔵」”と説明されている。

 『中村仲蔵』は、パルコで一度ならず演じてきたお手の物の十八番。

 パルコ同様、四日間とも同じ内容・・・・・・。

 私は、こういう企画への興味はまったくない。
 がってん、しない。

 もし、忠臣蔵を題材に落語会を開くのなら、私は行けなかったが、桂文我の会のような、忠臣蔵にちなんだ複数の噺で構成するのなら、がってんだ。
 ちなみに、紀尾井小ホールで今年一月十四日(土)に開催された会では、一部と二部合わせて、次のような噺が演じられたようだ。
 「田舎芝居(大序)」「芝居風呂(二段目)」「質屋芝居(三段目)」「蔵丁稚(四段目)」「五段目(五段目)」「片袖(六段目)」「七段目(七段目)」「九段目(九段目)」「天野屋利兵衛(十段目)」「三村次郎左衛門(十一段目)」) / 桂米平「立体紙芝居」

 聴いたことのない噺が並んでいる。
 一月十四日は旧暦で十二月十七日だったので、ネタとして“旬”でもあった。
 こういう企画こそが、忠臣蔵にちなむ落語会に相応しいと思う。
 これで一部、二部のそれぞれの木戸銭は、3000円。
 ちなみに、紀尾井小ホールは250席。
 三三が、最初に『嶋鵆沖白浪』を披露した会場でもある。
 行きたかったが、野暮用で無理だった。来年もあるなら、最優先で予定したいものだ。

 対して志の輔の赤坂でゴールデンウィークの忠臣蔵・・・器が大きすぎることに加え、何ら季節感のない企画。


 もちろん好みの問題である。
 赤坂に志の輔の忠臣蔵の講義と高座を聴きに行きたい方は、どうぞ行ってください。


 江戸時代の寄席の木戸銭について以前に書いたことがある。
2014年4月29日のブログ


 いろんな考えがあるが、一両を120,000円としよう。
 一両が四千貫として一文は30円になる。
 蕎麦の十六文が480円。これでも、少し高いけどね。

 寄席の木戸銭は、安政以前の三十六文で1,080円、安政以降の四十八文で1,440円。それぞれに下足札四文、中入りに引くくじ代十六文の計二十文分の600円を足すことにして、安政以前1,680円、安政以降2,040円になる。
 寄席の木戸銭としては、妥当な気がする。

 大工の月の稼ぎが銀で135匁、銭にして9,000文という試算があるので、月の収入が現在価値で270,000円。週に一度位は寄席に行く余裕もあるだろう。

 現在、都内定席の寄席の木戸銭が、ほぼ3,000円になっているが、これはあれだけの出演者がいて、鈴本以外は入れ替わりがないことを考えると、江戸時代よりは少し割高とはいえ妥当かもしれない。

 独演会や二人会規模の落語会も、せいぜい3,000円が妥当で3,500円が上限ではないか、と私は思っている。

 だから、4,000円超えが当り前になりつつある昨今の木戸銭には、違和感がある。
 また、会場も、落語という芸能に相応しいのは200~300席ではないかと思っている。

 よって、千人を超えるような大ホールでの落語会には、原則として行こうとは思わない。
 実は、以前にそういう会に行った時の小言から、このブログは始まったのである。
 大きなホールで、高い木戸銭の会を目にする度、私には、「野暮」の二文字が脳裏に浮かぶ。

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by kogotokoubei | 2017-03-08 08:54 | 木戸銭 | Comments(10)
毎日新聞の該当記事
上方落語協会:繁昌亭の料金、初の値上げへ…大阪
毎日新聞 2015年06月09日 19時42分

 上方落語協会(桂文枝会長)は9日、天満天神繁昌亭(大阪市北区)の昼席の一般料金について、9月16日から現行の2500円(前売り2000円)を3000円(同2500円)に値上げすると発表した。2006年の開業以来、値上げは初めて。

 協会によると、消費増税や物価の上昇で繁昌亭の維持費などがかさんだほか、協会会館(同区)の運営費も上昇。協会の14年度決算が赤字になったため、値上げを決断したという。65歳以上は2000円を2500円に、身体障害者と高校・大学生は1800円を2000円に値上げする。小中学生の1500円は据え置く。繁昌亭が主催する一部の夜席も対象となる。

 文枝会長は記者会見で、「何とか値上げしないですむよう、スタッフを減らしたりもしたが弊害も出てきたので決断した」と理解を求めた。桂春之輔副会長は「値上げした分、芸の力を増して、よりお客さんに喜んでもらう努力をしたい」と話した。【山田夢留】

 昨年4月、東京で池袋演芸場以外の定席が値上げした際、繁昌亭は木戸銭を据え置いていた。
 昨年の値上げについては、記事を書いた。
2014年4月28日のブログ

 昨年の木戸銭の値上げ・据え置きの状況を再確認。
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         現行料金(円)  4月の消費税率引き上げ後
浅草演芸ホール(5月21日より)
         大人  2500    2,800(300円アップ)
         学生  2000    2,300(300円アップ)
         小人  1100    1,500(400円アップ)

鈴本演芸場
         大人 2800     据え置き
         学生 2400     2,500(100円アップ)
         小人 1500     据え置き
         シニア割引廃止
末広亭
         大人  2800    3,000(200円アップ)
         シニア         2,700
     学生・友の会 2200    2,500(300円アップ)
         小人  1800    2,200(400円アップ)
       【夜の割引料金】 ※特別興行は除く
        18:00~  一般¥2,500 学生¥2,200 小学生¥1,500
        19:00~  一人¥1,500 

池袋演芸場    すべて据え置き     
         大人 2500 
         学生 2000
         小人 1500
(下席の昼の部は大人2,000円。特別興行は別)

国立演芸場の落語・演芸の定席
         大人  2000    2,100(100円アップ)
         学生  1400    1,500(100円アップ)
         シニア 1300     据え置き

横浜にぎわい座
             3000    3,080(80円アップ)

天満天神繁昌亭  すべて据え置き
         大人 2500
         学生 1800
         小人 1500

(主に当日の自由席。特別公演や独演会は除く。
年齢区分は各寄席によって異なる。税込み)
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 この状況について書いた次の日、江戸時代の木戸銭を試算する記事を書いた。
2014年4月29日のブログ

 重複するが、江戸時代の木戸銭の試算について、ふたたび

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興津要著『落語-笑いの年輪』(講談社学術文庫)

 興津要さんの『落語-笑いの年輪』(初版は昭和43年に角川から単行本、平成16年に講談社学術文庫で再版)から、江戸時代の木戸銭について書かれた部分を引用。(太字は管理人)
 文化元年(1804)ごろには、江戸に三十三軒ほどの定席ができ、文化十二年(1815)に七十五軒、文政八年(1825)に百三十軒になり出演者もふえるにつれて、前座・二つ目・三つ目・四つ目・中入り前・中入り後(くいつき)・膝がわり・真打の階級もでき、それが、前座・二つ目・中入り前・中入り後・膝がわり・真打となり、それがはるかのちの昭和になると、前座・二つ目・真打の三階級に簡略化されるのだが、とにかく隆盛の一途をたどった寄席演芸にとって、天保の改革はまことに大きな障害だった。しかし、水野忠邦罷免後の弘化元年(1844)に制限が撤廃されると六十六軒に回復し、安政(1854-59)年間三百九十二軒になり、明治(1868-1911)期には八十軒前後になったが、だいたい一町に一個所はあり、収容人員も百人ぐらいで、木戸銭もふつうは三十六文ぐらい(安政に四十八文にあがる)で、下足札が四文、中入りに十五、六文のくじを前座が売りにくるぐらいで値段のはらない寄席は、まさに大衆娯楽の殿堂であり、多くの優秀な芸人もうまれていた。

 さて、この木戸銭三十六文~四十八文が、現在の貨幣価値でいくらぐらいか、というと。

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中込重明著「落語で読み解く『お江戸』の事情」


 若くして亡くなったことが惜しまれる中込重明さんの本の「時そば」の章から引用。
 十六文の価値を知るために、江戸の庶民の収入をのぞいてみよう。文政年間(1818-1829)に当時の庶民の暮らしについて記した『文政年間漫録』という本を見ると、当時の大工の年間の家計がどうなっていたのかおほよそ判断できる。これをもとに月々の収入を割り出してみると、およそ次の通りになる。
 まず収入だが、一日の手間賃は飯料込みで銀五匁四分、仮に一月に二十五日働いたとすると、135匁(銭に換算すると約9,000文)になる。一方支出は、まず居住費の店賃(家賃)が、10匁。食費は夫婦に子供が一人として約30匁(約2,000文)、酒、味噌、醤油、薪炭代金が約58匁、道具・家具代、衣装代、交際費がそれぞれだいたい10匁ずつで、しめて128匁の支出となる。収入から支出を差し引くと、ほとんど残らなかった。付け加えておくと、大工は当時の職人の中で手間賃が高い職種である。
 以上をふまえて計算すると、この一家の食費では月に125杯のそばが食べられる勘定だ。十六文は、月収の約562の一。現代のお金に置き換えるとするなら、仮に月収を30万円とした場合、562分の一は約533円となる。なるほど、そんなものだったのかもしれない。この通り、そば一杯十六文というのはそれほど高い値段ではなく、その日暮らしの職人や小商いの者たちでも、手が出せる範囲内だった。
 この計算でいくと、一文は約33円、最初に登場した職人風の男は、たったこれだけの金額をごまかすために、あれだけの口上を述べたことになる。

 中込さんの本は、当時の大工の生活について貴重な情報を紹介してくれる。

 江戸時代の金-銀-銭の価値は、次のような構造になっている。

 金一両=銀六十匁(もんめ)=銭四貫

 銀五十匁で金一両の時期もあったようだが、六十匁で計算する。中込さんは、大工の月の稼ぎ135匁を9,000文としているが、135÷60x4,000で算出される数字だ。
 
 中込さんは、大工の月の稼ぎ銀135匁、銭9,000文を30万円に想定している。一両が4,000文なので、一両は、300,000÷9,000x4,000で、133,333円になる。以前の記事で一両を60,000円で計算したことはあるが、物価が上がっていた時期の一両は120,000~130,000に設定すべきだろう。

 端数が出ないように、一両を120,000円としよう。一文は30円になるので、蕎麦の十六文が480円。現在の立食い蕎麦屋さんの天玉蕎麦(好きなのだ^^)の値段に近付いたように思う。

 寄席の木戸銭は、安政以前の三十六文で1,080円、安政以降の四十八文で1,440円。それぞれに下足札四文、中入りに引くくじ代十六文の計二十文分の600円を足すことにして、安政以前1,680円、安政以降2,040円になる。
 安政時代の約2,000円というのは、結構納得できる価ではないだろうか。大工さんが月給約30万で、この木戸銭なら月に何度か寄席に行けるだろう。

 江戸時代の芝居小屋の木戸銭は時期や小屋によって違っているが、次のような数字が残っている。マイナビニュースの該当記事
 この記事では一両を80,000円、一文を20円として計算しているが、私は一両120,000円、一文30円で換算してみる。

 立ち見        16文 →     480円
 土間席(下席)  100文 →    3,000円
 土間席(上席)  132文 →    3,960円
 桟敷席      25匁 →   約50,000円

 立ち見があるから、『四段目』の丁稚定吉は芝居を見ることができたのだ。とても土間の席で見るわけにはいかなかった。『なめる』で八公が芝居小屋で会った桟敷にいたお嬢様がお金持ちなのは、この木戸銭を見ても分かる。

 時代も環境も違うので単純比較はできないが、東京の定席寄席の木戸銭の価値は、江戸時代の庶民のハレの日の楽しみである芝居の土間席(下席)の木戸銭にほぼ等しいと言えるだろう。ホール落語会の木戸銭は、同じ芝居の土間席でも上席。最近は5,000円、6,000円の木戸銭をとる落語会もある。そのうち万の大台に乗る落語会が登場するかもしれないなぁ。歌舞伎にどんどん近付いている。

 私は、安政時代の木戸銭に下足札と中入りのくじの合計約2,000円が希望だが、高くても約2,500円が寄席の上限のような感覚だ。繁昌亭、前売りなら2,500円で、なんとか許容範囲。
 
 3,000円は、落語会の木戸銭の感覚。しかし、「寄席でも3,000円」ということで、落語会の木戸銭も、それ以上の高値が当たり前になりつつあるなぁ。

 もちろん、寄席で働く人の処遇も大事だが、なんとか、これ以上高い木戸銭にならないことを願うばかりだ。


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by kogotokoubei | 2015-06-10 22:12 | 木戸銭 | Comments(2)
昨日は定席寄席の木戸銭の値上げについて書いたが、あらためて江戸時代の寄席の様子や木戸銭について確認してみた。

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興津要著『落語-笑いの年輪』(講談社学術文庫)
 私の座右の書『古典落語』シリーズの著者興津要さんに『落語-笑いの年輪』という本がある。初版は昭和43(1968)年に角川から単行本、平成16(2004)年に講談社学術文庫で再版されたのだが、十年前の発行なのに重版されていないのが残念な本だ。

 「第四章 ひらけゆく寄席の世界」から引用。(太字は管理人)

 大坂でいう講釈場・席屋・席、江戸でいう寄場(よせば)・寄せ—天保(1830-43)になって寄席と称せられるようになったものが、はじめてできた寛政(1795前後)ごろは一定の演芸場はなくて、舟宿や茶屋のような広い家を借りて幾日か興行し、出演者も三、四人どまりだった。それがしだいに大衆に歓迎され、文化元年(1804)ごろには、江戸に三十三軒ほどの定席ができ、文化十二年(1815)に七十五軒、文政八年(1825)に百三十軒になり出演者もふえるにつれて、前座・二つ目・三つ目・四つ目・中入り前・中入り後(くいつき)・膝がわり・真打の階級もでき、それが、前座・二つ目・中入り前・中入り後・膝がわり・真打となり、それがはるかのちの昭和になると、前座・二つ目・真打の三階級に簡略化されるのだが、とにかく隆盛の一途をたどった寄席演芸にとって、天宝の改革はまことに大きな障害だった。しかし、水野忠邦罷免後の弘化元年(1844)に制限が撤廃されると六十六軒に回復し、安政(1854-59)年間三百九十二軒になり、明治(1868-1911)期には八十軒前後になったが、だいたい一町に一個所はあり、収容人員も百人ぐらいで、木戸銭もふつうは三十六文ぐらい(安政に四十八文にあがる)で、下足札が四文、中入りに十五、六文のくじを前座が売りにくるぐらいで値段のはらない寄席は、まさに大衆娯楽の殿堂であり、多くの優秀な芸人もうまれていた。


 中入りのくじの話は、『今戸の狐』を思い出す。

 さて、この木戸銭三十六文~四十八文が、現在の貨幣価値でいくらぐらいか、というと。

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中込重明著「落語で読み解く『お江戸』の事情」

 若くして亡くなったことが惜しまれる中込重明さんの本の「時そば」の章から引用。

 十六文の価値を知るために、江戸の庶民の収入をのぞいてみよう。文政年間(1818-1829)に当時の庶民の暮らしについて記した『文政年間漫録』という本を見ると、当時の大工の年間の家計がどうなっていたのかおほよそ判断できる。これをもとに月々の収入を割り出してみると、およそ次の通りになる。
 まず収入だが、一日の手間賃は飯料込みで銀五匁四分、仮に一月に二十五日働いたとすると、135匁(銭に換算すると約9000文)になる。一方支出は、まず居住費の店賃(家賃)が、10匁。食費は夫婦に子供が一人として約30匁(約2000文)、酒、味噌、醤油、薪炭代金が約58匁、道具・家具代、衣装代、交際費がそれぞれだいたい10匁ずつで、しめて128匁の支出となる。収入から支出を差し引くと、ほとんど残らなかった。付け加えておくと、大工は当時の職人の中で手間賃が高い職種である。
 以上をふまえて計算すると、この一家の食費では月に125杯のそばが食べられる勘定だ。十六文は、月収の約562の一。現代のお金に置き換えるとするなら、仮に月収を30万円とした場合、562分の一は約533円となる。なるほど、そんなものだったのかもしれない。この通り、そば一杯十六文というのはそれほど高い値段ではなく、その日暮らしの職人や小商いの者たちでも、手が出せる範囲内だった。
 この計算でいくと、一文は約33円、最初に登場した職人風の男は、たったこれだけの金額をごまかすために、あれだけのい口上を述べたことになる。


 中込さんの本は、当時の大工の生活について貴重な情報を紹介してくれる。

 江戸時代の金-銀-銭の価値は、次のような構造になっている。

 金一両=銀六十匁(もんめ)=銭四貫

 銀五十匁で金一両の時期もあったようだが、六十匁で計算する。中込さんは、大工の月の稼ぎ135匁を9,000文としているが、135÷60x4,000で算出される数字だ。
 
 中込さんは、大工の月の稼ぎ銀135匁、銭9,000文を30万円に想定している。一両が4000文なので、一両は、300,000÷9,000x4,000で、133,333円になる。以前の記事で一両を60,000円で計算したことはあるが、物価が上がっていた時期の一両は120,000~130,000に設定すべきだろう。

 端数が出ないように、一両を120,000円としよう。一文は30円になるので、蕎麦の十六文が480円。現在の立食い蕎麦屋さんの天玉蕎麦(好きなのだ^^)の値段に近付いたように思う。

 寄席の木戸銭は、安政以前の三十六文で1,080円、安政以降の四十八文で1,440円。それぞれに下足札四文、中入りに引くくじ代十六文の計二十文分の600円を足すことにして、安政以前1,680円、安政以降2,040円になる。
 安政時代の約2,000円というのは、結構納得できる価ではないだろうか。大工さんが月給約30万で、この木戸銭なら月に何度か寄席に行けるだろう。

 江戸時代の芝居小屋の木戸銭は時期や小屋によって違っているが、次のような数字が残っている。マイナビニュースの該当記事
 この記事では一両を80,000円、一文を20円として計算しているが、私は一両120,000円、一文30円で換算してみる。

 立ち見      16文 →     480円
 土間席(下席) 100文 →   3,000円
 土間席(上席) 132文 →   3,960円
 桟敷席      25匁 → 約50,000円

 立ち見があるから、『四段目』の丁稚定吉は芝居を見ることができたのだ。とても土間の席で見るわけにはいかなかった。『なめる』で八公が芝居小屋で会った桟敷にいたお嬢様がお金持ちなのは、この木戸銭を見ても分かる。

 時代も環境も違うので単純比較はできないが、東京の定席寄席の木戸銭の価値は、江戸時代の庶民のハレの日の楽しみである芝居の土間席(下席)の木戸銭にほぼ等しいと言えるだろう。ホール落語会の木戸銭は、同じ芝居の土間席でも上席。最近は5,000円、6,000円の木戸銭をとる落語会もある。そのうち万の大台に乗る落語会が登場するかもしれないなぁ。歌舞伎にどんどん近付いている。

 結構今回の値上げは、寄席の経営にとってマイナスに働く気がするなぁ。私は、安政時代の木戸銭に下足札と中入りのくじの合計約2,000円が希望だが、高くても約2,500円が寄席の上限のような感覚だ。
 
 今年行く寄席は回数が減るかもしれない。行く場合は、末広亭の友の会、同じく夜の割引料金、そして池袋が中心になるだろう。鈴本や浅草にも行くかもしれないが、どの寄席に行くにしても、見る目、聴く耳は従来以上に厳しくなるだろう。

 あらためて書くが、私は寄席が好きだ。できる限りは、行きたい。

 興津要さんの本から引用した最後の部分に、“値段のはらない寄席は、まさに大衆娯楽の殿堂であり、多くの優秀な芸人もうまれていた”とあるように、活気のある空間であればこそ、噺家も育つのだと思う。

 この度の木戸銭の値上げ、小屋側も協会も、ぜひ客が「安い」と思わせる興行をして欲しいと願う。
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by kogotokoubei | 2014-04-29 10:15 | 木戸銭 | Comments(2)
「東京かわら版」4月号の小三治の対談特集についての記事で、聞き手が「寄席」について質問をした部分を紹介した。

 聞き手は、「もっと寄席に来て欲しい」という言葉を引き出したかったのだろうが、小三治は、聞き手の意図とは別に彼ならではの思いを表現していた。
 
 私は寄席が好きだ。とはいえ、この4月から5月にかけての木戸銭の値上げは、落語愛好家には非常に悩ましいものである。

 消費税アップに伴う寄席の木戸銭値上げについて、日経の記事から紹介。ほぼ20年振りの値上げとなる浅草演芸ホールのことが最初に紹介される。
日本経済新聞・電子版の該当記事

 浅草寺から歩いて数分。公園六区と呼ぶ歓楽街の中心にある浅草演芸ホールは、この日も大勢の客でにぎわっているように見えた。いつも繁盛していますねと、チケットもぎりの男性に声をかけたが、返ってきたのは苦笑い。運営会社、東洋興業の松倉由幸社長によると、2013年の正月ごろから少しずつではあるが客足が落ち続けているという。

 「落語ブームと言われて久しいが、あまり実感できませんね。東京スカイツリーが完成したときは浅草にもたくさんの人が流れてきたけれど、それも今は一服した。庶民の町ですから、アベノミクスの恩恵にあずかれるのも、たぶん最後の最後でしょう」

 そんな状況だから、「私にとっても初体験」(松倉社長)という木戸銭の引き上げはおそるおそるだ。ゴールデンウイークのかき入れ時が過ぎる5月21日から、税込み2500円の大人料金を2800円に変えるが、客足にどんな影響が出るのか、想像するのが怖いという。実際、特別公演などで料金を一時的に3000円程度にしたときなど、窓口までやってきた夫婦客が「高い!」と言って引き返すことがある。カップルで5000円札1枚程度が入るか、入らないかの境目になっているもようだ。


 日経が指摘する“境目”については、一概に言えないだろう。高いか安いかという価値観は人によっても違う。しかし、3,000円の声を聞くと、ホール落語会と変わらない印象を受けるのは事実だろうなぁ。また、浅草は小屋自体もいろいろと改善すべき余地があると思う。客足が減ったのは、必ずしも周囲の環境変化のせいばかりではなかろうが、それはこれ以上ふれないでおこう。

 日経記事を元に定席を含むこ新旧の木戸銭は次の通り。

----------------------------------------------------------
         現行料金(円)  4月の消費税率引き上げ後
浅草演芸ホール(5月21日より)
         大人  2500    2,800(300円アップ)
         学生  2000    2,300(300円アップ)
         小人  1100    1,500(400円アップ)

鈴本演芸場
         大人 2800     据え置き
         学生 2400     2,500(100円アップ)
         小人 1500     据え置き
         シニア割引廃止
末広亭
         大人  2800    3,000(200円アップ)
         シニア         2,700
     学生・友の会 2200    2,500(300円アップ)
         小人  1800    2,200(400円アップ)
       【夜の割引料金】 ※特別興行は除く
        18:00~  一般¥2,500 学生¥2,200 小学生¥1,500
        19:00~  一人¥1,500 

池袋演芸場    すべて据え置き     
         大人 2500 
         学生 2000
         小人 1500

国立演芸場の落語・演芸の定席
         大人  2000    2,100(100円アップ)
         学生  1400    1,500(100円アップ)
         シニア 1300     据え置き

横浜にぎわい座
             3000    3,080(80円アップ)

天満天神繁昌亭  すべて据え置き
         大人 2500
         学生 1800
         小人 1500

(主に当日の自由席。特別公演や独演会は除く。年齢区分は各寄席によって異なる。税込み)
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 末広亭の3,000円には、実は驚いた。まさか大台になるとは。だから、2,800円据置きの鈴本の方が安い、という印象を与えるかもしれないが、ご存知のように鈴本は昼夜の入替え制、末広亭は通常の定席では入替えはない。
 加えて末広亭には「友の会」がある。10,000円で三カ月置きに年四回入場券が送られてくるので、一回当りは2,500円になる。加えて、夜は入場時間による割引もある。シニア割引は新設のはず。
 しかし、3,000円の木戸銭は、友の会に入るか、夜席の割引でもなければ、なかなか行きにくいとも言えるなぁ。。

 鈴本は2,400円のシニア割引料金を廃止したので、シニアは2,800円と一般と同一金額になり、400円アップ。それでも、一般の2,800円を上げなかったことは頑張っているとも思うが、シニア割引廃止は解せない。年季の入った多くの落語愛好家を失うのではなかろうか。

 池袋が、今のところは、値上げなしで頑張っている。今の木戸銭のうちに行こうと思わせる。鈴本や末広亭からお客さんが池袋に移動する姿が思い浮かぶ。

上方の繁昌亭も大阪人の気質を反映しているのか、値上げなし。

 横浜にぎわい座と国立演芸場は消費税増税対応と言えるだろうが、鈴本、末広亭、浅草は、あえて言えば“便乗値上げ”である。実態は、「これまで辛抱したがもう限界」なのかもしれないが・・・・・・。

 噺家さんにも従業員にも相応の見返りはあって欲しい。しかし、寄席が3,000円となると、寄席の楽しさを知らない人が、単に木戸銭のみを見てホール落語会を選ぶ傾向が強くなるかもしれない。

 小三治のような境地になれない私は、それが気がかりだ。寄席の楽しさを多くの人に味わって欲しい。

 寄席はいい。十人噺家さんが登場して、一人でも二人でも「おやっ!」と思わせる高座があると、私はそれでもいいと思っていたが、今回の木戸銭の値上げを考えると、十人中、三~四人は「良かった!」と思わせる高座づくりの努力は必要だろう。そして、「行くんじゃなかった」と思わせる高座は一つでも減らす施策を、寄席側も協会も考えるべきではないか。

 江戸時代の三十二文、四十八文という木戸銭との比較をするのは無理があるだろう。寄席の数も、その寄席のあり様も違いすぎる。夜鷹そばの二杯分、三杯分とはいかないだろうが、立ち食いの天麩羅蕎麦の七杯分位までになっている現木戸銭は、庶民の楽しみとしては、結構ギリギリの価格設定なのではなかろうか。

 しかし、それだけの楽しさを味わわせてくれるなら、きっとお客さんも増えるはずだ。

 今回の木戸銭の値上げは、寄席と両協会にとって客との接点をつなぎ留められるかどうかの分岐点ではなかろうか。新たな木戸銭は、落語愛好家が寄席に行こうかホール落語会に行こうか、と迷う分岐点になると思う。

 値上げによる悪循環が起こらないよう、小屋にも協会にも魅力ある寄席の運営を期待したい。

 今まで以上に、芸とは言えない漫談でお茶を濁す噺家や、客への対応が不適切な小屋には、小言を書くことになるかもしれない。こっちも、決して安くない木戸銭を払うのである。
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by kogotokoubei | 2014-04-28 19:34 | 木戸銭 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛