噺の話

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落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。

2017年 06月 09日 ( 1 )

 夜の部、はじまりはじまり。

開口一番 桃月庵ひしもち『平林』 (8分 *16:45~)
 初である。前座としては、まあまあ、という印象。
 なんともひよわな印象を与えるが、高座は語り口もしっかりしている。見た目と高座のギャップは、一つの売りになるかもしれない。

林家たこ平『出来心』 (12分)
 本来は、朝之助・一蔵・一左の一之輔の弟弟子による交替出演枠なのだが、その誰でもなく、この人。三人とも都合が悪くなるなんてぇことがあるんだ・・・・・・。
 代演のたこ平は、マクラからリズムが合わない。言いよどみも多い。
 実に残念な高座。2015年の連雀亭初席で聴いた『松山鏡』などは、結構味があったのだがなぁ・・・・・・。
2015年1月4日のブログ

東京ガールズ 邦楽バラエティ (14分)
 一人は「非売品」、相方は「返品」という自虐ネタが、失礼ながら可笑しい。
 ♪ぎっちょんちょんも悪くないし、♪裏路地の~は、何度聴いても、歌った後のあの表情が可笑しい。
 三味線の腕も結構凄いのではなかろうか。
 この人たち、だんだん好きになってきた。

台所おさん『弥次郎』 (11分)
 名前にまつわる逸話などのマクラから本編に入ったが、この短い時間で客席を沸かせた、なかなかの高座だった。
 「柔道二十三段」「そんなのがあるかい」「先生がまけてくれた」なんて科白でも笑った。
 最初に聴いたのは九年前になるが、2008年の厚木で鬼〆時代。あまり良い印象はない。
 その後、連雀亭で聴いて印象は好転し、この高座では、結構唸った。
 そのなんとも言えない風貌も含め、実に個性的かつ古風な、噺家さんらしい人。

春風亭百栄『鼻ほしい』 (14分)
 おさんの次がこの人、という流れは、なかなかに楽しい。
 こういう地噺は、お手のものだなぁ。新作か地噺の百栄、ということか。

 この人のこの噺をいつ聴いたか調べたら、2011年1月25日の新文芸坐だった
2011年1月26日のブログ
 あの落語会には、何度か足を運んだが、2014年4月21日で終了した。
 百栄が『鼻ほしい』を演じた日は、他に三三と一之輔、そして三木男が出演。
 その時の記事で、プログラムに、本来担当されている新文芸坐の永田稔さんが静養中で、「落語ファン倶楽部」編集部の松田健次さんが代筆して出演者を短い言葉で評していたことも引用していたので、再掲しよう。
 □三三
  人心の深い闇をえぐりながらも、その一方で理屈に拠らない人間存在のユーモアを忘れません。
 □百栄
  一瞬「え!」という意外な映像演出を挟むなど新世代らしい遊び心を見せます。
 □一之輔
  あらゆるシーンに縦貫するやるせなさと可笑しみに目を離すことが出来なくなります。
 □三木男
  只今短編で腕を磨きつつ初長編の構想に明け暮れる若き監督の卵でしょうか。

 なかなかに適確な評ではなかろうか。

伊藤夢葉 奇術 (12分)
 いつもながらの技と話芸。いいねぇ。

古今亭菊寿『初天神』 (12分)
 初である。年齢は私とほぼ同じなのだが、もっとふけて見える(はず^^)。
 金坊の演出が際立った。たくさん店が出ているのを眺めながら「りんご・・・はいらないんだよね」「みかん・・・もいらないんだよねぇ」「バナナ!・・・もいらないんだよね」
 「りんごもみかんも、バナナもいらないんだよねぇ・・・・・・」の後に、じわじわと切なさがこみ上げ、次第に顔がくちゃくちゃになって泣き出す様子は、生の落語でなければ楽しめない。
 円菊一門、奥が深い。

橘家円太郎『浮世床ー本ー』 (16分)
 仲入りの一朝が休演で、正朝が仲入りになり、そこに代演のこの人。
 近くの若いカップルが懸命にプログラムを見て不審がっていたので、よほど教えてあげようかと思ったが、高座が始まっていたので、やめた。
 マクラが楽しかった。浅田麻央の父親になりたい、というネタで、ところどころに師匠小朝の前妻のことなども挟んだが、詳細は秘密。
 本編は、私が知る筋書きとは異なり、「まっこう、まっこう」「おい、松公呼んでるぜ」なども、ない。
 とにかく、本を読んでいる留さん(源さん?)が、読もうとして顔と口をゆがめる表情が可笑しい高座。マクラが長くなって短縮したのか、この人はこういう型なのか知らないが、寄席らしい佳品だった。

林家ペー 漫談 (14分)
 ギターではなく、師匠の奥さん(海老名香葉子)からもらった赤いバッグを持って登場。赤いTシャツには「余談」の二字。
 最後に自分の歌「余談ですけど愛してる」を披露し、カラオケで歌ってくれ、と言って退場。
 昭和16年生まれ、今年76歳での、あのパワー、凄いね。
 
桂文生 漫談 (15分)
 二日酔いの様子とは、この日は思えなかった^^
 円生や正蔵の声色を挟んでの漫談は、なかなかに楽しかった。
 寄席のこの人でネタを聴くのは、十回に一度位の確率ではなかろうか。

春風亭正朝『町内の若い衆』 (16分)
 一朝に代わる仲入り。
 こういう噺は、本当に上手い。太った女房を形容する「氷上のトドだね」とか、鼻の穴からタバコの煙を上に吐く女房の様子には「インディアンの狼煙か」で笑わせる。
 仲間が何か褒めるものを探そうと、蜘蛛、あぶら虫、ナメクジなどに溢れた(?)家を「まるで、ファーブル昆虫記だね」なども、センスの良さを感じる。
 弟子の正太郎も順調に成長しているように思う。親子会でもあるなら、行ってみたいものだ。


 -仲入り-

 昼の部の後、椅子席は四割ほどの入りに減ったのが、次第に埋まってきた。仲入り後には七割程度まで入ったのではなかろうか。桟敷は六割ほど。
 二階にはカメラが据えてあったが、撮っているのか、あるいはこの後で何かイベントでもあるのかな。

 さて、休憩も終り。

春風亭柳朝『持参金』 (15分)
 クイツキを主任の兄弟子が務めた。今や弟子10名を数える一朝一門の総領弟子。
 最前列の席の方は、奇術の美智さんにどこから来たか聞かれ北海道と答えていたから、もしかすると、柳朝のつながりの方だろうか。
 この噺も、一門や人によって微妙な違いがある。柳朝は、吉兵衛さんが翌朝、あの女性を連れてくるという設定。
 筋書きをご存じないお客さんから、サゲ前に、番頭ー男ー吉兵衛さんの関係が明らかになり、どっと笑いがくる。
 こんなに顔の表情のある人だったろうか、と思わせる熱演。
 柳朝のブログ「総領の甚六」によると、あの古今亭右朝から稽古をつけてもらったネタとのこと。そして、その歴史をたどると次のようになるらしい。
 春風亭柳朝-古今亭右朝-立川談之助-立川談志-桂米朝。
ブログ「総領の甚六」の該当記事
 なんとも、由緒ある噺ではないか。

ホームラン 漫才 (10分)
 落語協会漫才の重要メンバーという地位を確立しつつある、という印象。
 勘太郎と私は同じ昭和30年生まれだが、彼の方がふけて見えるよなぁ、間違いなく^^
 たにしの腹話術のような相槌が可笑しい。
 しっかり客席を暖め、トリの時間も確保する、名人芸だった。

春風亭勢朝 漫談 (11分)
 十八番の彦六ネタなどを含め、この人ならではの高座。
 
初音家左橋『替り目』 (11分)
 もっとも難しいとも言われる出番のヒザ前は、十代目馬生門下のこの人。
 ちなみに、昼の部では、はん治が務めた。
 なぜ、難しいかは落語愛好家の方なら先刻承知だろうが、盛り上げなくてはならないが、主任を喰っちゃいけない。また、それまで出ているネタと主任のネタにもをつかないようにしなければならない。
 なるほど、そういう位置づけには相応しい芸達者である。
 昼の部から通しで、なぜかこのネタが出ていなかったねぇ。加えて、『親子酒』や『試し酒』、『居酒屋』など酒の噺もなかった。
 何かつまむものはねえか、の後に納豆や、糠漬けの部分を省いておでん屋につなげ、いわゆる『元帳』でサゲたが、実に結構でした。

鏡味仙三郎社中 太神楽 (10分) 
 仙三郎、仙志郎、仙成の三人が揃って登場。
 今や落語協会の色物で香盤の一番上にある。
 土瓶の芸、和楽とは年季の違いを感じさせるなぁ、やはり。
 しっかり、トリにつなげました。
 それにしても、昼も夜もヒザが太神楽というのは、私のような(数少ない^^)居続けには、ちょっと残念。

春風亭一之輔『蛙茶番』 (33分 *~21:03)
 登場し、会場から「待ってました!」の声。
 少しの間を空けてからマクラに入ったが、前日に国立劇場の歌舞伎教室へ行ったとのこと。券をもらったらしい。高校生(一之輔いわく、北関東のどこかでしょう^^)が団体で来ており、説明役に若いイケメンの歌舞伎役者が出てきたら、女子高生がキャーッやら何やら嬌声を上げた・・・その後、そのイケメンが「ここが、花道」とか説明を始めたが、「あれ位なら私だってできる」と一之輔。
 歌舞伎の食事と寄席のそれ(おいなり)、客の服装、木戸銭などなどで歌舞伎より寄席がいいと言いながら、「早い話が、悔しいんです」と言う。本音なのだろう。
 そんなマクラから、昔は素人芝居が流行っていまして、と本編へ。
 なんとも結構なマクラなのだろう、と思いながら聴いていた。
 このネタのために、わざわざ歌舞伎教室へ行ったわけでもあるまい。こういう、生きのいい(?)ネタに関わりのあるマクラは、好きだ。
 「天竺徳兵衛」のガマ蛙の役を伊勢屋の若旦那が断って定吉にお鉢が回った。しかし、芝居番の半公が来ないので幕が開けられない。番頭に言われて定吉が半公を迎えに行き・・・という筋書きの中で、それぞれの人物が見事に描かれている。
 お店の主人の貫禄。知恵者の番頭のなんとも言えない、したたかさ。定吉の無邪気さ。建具屋の半次の一本気な江戸っ子ぶりと粗忽ぶり。風呂屋から芝居に向かう途中で出会う、鳶の頭(かしら)の鯔背ぶり。芝居の観客・・・・・・。
 聴いていて、素人芝居の舞台、客席が目に浮かんでくる。
 このバレ噺(艶笑噺)を、まったく下品さを感じない、質の高い爆笑噺に仕立て上げた。
 何と言っても、惚れている小間物屋のミー坊が帰っちゃ大変と、自慢の縮緬の褌を締めるのを忘れて湯を出た後、途中で頭(かしら)親娘に、その物を見せて「町内一」とか「これだけあると重い」と言うあたりで、会場がひっくり返るような大爆笑。近くに若いカップルがいたが、女性が大声あげて、泣きながら笑っていた。
 その御開陳のすぐ後に、頭が大慌てで「やめろ、やめろ!」と言って、娘に「見るなぁ!」と叫んで半公を隠そうとするあたりでも笑いが巻き起こる。
 もちろん、この人なりの楽しい演出も加わる。
 たとえば、最初に定吉が迎えに行った時、半公が怒って人差し指と中指で「目ん玉くり抜くぞ」と脅かされたことを番頭に言うと、「こうして防げ」と手の平を縦に目の前に構えてみせる。「足んなきゃ、両手で」と言う。これを、番頭のミー坊作戦の知恵を授かって再訪した場面で定吉が実践するところなども、実に可笑しい。
 科白で印象に残るものもある。定吉が、番頭の作戦を聞いた後の、「番頭さん、凄いですねぇ。味方にしておいて良かった」なども効果的な一言。
 あの禁演落語五十三席の一つであるネタを、女性が大声で笑える見事な噺に仕立てた高座、今年のマイベスト十席候補に選ぶ。いやぁ、笑ったなぁ。


 実は昼の部がはねた後で、末広亭の従業員の女性の方から、一之輔の初日から六日目までのネタをお聞きしていた。
 鰻の幇間・青菜・代書屋・化け物使い・千早ふる・百川、だったとのこと。
 そして、この日の蛙茶番。

 一之輔の2012年3月21日から5月20日までの真打昇進披露興行50日51席のネタは、以前書いた。回数ごとに、次のネタが並ぶ。
2012年5月21日のブログ

 5回(1):茶の湯
 4回(3):百川、子は鎹、粗忽の釘
 3回(4):欠伸指南、初天神、明烏、らくだ
 2回(6):短命(長命)、不動坊、長屋の花見、花見の仇討、青菜、藪入り
 1回(10):竹の水仙、雛鍔、くしゃみ講釈、鈴ケ森、蛙茶番、代脈、大山詣り、鰻の幇間、へっつい幽霊、五人廻し

 あの二十四席と、末広亭の主任興行のネタ、春から初夏までの同じような季節なので、同じネタが並ぶのは当然のことだろう。
 しかし、あの披露目では、代書屋、千早ふる、化け物使い、は演っていない。
 
 ネタも着実に増やしていることが分かる。
 
 そして、その高座に久しぶりに触れて、若さ、勢いを保ったまま、どんどん上手くなっていることを実感した。
 貫禄さえ感じさせる。
 横浜にぎわい座の地下秘密倶楽部“のげシャーレ”で二ツ目時代に聴いた時に、この人のチケットは取りにくくなるとは予想したが、まさか、NHKが「プロフェッショナル 仕事の流儀」で取り上げるまでになるとは、思わなかった。
 三三、白酒、などには良い刺激になっているだろう。
 
 落語協会は、今春五人、秋にも三人の真打昇進。
 あくまで、増え続ける二ツ目への落語家稼業スタートの儀式、ということか。
 抜擢昇進は、たった五年前のことだが、そんな大きな状況の変化が、ずいぶん前のことにも感じさせるのである。


 九時間近い居続けではあったが、昼の部では、いぶし銀とでも言える芸達者達による高座を楽しみ、最後には一之輔の見事な“芝居”を堪能した。

 やはり、寄席はいいねぇ。
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by kogotokoubei | 2017-06-09 12:36 | 落語会 | Comments(6)

落語のことを中心に、ときたま小言や独り言。


by 小言幸兵衛